ゲート 代行者かく戦えり
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航空自衛隊の装備一覧 2
「E-2」(28機)
用途:早期警戒機
製造者:グラマン社、ノースロップ・グラマン社
乗員:5名(操縦士2名(パイロット、
コパイロット)、電子システム士官3名(右前から、レーダーオペレーター(RO)兼ウエポンシステム士官(WSO)、CIC士官(CICO、ミッションコマンダー)、航空管制士官(ACO)
全長:17.56m
全高:5.58m
動力:アリソン T56-A-427 ターボプロップ(5100馬力)
最大速度:655km/h
巡航速度:545km/h
実用上昇限度:11280m
航続距離:2854km
E-2は、アメリカ合衆国のノースロップ・グラマン社が製造している早期警戒機である。主にアメリカ海軍が航空母艦および地上基地で運用している。愛称はホークアイ。アメリカ海軍が艦上機として運用するために開発した早期警戒機。機体背面に大型の円盤型レドームを有し、
強力なレーダー・電子機器により、対空警戒・監視を行なう。乗員はパイロット2名のほか、3名のレーダー手が乗り込む。
手ごろな早期警戒機であるため、日本をはじめとした多数の国にも輸出されている。改良も継続されており、電子機器を改良・換装し、2010年代でも運用されている。特地へは運び込まれていない。
非常に特徴的な形態を持った航空機である。背面に大型の円盤型レドームを搭載している。エンジンはターボプロップエンジン2基。主翼は高翼配置で、後方へと折り畳むことができる。垂直尾翼は艦載機としての大きさの制限から4枚に分割され、全高が抑えられている。なお、方向舵はこのうちの3枚に付いているが、2重ヒンジとし利きを良くしてあり、水平尾翼も大きめの上半角が付けられている。
艦載機であるため、
着艦フックやカタパルトバーも装備している。乗員は操縦員2名のほか、オペレーター3名である。
E-2は、強力なレーダー・電子機器により、同時に250個の目標を追尾し、30の要撃行動を管制することができる。それまでのE-1では、4ー6個の目標を追尾し、2の要撃行動を管制することしかできなかったことと比べると、
これは格段の進歩であった。日本ではベレンコ中尉亡命事件(冷戦時代の1976年9月6日、ソビエト連邦軍現役将校ヴィクトル・ベレンコが、
MiG-25迎撃戦闘機で日本の函館市に着陸し、亡命を求めた事件)で低空レーダー網に盲点があることが発覚したために、
急遽1979年度よりE-2Cを調達開始、
1983年より部隊配備を開始した。
レドームの直径は7.31m、厚さは0.76mある。E-2の各型は、その強力なレーダーを用いることにより、2,460万km³の空域と38万km²以上の地表面を同時に監視することができる。レドームは、回転するレーダー・ディッシュ(いわゆるロート・ドーム)である。
レドームの直径は7.31mで、通常は1分間に6回転している。
空母の格納庫への収納を考慮して、61cmほど下げることが可能なほか、飛行中に角度を調整して揚力を発生させ、重量と空気抵抗を相殺することもできる。レーダーの使用帯域はUHF帯であり、シークラッター除去に有利なことから選定された。
当初はアナログコンピューターの処理機能が低く、稼働率も低かった。そのため、A型の生産は1967年で終了し、搭載コンピューターをアナログ型からデジタル型へ改修したB型が開発された。1971年からはC型が生産されている。C型ではエンジンが強化され、陸上低空目標捜索能力が優れたAPS-120を搭載し、胴体の冷却気取入れ口も改修されている。機首はALR-59PDS(パッシブ探知装置)を装備したことにより形状が変化しておりA/B型との相違点のひとつとなっている。
C型のレーダーや電子機器は順次改良されており、グループ0からグループ1、グループ2と分類されている。APS-120レーダーは、APS-125138(グループO)へとアップグレードされ、1989年からはさらに高能力でECMにも強いAPS-139レーダーとALR-73PDSを搭載し、
エンジンも強化されたグループI(163535以降)が18機引き渡された。1991年からは、APS-145搭載のグループ2となっている。
1994年からはグループ2の能力向上としてホークアイ2000計画が行われている。
これは、コンピューターを換装し、胴体下部にはAN/USG-3共同交戦送信処理セット(CEC能力用)用のアンテナを追加して共同交戦能力(CEC)への対応した。共同交戦能力を有している。2001年より部隊配備が開始されている。
A型で搭載されていたAN/APS-96は、機体が標準的な作戦高度(9150m:30000フィート)を飛行している場合、370km(200海里)の探知距離を発揮できた。C型グループ0で搭載されたAN/APS-120レーダーは、探知距離を460km(250海里)に延伸し、さらに目標情報処理にデジタル制御を採用、ESM装置も統合されている。これはさらに、新型のレーダー情報処理装置(ARPS)を採用したAN/APS-125、低サイド・ローブ化されたAN/APA-171アンテナを採用したAN/APS-138に発展した。
C型グループ2に搭載されたAN/APS-145は、探知距離が560kmに達し、2000個以上の目標を同時に追跡可能であり、機上管制官は最大で40機の要撃機を一度に指揮することができる。
そしてD型で搭載されるAN/APY-9では、
アンテナをアクティブ・フェイズド・アレイ(AESA)式にしている。このロートドームはL3COM社製ADS-18と呼称されており、使用周波数は従来通りのUHF帯(300MHzー3GHz)であり、この周波数を使うAESA(UHF-ESA)としては世界初のものである。
最大探知距離はAPS-145とほぼ同程度で、航空機に対して555km以上、水上目標に対して360km以上とされているが、探知高度は海面高度から100000フィート (30000 m)まで対応しており、探知可能範囲は従来と比して250%増とされている。
この性能を実現するため、APS-145では機械式走査1チャンネルのみであったのに対し、APY-9では電子式走査18チャンネルを備えている。
本機の最大の特徴は、空中戦術情報システム(ATDS)への対応にある。これは当時、海軍が艦隊配備を進めていた海軍戦術情報システム(NTDS)の空母航空団版であり、本機はATDSの中核的ユニットとして計画された。E-2C グループ0においては、リットン社製OL-77コンピュータ・システム(L-304コンピュータ×2基)を中核として、3名の電子システム士官それぞれにAPA-172コンソールが配置されている。L-304コンピュータは、同時に600個の目標情報を処理することができる。
また、グループ1においては、処理できる目標数が倍増したCP-1469/Aコンピュータによって更新された。
当時、空母航空団においては、水上艦および航空機との要撃管制用2-wayデータ・リンクとしてリンク 4が運用されており、本機においても、
作戦機に対する要撃管制用として運用されている。また、
これに加えて、本機はリンク11にも対応しており、NTDS対応の水上艦艇との間で共通戦術状況図を生成することができる。これによって本機は、搭載するレーダーのほか、艦隊の各艦が搭載する対空レーダーの情報を利用して要撃管制を行えるようになった。
「E-767」(8機)
用途:警戒監視・情報収集・指揮管制
分類:早期警戒管制機(AWACS)
製造者:ボーイング社
乗員:操縦士2名、機器操作員19名
全長:48.51m
全高:15.85m
動力:GE CF6-80C2B6FAターボファン
最大速度:850km/h以上
巡航速度:742km/h
実用上昇限度:11000m-13000m
連続警戒滞空時間(進出半径)1000nm:9.25時間
E-767は、アメリカ合衆国の航空機メーカー、ボーイング社が開発した早期警戒管制機(AWACS)である。
愛称は無いが、アメリカ軍人からは「J-WACS」(ジェイワックス)と呼ばれている。ボーイング767(アメリカ合衆国のボーイング社によって生産されている中型双発旅客機)を開発母機とした初の軍用機で、同機にE-3 セントリーのシステムを移植する形で開発された。
日本が早期警戒管制機(AWACS)の導入を決定した時点でE-3の製造母体であるボーイング707は既に製造終息(すなわち生産設備破棄)しており、
よってE-3も新造不可能であった。代替としてボーイング社は日本に対しボーイング767を母機としたE-3後継機の「新規開発着手」を提案し受注した。以降、発注した国が製造国である米国も含め存在しないため本機を運用しているのは航空自衛隊のみとなっている。
開発当初、日本のみならず、韓国、台湾、オーストラリアの各国空軍もE-767に大きな関心を寄せ同機導入を前向きに検討していたが、1997年に発生したアジア通貨危機の影響で導入は見送られた。その後オーストラリア空軍と韓国空軍はより小型のE-737を採用することにしたため、
