| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

百人一首

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

85部分:第八十五首


第八十五首

                第八十五首  俊恵法師
 夜も寝てはいない。眠れなくなってしまった。
 思い悩みそれで眠れなくなった。
 そうなってしまってからどれだけ経ったのか。
 少しであるように思えるしもうずっとにも思える。もうどれだけそうなったのかわからない。それ程まで思い悩んでしまうようになってしまっている。
 夜になればいつも待ち焦がれる。
 あの人が来てくれるのかと。
 そのことばかり待ち想いを募らせ。
 今日もあの人を待つ。
 障子ごしにあの人の影を待つのだけれど。
 それでもあの人の影は来ず。そのまま朝になってしまう。いつもそれだけ。
 たったそれだけのことで。いつも過ごしている。朝の光さえ入ってこなくなってしまった。朝になっても一人。自分だけがいる。朝の中に取り残されている。そんな侘しい気持ちを今歌に詠った。せめて歌にしてこの気持ちを慰めようと思って。それでこの歌を詠った。

夜もすがら もの思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり

 詠ったこの歌を残してもまだ気持ちは侘しいまま。その侘しい気持ちを胸に今も夜を待つ。また来ないだろうと思いながらもそれでも。あの人を待つ。また障子には誰の影も出てこなくともそれでも。今日もあの人を待つ。こうして何時まで夜を過ごすのかわからないまま。また夜を迎えるのだった。


第八十五首   完


                 2009・3・31
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