魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第3章:再会、繋がる絆
第62話「出来る事から」
前書き
メリークリスマス!作者からのプレゼントです!(ただのいつもの週一更新)
ちなみに神降し・霊脈はオリジナル設定です。
ありがちな感じにしておいたので“オリジナル”とは言い難いですけど。
=優輝side=
「――――。――――、―――――――。」
澄み切った霊力が境内に広がる。
神秘的で、神の力とでも思ってしまいそうな、そんな霊力が椿から溢れ出る。
「...分霊が本体にアクセスするのって、こんな感じなのか?」
「あたしが知る訳ないじゃん。かやちゃんが知ってただけだよ。」
「そうなのか。」
場所は八束神社。もう日も傾き始め、人気も少ない。
さらに人払いの結界を霊力で張っているため、誰もここにはこないようになっている。
「―――、―――――。――――――。」
「...昔の巫女さんとかは、こういうのをやってたのか...。」
「ちょっと違うと思うよ?あっちは神降しで、かやちゃんのは飽くまで本体にアクセスするためのもの。優ちゃんが後で契約する時の方が、昔の巫女や神主がやってた事に近いんじゃないかな?」
「ふーん...。」
ちなみに、霊脈を椿が使っている今、僕らは自前の霊力で体を癒している。
...葵は既に完治してるけどね。僕だってリンカーコア以外は治っている。
霊力で直接治せなくても、何もしないよりは早く治っているようだ。
〈...こんな悠長な事をしてていいんでしょうか...?〉
「連絡は妨害される。僕は魔法がほぼ使えない。...となると、自分たちで新たな力や方法を生み出すしかないんだよ。」
やはり司さんが心配なのだろか?シュラインが少し焦っている。
「...焦っては何もいい事はないよ。...それに、偽物をどうにかしないとな。」
〈...そうでした。すみません...。〉
あの偽物がいればできる事もできないだろう。
「...リヒト...シャル。行けるか....?」
〈...ギリギリですね。霊力の加護があってようやくです。〉
〈少しでも慌てたり、無茶をするとダメです。〉
「...できるならそれで上出来だ。」
椿が本体へアクセスしている今、僕はシュラインが人格を移しているシリアルⅠのジュエルシードの歪んだ部分を直そうとしていた。
魔力でないと直せそうになかったので、魔力結晶の魔力を用い、霊力でリンカーコアを保護したうえで、リヒトとシャルを介しているが。
「...もう一度聞くが、暴走の心配はないんだな?」
〈...はい。一度封印し、私の人格がある今、暴走する事はありえません。〉
「了解...!」
リヒトとシャルを介し、魔力結晶の魔力を行使する。
少しのミスも許されない。ミスすれば、リンカーコアが治る可能性も潰える。
「――――。――、――――、―――――。」
文字の羅列による呪文のような言葉を紡ぐ椿を後目に、僕はジュエルシードへの干渉及び修理を開始する。
「(ジュエルシードのその実態は、所謂“想い”の塊。天巫女の祈りによって形を為したソレは、デバイスのようなシステム面での歪みはない。ならば....!)」
システムや法則性がない、概念的な部分から干渉を試みる...!
「(まずは解析...!歪みの実態とどうすれば直せるかを把握する...!)」
精神を研ぎ澄ませ、ジュエルシードに干渉していく。
土の中を手探りで掘って空洞を探すかのように、気の遠くなる作業だ。
「ッ――――!!」
周りの音が聞こえなくなる程に、意識を集中させる。
失われた技術を解析しているのだ。これくらいの集中なんて当たり前だ。
「―――ッ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁー...ふぅ....。」
何分、何時間経ったのだろうか。集中していた精神を一度落ち着かせる。
集中しすぎていたせいか、息切れもしていた。
「...どこまでわかったの?」
「...歪んでいた部分、その大体は把握できたよ。」
吹き出る汗を拭きながら、葵の言葉に答える。
「まるで靄のようにわかりづらかったけど、何とか大体は把握できた。...問題はそれをどうやって直していくか...だな。」
「そこまで難しいの?」
「何も知らない一般人に霊術をやれっていうようなものだな。やり方がわからない。」
把握するのも具体的なやり方は分からなかったけどな。全部手探りだし。
「リヒト、どれくらい時間が経った?」
〈10分34秒です。魔力結晶の魔力もちょうど使い果たしました。〉
「あまり経ってないなぁ...。それに、ギリギリだったか...。」
一つの魔力結晶で大体10分ほどしか解析できないとなると、ジュエルシードを完全に直すには、本当に気の遠くなる作業になるな。
「椿の方は?」
「今終わった所よ。」
椿は上手くいったのかと思った所で、ちょうど終わったらしい椿が話しかけてきた。
「首尾は?」
「上々よ。何気に注目されていたみたいね。優輝。」
「え?」
注目って...椿の本体...草祖草野姫に?