現在ではE-767を保有しているのは日本のみであるが、ボーイング社はほかにアメリカ空軍からの受注を見込んでおり、
20機ほどの需要があるとしている。航空自衛隊が初めて導入した早期警戒管制機でもあり、E-767と主力のF-15J/DJ戦闘機を組み合わせて運用することで、これまでに無い強力な防空体制を確立する事が出来る様になった。
E-767の特徴について次に述べる。機体は旅客機をベースにしており、機体内部の機器群は機体前方に集められているため、機体後方は乗員の休憩又は長時間ミッションのための交代要員の控え室として使用でき、ギャレーやラバトリー(トイレ)もある。なお、
ラバトリーは操縦席後方左舷にも設置されており、計2カ所となっている。
胴体と翼はベース機とほぼ同じであるが、胴体側面の窓が全て塞がれている。
これは、キャビン内部は電子機器類で占められているため旅客機のような窓は必要ないことと、自身のレーダーをはじめとする各種の無線設備が発射する強烈な電磁波から電子機器と乗員を防護するためである。また、
胴体上部に円盤型の直径9.14m、厚さ1.83mのロートドームが装備されている点が大きな特徴である。ボーイングは当初、ベントラルフィンを装備することを検討していたが、ロートドームの装備による空力変化は軽微と判断され、装備されなかった。
胴体の長軸に沿って胴体上下に無数のUHF及びVHF通信用ブレードアンテナが配置されている。また、
両主翼端に機体後方へ突き出した棒状のHF通信用プローブアンテナが配置されている。他には、JTIDS(統合戦術情報伝達システム)アンテナが機首レドーム内と胴体尾部上部にコブの様に設置されているフェアリング内にある。なお、E-3 セントリーは片翼に2基ずつ、両翼で4発のエンジンを搭載するが、E-767はベース機と同じく片翼に1基ずつ、両翼で2基である。
エンジンは、ベース機にも搭載されるゼネラル・エレクトリックの高バイパス比ターボファンエンジンCF6-C80C2の仕様変更モデルCF6-C80C2B6FAが採用された。主な変更点は高出力のレーダーと機体内部の機器群の電力をまかなうために、各エンジンの発電機が通常は90kVA・1基から150kVA・2基に換装されている。
ロートドームは、
警戒監視中では毎分6回転(10秒/回転、毎秒36度)で回転しており、360度全周にわたってレーダーの電波を放射している。
離着陸時など警戒監視中以外では、ロートドームの基部にある軸受けにオイルを循環させるために毎分1/4回転(4分/回転、毎秒1.5度)で回転している。このときは電波を放射しない。
ロートドーム内にはAN/APY-2のレーダー・アンテナとそれと背中合わせにMk.XII敵味方識別装置(IFF)のアンテナが納められている。したがって、レーダー・アンテナからの電波とIFFの質問信号はちょうど180度反対の方向に放射されることになる。また、レーダー・アンテナはフェイズド・アレイ方式であり、機体の傾きを検出して走査を自動的に補正する機能を備えている。
レーダーシステムはE-3最終型と同様のウェスティングハウスAN/APY-2が搭載されている。これは他機の方位、距離、高度を同時に測定できる3次元レーダーで、
同社のAN/APY-1と比べて洋上監視能力が強化されている。AN/APY-1及び-2はともにパルス・ドップラー・レーダーであり、前出の探知諸元のほかに速度も測定できる。
また、AN/APY-2は自由に設定を変更できるマルチ・モード・レーダーであり、
他のレーダーではその能力を制限されてしまうグラウンド・クラッター及びシー・クラッターを排除し、空中及び水上の目標を分離できる。
クラッターとは、
レーダーから送り出された電波が地表面や海水面に反射してしまうこと。通常のレーダーでは、上空から低空を飛行している航空機を監視しようとしても、航空機からの反射波が大量のクラッターに埋もれてしまう。特に波の高い海面のシー・クラッターは深刻である。
E-3の初期型に搭載されていたAN/APY-1も空対空監視ではAN/APY-2と同等の能力を有しているが、
洋上監視に強いAN/APY-2は国土が海で囲まれている航空自衛隊にとって大変好都合である。国内における整備は東芝が主担当となっている。レーダーで獲得した情報はE-3ブロック30/35準拠CC-2E中央コンピューターによって処理され、
14台ある状況表示コンソールに表示される。他に敵味方識別装置、戦術データ・リンク装置、航法装置が設置されている。なお、将来のアップデートにも対応できるように、機内は余裕を持たせて機器群を配置し、機体後部の(約6800kg)もあるロートドームとのバランスをとるために機体前方に集められている。
警戒監視が主任務であるため固定武装はなく、ハードポイントが無いため外部兵装も装備できない。
フレアやチャフなどデコイを放出するディスペンサーは外部から確認できず装備していないとされる。将来的に空中給油に対応させるため、
製造段階で配管などが準備されており、
プローブの取り付けなど簡単な改修によって空中給油が可能となる。当然だが戦闘機よりも大型なので、特地へは持ち込まない予定だったが、黒王軍への脅威が高まると2機が向こうに運ばれ、偵察任務・情報収集任務に就くようになった。
「RQ-4」(16機:最終的に90機配備予定)
用途:無人航空機(UAV)
分類:偵察機
製造者:ノースロップ・グラマン社
全長:13.52m(野球のピッチャー・キャッチャー間の3分の2程度の長さ)
全高:4.64m
エンジン:ロールスロイス製QE3007Hターボファン
巡航速度:635 km/h
実用上昇限度:20000m
RQ-4グローバルホークは、ノースロップ・グラマン社によって開発された無人航空機。アメリカ空軍などによって使用されており、イラク戦争で実戦に投入されている。MQ-1プレデターなどの無人航空機とは異なり、攻撃能力を持たない純粋な偵察機である。
アメリカ軍の各統合軍司令部に偵察情報をもたらす長時間飛行プラットフォームを目指して開発された無人偵察機であり、アフガンやイラクなど中東でのテロとの戦いで多くの実績を上げている。陸上自衛隊は中国や韓国など領土問題を抱える国々への国土防衛の観点から、国境監視用の機材としてこれを採用しており、
最終的には78機導入する予定である。
自衛隊特地派遣部隊が、現地での特殊作戦などで安全に偵察任務を行う際に使用している。高高度を長時間飛行するため、全長の3倍近い全幅とアスペクト比の極めて大きなテーパー翼を持った、グライダーのような外形をしている。胴体後部にターボファンエンジン単発を装備し、
機首上部の盛り上がった部分には衛星通信用のアンテナが収められている。翼は炭素繊維複合材でできている。
有人機の場合、緊急時の乗員の脱出のための射出装置を上部方向に設置する必要があり、脱出時に乗員を吸い込む事を防ぐために上部にエンジンの吸気孔を設置する事ができず、上部がデッドスペースになる。これに対して、無人機である本機は、吸気孔を上部に設置可能で、下部を地上探査のために有効に活用する事が可能となっている。
RQ-4は、機内に合成開口レーダー(SAR)、電子光学/赤外線(EO/IR)センサーを搭載し、各センサーは広域に渡っての捜索・監視活動が可能で、高解像度のスポット・モードを使用することもできる。
合成開口レーダーはSARストリップ・モードで1m、SARスポット・モードでは30.5cmの解像度を有する。
地上移動目標識別(GMTI)モードでは、20-200kmの範囲内を最低4ktの速度で飛行し、移動目標の識別を行う能力を有している。
EO/IRセンサーは、
1mの分解能で約4万平方nmに渡っての捜索・監視活動が可能で、0.3mの分解能で最大1900のスポット画像を取得する能力を備えている。目標の探知精度は、半数必中界(CEP)が20mとされている。ブロック30では画像偵察に加えてSIGINT任務に使用する事も可能になり、最新型のブロック40はMP-RTIP(マルチプラットフォーム・レーダー技術挿入計画)レーダーを搭載した地上監視/指揮用のモデルとなっている。
「90式空対空誘導弾」
種類:短距離空対空ミサイル
設計:三菱重工業
ミサイル全長:3.1m
ミサイル全幅:64cm
ミサイル重量:91kg
弾頭:HE破片効果指向性弾頭(15kg)
信管:アクティブ・レーザー近接信管
射程:15km
推進方式:固体燃料ロケット
誘導方式:二波長光波ホーミング(IR/UVH)
飛翔速度:M3
90式空対空誘導弾は、日本が開発した短距離空対空ミサイル。開発・量産主契約会社は三菱重工業。
AIM-9Lサイドワインダーの後継として開発され、より敏感な温度差の検知での目標の捕捉や追跡能力の向上、ミサイル本体の飛翔運動性の向上が図られている。
誘導方式はパッシブ二波長光波(赤外線・紫外線)ホーミング、信管はアクティブ・レーザー近接信管。前部には、ミサイルの運動性を向上させる大きい切り欠きのカナードが装備され、末端に安定翼がある。
日本電気が開発したシーカーが用いられており、ノイズ除去回路と組み合わされることで、光波妨害技術(IRCCM)に対する抗堪性が非常に高いと言われている。
