人の為に
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第九章
「もっと酷いことをするな」
「絶対にそうだな」
「これは何とかしないとな」
「さもないととんでもないことになるぞ」
こう囁きだした、そして。
多くの良識ある人々が彼について調べだした、悪賢いライスの実態を掴むことは難しかった。証拠を徹底的に隠滅していたので。
しかし苦労して証拠を掴んでだ、それから。
告発した、すると。
それからだ、次々にだった。
彼への告発が続きだ、裁判になり。
彼は悪事を全て暴かれ刑事犯罪者となり刑務所に入ることになった。その時に地位も財産も全て失った。
その中でだ、こうした話を聞いた。
「マックポッターって奴がか」
「そうだよ」
その通りという返事だった、刑務所で聞いている者が服役している彼を嫌悪の目で見ながら話したことだ。
「聖人って言われてるんだよ」
「聖人か」
「誰の為にも汗をかくな」
「そうなったんだな」
「何だ、知ってるのか?」
「いや」
首を横に振ってだ、ライスは答えた。
「別にね」
「そうか、知り合いじゃないんだな」
「そうだよ」
こう職員に話すのだった。
「別にね」
「そうか、けれどな」
「そのマックポッターって人がか」
「聖人って呼ばれてるんだよ」
「誰の役にも働く」
「立派な人らしいな、御前と違って」
こうライスに言うのだった、嫌悪に満ちた目を向けつつ。
「立派な人だよ」
「そうなんだね」
「自分のことしかだろ」
彼はライスにこうも言った。
「御前は」
「そうさ、僕はね」
その通りだとだ、ライスは彼に答えた。
「自分だけが大事で自分だけが可愛いのさ」
「あの人とは全く違うな」
「悪いかい?」
「そういう奴だからここにいるんだな」
やはり嫌悪の目でだ、ライスを見ながらの言葉だった。
「刑務所に」
「全く。ついていないよ」
「ついていないさ、自業自得さ」
「ばれない様に慎重に慎重を重ねていたんだがね」
全く反省せずにだ、ライスは言葉を返した。
「それでもなんだね」
「ばれてここにいるっていうんだな」
「やれやれだよ、しかしね」
ライスは反省しないままだ、ここでこうも言った。
「どうして僕はばれたのかな」
「そのことか」
「今言ったけれど悪事をしてもばれない様にしていたんだけれどね」
「それは当然だろ」
職員はライスに冷たい声で返した。
「御前は自分だけの奴だな」
「何度でも言うさ」
徹底したエゴイストだとだ、ライスは自分から言った。
「僕はそうした人間さ」
「他人を裏切ってもきたな」
「いつもね」
「騙してもきたな」
「詐欺はやり方次第でかなり儲かるしね」
政治家になる時もだ、美辞麗句を駆使して有権者を騙して当選した。悪びれないままでの言葉であった。
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