「現代ではなかなか見られない魂だって言ってたわ。...まぁ、私もそう思うけど。」
「いや、一応同一人物なんだし、同じ事思っても不思議じゃないような...。」
まぁ、上手くいったのならいいか。
「でも、使いどころをしっかり見極めなさいよ。巫女でも神主でもない、ましてや厳密には陰陽師ですらない、霊術を扱うだけの優輝が神降しだなんて、負担もあるんだから。」
「分かってる。...使うとしても二回だろう。」
偽物の時と、司さんの時...だな。
「さてと、今できる事は粗方やったが...。」
「...ねぇ、ふと思ったけど、なのはちゃんとかを経由して連絡できなかったの?」
これからの方針をどうしようと思った矢先に、葵がそういう。
「.....あ。」
「...忘れてたね。」
「ああ。すっかり忘れてた...。」
まぁ、やって損はない行動だったからいいか...。
「それと、適当に使い魔を飛ばしてたんだけど、どうも学校での出来事は現実に反映されていないみたい。どうやら結界内での出来事は結界内で終わったみたいだね。」
「結界自体は?」
「なくなってるよ。アリシアちゃんの死体がないって事は、移動したかそれとも...。」
...とにかく、翠屋辺りに行ってなのはから連絡を入れてもらうように頼むか。
「なのは?今朝からアースラに行ってるけど...。」
「....え?」
翠屋で桃子さんになのははどこか尋ねると、そんな返事が返ってきた。
「...アースラって事は、もしかして....。」
「他にも、フェイトちゃんとかも行ってるみたいね。」
「やっぱりか...。」
どうやら、魔導師組は全員アースラに行ったらしい。
...つまり、連絡手段は完全に潰えた訳だ。
「リヒト...妨害を解除できるか?」
〈...無理ですね...。やはり、マスターをコピーしただけあって、私の構造をよく知っています。私が解除しようにもできなさそうです。〉
「シャルも...同じか。」
〈...そのようです。〉
リヒトもシャルもムートが作ったデバイスだ。構造は理解している。
...しかし、今回はそれが仇となったようだ。
〈ちなみに、マスターから干渉しようにも、弾かれるようにプロテクトされているようです。...マスター自身のリンカーコアからの全力の魔力で直接干渉しない限り、解除できないでしょう。〉
「そうか...。」
リンカーコアが回復しない限り、無理って事か...。
「あたしも無理だよー...。なんというか、デバイスになったばかりの頃みたいになってるし、普通に魔法は使えるけど、連絡だけはって感じ。」
「八方塞がりじゃないか...。」
どうやら、誰かに協力を要請する事はできないらしい。
「...なのはの方でも何かあったみたいだけど...。」
「...まぁ、魔法関連です。ちょっと連絡が取れない状況でして...。」
家に設置された転送ポートを使おうにも、無断渡航になるからダメだ。
...一応、最終手段として取っておくか。緊急事態だったら許可とか言ってられないし。
「...無理はしないようにね?」
「はい。...あ、わかっていると思いますけど...。」
「学校にはこっちから連絡入れておくわ。安心して行ってきていいわよ。」
「ありがとうございます。」
学校への連絡も桃子さんがやってくれるようだ。
「営業中お邪魔しました。」
「ええ。何でもとは言えないけど、もっと頼っていいのよ?」
「...はい。」
魔法関連だからこそ“何でも”とは言えないのだろうけど、その言葉はありがたかった。
「さて、どうするか...。」
連絡を取る手段はない。椿や葵はともかく僕は魔法が使えないハンデ持ち。
そうなるとできる事は限られてくるけど...。
