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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第3章:再会、繋がる絆
  第65話「解決に向かう」

 
前書き
本来なら強い優輝がここまで苦戦する理由は、大抵ハンデを背負っているからです。
魔力不足とかリンカーコア損傷とか、攻撃を全て受け止めるとか...。
ただ倒すだけならチート級の強さを発揮します。(今の所そんな相手は“カタストロフ”以外いませんけど)

ただ、偽物だけは例外です。(優輝と同じ能力なので)

 

 






       =out side=





「....っ、ぁ.....。」

 八束神社のある山...国守山(くにかみやま)の奥の森の中で、一つの呻き声が聞こえる。

「.....ぅ....。」

 銀髪の綺麗だったであろう髪は、土や血に濡れ、見る影もない。
 服もボロボロで、至る所から血が出ていた。

「っぁ....銀は...きつかった.....なぁ......。」

 腕や腹には、所々穴が開いてしまっている。手足に至っては一部がなくなっていた。
 もし人間であれば、既に死んでいるだろう。

「.....吸血鬼の再生力を....封じられた...か.....。」

 体中が傷だらけで、どうみても動けそうにない。
 彼女は薄れゆく意識の中、ただ“二人”の事を思い浮かべた。

「....優...ちゃん......かや....ちゃん......。」

 彼女は眠る。
 誰にも気づかれる事のない、山奥で...。

















「.....っ....う....。」

 アースラの病室にて、そこでも一つの呻き声があった。

「....ここ....は...?」

 体を起こし、周りを見る。
 そこで、彼女が起きた事に気づいた者がいた。

「....お姉ちゃん...?」

「...フェイト?....そっか、ここ、アースラなんだ。」

 彼女...アリシアの目覚めにフェイトは驚き、アリシアは今いる場所を把握する。

「お姉ちゃん....!」

「わっ...!もう、フェイトったら...。」

 歓喜のあまり抱き着くフェイトを、アリシアはしょうがない妹だと頭を撫でる。

「...あ、急いで皆に伝えてこなきゃ...!」

「フェイト?...って、行っちゃった...。」

 ハッとしたフェイトは急いで皆のいるところへ走り出す。

「........そっか、私あの時....。」

 そこでようやくアリシアは何があって眠っていたのかを思い出した。

「っ.....優輝....!椿、葵...!」

 思い出し、三人に安否を確認しようとして....立ち上がれずにこける。

「いったたた....。ち、力が入らない....。」

 一日中眠っていたため、体に力が入らなかったようだ。
 それでも何とか立ち上がり、皆がいるであろう場所を目指す。

「っ、あっ...!」

 部屋を出て、一つ目の廊下の角を曲がった所でまたもやバランスを崩す。
 そして、こけそうになった所で...。

「アリシアー!!」

「わぷっ!?ま、ママ!?」

 プレシア(親馬鹿)によって助けられる。

「目が覚めたのね!?今こけそうになったけど大丈夫!?怪我はしてない!?」

「お、落ち着いてよママ!私だって、状況が把握した―――」

     くぅ~....