加えて、シーカーの首振り角度が大きく、そのためミサイル先端のドーム部がサイドワインダーより大きい。オフボアサイト能力も高く、
ミサイルの制御には、従来のホットガスを用いたガスサーボ方式と違って反応が早くキメ細かな制御が可能なダイレクトドライブ式電動サーボアクチュエータを採用している。
また、バンク・トゥ・ターン技術を導入し、シーカーも首振り角も拡大して2色赤外線としたことで高い命中率を発揮している。近接信管はシーカーと同様日本電気製でレーザーを用いた光学式である。
弾頭には効率的に大きな攻撃力を与えることが可能な指向性弾頭が採用されている。そのため、総合的な能力はAIM-9Lを上回るとされる。
前のミサイルがコストが最大の課題で採用されなかったことから、本ミサイルでは開発経費を削減する努力が行われた。
しかし、価格は高くサイドワインダーの倍近い価格となっている。生産は後継ミサイルである04式空対空誘導弾にシフトされている。また、
本ミサイルを改造したカメラポッドも製作されている。
「99式空対空誘導弾」
種類:視界外射程ミサイル
設計:技術研究本部
製造:三菱電機
ミサイル全長:366.7cm
ミサイル全幅:77cm
ミサイル重量:220kg
弾頭:指向性爆薬弾頭
射程:120km
推進方式:固体燃料ロケット(IHIエアロスペース製)
誘導方式:中途航程=慣性・指令誘導。終末航程=ARH
飛翔速度:M4~5
99式空対空誘導弾は、日本の航空自衛隊が装備する中距離空対空ミサイルである。主契約者は三菱電機。アクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)誘導と慣性・指令誘導を併用。
1980年代から1990年代にかけて、アメリカではセミアクティブ誘導であるAIM-7 スパローの後継として、AIM-120 AMRAAMを開発・配備しようとしていた。AMRAAMはアクティブレーダー誘導で先代のスパローより軽く、有効射程・運動性ともに高い能力を持つ優れたミサイルであった。
しかし、その開発当初、AMRAAMの販売先はアメリカ軍とNATO各国軍のみに限定されるのではないか、
との懸念を日本は抱いていた(実際には輸出された)。そのために防衛庁(現:防衛省)は、AMRAAMと同等以上の能力を持つ国産ミサイル、
AAM-4の開発を決めた。1985年頃から技術研究は行われていたが、1994年から本格的に開発が開始された。これは1999年に99式空対空誘導弾の名で採用された。
AAM-4の特徴として指令送信機、シーカー、近接信管などに特殊な変調方式を採用していることがあげられる。これによりAAM-4は敵のレーダー・ミサイル警報装置に探知されることがなく攻撃可能である。この変調方式はFCSレーダーを使用した指令送信が不可能なためAAM-4運用のためにはJ/ARG-1と呼ばれる指令誘導装置が必要である。
また、送信機に旧来用いられてきた進行波管(TWT)にかわり小型高出力かつ安価なガリウム砒素半導体FETを用いたことによりロックオン性能と対ECM・クラッター性能が向上し、横行目標にも対応可能となっている。更に、
慣性誘導装置に小型で応答特性の良好な光ファイバージャイロを搭載したことにより誘導性能が高くなっている。もう一つの特徴としては指向性破片弾頭の装備があげられる。この方式では、近接信管が内蔵レーダーにより敵機の方向を正確に把握し集中的に攻撃を仕掛けるので、ただ破片をばら撒くだけであった従来の近接信管と比べるとより効率的に大きな攻撃力を与えることが可能である。
アクティブレーダー誘導と指令・慣性誘導を併用し、指令・慣性誘導の必要ない射程であれば撃ち放し能力を持ち、ミサイルを発射後に誘導することも可能。
また、AIM-120が対航空機戦に主眼を置くため、近接信管で弾頭を炸裂させればよいのに対し、航空自衛隊が求めるAAM-4では、対艦・対地巡航ミサイルの迎撃も重要視している。
このため、射程延伸のために燃焼パターンを2段階で変更できる2段推進方式を採用し、AIM-120と比べ弾体も大型となっている。これにより射程はAIM-7に比べて2倍近く延びていると推測されている。また、AAM-4は攻撃力増強のため炸薬量が増やされているとされている。
前述の特長によりECCM(電波妨害排除)能力・多目標同時射撃能力などが、
AIM-120を上回っているようで防衛省の平成13年度の政策評価書によると、AIM-120Bと比べても、スタンドオフ・レンジ能力では1割以上上回っているという。優秀な民生技術を大幅に取り入れて性能を向上させたのと同時にコストダウンしたらしく、ライセンス生産したAIM-7に比べると安い。
AAM-4は重いため1機あたりに搭載できる数が限られてしまうことや命中精度向上のため機体-ミサイル間の通信量が多くなり機体のセントラルコンピュータやデータバスに大きな負担を掛けることなどが問題点とされている。また、AAM-4はAIM-120と比較し1インチ太く、大型の制御翼(AMRAAMの全幅が62.7cmなのに対しAAM-4は77cm)を使用しているためF-4EJの後継機であるF-35への搭載において、
問題が発生する可能性がある。
技術研究本部で2002年(平成14年)度から2008年度まで、
横行目標対処能力の向上による攻撃範囲の拡大、巡航ミサイル対処能力の向上、
スタンドオフ・レンジと自律誘導距離の延伸による母機の残存性の向上、ECCM能力の向上による対妨害性の向上、及び数百万円の価格低減を目的に、99式空対空誘導弾(改)の開発が行われた。
AAM-4Bはシーカーをアクティブフェイズドアレイに変更し、
新方式の信号処理機能を追加したことにより、AAM-4と比べてスタンドオフ・レンジで1.2倍、自律誘導距離で1.4倍、AIM-120C-7と比べてスタンドオフ・レンジで僅かに、自律誘導距離で1.4倍の能力がある。また、レールランチャーからの発射にも対応した。
「04式空対空誘導弾」
種類:短距離空対空ミサイル
設計:三菱重工業
ミサイル全長:3.105m
ミサイル全幅:44cm
ミサイル重量:95kg
弾頭:指向性弾頭
信管:アクティブ・レーザー近接信管
射程:40km
推進方式:固体燃料ロケット
誘導方式:中途航程=INS+COLOS。終末航程=赤外線画像(IIR)
飛翔速度:M3
04式空対空誘導弾は、日本の航空自衛隊が装備する短距離空対空ミサイル。開発名称はAAM-5。開発・量産主契約会社は三菱重工業。90式空対空誘導弾(AAM-3)の後継として1991年より開発が開始され、
2004年(平成16)に制式承認。90式空対空誘導弾と異なり、
カナードは設けられておらず、飛行制御は、TVC(推力偏向制御)のロケットモーターとミサイル尾部に装備された全遊動式の飛翔制御翼で行い、高い機動力を確保している。また、
ミサイル中央部には細長いストレーキが設けられている。
NEC製シーカーも改良されており、赤外線シーカーの3軸ジンバルによる視野角の増大の他、赤外線フォーカル・プレーン・アレイ方式の多素子シーカーによる赤外線画像の利用も行う。赤外線画像による判別で、フレアなどの赤外線源妨害手段に対抗する。また、
中途航程においては光ファイバジャイロスコープ式の慣性誘導(INS)も導入していることから、ヘルメット装着式照準器と組合わせることで発射後ロックオン(LOAL)も可能である。終末航程での誘導方式は赤外線画像(IIR)。世代としてはAIM-9X、IRIS-Tなどと同じ世代に属する。
2010年(平成22年)には04式空対空誘導弾(改)の開発のための事前の事業評価が行なわれ、2011年度予算で予算が承認され開発が始まっている。04式空対空誘導弾(改)では空中給油機の戦力化に伴う戦闘機の空中哨戒の長時間化へ対応するためにジュール=トムソン効果からスターリングエンジンによるスターリング冷凍機に変更して、ガスタンクを必要とせず電力供給のみでミサイルのシーカー部の冷却持続時間の延長が図られており、
2波長赤外線センサの採用による対赤外線妨害対処能力(IRCCM)と背景識別能力の向上も図られている。その他にシーカーのジンバルが3軸から2軸に変更されてる。
「AIM-9L/M サイドワインダー」
種類:短距離空対空ミサイル
設計:レイセオン社
ミサイル全長:302cm
ミサイル全幅:44.45cm
ミサイル重量:85.3kg
弾頭:HE破片効果
射程:AIM-9M(20km)
推進方式:Mk.36固体燃料ロケット
誘導方式・中途航程:INS+COLOS 終末航程:赤外線画像(IIR)
飛翔速度:M2.5
サイドワインダーは、アメリカ合衆国が開発した短距離空対空ミサイル。アメリカ軍での制式符号はAIM-9。発射すると独特の蛇行した軌跡を描きながら飛行する様子と、赤外線を探知して攻撃することから、ヨコバイガラガラヘビにちなんで名づけられた。1940年代末から、フィルコ社、ジェネラル・エレクトリック社、レイセオン社によって開発が開始された。後に生産はレイセオンが一括して行っており、現在でもアメリカ軍や西側諸国で多く使用されている。日本の航空自衛隊では、創設当初にF-86と同時に導入した。AIM-9Lの採用後、後継ミサイルとしてAAM-3やAAM-5も採用している。
