英雄伝説~光と闇の軌跡~番外編 語り継がれなかった軌跡篇
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外伝~2度目の恋~前篇
”影の国”事件終結直後――――
~深夜・クロスベル自治州・ウルスラ病院・看護師寮~
「……………!?」
ベッドで眠っていたセシルは突如目覚めてベッドから起き上がった後周囲を見回した。
「夢………?でも………本当に今のが夢だったの………?あまりにも具体的すぎるし………………」
自分ではないイーリュンのシスターが栗色の髪の娘達や世間でも有名なリベールのクローディア姫やメンフィルのリウイ皇帝達と共に見覚えのない場所を探索したり、共に戦っている所をまるでずっと見てきたかのように感じるセシルは不思議そうな表情で考え込んだ。するとメンフィル大使リウイ・マーシルンにイーリュンのシスターが幸せそうな表情で抱かれている瞬間やシスターのさまざまな思い出が蘇って来た。
「!!??(どうして……?まるで、自分の事のように思う………)喉がかわいたわね………水でも飲んで落ち着きましょう……」
リウイに抱かれている瞬間を思い浮かべたセシルは顔を真っ赤にして戸惑った後、急激に渇いてきた喉を潤す為に立ち上がって歩こうとしたその時、足に何かが引っかかった。
「……?これは………杖にシスター服……それに靴と紋章……それもこの紋章は確かイーリュン教の……?………」
足に落ちていた杖や服等を拾って確認したセシルは首を傾げた後真剣な表情になって自分の手を見つめ
「………イーリュンよ、お慈悲を………―――癒しの息吹。」
目を閉じて静かに祈った。するとセシルの片手から淡い光が現れ、もう片方の手に暖かな感触を伝わらせた。
「嘘…………私、魔術が使えたの………?……………………………」
自分が魔術を使った事に信じられないセシルは自分の両手を見つめて黙り込んだ後やがて決意の表情になった。
~数日後・リベール王国・ロレント郊外~
数日後、休暇を取ったセシルはクロスベルより遥か南の歴史ある小国、『リベール王国』にある都市の一つ――――『ロレント市』に向かい、街道に出て異世界の大国メンフィル帝国の大使館の前まで来た。
「勢いでここまで来ちゃったけど………これからどうしましょう………?アポイントも取っていないのに、皇族の方………それも前皇帝であった方と会わせてくれるとはとても思えないし……」
大使館からある程度の距離をとって大使館を見つめ続けたセシルは戸惑いの表情で考え込んでいた。
「あの………もしかして、我が国の大使館に何か御用があるのですか?」
「え―――――」
セシルが考え込んでいると女性が声をかけ、声に気付いたセシルは振り向いた。するとそこには夕焼けのような赤い髪の色を二房に分けた白を基調とした清楚なシスター服を身に纏い、首にはアーライナ教を示す紋章のペンダントを付けた女性がセシルを戸惑いの表情で見つめていた。
(この人、どこかで見かけたような……?――――!!)