 慌てるプレシアを宥めようとしたアリシアのお腹から、可愛らしい音が鳴る。

「.....まずは、ご飯が食べたいな...。」

「...そうね。」

 微妙な空気になったのと、顔を真っ赤にしたアリシアでプレシアは冷静に戻る。
 ...一応、状況が状況なのだ。親馬鹿でもちゃんとする時はちゃんとする。





「んぐ....そんな感じになってるんだ...。」

「ええ。ジュエルシードもあの坊やも放置しておけないわ。」

 食堂にて、アリシアは食事を摂りながらプレシアから話を聞く。
 なお、クロノとリニスも説明のため同席している。

 ちなみに、フェイトが皆にアリシアが目覚めた事を話したが、クロノ達が一斉に行っても混乱するだけだろうという事で、待機してもらっている。

「...アリシア。あの日、何があったか覚えているか?」

「一応はね。....でも。」

 スッと目を細め、アリシアの顔が真剣なものへと変わる。

「...優輝はそんな事しない。」

「...どういうことだ?」

「ママやリニス、クロノだって優輝の為人(ひととなり)は見てきたでしょ?...なら、少し怪しいと思ったりもしたでしょ?」

 アリシアの言う通り、三人とユーノは本当に優輝なのかと疑っていた。

「....という事は...。」

「あれは優輝ではない....という事ですね?」

「うん。断言するよ。...私自身、優輝達に庇われてたんだし。」

「っ...!」

 呟かれたアリシアの言葉にクロノは驚く。

「...プレシアさんの言う通りだったか...。」

「...正直、憶測に憶測を重ねたような考えだったのだけどね。」

「その様子だと、元々疑ってたんだね。」

 三人の反応にアリシアはホッとしたような...しかし憂いを帯びた笑みを浮かべる。

「...アリシア?」

「....っ、ごめんなさいママ...。私、ずっとおかしかった...。」

 悲しく目を伏せるアリシアに、“まさか”とプレシア達は気づく。

「アリシア...貴女もしかして...。」

「...うん。優輝が戦っている時に、解けたよ...。」

 “解けた”...それはつまり、魅了が解けている事を表していた。

「正直、どうしてあそこまで妄信的になってたんだろうって...あれは本当に私だったのかなって思えたよ...。」

「アリシア...。」

 魅了が解け、今まで神夜に対し抱いてきた感情が魅了による偽物だと分かり、アリシアは途轍もない喪失感に襲われ、体を震わせた。

「...何なの...何なのアレ...!ひどい...ひどすぎるよ!人の想いを、感情を踏み躙るようなモノだよ!!どうして...なんであんなのが...!」

「落ち着けアリシア!」

 涙を流し、錯乱したように取り乱すアリシアを、クロノは抑えようとする。

「なのはも!フェイトも!皆、皆私と同じで...!なんで...!なんであんな奴...!」

「....落ち着きなさい、アリシア。」

 心を弄ばれた事に怒りを露わにし、感情が爆発しようとした所で、プレシアの抱擁が入ってそれは止められる。

「マ...マ.....?」

「...想いを、心を、感情を弄ばれた気持ち...同じ目に遭っていない私にはわからないわ...。...でも、怒りに身を任せるのは....周りが見えなくなるのはダメよ。」