誘導方式は基本的には赤外線誘導であるが、AIM-9Cなどの一部の型ではセミアクティブ・レーダー・ホーミングを用いている。また、空対空型の他にも、地対空、艦対空という派生型も作られた。AIM-9L型以前はエンジンの排気熱を捉え、誘導する方式であったため、エンジン排気を捉えられる敵後方からのロックオンしかできなかった。
また、単純に高温の目標に対して誘導されるため、フレアを撒いたり太陽に向かって飛行することによって回避される可能性が高かった。
しかし、L型以降は空気の断熱圧縮による熱を捉えられるようになったため、全方位からのロックオンが可能となり、フレアなどによって回避される可能性も下がった。
空対空ミサイルが初めて実戦で発射され、撃墜を記録したのは1958年9月24日金門馬祖周辺の台湾海峡において、中国の人民解放軍と台湾(中華民国)の台湾空軍との交戦(金門砲戦)とされている。
この戦闘において、
台湾空軍はアメリカから供与されたAIM-9 サイドワインダーを装備したF-86F戦闘機をもって人民解放軍のMiG-17F(またはJ-5)と交戦、11機を撃墜した。
本ミサイルの開発は、1945年、海軍兵器実験ステーション(NOTS)のウィリアム・マクリーン博士によって着手され、
1950年には正式な計画に格上げされた。
マクリーン博士は、HVARの弾体をもとに、硫化鉛(PbS)赤外線センサによる赤外線ホーミング誘導装置を搭載することで、比較的簡素な空対空ミサイルを開発することを狙っていた。
マクリーン博士はまた、このミサイルに「ローレロン」(rolleron)と呼ばれる新しい工夫を盛り込むこととした。
これは、固定式の後部安定翼の翼端に設けられた回転体とその動翼機構であり、
気流によって回転体が高速回転した状態でミサイルがロールするとその動きに応じて動翼がジャイロ効果により動き、ロールを修正してミサイルの姿勢を保持するように働く。
現在航空自衛隊が採用しているのは第三世代のAIM-9L/M/S/Rで、これは1971年にアメリカ空軍とアメリカ海軍が、海軍の第2世代サイドワインダーの最終発達型であるAIM-9Hをもとに、第3世代のサイドワインダーを共同開発することに合意した。これによって開発されたのがAIM-9Lである。開発にあたって最重要とされたのが、全方位交戦能力(ALASCA)の獲得をはじめとする、交戦可能域の増大であり、このために重要なのが目標と正面から対向した状態(ヘッドオン状態)での交戦能力であった。
従来用いられていた赤外線センサでは、ジェット機機体後部のジェットエンジンからの排気口から放射される短波長赤外線(SWIR)を捉えることしかできず、このために目標の後方象限からでなければ交戦できなかった。しかし、この時期に実用化されはじめた中波長赤外線(MWIR)に対応できる赤外線センサであれば、排気口から排出されたジェット排気から放射される赤外線を検知でき、必ずしも後方象限に拘る必要はなくなるものと期待された。
この目的のため、第3世代のサイドワインダーでは、赤外線センサの素子として、アンチモン化インジウム(InSb)フォトダイオードを採用している。冷却方式はAIM-9Hと同様にジュール=トムソン効果を利用したものだが、冷媒はアルゴンに変更された。この赤外線センサを中核とした誘導・制御ユニットはDSQ-29と称されている。
また、弾頭としては、より強力な炸薬量9.4kgのWDU-17 ABF(環状爆風破片弾頭)が採用されたほか、DSU-15/B AOTD(アクティブ光学目標探知装置)によるレーザー近接信管により、危害半径はさらに拡大していた。推進装置は、AIM-9Hと同じMk.36シリーズの固体ロケットで、改良型のMod.8-11を採用している。
生産は1978年から開始され、アメリカのフィルコ・フォード社、レイセオン社の他に、日本の三菱重工業、ドイツのBGT社、スウェーデンのサーブ社でも行われて、合計16000発以上が生産された。アメリカ生産分の一部はフォークランド紛争でイギリス軍に提供され、86%という高い命中率を記録している。AIM-9Lを基に低排煙型のロケット・モーターとIRCCM能力を強化させたWGU-4/B誘導装置を導入した発展型がAIM-9Mである。生産は1982年から開始され、7000発以上が生産された。
「AIM-120B/C-5」
種類:視程外射程空対空ミサイル
設計:ヒューズ・ミサイル・システムズ(現 レイセオン)
ミサイル全長:3.65m
ミサイル全幅:53.32cm
ミサイル重量:152kg
射程:50km
推進方式:固体燃料ロケット
誘導方式:(中途航程)INS+COLOS (終末航程)ARH
飛翔速度:M4
AIM-120 AMRAAMは、
アメリカ合衆国のヒューズ社が開発した中距離空対空ミサイルである。ヒューズ・ミサイル・システムズ社はレイセオン社に吸収合併されたため、AMRAAMはレイセオン社が生産している。航空自衛隊は派生型として、AIM-120B/C-5を試験的に導入されたが本格的な導入はされず、AIM-7F/Mの後継としては国産の99式空対空誘導弾(AAM-4)が採用された。しかし、第4次F-Xで選定されたF-35戦闘機は、胴体内ウエポンベイのサイズが合わないなどの問題があるので、一応採用している。AMRAAMは1975年からスパローの後継として開発が開始された。
1994年には誘導装置に改良がなされたAIM-120B(AIM-120AのWGU-16/Bに代えて、WGU-41/B誘導装置を用いた。WGU-41/Bは、EPROMによってプログラム変更を可能とし、プロセッサーもデジタル化された)が、1996年にはF-22などのウェポンベイに収まるようAIM-120Bの前方のフィンを小型化したAIM-120C(誘導装置にWGU-44/Bを用い、
F-22の兵器倉に3発収容可能とするために中央フィンと後部制御翼の先端を除いて小型化した。C-5は推進ロケットモーターの大型化、誘導部の小型化、対電子対抗手段(ECCM)をアップグレード)が開発された。
AIM-120Cはフィンを小型化した以外はAIM-120Bと同様であり、本来ではF-15やF-16などの非ステルス機にはAIM-120Bが使用され、F-22やF-35などのステルス機にはAIM-120Cが使用される予定であったが、ステルス機の配備・開発の遅れもあり、現在では非ステルス機でもAIM-120Cが使用されている。また、現在は、目標情報のアップ・リンクに対応し、距離を延長する等の改良を施したAIM-120Dが開発され、実射試験を行っている。
本ミサイルの主な特徴は「撃ちっ放し能力」(fire and forget)と「同時多目標攻撃能力」である。
従来の中距離空対空ミサイルの主役であった旧型のスパロー・ミサイルは、セミアクティブ・レーダー・ホーミング(SARH)誘導方式であった。この方式は、
飛翔時の誘導にミサイル外部の助けが必要であり、発射母機のレーダーから目標に対してレーダー波を放射し続け、ミサイルは目標からの反射波をレーダー・シーカーで捉える事で追尾を行い誘導される。
発射母機はミサイルの発射後も敵に向けてレーダー波を放射し続け、ミサイルが外れるか衝突するまでその状態を維持しておく必要があった。従って自機のミサイルが飛翔中は、
基本的に発射母機は回避行動が行えず、
発射母機が誘導を継続する限り敵からの攻撃に対して脆弱になる。ミサイルの誘導も1発ずつしかできなかった。
AMRAAMは、レーダーに放射器まで搭載する事で、アクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)方式、
すなわちミサイル自身のレーダー放射による自律誘導を可能にした。これにより発射母機はミサイルを放った段階で回避行動が行える「撃ちっぱなし能力」が備わり、航空機の生存性が向上する。しかし、細いミサイルの弾頭部に内蔵されたレーダーはサイズの制約から性能が限られており、遠距離目標はレーダーの微弱な反射波が検出できないことで誘導不可能である。
そのままでは実用上は短射程となるため、AMRAAMではアクティブ・レーダー・ホーミング方式に加え他の誘導方法も用いる事でその欠点を補った。すなわち、
ミサイルを発射後、
レーダー・シーカーが目標を捉える距離までは他の誘導方式で中間誘導を行い、
目標接近後にアクティブ・レーダー・ホーミング方式で最後まで誘導する(終端誘導)というものである。
AMRAAMでは、目標接近までの中間誘導を慣性誘導と指令誘導(COLOS)で行う。
目標接近後はアクティブ・レーダー・ホーミングで終端誘導を行う。発射母機は終端誘導が開始された時点で回避行動に移る事ができる。
短距離の発射では、
中間誘導を行わずに発射前からミサイルのレーダーで終端誘導に入ることで、
発射母機は発射直後に行動の自由を得ることができる。
中間誘導時に発射母機が攻撃を受けた場合は指令誘導を中止して回避運動を取ることも可能であり、
ミサイルは慣性誘導によって定められた方位角で飛翔を続け中間誘導を継続することでアクティブ・レーダーの覆域内(ボアサイト内)に目標を捉えることを期待する。アクティブレーダーに検知されるとそのまま終末誘導へと切り替えて目標の撃墜を図る。