女性の容姿を見つめたセシルが考え込んだその時、自分と同じ存在に思うイーリュンのシスターが親しげに話していた女性だと気付いた。
「あ、貴女は確か………イーリュンのシスターの方と親しげに話していた……確か名前は………ペテレーネさん……ですよね……?」
「え……?私がイーリュンのシスターの方と親しげに……ですか?もしかしてティア様の事でしょうか?」
突如セシルに聞かれた女性は戸惑いながらセシルを見つめていた。
「い、いえ……その……名前は凄く似ていますが多分、違うと思います………『ティナ』という名前なのですが……」
「ええっ!?あ、あの……!失礼ですが、一体どこで……いつ、ティナさんを見かけたのですか……!?」
セシルの口から出てきた予想もしていなかった人物の名前を聞いた女性は信じられない思いでセシルを見つめた。
「そ、その……実は―――――」
そしてセシルは女性に事情を説明した。
「……………………………」
事情を聞いた女性は驚きの表情でセシルを見つめ
「あの………それと、起きたらこれらもあったんです……見覚えはありませんか……?」
セシルは荷物からイーリュンのシスター服や紋章等を取り出し、更に片手に持っていた長い包みの布を取った。
「!!??こ、これらは……”幻影城”に行く前にウィル様達に創って頂いたティナさんの装備の一式……!?何故、貴女がこれらを………」
セシルが取り出したイーリュンのシスター服や杖を見た女性は目を見開き
「ま、まさか貴女の名前は………『セシル・ノイエス』………ですか?」
声を震わせながら信じられない表情でセシルを見つめて尋ねた。
「は、はい………その………貴女の名前はペテレーネさん………でいいんですよね…………?」
「!!………はい。――――ご紹介が遅れましたね。私の名はペテレーネ・セラ。メンフィル大使リウイ・マーシルンの側室の一人にしてゼムリア大陸の人々に混沌の女神アーライナの教えを広める者。――――それでセシルさん、本日は何の御用でここまでいらっしゃったのでしょうか………?」
その後セシルは女性―――――ペテレーネにメンフィル大使リウイ・マーシルンと面会したい事を伝え、セシルの希望に頷いたペテレーネはセシルと共に大使館内に入って行った。
~メンフィル大使館~
メンフィル大使館の執務室にて紫がかかった銀髪で、意志の強い紅き瞳の男性――――メンフィル大使にして前メンフィル皇帝―――”闇王”リウイ・マーシルンは大使として様々な書類の処理をしていた。
「リウイ様、少しよろしいでしょうか?リウイ様に面会を求めている方がいらっしゃいますが………」
「面会だと?今日の予定にそんな予定はあったか?」
「いえ、私の独断です。――――その方がどうしてもリウイ様と面会したいとの希望もありましたが………リウイ様とティア様……お二方にとっても関係しますので、お会いになった方がよろしいかと。」
「何……?ティアまで関係しているだと?――――いいだろう、会おう。」
「――――失礼します。」
部屋の主の許可を聞いたペテレーネは扉を開いてセシルと共に部屋に入って来た。
「貴方がメンフィル大使――――リウイ・マーシルンさん……………――――!!」
ペテレーネと共に部屋に入って来たセシルはリウイをジッと見つめ、突如襲ってきた心臓の高鳴りに驚いた。
「―――いかにも。我が名はリウイ・マーシルン。このメンフィル大使館の長を務めている。そちらの名前は何と言う?」
「!!し、失礼しました……!私の名前はセシル………――――セシル・ノイエスです。」
「……………何?『セシル・ノイエス』…………だと?」
予想もしていなかった名前がセシルの口から出るとリウイはみるみる目を見開いて驚きの表情でセシルを見つめていた。
「あの……?私の事を知っているのですか……?」
「……………名前だけはな。それで本日は何の用でここまで来た?」
「はい。実は――――――」
セシルはリウイに数日前に突如自分の身に起こった不思議な出来事――――栗色の髪の娘達やリウイ達と共に見覚えのない場所を探索したり共に戦った事、気がついたらイーリュンのシスター服や杖が自分の傍に落ちていた事や突如治癒魔術が扱えるようになった事に加え、イーリュンのシスター―――『ティナ』という名前のシスターの記憶らしきものが次々と自分の頭の中に流れ込んだ事を説明した。
「という訳なんです………貴方達なら何か知っていると思い、訪ねさせて頂きました。」
「「……………………」」
セシルの事情を聞き終えたリウイは目を閉じて静かに黙り込み、ペテレーネは目を見開いてセシルを見つめていた。
「その……私や私の事情の事、お二方は知っているんですよね……?」
「そ、それは………」
どう答えたらいいのかわからないペテレーネはセシルの問いに答えを濁し
「………ペテレーネ。席を外してくれ。俺から説明しておく。」
「―――かしこまりました。」
リウイの指示を聞いて気を取り直した後部屋から退出した………………
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