 自身がアリシアを生き返らせようとそうなったからこその、プレシアの言葉だった。

「でも....でも!!」

「...怒りをぶつけたって、何も変わらないのよ...!」

「っ....。」

 それでも、と言葉を続けようとするが、プレシアの言葉に詰まらせてしまう。

「私も...私たちも辛かった...!貴女達が...知っている子が抵抗すらできずに魅了されているのを知って、どれだけ無力さを感じたか...!」

「ママ....。」

 自身を抱き締める母の体が悔しさに震えているをの感じ、アリシアの抱いていた怒りが薄れていく。

「....そっか...ママたちも、ずっと辛かったんだね...。」

「...それでも、貴女が元に戻って、本当に嬉しいわ...。」

「....うん。落ち着いたよ...。ありがとう、ママ...。」

 母も辛かったのだと思い、アリシアの怒りの感情が治まる。

「.....ここ、食堂だという事を忘れてないか?」

「「っ...!」」

「...一応、認識阻害の結界をクロノさんに許可を貰って張っておきましたけどね。」

 今いる場が食堂だった事を思い出し、急に恥ずかしくなる二人。
 そこで一応大丈夫なようにしていたと、リニスのフォローが入る。

「はぁ....話、戻せるか?」

「ぅ...ごめん、ちょっと待って....。」

 クロノが呆れながら話を戻そうとするが、アリシアは恥ずかしさが上回っているため、少し待つ事になった。





「....うん。落ち着いたよ。」

「よし、じゃあ話を戻すぞ。」

 アリシアが落ち着いたため、クロノは話を再開する。

「....あの優輝が偽物というのは分かったが...だとしたら偽物は一体...。」

「...ジュエルシードだよ。」

 早速疑問を呟いたクロノに、アリシアが返答する。

「...ジュエルシード...だと?」

「うん。私、見たんだ。...優輝がリヒトからジュエルシードを取り出した時、そのジュエルシードが優輝のリンカーコアを吸ってコピーした所を。」

「....待て、今色々気になる事があったぞ。」

 アリシアの言葉にクロノが思わず引き留める。

「まず、ジュエルシードが優輝をコピーしたのはいい。ロストロギアなら起きてもおかしくはないからな。....だが、リンカーコアを吸われただと...?」

「うん。遠目だったけど、間違いないよ。」

「だとしたら...今の優輝は魔法を使えない...?」

「そうだろうね。私を庇ってた時も、ほとんど霊術しか使ってなかったし。」

 魔法を使わずとも戦闘を行っていた事に、クロノ達は驚く。
 ちなみに、アリシアがなぜ霊術だと分かったのは、何故か直感的にそう思ったかららしい。

「...いや、こっちはまだいい。リンカーコアを吸われた優輝が心配だが...。」

「...問題はなぜ優輝さんがジュエルシードを持っていたか...ですね?」

「ああ...。」

 現状、ジュエルシードが地球に再び現れたのは原因不明となっている。
 それなのに、優輝が所持していた事に疑問を抱いたのだ。

「...多分、あの時かな...?」

「あの時?」

「...プリエールでの事だよ。多分、司を助けようとした時に掴み取ったんじゃないかな。」

 現場での事を通信が途絶えて分からなかったアリシアが、推測で言う。

「アリシア....。」

「ん?どうしたのクロノ?」

「....“司”とは....()()()()?」

 ...しかし、クロノ達にはその話が通じなかった。

「え.....?」

「プリエールでは村に被害は出たが、誰かが助けられるような出来事はなかったはずだが...?」

「....え、で、でもだって...。」

 話が嚙み合わず、アリシアは慌てる。
 プレシアは知っているかもしれないと、アリシアは見るが...。

「.....知らないわ。」

「え......?」

 プレシアも知らないと首を振り、ますます混乱する羽目になる。

「リニス...!」

「....いえ、私も覚えは...。」

 少し顔を歪ませているのに違和感を持つが、リニスも覚えていない事にさらに焦る。

「(どういうこと...!?どうして、どうして皆司の事を覚えてないの...!?)」

 なぜ自分だけは覚えている。そう思って記憶を探って...気づく。

「(あ...れ...?そういえば、どうして司がいなくなったのに、私....。)」

 そう。司がジュエルシードに取り込まれ、皆の記憶から消えてから既に半年近くだ。
 そんな長い期間、アリシアは司の事を意識せずに過ごしてきた。

「....もしかして...皆、記憶を....。」

「...どういう事だ。詳しく説明してくれないか?」

「...私自身、もしかしたら一昨日までそうだったかもしれないけどね...。」

 アリシアはおそらく皆記憶が弄られている事、司がどういう人物で今はどうなっているかを伝え、何故か自分は思い出している事を話す。

「なんで私だけ思い出したのかはわからない。...でも、こんなの、放置してられない...!」

「だが、半年近くも経ったのなら、人間では....。」

「それでも!皆に忘れ去られていくのだけは...!」

 人間では、どう足掻いても半年間食事なしで生きる事はできない。
 しかし、それでもアリシアは放置だけはしたくないと思った。

「.....司...聖奈....司.....?」

「...リニス?」

「.....すみません、少し、頭が....。」

 頭痛がするのか、頭を抑えるリニス。

「っ....どんどん解決しなければならない事が増えるな...!はやて達が来るまで、まだ時間がかかるんだぞ...。」

「....クロノ、もしかしたらこの事件、全て繋がってるかもしれないよ。」

 頭を悩ませるクロノに、悪い事ばかりではないとアリシアは言う。

「司は天巫女で、ジュエルシードの担い手。そのジュエルシードが今地球にあるのは、何かしらの理由があってこちらに干渉してきたから。...だとすれば、ジュエルシードを集めて行けば、道が開けるかも...!」

「...優輝の偽物も、所詮はジュエルシードだからな...。繋がっているのか...。」

 それぞれが別方向で事に当たる訳ではないと、ほんの少しだけ肩の荷が下りるクロノ。
 しかし、状況が芳しくないのは変わらないと、思い直す。

「...とりあえず、本物の優輝達とユーノの回収だ。残念だが、おそらく偽物に妨害されているせいで通信を直接繋げる事ができなくなっている。...コンタクトを取るには直接出向くしかない。」

