聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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197部分:第二十七話 紅の毒その一
第二十七話 紅の毒その一
紅の毒
アフロディーテ達は聖域を発ち程なく中国に辿り着いた。最初に辿り着いた街は上海であった。丁度長江の入り口にある街である。
今では高層ビルが立ち並び様々な人が行き交っている。独特の形の塔があり何処か異国情緒がある。そこに聖闘士達が入ったのである。
「ここからです」
「はい」
アフロディーテは港でミスティの話を聞いていた。彼等はそれぞれの私服で港にいた。港からは船が行き交うのが見え時折汽笛が聴こえてくる。
「長江をのぼって武漢に向かいましょう」
「船でなのですね」
「そうです」
ミスティは一人スーツであるアフロディーテに対して答えるのだった。彼は淡いクリーム色のスーツに赤いタイを身に着けていた。
「それで如何でしょうか」
「いいと思います」
そしてアフロディーテにも異論はなかった。
「それで」
「そうですか。それでは今からすぐに」
「いや、ミスティ」
「それよりもだ」
しかしここで青銅の者達が彼に声をかけてきたのだった。
「もういい時間ではないのか?」
「そうだな。もうな」
「いい時間!?」
だがミスティは彼等の言葉の意味がわからずその整った、美女のそれにさえ見える眉を微かに顰めさせるのだった。今は街に並ぶ霞がかって見えるビルは見ていない。
「いい時間とは。何だ?」
「だからだ。昼ではないか」
「そうだ、昼だ」
ここでアルゴルもミスティに対して言ってきたのだった。
「昼だ、もうな」
「ふむ。そうか」
彼にも言われてやっと気付いたミスティだった。
「昼食の時間だな」
「そうだ、まずは腹ごしらえといかないか」
こうミスティに提案するアルゴルなのだった。
「まずはな。中国に着いたのだしな」
「そうだ。中国だぞ」
「蟹を食わないか?」
青銅の者達はここぞとばかりにもの欲しげに言ってきた。
「是非な。ここはな」
「蟹をだ」
「そういえば上海といえばだ」
ミスティもまたここで気付いたのだった。彼等が今いるのは中国だ。食の源とさえ言われている中国なのである。そこにいることに気付いたのだ。
「蟹だったな」
「それに上海料理だ」
「そうだろう?どうだ」
「悪くはない話じゃないか?」
「確かにな」
ミスティもそれを認めて頷いた。
「それではだ。アフロディーテ様」
「はい」
ここでまたアフロディーテに声をかけるのだった。そのうえで彼に対して問うのだ。
「それで宜しいでしょうか」
「はい、私はそれで」
彼は言うのだった。
「構いませんが」
「そうですか。それでは」
「あれっ、アフロディーテ様って」
「結構食い物に造詣があるのか?」
「そうみたいだな」
青銅の者達はここで顔を見合わせて言い合うのだった。
「どうやらな」
「そういうものには関心のない方だと思ったけれどな」
「違うみたいだな」
「ああ」
「意外と柔軟性があるっていうかな」
「だよな」
皆彼のことを何処か誤解していた。
「黄金聖闘士だからな」
「もっと。何ていうか神々しいっていうかな」
「そうした人だと思っていたけれどな」
そういうイメージがあるのだった。
「けれど黄金の方々も人間か」
「そうみたいだな」
「諸君等は何を勘違いしているのだ?」
青銅の者達の今の言葉を聞いて眉を顰めさせたのはミスティだった。
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