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ドリトル先生の名監督

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第三幕その二

「医学部のドリトルだけれど」
「あっ、先生」
「お相撲を見に来られたんですか」
「そうなんですか?」
「いや、違うよ」
 先生は相撲部の人達に笑顔でお話しました。
「君達の怪我が多いから」
「だからですか」
「それで、ですか」
「わざわざ来てもらったんですか」
「今は怪我人はいないですけれど」
「いやいや、怪我の原因を聞きに来たんだ」
 それでというのです。
「今日はここに来たんだ」
「そうだったんですか」
「怪我の原因を聞く為にですか」
「来てくれたんですね」
「そうだったんですね」
「うん、それでだけれど」
 あらためてです、先生は皆に尋ねました。
「君達はどうした稽古をしてるのかな」
「稽古?」
「稽古ですか」
「俺達の」
「それをお聞きになりたいんですか」
「うん、それとね」
 先生は皆にさらに尋ねました。
「何を食べてるのかな」
「ちゃんこをですか」
「どんなちゃんこを食べているのか」
「そのことですか」
「うん、見せてもらいたいし教えて欲しいんだ」
 先生は真面目な顔で言います。
「是非」
「はい、それじゃあ」
「お話させて頂きます」
「これから」
「うん、じゃあね」
 こうしてでした、先生は相撲部の皆からお話を聞いてです。
 実際の稽古や食べているちゃんこを見ました、その結果。
 先生は困ったお顔になってです、こう言いました。
「それじゃあね」
「怪我が多いですか」
「そう言われるんですか」
「怪我が多いのも当然」
「そうだと」
「うん、まず柔軟をしていないね」
 稽古の前と後にです。
「それがよくないよ」
「ちょっと最近何か」
「それがいいと思いまして」
「柔軟よりもです」
「ウェイトトレーニングの方が」
「筋肉をつけようと」
「いや、筋肉よりもね」
 先生は学者として言うのでした。
「柔軟をしっかりした方がいいから」
「それよりもですか」
「もっとですか」
「ウェイトトレーニングよりも」
「そっちですか」
「というかウェイトトレーニングよりも」
 さらにというのです。
「本来の相撲の稽古の方がいいよ」
「そっちの方がなんですね」
「四股とかの方がですか」
「筋肉がつくんですね」
「そうだよ」
 温厚ですが確かなお顔で、です。先生は皆にお話します。
「ウェイトトレーニングといってもあれはね」
「筋肉がつきます」
「それでいいと思っていましたけれど」
「駄目なんですか」
「だから筋肉はね」
 先生はまた言いました。
「相撲には相撲の筋肉はあるから」
「だからですか」
「そうしたトレーニングよりもですか」
「本来の稽古の方がいいんですね」
「四股とか」
「そうなんだ、相撲には相撲の稽古があるよ」 
 先生は真顔で言うのでした。
「僕はお相撲はしたことはないけれど」
「いや、先生はスポーツ理論の論文も書いておられましたよね」
 部員の人の一人がここでこのことを言いました。 
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