貧乏神
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第七章
「貧乏神によるところが大きかったのじゃ」
「少子高齢化でお客さんが減って」
「子供が特にな」
「爺さん婆さん死んでくし」
「それでな」
二人共腕を組み社会の話もした。
「お店も跡継ぎおらんで閉店や」
「電車を使う人も減ってるし」
「そんで駅前の商店街もお客さんが減る」
「それだけやなかったんやな」
「そうじゃ、ここの商店街はそれもあった」
貧乏神の影響もというのだ。
「その問題だけでなくな」
「そやから景気悪かったんか」
「今わかったわ」
「うむ、わしが戻ったからその分ましになる」
大福さんはこのことは約束した。
「とはいっても少子高齢化は難しいがのう」
「うち等で頑張るしかないか」
「結婚して子供どんどん作る」
「三人でも四人でも」
「ええ旦那さんとええ家庭築いてな」
「それは人間達で考えることじゃ」
そうした問題だというのだ。
「とにかく、神社も神棚もこの廟もな」
「いつも奇麗にしとかんと」
「有り難い神様は出て行ってか」
「貧乏神が入って」
「こうしたことになるねんな」
「そうじゃ、ではこれからもな」
大福さんは二人にあらためて言った。
「奇麗にしてくれ」
「わかったわ、うち等かて貧乏神は嫌や」
「不景気だけは勘弁や」
「只でさえ少子高齢化やってのに」
「そこに不景気までとかごっつ大変や」
「だからじゃ、頼んだぞ」
大福さんはこう言って廟の中に消えた、それを見てだった。
美咲は萌美にだ、しみじみとした口調でこう言った。
「いや、ほんまな」
「今日はな」
「ええ勉強になったわ」
「そやな」
萌美も言う。
「神様の場所はいつも奇麗にする」
「さもないとええ神様が出て行って変な神様が居着く」
「そんで不景気とかになる」
「そういうことやな」
「けどこれで」
さらに言う萌美だった。
「幾分かましになるな」
「そやな、貧乏神が出て行ったし」
廟からだ。
「商店街もちょっとはな」
「景気がよくなるやろ」
「大福さん戻ってきたし」
「それやったら」
二人で微笑んで話をした、ここで踏切の警報音が鳴ってだ。遮断機が降りて南海電車が通った。電車の中の乗客はこれまでより少し多く見えた。
この時から商店街は雰囲気もこれまでより明るくなり客も最盛期程ではないが幾分か戻った。商店街も活気を幾分か取り戻した。
美咲は萌美と共に商店街の中のおもちゃ屋の二階に設置されているゲームセンターで遊びながらこんなことを言った。
「このお店も近くのゲーセンもなかったからな」
「困るわな」
「こうして遊ぶこと出来へんようになって」
「ほんま大弱りやで」
「いや、そう思うとな」
「神様のおる場所は大事にせんとな」
「奇麗にせんとあかんわ」
昔のシューティングゲームをしつつ横の席に座る萌美に話す。
「商店街のうなったらな」
「お店移転とかやし」
「たこ焼き焼く腕あっても」
「お好み焼きは大得意でも」
萌美も家業を積極的に手伝っていて自称でるが天下茶屋一のお好み焼き焼きである、その玉の作り具合とトッピングのセンスには定評がある。だが焼き加減がまだ未熟だと父親に言われている。この辺りは美咲も同じだ。
「やっぱりこの商店街にいたいわ」
「うちもや」
「あそこでお店やっていきたいんやな」
「生まれ育ってるさかいな」
それ故にとだ、美咲も答えた。
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