貧乏神
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第二章
「そうでないのは不幸中の幸いにしろ」
「厄病神やな」
「それがおる感じするわ」
こう萌絵に言うのだった、ここで店の中にいる母親からたこ焼きは焼けたかと聞かれ今焼けたと答える、美咲は忙しい日々を過ごしていた。
だが学校でもだ、美咲はこう言うのだった。
「景気悪いわ」
「学校で言うな」
「ほんまや」
即座にクラスメイト達からツッコミが入った、天下茶屋の美咲の家からそれこそすぐの中学校の中で。
「景気が悪い悪いって言うとや」
「余計に悪なるわ」
「黙ってたこ焼き焼いとけ」
「売れんかったらそれ食うとけ」
「アホ、売りもん食うたらあかんやろ」
すぐにこう返した美咲だった、口々に言う男子生徒達にも負けていない。
「幾ら何でも」
「それはそやけどな」
「けど学校でも景気の話はな」
「正直落ち込むわ」
「そういう話はすんなや」
「ああ、わかったわ」
美咲も彼等の言葉に頷きはした。
「最近そんなことばっかり思うてるし」
「確かに最近こっちも寂れてきたけどな」
「おとんもおかんもそう言うわ」
「昔はもっと人が多かったし」
「店も繁盛してたって」
「店移転しよか」
こうも言った美咲だった。
「うちが店継いだら」
「そうするんか?」
「ほな国道沿いとかにか」
「店移転させて」
「それでやってくんか」
「屋台とかな、どっちにしろたこ焼きは焼くわ」
家業は続けるというのだ。
「うちはそれしか芸ないさかいな」
「それでかいな」
「移転も考えてるんか」
「駅のすぐ傍の商店街のほんま先っちょから」
「国道かいな」
「やっぱりお客さんがおらんとな」
何だかんだで店の話をする美咲だった。
「どうしようもないしな」
「商店街なあ」
「そんなに辛いんか」
「やっぱり」
「どうしても」
「全体的にな、うちなんかおとんも病気になったし」
この話もするのだった。
「何かとしんどいわ」
「やっぱり景気の話かいな」
「ほんま大概やな」
「けれど何とかならんかな、実際」
「天下茶屋確かに景気よくないわ」
結局男子生徒達もそうした話をした、とにかくだ。
美咲は自分の店つまり家のことを心配していた、家でも弟の健一と妹の美菜に言うのだった。
「節約、節約やで」
「無駄使いはするな」
「そういうことやな」
「そや、お金がないのは命がないのと同じや」
ちゃぶ台を囲んだ夕食の場での言葉だ。
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