「...偽物の居場所がわからない今、できる事と言えば...。」
「ジュエルシードの探索...だね。」
司さんを助けに行く手がかりにもなるジュエルシード。
それを僕らは探しに行くことにする。...元々それを目標にするつもりだったしね。
「シュライン、場所は分かるか?」
〈....微妙ですね。何かしらの反応があれば探しやすいのですが...。〉
「そうか...。」
曰く、かつてのジュエルシード事件でも、何か起きない限り探知するのは困難で、どうしても後手に回っていたらしい。
「.....ん...?」
「...何か思い当たる事があるの?」
ふと、昨日シュラインが言っていた言葉を思い出して何かに引っかかる。
「...なぁ、シュライン。...どうして暴走したんだ?それになぜ校庭に...。」
〈...昨夜の事ですか?〉
そう。シュラインは地球に転移してきた後、暴走した。それも司さんの姿になって。
ただ、転移のはずみで暴走しただけかもしれないが、どうも引っかかった。
〈...正しくは分かりません。...考えられるとしたら、分散させていた“負の感情”による暴走だと思います。...転移場所については分かりません。〉
「と、いう事は...シュラインに限った事じゃない訳だな。暴走は。」
他にも転移してきたジュエルシードも暴走している可能性があるという事だ。
「...なら、少しだけ探す範囲を絞れるかもな。」
「そうなの?」
「ちょっとこじつけだがな。」
シュラインが暴走した場所は学校。そして姿は司さんだった。
おまけに、あそこはシュラインと司さんが出会った場所。...所謂ターニングポイントだ。
その時の様子をIFとはいえ再現した...つまり...。
「...司さんにとって印象深い場所にジュエルシードがあるかもしれない。」
〈印象深い場所...ですか。〉
たった一つの例から無理矢理考えただけだけどな。
「...虱潰しに探すよりは楽ね。とりあえずそういう場所から探しましょ。」
〈...そうですね。当てもなく探すよりその方がいいです。〉
「といっても、もう夜だからな。明日からにしよう。」
リンカーコアもできるだけ回復させたいからな。...治るかすらわからないが。
「あたしは夜が本領だから、使い魔で探索しておくよ。疲れもほとんどないし!」
「...吸血鬼はこういう時便利ね...。」
夜の間は葵が探索しててくれるようだ。助かる。
「魔力結晶を大量に作っておいてよかったな...。」
「リヒトとシャルを介せば、ほぼリンカーコアに負担を掛けずに強力な魔法も使えるしね。」
カートリッジも結構あるし、カノーネフォルムで攻撃するのもいい手だ。
「じゃあ、夜は任せたよ。」
「りょーかい。代わりに朝に少し眠らせてもらうよ。」
葵に夜の間を任せ、僕らは風呂に入ってそのまま寝た。
=葵side=
「...ん、じゃ、そろそろ始めようかなっと。」
優ちゃんとかやちゃんが寝たのを確認して、あたしは闇に紛れつつ、屋根に上る。
「探しておくべきなのは、ジュエルシードの場所と...できれば偽物の居場所かな?」
ジュエルシードはともかく、優ちゃんの偽物は無理だろうなぁ...。
偽物とはいえ、優ちゃんだし。連絡手段を断つ程用意周到なんだから、あたし程度の探知じゃ全然引っかからなさそうだしね。
「じゃあ、行ってきて!」
掌を夜空に向け、蝙蝠型の使い魔を飛ばす。
「(探す場所は司ちゃんの印象深い場所...あたしは優ちゃんよりもそういう場所には心当たりがないんだけど...。)」
少し自分の記憶を思い返してみる。
けど、特に思い当たるような場面はない。
「(まぁ、当然だね。司ちゃんにとって印象深くても、あたしからすればそうでもなかったりするもんね。)」