ただし、このような慣性誘導だけの中間誘導では命中率が低下する。これらの誘導システムにより、
AMRAAMは発射母機の火器管制システム(FCS)にもよるが複数目標に対する同時攻撃を行うことも可能とした。
また、AMRAAMはECCM能力(対電子妨害対抗能力)にも優れており、仮に発射後ジャミング(電波妨害)を受けた場合、
その電波の発信源へと誘導されるようになっている。また、
チャフによる妨害にも強いとされる。
他には、AMRAAMはAIM-7 スパローを超える射程を持ちながらも、弾体のサイズは一回り小型となり、重量も軽量化されている。そのため
・機種によってはスパロー1発しか装備できなかったところに2発装備することが可能となり、ミサイルの搭載数が増える。
・従来はサイズや重量の関係で短距離空対空ミサイルであるAIM-9 サイドワインダーしか搭載できなかった場所にも搭載できるようになる。
等の特長を持つ。
特に後者については、これまでは対地攻撃などを行う際の自衛用のミサイルは短距離用のものしかなく頼りなかったのに対して、中距離ミサイルを装備できるようになり生存性を高めることとなった。
「93式空対艦誘導弾/(B)」
種類:空対艦ミサイル
設計:技術研究本部・三菱重工業
ミサイル全長:4m
ミサイル全幅:1.2m
ミサイル重量:530kg
弾頭:HE(榴弾)
射程:180km
推進方式:TJM2 ターボジェットエンジン
誘導方式:慣性誘導(中間)・赤外線イメージ誘導(終末)・B型では中間誘導にGPSも使用
飛翔速度:1500km/h
93式空対艦誘導弾は、日本が開発・配備した空対艦ミサイル(対艦誘導弾)別称はASM-2、1993年から航空自衛隊に配備されている。日本はその四周を海に囲まれている地勢から、
防衛兵器としての対艦ミサイルの開発に熱心である。1980年代には増勢するソビエト太平洋艦隊の着上陸能力に対処するために80式空対艦誘導弾(ASM-1)を独自開発し実戦配備した。
ASM-2は、ASM-1を補完するために新たに開発された国産空対艦ミサイルである。ASM-1と異なり、終端誘導は赤外線イメージ誘導を用いている。航空自衛隊では、誘導方式が異なる2種のミサイルを保有・運用することが対妨害性確保に有用と判断している。
開発は防衛庁(現 防衛省)の技術研究本部と三菱重工業が中心となって行われた。ASM-1からのファミリー開発であり、
88式地対艦誘導弾(SSM-1)開発の成果も取り入れられている。開発経費は約118億円。開発の重点は、
長射程化と敵の妨害への対処能力の強化、重要目標へ命中させるための目標選択アルゴリズムの強化である。ASM-1ではエンジンがロケットであったが、射程の延伸を図るために、
ASM-2では、エンジンがSSM-1で実用化されたTJM2ターボジェットエンジンに変更された。
空中発射方式のため、ロケットブースターは有さないが、
カートリッジスタータが設けられている。飛翔の中間段階までは慣性誘導が行われるが、最終段階では赤外線画像イメージによる誘導が行われる。フレア判定などの対妨害能力も有する。
赤外線イメージ誘導は、気象条件の影響を受けやすいが、
電波妨害の影響を受けないほか、ASM-2では艦の種別判別による目標選択が可能となっている。また、
艦船形状判定より、
ミサイル命中点を指定することができ、
艦橋への直撃など、より撃破効率を高めることができる。
ミサイルは発射後、
シースキマー飛翔を行う。また、目標再捜索モードやBOL発射モード(方位のみの設定による発射)など、各種捜索モードも備えている。
弾頭部もASM-1より改良され、遅延信管を用い、LOVA性に優れたPBX系炸薬に焼夷材を加えたものとなっている。
外形はASM-1とほぼ同様であり、魚雷型の胴体中央部に主翼となる小型の4枚のフィンがついており、
胴体後部に4枚の操舵翼がある。これら翼部品には、電波吸収材を用いたステルス翼も用意されている。また、エンジンのジェット化により、
下面に空気取り入れ口が追加されている。なお、中間誘導用にGPS誘導方式を追加して誘導精度を高めた改良型の93式空対艦誘導弾(B)(ASM-2B)の開発が2000年から2002年にかけて行われ、調達がなされている。
「JM117」
種類:航空投下汎用爆弾
重量:340kg
全長:2.06-2.16m
炸薬量:183Kg
弾頭:トリトナール
M117は、アメリカ合衆国の軍隊で用いられた航空機搭載爆弾(汎用爆弾)である。この兵器の使用年代は1950年代初期、
朝鮮戦争まで戻る。
名目上の重量は340kgだったものの、この爆弾の実質的な重量は信管と減速用の追加装備に左右され、
およそ372kgほどだった。
爆弾の炸薬量は通常、183kgのマイノール2もしくはトリトナール(トリニトロトルエン80%にアルミニウム粉20%を混合した混合爆薬)である。この爆弾は、中高度・高高度での投下のために低抵抗尾翼を装着することもできた
1950年代-1970年代初期までM117爆弾は標準的な航空機用の兵装であり、M117爆弾のシリーズは広くベトナム戦争中に用いられた。また、B-52G爆撃機は、砂漠の嵐(湾岸戦争中に多国籍軍によって行われたイラク軍攻撃作戦)作戦中に44600発のM117爆弾とM117R爆弾を投下した。
現代では本爆弾はB-52爆撃機のみに用いられ、現在の戦術航空機はMk 80シリーズの爆弾、特に重量227kgのMk 82爆弾や重量904kgのMk 84爆弾を用いる傾向がある。また、それらと同等の誘導兵器が用いられる。航空自衛隊では後述の91式爆弾用誘導装置を取り付けて誘導爆弾として活用している。
91式爆弾用誘導装置は、通常爆弾に取付け、誘導機能を付加する装置。1985年度から技術研究本部が航空幕僚監部からの要求に基づいて開発を始め、Mk.82 500ポンド爆弾用が1988年度に、JM117 750ポンド爆弾用は1989年度に試験を完了した。
Mk.82 500ポンド爆弾用の物がI型、340kg普通爆弾(JM-117)用の物がII型と呼ばれる。対艦用誘導装置であり、赤外線ホーミング誘導方式を採用しているため、
ファイア・アンド・フォーゲット能力を備えており、母機による継続誘導を必要としない。
「Mk.82」
種類:低抵抗通常爆弾
開発・設計:ダグラス・エアクラフト社(エド・ハイネマン)
重量:500ポンド (227 kg)
全長:87.4インチ (2220 mm)
炸薬量:192ポンド (87 kg)
弾頭:トリトナール
Mk.82は、ダグラス・エアクラフト社が開発した航空機搭載爆弾。アメリカ軍が制式化しているMk.80シリーズの低抵抗通常爆弾(LDGP)としては2番目に小さく、
重量500ポンド(227kg)クラスのモデルとなる。単体で無誘導爆弾として投下することもできるが、GPS誘導のJDAMキットなどを装着することで誘導爆弾としても用いることができる。
現在運用されている通常の500ポンド爆弾(227kg)としては最小であり、世界で最も一般的な空中投下型の兵器である。
Mk.82の重量は500ポンドとされているが、実際にはその派生型の形態によって510-570ポンドまでの幅があると考えられる。この爆弾は、
流線型の金属ケースに192ポンド(89kg)のトリトナール高性能炸薬が封入されている。
Mk.82は、単体で無誘導爆弾として投下することもできるが、
目的に応じて安定翼や減速装置、信管や各種の誘導キットを装着することで、
誘導爆弾としても用いることができる。
使用される主な誘導爆弾化キットと、装着後の誘導爆弾としての名称は下記の通りとなる。
・ペイブウェイII(レーザー誘導)=GBU-12
・JDAM(GPS誘導)=GBU-38
・LJDAM(レーザー/GPS併用誘導)=GBU-54
・91式爆弾用誘導装置(赤外線ホーミング誘導)
低空侵入爆撃において、投下母機が自分の投下した爆弾による爆風や破片効果で損傷をこうむるのは容易に起こり得る。
なぜなら、航空機と爆弾が目標付近に同時に到達するからである。戦闘においては、Mk.82通常爆弾は、尾部に高抵抗フィンを装備することができる。これは、
その形状から"スネークアイ"と呼ばれる。
この尾部ユニットは、投下前には4枚のフィンが十字に細く折りたたまれており、
投下時にバネによって展開される。この開かれたフィンが抗力を増大させて爆弾の速度を落とし、
投下母機が十分に目標から離れるまでの時間を確保した後、
着弾する。
「JDAM(GBU-38/B・GBU-31・GBU-54)」
・JDAM500ポンドGBU-38/B全長:2353mm 重量:253kg
・JDAM2000ポンドGBU-31全長:約3880mm 重量:約924kg
・LJDAM500ポンドGBU-54全長:2353mm 重量:253kg
製造:ボーイング
JDAM(統合直接攻撃弾)は、無誘導爆弾に精密誘導能力を付加する装置のシリーズ名である。2000年前後にアメリカ合衆国で開発・実用化され、米軍を主体に数ヶ国の軍隊が保有している。JDAMシリーズの誘導装置キットを取り付けることで、無誘導の自由落下爆弾を全天候型の精密誘導爆弾(スマート爆弾)に変身させることができる。