「そうだね。...それと多分、優輝達も司の事は覚えてる。」

「そうなのか?」

「うん。司のデバイス...シュラインの名を呟いてたから、きっと...。」

 そう言って、アリシアもこれからの事を考えるのにシフトする。

「とにかく、まずはこの情報をアースラ全体に行き渡らせないとな。」

「手伝うわ。....リニスはつらいのならアリシアと一緒にいて頂戴。」

「は、はい....。」

 未だに頭痛なのか、苦しそうにしながらプレシアの言葉にリニスは答える。

「リニス...大丈夫?」

「大丈夫です...。ただ、記憶に混乱が...。」

 リニスは今では司の使い魔だ。
 しかし、記憶が改竄されている今では、プレシアの使い魔だと誤認しており、そこでアリシアによって伝えられた真実から、記憶に矛盾が起こり、頭痛が発生しているのだ。

「(...リニスは司の使い魔だったから、司がいなくなっている今の状況だと、とても不安定なんだ...。記憶が改竄されていたからこそ、普通でいられたって事なんだ...。)」

 今の状況と、リニスと司の関係性から、アリシアはそう推測する。

「(私が思い出したのは...多分、優輝のあの魔法を見てから...。それでも、どうして記憶が戻ったのかはわからないけど...リニスもどうにかして元に戻してあげたいな...。)」

「....すぅ....はぁ.....っ、何とか、落ち着きました...。」

 記憶を戻せない事を歯痒く思うアリシアを他所に、リニスは何とか頭痛を抑える。

「...さぁ、行きましょう。アリシア。」

「...うん。」

 リニスに連れられ、アリシアも皆の所へと向かう。

「(...戦闘もできない。何かの助けになる事もできない。...無力だな、私って...。)」

 その時、アリシアは何もできない自分を悔しく思う。

「(.....力が、欲しい...。誰かの助けになれる、力が....!)」

 このまま無力でいるのは嫌だと、ただただアリシアはそう思った。











   ―――....ドクン....






 ...胸の鼓動と共に体から溢れる力に、気づく事もなく...。



















       =優輝side=







「っ、ぁ....!」

「ぅぐ....!」

 転移による浮遊感がなくなり、転移が終わったのだと確信する。

「...逃げ切った....の?」

「...なんとかな...。だが、追いかけられる可能性もある。その前に何とかしなければ...。」

 ユーノの言葉に答えつつ、今いる場所を確認する。

「.....八束神社の裏手か...。」

「っ、ぐ...かふっ...!」

 ここがどこか確認した所で、椿が吐血しながら膝をつく。

「椿!?」

「っ...先の戦闘ね...。ちょっと、捨て身すぎたわ....。」

「だろうね...かくいう僕も、結構無理を....っとと..。」

 椿は左手をレイピアで貫通させられたからな。出血も多い。
 僕もかなり無理をしていたので、ふらりとその場に座り込んでしまう。

「霊力はまだ使えるか?」

「ええ。霊脈と繋げるぐらいは。」

「なら、今は回復に専念だ。」

 早速霊力を操り、霊脈とのパスを繋ぐ。
 これで回復力も上がるし、椿に至っては失血死の心配はなくなる。
 式姫ってその気になれば霊力があれば死なないしね。

「....これから、どうするの...?」

「...とにかく、態勢を立て直す。ユーノ、クロノ達と連絡は取れるか?」

「ちょっと待って.....っ...、無理みたいだ。」

 ユーノが念話辺りを飛ばそうとしたが、通じない。
 しかし、それだと僕が考えている状況と少し違う。

「...どういう事だ...?リヒト、結界は?」

〈....張られていません。〉

「だとすれば、デバイスを持たないユーノの通信が妨害されるはずが...。」

 僕と葵の場合、デバイス(葵の場合は本人がだけど)に細工されて連絡できない状態になっていたけど、結界の妨害もないのにユーノの通信が繋がらないのはおかしかった。

「まさか、偽物が....いや、そうだとしても...!」

「....おかしいわね...。」

 思考を加速させ、一つの推測が浮かぶが、それはすぐに違うと切り捨てる。
 椿もおかしいと思い、そう呟いた。

「...何がおかしいの?」

「...この状況が、だ。ユーノの通信が繋がらないって事は、何かしらの妨害が働いているって事。でも、そんな事をする奴なんて偽物しかいないだろう?...けど、僕の偽物なら今の僕らに対して放置するはずがない。」