しかし、そうなると色々と面倒だ。結局虱潰しになるのだから。
「...ちょっとシュラインに聞いてみようかな?」
思い立ったが吉日。早速一度中に戻ってシュラインの所へ行く。
「シュライン、起きてる?」
〈葵様?...一応は。〉
デバイスにも休息は必要なんだけど、どうやらシュラインは起きていたみたい。
「シュラインには司ちゃんにとって印象深い場所って分かる?」
〈マスターの...ですか...。〉
チカチカとしばらく明滅してから、シュラインは続きの言葉を言う。
〈正直、確信はありませんが、そうだと思える場所ならいくつかあります。〉
「そうなの?じゃあ、そこから探そうかな。」
ずっと一緒にいたシュラインの言う場所なら、確率的に高そうだしね。
「それで、その場所は?」
〈少々お待ちを。データを送ります。〉
そう言われて、あたしもデバイスだった事を思い出す。
デバイスなんだからデータの受け渡しもできたね。
「....なるほど...ね。」
少しして、データを受け取り終わる。
〈...すみません。どうやら、ジュエルシードに人格を移している分、私にも休息する時間が必要なようです。スリープモードに移行します....。〉
「あ、ごめんね?こんな時間に。」
シュラインはそのままスリープモードに入ったので、さっきの場所に戻しておく。
「...さて、じゃあ、データ通りの場所に...。」
シュラインから受け取った印象深い場所(推測)へと、使い魔を送る。
「かやちゃんと出会った場所や、優ちゃんが初めて魔法を使った場所かぁ...。」
場所は雪ちゃんが誘拐された倉庫と、八束神社。
確かに司ちゃんからすればどちらも“新たな出会い”なんだから印象に残るだろう。
「ジュエルシードは普通には見えないだろうし、一遍に探索は無理かな?」
使い魔に魔力を通し、魔法関連のモノを視えるようにする。
司ちゃんの認識阻害が解けたからって、普通にある訳じゃなさそうだしね。
「....見えた...。」
まずは倉庫の方。使い魔と視覚を共有し、探索する。
「...もう誰にも使われてない...ボロボロだね。それで、肝心のモノは...っと。」
やっぱり、普通では見えないみたい。
けど、倉庫内に微弱な魔力が漂っているのを見る事ができた。
「魔力がある...って事は、何かあるんだね。」
それにしても、やけにあっさりだね。ちょっと拍子抜けだよ。
そう思いつつ、その魔力の発生源を探す。
「...それだけ、この倉庫が印象深かったのかな?」
それとも偶然かな...。
まだ、印象深い場所=ジュエルシードの位置って決まった訳じゃないし。
「....っ、見つけた...!」
ようやく発生源を見つけ、そこをよく見る。
すると、認識阻害はまだあるものの、何かが見えた。
「これは....結界...?」
学校でも見た綻びのようなもの。それが倉庫にもあった。
つまり、倉庫にも学校にあったような結界がある訳だ。
「...どうやら早速当たりだね。」
あたし単身で乗り込むのはもちろん、体力の回復しきっていない優ちゃんやかやちゃんを起こしてまで向かう訳にはいかない。
とりあえず、倉庫にジュエルシードがあるのは確定したから、マークしておこう。
「次に八束神社...。」
かやちゃんが初めて優ちゃんと出会い、そしてあたしが一度死んだ場所。
シュライン曰く、あたしが死んだ事とか、かやちゃんの存在が印象深そうとの事。
「事件の事は詳しくは聞いてないんだよね。そういえば。」
あたしは死んでデバイスになって眠ってたから、その後かやちゃんや優ちゃん、雪ちゃんから軽くあらましを聞いた程度にしか、あの時の事は知らない。
機会があれば、改めて聞いてみようかな?
