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活動日誌6 ゆうじょう・のーちぇんじ! 2
つまり、亜里沙は――
スクールアイドル活動に必要なことが、クラスメートの高町さんに声をかけることだと考えていたらしい。
亜里沙の言った『高町さん』とは――私達と同じ、スクールアイドル μ's のファンであり、入学前から私達のことを知っていた彼女のことだ。
フルネームは高町 涼風さん。
その名前にふさわしい、涼しげな佇まいに映える長い黒髪。
凛とした物腰は、どことなく海未さんの雰囲気に似ていると感じていた。
だけど海未さんと同じく、柔らかな物腰も兼ね備えているから、私達とも気さくに接してくれている。
まぁ、お姉ちゃんの話では海未さんは凄く人見知りが激しかったみたいだけど? お姉ちゃんに振り回されている内に克服できたらしい。
お姉ちゃんにかかれば、そんなことを気にしていられないのかも? なんてね。
そして、高町さんは――
ううん、正確には高町さんと亜里沙は1年生の中での人気ランキングのトップ2だってクラスの友達に聞いた。
――あの? 私達って、まだ入学して3日目なんですけど?
でも、まぁ? そこは、うら若き乙女ですから、仕方がないことなのかもね?
確かに私はともかく、亜里沙と高町さんが一緒に活動すれば学院内なら注目度は上がるかも知れない。
何より、同じ μ's のファンである高町さんなら気が合いそうだし、誘ってみる価値は理解できる。
――だけど亜里沙は何でそんなことを思いついたんだろう。
私はこれからの活動方針として、レッスンとかの面について考えていた。
でも、亜里沙はメンバーを増やすことを考えていた。そしてそれが私達にとって必要なことだと思っている。
自分では理解できない考えだったから、亜里沙の心意を知る為に彼女に聞いてみることにしたのだった。
「ねぇ、なんでメンバーを増やそうと思ったの? それに、それが必要って?」
「えっ? ……だって、スクールアイドルって3人なんじゃないの?」
私は率直に亜里沙に聞いてみたのだけど、亜里沙らしいハラショーな発言が返ってくるのだった。
私はその発言を受けて苦笑いを浮かべると――
「いや、別に3人揃わないとダメってことはないんだよ? 実際、他のスクールアイドルは3人じゃないグループもあるし」
「……ハラショー!」
優しく亜里沙に伝える。
それを聞いた亜里沙は例の如く、目を見開いてお決まりの台詞を言い放つのだった。
確かに私も亜里沙も、スクールアイドルそのものを見続けてはいなかった。
そして、どちらかと言えばお姉ちゃん達と――同じ地区のスクールアイドルで、お姉ちゃん達のライバルである A-RISEくらいしか知らないのだった。
まぁ、スクールアイドルを目指すんなら周りも見ないといけないんだろうけど?
とりあえず私達は見ていなかったんだよね。
お姉ちゃん達 μ's は、去年で言うと――各学年に3人在籍メンバーがいた。加入時期的にズレは生じるけどね?
更に A-RISE も3人編成だった。
だから、亜里沙はスクールアイドルとは3人編成が基本なのだと思っていたみたい。
まぁ、私も良くは知らないけれど、知っている人達が偶然3人だっただけで――他の人数のスクールアイドルも、前のラブライブ! の大会や合同ライブで見たような気がするから、そう教えてあげたのだった。
「でも……」
「……まぁ、私も別に亜里沙の考えは良いと思うよ? でも、高町さんが一緒にスクールアイドルをやってくれるかは彼女の意思だから……聞いてみるだけね?」
「雪穂……ありがとっ」
亜里沙はスクールアイドルが3人でなくても大丈夫だと知っても、まだ異を唱えようとしていた。
たぶん亜里沙は純粋に高町さんと一緒に活動がしたいんだろうと思った。
でも、それは私も思ったこと――
もちろん、私も亜里沙も2人で活動することに不満はないし、それでも良いと感じている。
だけどそれとは別に、高町さんと3人で活動をしていきたいと感じているのも事実なのだ。
高町さんは海未さんに雰囲気が似ている。そして、亜里沙はことりさんに雰囲気が似ていると思う。
まぁ、私はお姉ちゃんほどリーダーシップが取れる訳じゃないけど?