「そっか...!追いかけれるのに、追いかけてないなんて、優輝の偽物にしては甘すぎる...!」

 僕の説明にユーノも納得したようだ。

「...偽物の目的は、本当に緋雪を生き返らせる事なのか...?」

「本人はそう言ってたけど、もしかしたら...。」

 何か別の目的があるのかもしれない。そう僕らは思った。

「(第一、元々僕の心の奥底に残っていた願望...“負の感情”が形を為したんだ。...心の奥底に残っていた想いが、そこまでの執念を見せるか?仮にも僕だぞ?)」

 自分でいう事ではないが、僕はそんな“負の感情”をずっと持っているような人間ではない。...それに、緋雪に対する後悔は他ならぬ緋雪自身のメッセージで払拭されているのだ。

「(...くそっ、わからない...。)」

 所詮、相手は偽物。僕とは考えが異なるのかもしれない。
 それにしても、僕らに対するこの詰めの甘さは疑問だが...。

「....でも、だったら葵はどうして...?」

「...葵は偽物の本当の目的を知っている。だから協力している....のなら僕らに何かしらのメッセージを残すな。...僕らがこの考えに至る事ぐらい理解してるだろうし。」

 葵の事も気になる。偽物は洗脳したと言っていたが、ここまで詰めが甘いとそれすら疑わざるを得ない。
 いや、それよりも何か違和感が...。

〈....考察の所申し訳ありませんが.....ジュエルシードです。〉

「シュライン?....マジか...。」

 懐に入っていたシュラインがそう告げ、僕は頭を抱えたくなった。
 どうしてこう、連戦になるんだ...!

「場所は...?」

〈すぐ近くです。...しかし、この近くには...。〉

「...?」

 言い淀むシュラインに、何の事か聞こうとすると...。

「...優輝君?」

「那美さん!?」

 那美さんが僕らに気づいて裏手に回ってきた。傍には久遠もいる。

「っ、傷だらけ...!もしかして、また一昨日みたいに...!」

「くぅ...。」

 すぐに僕らの状態に気づき、駆け寄ってくる。
 久遠も悲しそうに鳴いている。

「っ、逃げてください!この近くに...!」

〈ダメです!結界が私たちを取り込もうと...!〉

 急いで那美さんたちを逃がそうと声をかけるが、一歩遅く、空間の割れ目のようなものに僕ら全員が吸い込まれてしまった。





「...っ...。」

「え...ここ、は...?」

 辿り着いた先は、ノイズの走った八束神社の境内。
 突然の事に那美さんは戸惑っているようだ。

「...ユーノ、二人を守ってやって。...椿、戦えるか?」

「...何とかね..。でも、長くは持たないわ。」

 二人をユーノに任せ、僕と椿で何とかしようと構える。
 霊脈の力を借りて回復している最中だったんだ。長期戦は不利...!

「ここにジュエルシードがあるって事は、相手は....。」

「...私...ね。」

 現れたのは、少し黒い瘴気を纏った椿の姿をした暴走体だった。
 やはり、僕の偽物と違って理性はないが...。

「...なんだあの瘴気...。」

「....所謂、祟りを再現したって所かしら...?」

「なるほど。椿のもしもの姿って訳か...。」

 本物の祟りではないらしく、リヒトを介して解析してみると、魔力しかなかった。

「霊力を魔力で代用...か。....待てよ...?」

 そういえば、葵の時も...。

「優輝?」

「ん、いや、なんでもない。...とにかく今は...。」

 このジュエルシードを何とかするだけ...!











 
 

 
後書き
当初適当に考えていた展開よりも早めに進んでる...。まぁ、穴だらけの構想じゃこうなると反省しながら、今回の話はここまでです。

アリシアが目覚めた事により、クロノ達とは敵対しなくなりました。クロノ達とは...ね。
そしてもしかしたら巻き込まれ属性があるかもしれない那美さん。今回も関わりますが本筋までは関わりません。久遠は分かりませんけど。 
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