INS(慣性航法装置)とGPS受信機が組み込まれており、2つの方式を併用した誘導装置が尾部の制御翼をコントロールして、
外部からの誘導なしに設定された座標へ精度の高い着弾が行える。また、現在ではさらにセミアクティブ・レーザー・ホーミング(SALH)誘導を併用できる機種も登場している。
JDAMは、単体の兵器ではなく、海軍兵器担当水兵や空軍弾薬システム専門兵が兵器を組み立てる時に取り付けられる、
無誘導の自由落下爆弾を向上させるための「追加」である。
JDAMは、名目上の重量で500ポンド(約230kg)-2000ポンド(約910kg)の範囲の爆弾に合うように作られている。JDAMキットは、空力制御翼面を備えた尾部セクション、ストレーキ部、尾部内に収められたINSとGPSによる誘導制御ユニットより構成される。JDAMキットが取り付けられた爆弾には「Mark 80」や「BLU」(Bomb, Live Unit)といった命名法に代わって、GBU(Guided Bomb Unit)と云う名称コードが与えられる。つまり、このキットを取り付けられた自由落下爆弾は、
精密誘導システムを備えた弾頭へと生まれ変わることになる。投下地点を中心に最大15海里(約28km)までの範囲の目標へ誘導する能力を爆弾に与える。
比較的低価格で運用上の制約もあまり無いために、今後使用される機会が多いと考えられている。
この装置は、アメリカ空軍と海軍の共同計画によって開発された。既にイラクやアフガニスタンで使用され、米国と友好な数ヶ国へも輸出販売されている。
JDAMは従来の誘導爆弾の欠点を解消するために開発された。
従来の誘導爆弾はレーザーや赤外線画像により誘導されていたが、これらは地上の気象条件により運用が制約される欠点があった。そこで「投下後は外部からの誘導を必要とせずINSとGPSだけで目標地点に落下させること」が求められた結果、
JDAMが開発された。
また派生型としてLJDAMが存在する。
これはINSとGPSに加えてレーザー照射による誘導機能が追加されており、より精密なピンポイント攻撃や移動目標への攻撃も可能である。
砂漠の嵐作戦初期の爆撃時には、米空軍での空対地攻撃兵器の能力不足が目立った。煙、霧、砂塵、雲で覆われ、見通しの悪くなった地上では精密誘導兵器の使用が限られ、また、中高高度からの非誘導兵器の投下では命中精度がさらに悪化した。
こういった問題を解決すべく、1992年に「悪天候精密誘導弾」の研究・開発・実験・評価が開始された。最初のJDAMキットは1997年に作られ、1998年と1999年に使用テストが行われた。 テストでは450基以上のJDAMが落とされ、公表された精度としては10m以下のCEPで95%を上回るシステムの信頼性を達成した。 JDAMでの実験と評価では対照条件での落下を加えた「実用性実証テスト」も行われ、雲や雨、雪の中でも晴れた天候と変わらず、
命中精度は低下しなかった。更にこれらのテストには複数の同時落下による個別目標への誘導実験も含まれていた。
JDAMは、大きく尾部セクションとストレーキ部に分けられ、
尾部セクション内に収められた誘導制御ユニットが慣性誘導システムとGPSという2つの方式を併用して自らの位置と方向を割り出し、設定された着弾目標の座標との差を尾部の空力制御翼面を動かすことで縮め、爆弾を高い精度で誘導する。
誘導は、尾部の制御システムとGPSで補助される慣性航法システムによって行われるが、この航法システムは航空機のシステムから送られる位置と速度ベクトルの調整値によって初期化される。一度、
航空機から投下されれば、JDAMは与えられた目標座標へ向けて自律的に操舵される。
目標座標は、離陸前に航空機へ読み込まれるか、離陸後も投下前であれば搭乗員の手動によって変更でき、さらに投下後にもデータリンクを通じた入力が可能になっている。JDAMは、超低高度から超高高度までの、降下中・トス&ロフト(上昇中での投げ上げ投下)・水平飛行中に投下が行える。レーザー誘導される「ペイブウェイ」爆弾のような従来型の精密誘導キットでは、投下時には爆弾のシーカーが確実に目標を視野に捉えられるように狭い角度領域での飛行を要求されるが、JDAMではそういった制約は無く、目標とは異なった方向に飛行したままでも投下できる。
さらにJDAMは、1機の航空機が1回の飛行通過で複数の兵器を、
1つまたは複数の目標に投下することを可能とし、また、
信管の起爆タイミングも空中起爆から触発、貫通後の起爆という多様な信管設定が行える。ただし、信管設定は離陸前に行っていなければならず、搭乗員は飛行中に変更することはできない。
アメリカ陸軍が「不朽の自由作戦」(2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の報復として、
同事件の首謀者と断定された国際テロ組織アルカーイダを隠匿している疑いがあるとされたアフガニスタンのターリバーン政権に対して、
アメリカ合衆国とイギリスの両国により、2001年10月7日に開始された一連の軍事作戦の総称)と、「イラクの自由作戦」(アメリカ合衆国が主体となり2003年3月20日から、イギリス、
オーストラリアと、
工兵部隊を派遣したポーランド等が加わる有志連合によって、イラク武装解除問題の進展義務違反を理由とする『イラクの自由作戦』の名の下に、イラクへ侵攻したことで始まった軍事介入)の間に得た経験から、1つの筐体にさらなる能力を加える必要が明らかとなり、進行中の計画でJDAMキットに精密終末誘導シーカーを備え付ける改良が行われることとなった。
レーザーJDAM(LJDAM)として知られるこの改良は、JDAM爆弾の先端部にレーザー誘導(セミアクティブ・レーザー・ホーミング、SALH)システムを加え、JDAMに移動目標への攻撃能力を与えるものである。レーザーシーカーは、米ボーイング社では精密レーザー誘導セット(PLGS)と呼ばれ、今ではDSU-38/Bで知られる先端のレーザーシーカー部分と、後部のテールキットと先端のDSU-38/Bを弾体の下で固縛し固定するためのワイヤーハーネス部から構成される。
この2重誘導システムは、GPS/INS単独での運用能力も残しているので、レーザー誘導が働かなくてもこれまでのJDAMと同様の精度を持っている。地上部隊が目標にレーザーを当てるだけでGPS機能と連動して目標座標が測定され、そのデジタル情報は、無線で空中のJDAM搭載攻撃機に送信されると人手を介さずにJDAM内に設定されるシステムも開発された。
「GBU-39」
全長:約1.8m
横幅:19cm
重量:約130kg
弾頭:貫通・爆散破片弾(約93kg)
誘導装置:GPS/INSを併用
貫通能力:6フィートの鉄筋コンクリートを貫通可能・3フィートの鋼鉄補強コンクリートを貫通可能
信管:電気式安全発火信管(ESAF)、
操縦席より触発モードと遅延モードが選択できる
最大射程:60海里(110km)
GBU-39は、アメリカ合衆国製の小型航空爆弾であり、精密誘導爆弾である。この爆弾は、精密誘導装置を備えて滑空する小直径爆弾(SDB)シリーズの1つである。小直径爆弾は、小型であるため爆発力が小さく、破壊力は限定的であるが、目標に対して正確に誘導され、
命中するよう開発製造されている。
ミサイルと違い推進装置は持たないが、
投下時の高度をエネルギーとして投下後に展開する翼で目標までの距離を滑空し突入・破壊する。
このような種類の爆弾は「滑空爆弾」と呼ばれる航空爆弾に属する。爆弾自身が誘導装置を備えて長距離を滑空できるため、発射母機は攻撃目標から距離を置いた安全圏から爆弾を投下することが可能である。
このシリーズは、
小型化によって攻撃時の発射母機あたり多数の爆弾を搭載できることや、破壊力が小さいので攻撃目標周辺への付随被害が最小化できることを目的に開発され、
特にF-22の機内爆弾槽に収めるために全長も短くされて、AIM-120ミサイルの半分程度の長さになった。
「ペイブウェイ(GBU-12)」
ペイブウェイは、
アメリカ合衆国製の航空爆弾の名称である。Pavewayとは、
英語で「舗装道路」を意味する単語だが、"PAVE"とは「Precision Avionics Vectoring Equipment(精密航空電子誘導装備)」の略号で、
アメリカ空軍において開発された電子装備のシステム名称である。航空機搭載型の精密誘導爆弾としては最も多く生産された代表的な「スマート爆弾」であり、
初期型以降も誘導精度の向上などいくつもの新たなシリーズが開発された。
当初は、米テキサス・インスツルメンツ社が最初のシリーズである「ペイブウェイI」を開発生産し、
その後は米レイセオン社がペイブウェイ・ファミリーを引き継いで4つのシリーズの開発生産を行っている。現在では、
GPS/INS誘導方式のJDAMや小直径爆弾(SDB)といった新たな兵器の登場で、米国での誘導爆弾の主役の座を明け渡しつつある。
