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Three Roses

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第十四話 同じ父を持ちその六

 そしてだ、太子は一呼吸置いてから司教にこうも言った。
「卿は違うが聖職者の中にはだ」
「欲の深い者もいる」
「その欲がだ」
 実にというのだ。
「強欲極まりだ」
「手に入れるものはですね」
「何でも手に入れる」
「民の持っているものも」
「あれこれ理由をつけてだ」
 信仰や奉仕、そうした美辞麗句によってというのだ。
「そうしようとする」
「それが教皇庁だからこそ」
「その尖兵である彼等はだ」
「遠ざけることですか」
「そう言っておく」 
 くれぐれもという言葉だった。
「少なくとも私は彼等を用いない」
「左様ですか」
「必ずな、だが」
「はい、私はやはり」
「彼等と手を組むか」
「そしてです」
 そのうえでというのだった。
「マイラ様もまた、むしろ」
「妃の方がか」
「提案したのは私ですが」
「卿以上に彼等と手を組むことに積極的か」
「あの方は潔癖です」 
 マイラのこの気質がここでまた出た。
「ですから」
「新教徒達も僅かな異端もか」
「許せないのです」
「異端、魔女だな」
 太子は旧教新教問わずこの教えが支配している場所ならば誰もが知っている異端の代名詞であるこの存在の名前も出した。
「魔女達もか」
「はい、一人たりとてです」
「魔女はいない」
 太子は言い切った。
「そうした存在はだ」
「一人もですか」
「そうだ、いない」
「そう言われますか」
「魔女はいる、しかしだ」
 それでもというのだ。
「魔女があの様な者達に捕まるか」
「その魔術で逃げますか」
「そうなる、だからだ」
 それでというのだ。
「魔女なぞいないのだ」
「異端審問に捕まる様な魔女は」
「一人もいない、異端審問官達の言う魔女の力は万能だ」
 その魔術はというのだ。
「それならあの様な者達に捕まるか」
「逃げますか、魔術で」
「そうするに決まっている、ロートリンゲン家そしてロートリンゲン家の統治を認めない限りはだ」
 それこそというのだ。
「新教徒も異端と思われる者達もだ」
「害することはない」
「むしろ飴を与え増長する様ならば少し鞭を与え」 
 そしてというのだ。
「治めていけばいい」
「皇室は旧教の擁護者でも」
「確かにそうであるが」
「新教や異教徒にもですか」
「寛容でなければだ」
「国は治めていけない」
「だからだ」
 帝国のその事情故にというのだ。
「我々は寛容に務めているのだ」
「教皇から帝冠を授けられても」
「若し猊下が嫌だと言われればだ」
 帝国としてはというのだ。 
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