聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
196部分:第二十六話 薔薇の聖闘士その七
第二十六話 薔薇の聖闘士その七
「二人になり多くの犠牲を払っても」
「それは適わなかった」
勝利は収め多大な犠牲を払ってもそれでもだったのだ。彼等はその勝利は完全なものではなかったのである。決して。
「だが今度こそはだ」
「わかっておる。黄金聖闘士が十二人全員揃う時」
「うむ」
シオンは鏡の男の言葉に頷くのだった。
「聖戦が起こる」
「それこそが運命なのだからな」
「このアーレスとの戦い」
「ポセイドンも予言されているな」
「そしてあの神との戦いだ」
アーレスだけではないというのだ。
「あるのだから。だからこそ」
「運名とは残酷なものだ」
男はふとこんなことも言うのだった。
「あの者達は既に一度若い命を散らした」
「うむ」
頷くシオンの言葉が苦いものになる。
「そして今もか」
「聖闘士は全てそれが宿命だとしてもだ」
「かつてそうであり今もそうなる」
男の声も苦々しいものになっていた。
「思えば惨い話だ」
「我々だけで済めばいいことだというのにな」
「わしはもう思う存分生きた」
男はまた言ってきた。
「御主はどうだ?」
「私もだ」
シオンもそうだと言うのであった。
「二百五十年、いやな七十年はあったか」
「そうじゃな。八十一年じゃったか」
そこまで覚えていられない程の長い時間だというのである。
「思えばのう」
「長いものだった」
「そしてそれだけの時間を生きた我等が」
彼の言葉は続く。
「やらなければならないのだが」
「だが仕方がない」
彼は言うのだった。
「それが運命だ」
「運命か。そうだな」
運命と聞いてシオンは言葉をその止めるのだった。
「それが運命ならばだ」
「あの者達はその為に再びこの世に現われた」
男はこうも言うのだった。
「そしてわし等もな」
「わかった。それではだ」
「うむ」
男は今度はシオンの言葉にそのまま頷いた。
「それに従おう。そのうえで私もまた」
「闘うつもりか」
「教皇はただそこにいるわけではあるまい」
声が笑っていた。穏やかであったがそれでもそこには確かなものが備わっていた。
「かつての教皇セージ様のように」
「自らもというわけだな」
「それは私とて同じだ」
こう言うのだ。
「その時は。自ら闘おう」
「ではわしもだ」
シオンの言葉を聞いて鏡の男の声を微笑んだものになった。
「おそらくわしのところにも来るだろうからな」
「その時はか」
「うむ、闘う」
迷いなぞ微塵もない言葉であった。
「私もまた」
「相変わらずだな」
今のシオンの言葉にさらに笑う男だった。
「御前も。あの時と同じだな」
「それは御前もではないのか?」
シオンも声を微笑まさせて彼に応えた。
「そうではないのか?」
「そうかもな。それではだ」
「うむ」
「また。共に闘うとしよう」
こうシオンに告げるのだった。
「この闘いでもな」
「そうするとしよう。それではだ」
「またな」
「また会おう」
最後にこう言葉を交えさせて別れるのだった。男は鏡から姿を消した。シオンもまた暫くはその部屋に留まっていたがやがて立ち去った。部屋にはもう誰も残ってはいなかった。
第二十六話 完
2009・4・22
ページ上へ戻る