「ペイブウェイI」は、ペイブウェイ・ファミリーの最初のシリーズである。 いずれも既存の自由落下型の航空爆弾、「ダムボム」(Dumb bomb)にレーザー誘導装置を取り付けたものであり、以後のペイブウェイ・ファミリーはほとんどが同様の形態を採る。"GBU"(Guided Bomb Unit)で始まる制式名称が与えられている。
・GBU-10:Mk84 2000ポンド爆弾
・GBU-11:Mk118 3000ポンド爆弾
・GBU-12:Mk82 500ポンド爆弾
・GBU-16:Mk83 1000ポンド爆弾
爆弾の先端には可動式のセミアクティブ・レーザー・シーカー部を備え、その直後に誘導制御を行うコンピュータ制御群(CCG)が収められた円筒部とその円筒部の側面4方向に取り付けられた4枚の操向用カナード翼を取り付けられている。爆弾の後端には固定式の4枚の安定用尾翼が取り付けられる。レーザー・シーカー部には円筒形の「ウェザー・ベーン」と呼ばれる整流板が備わっていた。
これ等と同じ名称を使うペイブウェイIIは、爆弾後端の4枚の安定用尾翼は投下後に開く展張式に変えられ、輸送・保管や航空機への搭載を容易にした。ウェザー・ベーンはペイブウェイIIと同様に可動式であった。CEP(半数必中界)は6m(20フィート)程度とされた。
ペイブウェイIIとペイブウェイIIIは湾岸戦争でも使用され、精密誘導爆弾の有効性が実証されたが、雨・霧・砂塵といった天候や煙幕などの環境によって使用が制限され、爆撃目標点を観測手などが投下から着弾まで常にレーザー照射を続けなければならないといった運用上の制約が課題として浮かび上がった。
1990年代から誘導方法のバックアップ技術の開発が開始された、全地球測位システム援用慣性航法装置(GAINS)と呼ばれる、GPSとINSを組み合わせた誘導装置をレーザー誘導装置と組合わせて使用する技術が開発された。
レイセオン社では、
この技術に基づくペイブウェイをDMLGB(Dual Mode Laser Guided Bomb)と呼んで、向上型ペイブウェイIIと向上型ペイブウェイIIIとして新たなペイブウェイ・ファミリーを生み出した。
これらの誘導爆弾では、GPS/IMUのみ、
レーザー誘導のみ、
GPS/IMUとレーザー誘導の併用(GBU-28B/BとC/BだけはIMUのみも可能)という多様な誘導方式が選択できた。レーザー誘導式のJDAM(LJDAM)との違いは、LJDAMがGPS/INSによる誘導を主としているのに対してEGBUではレーザー誘導を主としている点で異なる。
「VADS」
VADS(Vulcan Air Defense System)は、アメリカ軍で開発された対空機関砲システムである。航空機関砲として有名なM61 バルカンシリーズをもとにして開発された。VADSの通称は「バッズ」である。
VADSシリーズは、M61バルカンの対空砲バージョンであるM168 20mm機関砲を中核として、レーダー・コンピュータなどによる射撃管制装置を組み合わせた半自動システムである。自走式のM163と、牽引式のM167がある。M163の車体はM113装甲兵員輸送車をベースとしている。弾薬は通常、航空機に対して有効である20mm曳光自爆榴弾(HEIT-SD)を使用する。
M168は、アメリカ合衆国のゼネラル・エレクトリック社が開発したM61の派生型である。M61は有名な航空機関砲であり、
6000または4000発/分という発射速度を誇るが、VADSのM168では3000または1000発/分に低下させてある。また、M61の場合は6本ある銃身が正面から見ると真円になるように配置され、
一点に対しての射撃における命中率を向上させているのに対して、VADSの場合やや楕円になるように配置されている。
これにより発射された砲弾が散らばり弾幕を展開することが可能となっている。
VADSは測距レーダーと弾道計算機を組み合わせて適切な偏差射撃(移動する標的までの距離を計算して未来位置に射撃し、命中させる射撃方法)が可能となっている。現在は赤外線カメラを付加し、より正確な射撃が可能になった改良型への更新が進んでいる。スーダンやイエメンでは、VADSをBTR-152に車載した簡易自走対空砲が存在する。
「地対空誘導弾ペトリオット」(8個高射群32個高射隊:各高射隊は6機の発射機を有す)
MIM-104ペトリオットとは、アメリカ合衆国のレイセオン社がMIM-14 ナイキ・ハーキュリーズの後継としてアメリカ陸軍向けに開発した広域防空用の地対空ミサイルシステムである。
ミサイル防衛では終末航程に対応し、
20-35kmの範囲を防御する。湾岸戦争時に、イラク軍が発射したスカッドミサイルを撃墜したことにより有名になった。
米国のほか、日本を含む同盟国など世界10ヶ国以上で運用されている。
ペトリオットミサイル発射システムはトレーラー移動式のシステムであり、1つの射撃単位はパトリオット発射中隊によって運用される射撃管制車輌、レーダー車輌、アンテナ車輌、
情報調整車輌、無線中継車輌、複数のミサイル発射機トレーラー、電源車輌、
再装填装置付運搬車輌、整備車輌という10台以上の車両により構成される。これらの車両が自走して野外に発射サイトを設営後、射撃体勢が整う。ナイキの発射システムよりも省力化が図られている。
交戦中に人員が配置されるのは射撃管制車だけで、無人となったレーダーや発射機は射撃管制車からの遠隔操作によって制御される。
システムは複数の機材から構成されており、有線・無線によるインターフェースにより連動している。
・射撃管制装置(ECS):1射撃中隊に1台が配備され、RSからの情報を処理し要撃命令を下す。米軍のECSシェルターはM927 5tカーゴトラック、
または軽中量戦術車両(LMTV)カーゴトラックの荷台に搭載された状態で運用され、2名のオペレーターが操作する。航空自衛隊では73式大型トラックを改修したものを使用する。
主要な機器は新型兵器管制コンピュータ(EWCC)、発射機間通信リンク・ターミナル(DLU)、UHF通信機(DDL)、UHF通信ルーティング・インターフェース装置(RLRIU-U)、2人分の操作コンソール(MS)である。最大16台の発射機を接続でき、同時に8台の発射機を制御する。発射機との通信はVHF無線または光ファイバーによって行われる。
RSとは有線でインターフェイスする。
・情報調整装置(ICC):1高射群に1台のICCが配備され、隷下に6台のECSを置く。
ECSと外観はほぼ同様であり、2名のオペレーター(指揮官)が搭乗する。上位組織および早期警戒管制機との連接が可能(日本ではさらに自動警戒管制システムBADGEとの連接が可能なように改修された)。ECSとはUHF無線によってインターフェースする。
・発射機:M901発射機では最大6発のミサイル(STD弾、PAC-2弾、SOJC弾、GEM弾から選択)、M902発射機では最大24発のPAC-3弾を搭載する(M902発射機にSTD弾、
PAC-2弾、SOJC弾、
GEM弾は搭載できるが、PAC-3弾との混載は不可)。ECSとはSINCGARS無線機(米国形態。日本では電波法に対応したDLU無線機)または光ファイバーによってDLUを通してインターフェースする。
(通信系統)
・ECS-ECS、ECS-ICC間(音声および航跡情報など):UHF通信用無線機を用いたデジタルデータリンク(PADIL)により、
航跡情報などの通信を行う。また、音声通信の回線も有する。通信の中継を行う場合は無線中継装置によって行う。
PADILは1回線あたり32kbpsの通信容量を持ち、RLRIU-Uは4系統のPADIL回線を同時に通信処理できる。
また、通信はTCP/IPのようにルーティングされて伝達されるよう設計されており、一部経路で通信障害が発生していてもデータリンクを確実に確立できるよう配慮されている。なお、UHF無線機はECSおよびICCには3台、
CRGには4台搭載されている。
・ECS-LS間(発射指令):VHF無線または光ファイバーを用いたDLUにより、デジタル通信で発射指令・ミサイルステータスなどを送受信する。
・ICC-上位部隊間(音声および航跡情報など): TADIL-A(音声)、TADIL-B(航跡情報)、TADIL-J(航跡情報)により上位部隊との連接が可能である。なお、
日本のペトリオットでは、自動警戒管制システム(BADGE)との連接を有線で行うためのデータモデムが搭載されている。
ただし、BAGDEとの連接はPAC-3/Config.2形態までの機能であり、新自動警戒管制システム(JADGE)の運用開始に伴ってデータモデムの使用を止め、専用の有線光インターフェース(100BASE-FXをベースにした イーサネット)が随時追加改修されている。なお、
この有線通信にあたっては、日本中に張り巡らされた既設回線網を使用する。
(地上装置の形態推移)開発当初は1990年代の航空脅威に対処する性能とされていたが、経年による脅威変化などに対応するため、各種の改良が施されている。
PAC-2形態:PAC-2形態は、弾道ミサイルの迎撃任務に対応して弾頭の破壊力などを向上したものである。湾岸戦争で使用され、イスラエルやサウジアラビアへ発射されたスカッドミサイルを迎撃した。