お姉ちゃんのようになりたいと思っている。
そして――
私の知る限りの人達は、お姉ちゃん達と同じような雰囲気の人達の集まりになっているって思っていた。
リーダーシップを取れる人。
優しく包み込んでくれる人。
そして、そんな2人をキチンと律してくれる人。
だから私達2人には、高町さんのような人が必要なんだろう。
お姉ちゃん達の背中を見続けていた私には、そんな考えがあったのかも知れない。
だから亜里沙が高町さんと言った瞬間――私も彼女と一緒にできたら良いと思ったのだった。
とは言え、それは私達の考え。高町さんには関係のない話だ。
断られても仕方のない話――まぁ、お姉ちゃんは真姫さんに数回アタックして玉砕しても諦めなかったらしいんだけど?
さすがに、1日中顔を合わせる相手に嫌われるのは勘弁だからね? 1回だけ聞いてみるって話で亜里沙の意見を了承した。
亜里沙はそんな私の答えを聞いて微笑みながらお礼を述べるのだった。
♪♪♪
昼休み。
私と亜里沙は昼食を済ませると、高町さんの様子を伺いながら、彼女が昼食を終えたのを見計らって彼女の前まで歩いていった。
「高町さん……」
「……雪穂さんと亜里沙さん。どうかしたの?」
私が声をかけると高町さんは顔を見上げて微笑みながら返答した。
ちなみに彼女が私達を名前で呼ぶのは――お姉ちゃん達のことも話すことがあるから混同しない為なんだって。
まぁ、友達になれたと言っても、さすがに入学して3日で名前を呼び合えるほど仲も良くなれていないしね?
「今、大丈夫?」
「えぇ、大丈夫だけど?」
「あのね? 私達、アイドル研究部に正式に入部したんだけど……」
「――あぁ! 昨日高坂さんが来たのって、そう言うことだったのね?」
「……うん、お恥ずかしながら……」
「素敵なお姉さんだと思うわよ?」
「ありがとう」
私は高町さんに彼女の都合を聞いてみた。ほら、彼女の予定を邪魔できるような話でもないしね?
とりあえず大丈夫そうなので、本題を切り出すことにした。
一応、話の流れ的に私と亜里沙が入部をしたことを話すと、彼女の口から昨日の話が出てくる。私は昨日のお姉ちゃんの行動を思い出し、恥ずかしくなって彼女に伝える。
するとフォローを入れてくれたので、苦笑いを浮かべてお礼を告げたのだった。
お姉ちゃん達のファンなんだし、悪くは言わないだろうけどね?
「それでね?」
「うん?」
「私達と一緒にスクールアイドルをやってみないかな? って思ったんだけど」
「……えっ?」
「あっ! 無理にって訳じゃないんだけど……お姉ちゃん達のファン同士、一緒に活動できたら嬉しいかなって思っただけだから」
「…………」
「……もしかして、スクールアイドルに興味はなかった?」
「……そんなことはないわよ?」
「そっか……良かった……どうかな?」
雰囲気的に話がしやすそうだったから、そのままの流れで単刀直入に聞いてみる。
一緒にやらない? と聞かれた彼女は驚きの表情とともに声を発した。
確かに、私達は知り合って3日目だ。お姉ちゃん達のファンだと言う共通点があったとしても突然一緒にやろう! って言われて2つ返事で承諾なんてしないだろう。
あっ、ココでの重要な部分は付き合いが長くないこと前提ですからね?
突然、一緒にスクールアイドルをやろう! って言われたことじゃないので誤解しないでくださいね! ことりさん?
だから自分の素直な気持ちを彼女に伝えたんだけど、彼女は私と亜里沙をジッと見つめながら無言になってしまっていた。
その無言が不安になって、私はスクールアイドルに興味があるのかを訊ねる。
いや、お姉ちゃん達のファンが全員スクールアイドルを目指している訳じゃないからね? それくらいは理解しているし。
だけど彼女は肯定した。その言葉を聞いて私は安堵しながら、答えを促したのだった。
だけど、彼女は悲しそうな顔をして――
「……ごめんなさい」
そう答えたのだった。
いや、彼女が謝ることでもないんだけど。勝手にお願いをしたのはコッチな訳だしね?
