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ドリトル先生の名監督

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第四幕その六

「相撲部の人達は」
「うん、どうもね」
「よかれと思っていても」
「実はそうじゃなかったんだ」
「逆効果、的外れな」
「そんなことをしていたんだ」
 そうだったというのだ。
「やっぱり昔ながらの稽古や食事もね」
「否定出来ないんだね」
「経験論というか」
 先生はここでこの言葉を出しました。
「長年やっていってわかることがあるよね」
「稽古の仕方も何を食べればいいのかも」
「そう、お相撲の歴史は古いからね」
「その古い歴史の中でわかってきたことがあるんだね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「その培われてきたことを無視したら駄目だよ」
「そういうことだね」
「近代的な稽古も食事もあるけれど」
「それがお相撲を離れたら」
「そう、よくないんだ」
 こう王子にもお話するのでした。
「実はね」
「そのことを忘れると怪我も多くなる」
「そうだよ」
「うちの大学の人みたいに」
「そしてその野球選手みたいにね」
「あの野球選手はね」
 王子はその人についてはこれ以上はないまでに眉を顰めさせて先生に言いました。
「残念だね」
「とてもね」
「あんなことになったらね」
 それこそというのです。
「もう終わりだよ」
「うん、あれだけの才能があってもね」
「あんなことになったらね」
「駄目だよ」
「というかあれだけの実績があって」
 王子はぼやく様に言うのでした。
「野球理論をしっかり勉強していたら」
「引退してからコーチになっていたよ」
「そうだよね」
「うん、監督にもなれたよ」
「僕みたいな外国から来た人も名前覚える位の人だからね」
「高校時代から有名だったんだよ」
 その人はとです、先生は王子にお話しました。
「スラッガーでね」
「そしてプロでも打っていてね」
「あそこまでの実績を残したけれど」
「ああなったね」
「思えばね」
 先生から見てもです、日本に来てまだ日が浅くてしかも野球のことも知ったばかりの人から見てもそれでもです。
「そうした変なことをした時点で注意するべきだったんだ」
「誰かがだね」
「野球選手なのに格闘家になろうとかね」
「そうしたトレーニングをしたり」
「食事を変えたりね」
「格闘家がバット振ってファーストミット着けてもね」
「野球選手じゃないからね」
 先生はまた言いました。
「筋肉の付き方も構えも姿勢も違うから」
「怪我の元だね」
「まさにね」
 そうだというのです。
「そうなるよ」
「どう考えてもおかしいよね」
 王子も言うことです。
「誰かその時点で注意したら」
「ああはならなかったかもね」
「番長とか言って得意になってたし」
「あれもよくなかったよ」
「変なことをした時点で注意する」
「そのことは誰に対しても大事だよ」
 先生は難しいお顔になって言うのでした。 
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