それぞれの迎撃率は、アメリカ軍の発表によればサウジアラビアで70%、イスラエルで40%であるが、実際にはこれよりも低い確率だったのではないかと見られている。これはPAC-2ミサイル(MIM-104C)が爆発で飛散する破片によって目標を破壊する方式であったため、弾道ミサイルに命中しても弾頭の機能を無力化できずに被害が出る場合があったことによる。
PAC-3形態:弾道ミサイルへの対処能力を本格化するため、
さらなる能力向上を図った形態。変更の内容は、PAC-3弾の採用、RSの目標識別・捜索能力の向上、
通信能力の向上などである。PAC-3形態は最初から完成された状態で配備された訳ではなくPAC-3/Config.1とよばれる形態から始まり、現在米国で配備されている最新のPAC-3/Config.3形態へと至っている。
日本が現在導入(既存配備システムの改修)を進めているのはこの最新の形態である。
ハードウェア的な改修項目としては、
レーダー装置の目標識別計算装置の追加(DSP-5)や広帯域波形送受信・処理装置(CDI-3)の搭載、
レーダー送信器の増幅用進行波管(TWT)の並列搭載化(Dual TWT)によるデューティーの向上(単純計算で平均送信出力が2倍となる)、また、
ECSやICC、CRGでは新型のRLRIU-U、新型通信多重化装置(IDOCS)、これに伴う通信能力の向上(RL/CEU)などがある。特にRL/ECUによって発射機をより遠くへ設置できるようになり(リモートランチ機能、CRGに対してECSが有する発射機制御機能を搭載する事によりECSとLSの離隔距離が拡大)、弾道弾に対する防護範囲が向上している。
(ミサイルの種類)
ペトリオットで使用されるミサイルは以下の通り。
・STD(MIM-104A)弾:初期形態から採用されているミサイル。主に航空機対処用
・SOJC(MIM-104B)弾:ジャミングを行う目標に対して対処するミサイル
・PAC-2(MIM-104C)弾:弾頭のフラグメントを大型化するなど、弾道弾対処能力を強化したミサイル
・GEM(MIM-104D)弾:シーカーの低雑音化など、目標への誘導性能を向上させたミサイル
・GEM+(MIM-104E)弾:GEM弾のさらなる改良型
・PAC-3弾:新たに設計されたミサイルで、サイドスラスタやリサリティ・エンハンサを搭載。主に弾道弾対処を行う直撃型ミサイルである(後述)。MIM-104シリーズとは異なる
ペトリオットでは(PAC-3弾以外は)TVM(Track Via Missile)と呼ばれる誘導方式が採られている。
これは、ミサイル発射後、RSからTVMレーダー波を目標へ照射し、その反射波をミサイルが捉えながら誘導を行う方式である。以下に概略を示す。
1.ミサイル発射後、
RSから目標へTVM波を照射する
2.ミサイルシーカーでTVM反射波を受信し、RSへダウンリンクする
3.RSからの情報をECSで処理し、誘導計算を行って、RSからミサイルにアップリンクとして誘導情報を送信する
4.終末誘導では、
目標からのTVM反射波を追ってミサイルは目標と会敵する
TVM方式はECMへの対処を重点的に考えられた誘導方式であり、その内容は複雑である。コリレート・トラック、セミアクティブ・トラックとも呼ばれる。なお、
PAC-3弾は自らのシーカーでレーダー波を出しつつ目標と会敵するため、TVM誘導は行われていない。
(PAC-3弾)
対弾道ミサイルとして開発がほぼ終わっていたERINTミサイル(Extended Range Interceptor Missile)を既に発射機として実績があったペトリオットの発射システムに載せたのがPAC-3であるPAC-3弾はPAC-2シリーズより直径が細く、今までは1発が入っていたミサイル・キャニスターに4発が格納できるため、1発射機あたりPAC-3弾を最大で24発搭載できる。小型化されたことにより、
対航空機への射程は半減した。
弾道ミサイル対処時は、近接信管だけではなくヒット・トゥ・キル、つまりPAC-3弾の弾体全体を目標の弾道ミサイルに直接衝突させ、その運動エネルギーによって目標を粉砕破壊する方式が採用されている。また、動翼による姿勢制御だけではなく、ACM(Attitude Control Motors)と呼ばれるサイドスラスターを前部に装備しており、動翼での制御が効き難い高高度での機動性を高めている。
最終誘導はKaバンドのアクティブ・レーダー・シーカーにより行われる。
航空機や空対地ミサイル、巡航ミサイルの対処時は、リサリティ・エンハンサと呼ばれる弾頭を使用する(弾道弾対処時は使用しない)。
これは、直撃寸前時に弾体の胴径方向に低速で225gの金属ペレット24個を放出し、見かけ上のミサイル胴径を増加させて対処能力を向上させたもので、従来の破砕飛散型弾頭とは根本的に設計思想が異なっている。
PAC-3は、航空機や空対地ミサイルに対する対処時の射程のみ従来のPAC-2シリーズに譲るものの(目標撃破能力は同等とされる)、弾道ミサイル対処能力を併せ持つ複合型防空システムにペトリオット・システムを生まれ変わらせた。
PAC-3弾の性能向上型として、MSE(ミサイル部分強化型)の開発が進められている。これは、ロケットモーターと操舵フィンを変更することで、最大50%の射程の延長と機動性の向上を目指したもので、
2011年5月には発射実験に成功、2012年12月には迎撃実験に成功している。派生型として、射程延伸型PAC-3弾を用いた自走式野戦防空システムである中距離拡大防空システムがある。
(要目)
・PAC-2
翼幅84cm
弾体径41cm
重量900kg
上昇限度25000m
対航空機射程80km
対弾道弾射程30km(PAC2GEM+・開発レイセオン)
・PAC-3
翼幅51cm
弾体径25cm
重量320kg
上昇限度16000m
対弾道弾射程30km(旧エリント・開発ロッキード・マーティン)
PAC-3弾の発射・制御などに対応するため、次に挙げる改修が地上装置側に行われる。射撃管制装置(ECS)搭載のソフトウェアの更新/PAC-3弾とのテレメトリを行うためのインターフェースであるFCS(火器管制システム)の追加/発射機に搭載されている制御装置であるLEM(発射機電子メカニズム)をELES(新型発射機電子メカニズム)に更新した(これにより従来のPAC-2以前のミサイルを納められたキャニスター(発射筒)を電気的に接続するための誘導弾ケーブル(GMケーブル)に加え、PAC-3弾を4発納めたキャニスターを電気的に接続するためのGMケーブルを追加)。
また、Config.2形態への改修時に追加された統合戦術情報伝達システム(JTIDS)を使用し、LバンドのTDMA戦術データ・リンク・ネットワークであるリンク 16に接続して弾道弾の迎撃に必要な情報(キューイング情報など)が入手でき、また、
ネットワークに対して情報を提供できるようになる。
また、更新されたソフトウェアによって「テイラード弾道ミサイル・サーチ機能」が追加された。
これは、予め戦術ドクトリンに従い、
弾道弾の発射予想点および防御すべき範囲を座標として入力し、また、弾道弾の射程などを指定する事に依り、ソフトウェアアルゴリズム側でレーダー装置(RS)の捜索ビーム方向やパルス幅を自動で最適な状態にすることで、弾道弾に対する捜索距離を従来ソフトウェアよりも向上させるものである(捜索リソースの最適化)。
パトリオット・ミサイルPAC-3のソフトウェア向上は現在も続いており、対レーダーミサイル、UAV、
巡航ミサイルを識別できるようになっている。ただし、これはレーダーで取得した情報(反射強度や反射パターン)から直接的に目標の種別を識別するものではなく、オペレーターの操作による目標種別の手動変更、または飛翔パターンからのアルゴリズムによる推定である。
(日本での運用)
在日米軍では沖縄県の嘉手納空軍基地と嘉手納弾薬庫地区に、テキサス州フォート・ブリスからPAC-2弾及およびPAC-3弾を装備する米陸軍第1防空砲兵連隊第1大隊(第1-1防空砲兵大隊)が移駐した。指揮・統制はハワイ州フォート・シャフターに所在する第94米陸軍防空ミサイル防衛コマンドが行う。人員約600人の同大隊は4個砲兵中隊を有しており、発射機(M901とM902)は1個中隊8機編成で計32機が配備されている。
日本では1989年(平成元年)度から航空自衛隊の高射部隊に地対空誘導弾ペトリオットとして配備が開始された。高射教導隊を皮切りに1996年度に全国への配備が完了した。実働部隊の8個高射群32個高射隊と教育支援部隊の高射教導隊が、
北は長沼町(北海道)から南は南城市(沖縄県)にかけて配置されている。弾道ミサイル迎撃用のPAC-3については、
米国において弾道ミサイル防衛(BMD)対応のPAC-3弾が開発を完了した後、日本では日本版BMDの1つとして、2007年3月30日に埼玉県の航空自衛隊入間基地に所在する第1高射群第4高射隊に最初に配備された。副次的産物として、異なる2形態のシステムを維持管理するよりも、補用部品の調達一本化や隊員の教育などの面で有利である。
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