だから、私は苦笑いを浮かべながら――
「あっ、変なこと聞いてゴメンネ? 忘れて? それじゃあね……」
「――あっ! ……ううん」
そう彼女に告げると、亜里沙の手を引っ張って自分の席に戻ろうとしたのだった。
その時、足早に去ろうとした私達に何かを言おうとした彼女だけど――私が振り返ると、目を瞑って首を横に振っていた。
だから私と亜里沙は再び歩き出した。たぶん、その場に居座れば彼女が辛くなるから――そう感じて教室を離れることにしたのだった。
♪♪♪
その日の放課後。
私達はアイドル研究部の部室を目指して歩いていた。今日から本格的な活動を始めるから。
そんな希望に満ちた初日のはずだったんだけど――私と亜里沙の足取りは非常に重かった。
いや、別に体育の授業があった訳じゃないよ? あと、アイドル活動がイヤになった訳でもない。
活動方針が決まっていないからでもない――まぁ、そこは少しは気にしているけどさ? 活動の時点で決めれば良い訳で。
私と亜里沙が気にしていたのは高町さんのことだった。
別に、断られたことじゃないからね?
そりゃあ、まぁ? 少し――いや、かなり残念だけどさ?
それは彼女の自由だし、私達が何か言える話じゃないから。
だけど、私の誘いを断ってから、高町さんは私達を避けるようになった。
午後の休み時間毎に何処かへ出て行ってしまう。そして、HRが終わると気づく前に帰ってしまっていたのだった。
私達と高町さんは2日前に知り合ったばかりだ。
そして今日の朝――お互いのすれ違いを解消して、晴れて友達になったのだった。
確かに、お姉ちゃん達のファンと言う共通点はある。
だけど目指している到達点は違ってもおかしくはない。
きっと、私は――私と亜里沙は自分達の価値観で彼女を見ていたのだろう。
お姉ちゃん達のファンならスクールアイドルを目指しているだろうと。
彼女に悪気はない。
単純に私達に申し訳ないと感じているんだろう――そんなことは全然ないのに。
だから、顔を合わせるのに抵抗があるんだと思う。
私は今の現状を、昨日の私達とクラスメート達のように思えていた。
高町さんは、まさに昨日の私達だ。まぁ、私達は避けていた訳じゃないんだけどね?
そう、あの時考えたこと。このままだと平行線を辿って私達はわかりあえないんじゃないかって思う。
せっかくお姉ちゃんが壊してくれた壁を私が作ってしまったのではないか?
そんなことを考えて気が重くなっていたのだった。
隣を歩く亜里沙は、私が落ち込んでいるから一緒に落ち込んでくれている。
私達2人で考えた活動方針だったのだから。
明日は何とか彼女と話をして、これからも友達として接していければ良いな?
そんなことを考えながら部室への道を歩いていたのだった。
♪♪♪
「「お疲れ様です!」」
「あっ、お疲れニャ!」
「お疲れ様」
私と亜里沙は部室の扉を開くと、中にいた凛さんと真姫さんに声をかけた。
椅子に座ってくつろいでいた2人は挨拶を返す。
花陽さんはアルパカの世話をしているのだろう。
まだ、部室には見えていなかった――少し気になって私はキョロキョロと周りを見渡していた。
まぁ、あんなサプライズは昨日だけの話だろうけどね?
自分の行動に苦笑いを浮かべて、私達も椅子に座るのだった。
凛さんの話によれば――今日はお姉ちゃん達は部活に来れないらしい。
そろそろ部活説明会があるから、直前に行う部長会議の準備に追われているらしい。
私は、ふいに部活と言う言葉に顔を曇らせる。
不思議そうに見つめる凛さんと真姫さんに気づいて苦笑いを浮かべるのだった。
始める前は何も考えずに、ただ入部したかっただけなのに――今は入部したことが重荷になっていた。
活動方針のこと。
高町さんのこと。
色々なことが私の脳裏に渦巻いていた。
もちろん、そんなことは口に出してはいけないことだから誰にも言わないけどね?
だから、それ以降は普通に笑いながら会話に参加していたのだった。
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