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動かざること

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第四章

「ずっとね」
「何か鰐みたいだな」
「ああ、相手待ってるってな」
「もうそんなのだよな」
「鰐だよな」
「それだと」
「そうかもね、鰐って普段動かないしね」
 水の中で基本そうしているのだ、陸に出ている時は大抵寝ている。水中では上手に泳げるが狩りの仕方は待ちである。
「僕もそれに近いね」
「動かなくてもか」
「それでも相手が来る」
「それを待つ」
「そうしていたんだな」
「うん、よかったよ」 
 笑顔でだ、マイチャンは自分のお茶を飲みつつ友人達に笑って話した。
「本当にね」
「そうか、下手に告白したり彼女探したりするよりも」
「待つのもいい」
「そうなんだな」
「マイチャンみたいにするといいのか」
「そうした場合もあるみたいだね」
 実際にとだ、マイチャンは友人達にまた答えた。
「少なくとも僕はいい感じになれたよ」
「よし、じゃあな」
「俺達も考えるか」
「下手に動くよりも」
「待ったりもするか」
「俺もだな」
 その中学時代に不幸があった友人も言う。
「そうすることも考えるか」
「その方がいいかもね」
 マイチャンは彼には特に言った、しかも穏やかな声で。
「君の話を聞いてさらに思ったよ」
「本当にな、言い触らされて周りから笑われて大変だったよ」
「僕もそんな目に遭いたくないよ」
「だったらな」
「うん、本当に待つこともね」
「大事だな」
 時と場合によってはとだ、この友人も言った。そしてだった。
 マイチャンはこの場は友人達と共にお茶を飲んだ、彼は最初に飲み終えたが友人達が全員飲み終えるのを待った、この時も動かずにいた。そして友人達はその彼のその待ちには今度は感謝したのだった。自分達を待ってくれたことに対して。


動かざること   完


                        2016・4・13 
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