「.....って、あれ?」
使い魔とのパスが消えた。...つまり、何者かに落とされたようだ。
「まさか...。」
もう一度使い魔を放って、撃ち落とされた所が遠くから見える場所へと送る。
そして、辺りをよーく見てみると....。
「...魔力反応...多分、いるね。」
姿は見えない。だけど、滲み出る優ちゃんの魔力を感知する事ができた。
つまり、どこかに優ちゃんの偽物がいるという事。
「探索を妨害しにきたって所かな?...って、また落とされた。」
...警戒されてるって事は、これ以上使い魔を放っても無意味だろう。
むしろ、何度も送っていると今度こそ攻め込まれて殺されるかもしれない。
「...わかったよ。あたしも大人しくしててあげる。」
今のあたし達では勝てるかは分からない。だから、ここは素直に引き下がっておく。
...少しでも優ちゃんのリンカーコアを回復させておきたいからね。
「(...動く気配はない....か。)」
もう一度使い魔を放って、さらに遠くから様子を見る。
しかし、魔力が動く気配がない。
「余裕があるのか、或いは別の理由があるか...。」
なんとなく、ほんのなんとなくなんだけど、偽物には違和感を感じる。
雪ちゃんの死が認められない優ちゃんの“負の感情”が姿を為したらしいけど、それにしてはあまり動きがない。
「....今考えても仕方がないか...。動きがない方が都合がいいしね。」
もしかしたら漁夫の利を狙ってるだけかもしれないし。
「...とは言っても、これ以上はねー....。」
偽物がいるからには、探索はあまりできない。
かと言って、このまま眠るには時間が勿体なさすぎる。
「撃ち落とされないくらい離れた場所を探索しようかな。」
そう思って、適当に街の方に使い魔を飛ばそうとする。
「....っ!?」
ギィイイン!!
その瞬間、飛んできた剣を咄嗟にレイピアで弾く。
「(どこから!?いや、それよりも...どうやって....!?)」
剣を飛ばす...そんな攻撃をするのは、あたしの知ってる中では三人しかいない。
まず優ちゃん。そしてその偽物。後一人は...帝って名前だっけ?
とにかく、その三人しかこんな攻撃はしない。
そして、優ちゃんは就寝中。帝はあたしを攻撃する理由はないので、必然的に...。
「...そういう事...。動いていないんじゃない。既に動いていたんだね。」
どうして気づかなかったのだろう。使い魔で探索している時、いくら夜でもおかしいくらいに人の姿はなかった。
つまり、その時点で既に結界は張られていた。...あたしが気づく事もなく。
使い魔を介して見ていた光景は...大方、幻術か何かだろう。
「っ....!」
ギギギギィイン!!
再び飛んできた複数の剣を、全て弾く。
でも、こんなのは牽制程度でしかない。あの偽物が、こんな生易しい訳がない。
「....あたし達三人が揃っていれば、例え圧倒的な力を持っていても逃げられる。...だから、あたしが一人になっている所狙った...そういう事だね?」
「...なんだ。さすがは葵。オリジナルじゃなくても僕の考えは分かってるじゃん。」
冷や汗を掻きながらあたしがそういうと、いつの間にか接近していたのか、偽物が近くの家の屋根に立っていた。周りには当然のように剣が浮かんでいる。
...優ちゃん達がこの結界に気づく事はないだろう。
偽物とはいえ、優ちゃんの隠蔽性に優れた結界だ。例え優ちゃん本人でも、起きていなければ気づく事はできない。
...つまり、この状況をあたし一人で打破しなければならない...!
「....オリジナルと椿と葵...この三人は唯一僕を打倒し得る存在。...なら、そんな存在は早々に芽を摘んでおかないとな!」
「っ.....!!」
その言葉と共に、あたしを囲うように大量の剣が創造される。
...幸い、誰かを庇う必要のない今なら凌ぐ程度ならなんとでもなる。
「でも....。」
「さぁ、葵!今ここで殺してやるよ!」
...魔力の心配がない優ちゃん相手では、例え偽物でもあたしでは勝てない。
遠距離攻撃をあまり持たないあたしでは、遠距離攻撃に圧し潰されるだけだ。
「....ごめん。かやちゃん、優ちゃん....。」
今の絶体絶命な状況に冷や汗を掻きつつ、創造された剣にあたしは立ち向かった。
―――...あたし、帰れないかもしれない....。
後書き
葵の使い魔はリリなの的な使い魔ではなくて、情報収集用の蝙蝠です。
ちなみに霊術で御札を利用して式を飛ばして同じような事ができます。
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