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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第175話

~戒の領域・最奥~



「話を戻しますが……そんな事をしてマリアベルさんに何の意味があったんですか?計画にキーアが必要ならそのまま保護すれば良かったのに……」

「一つは”黒月(ヘイユエ)”とあわよくば”ラギール商会”も巻き込んで、ルバーチェ側の面目を失墜させ、自滅の第一歩とすること……もし、競売会の場で彼女が目覚めることになったらマリアベル嬢が動いたはずだ。動揺する客とマルコーニを前にIBCの名を出してあの子の保護を買って出るつもりだったのだろう。”黒月”と”ラギール商会”が動いたら別の展開があっただろうが……いずれにせよ、あの時は”この俺も会場内に潜伏していた”。どんな展開になったとしても収拾できる態勢は整っていたわけだ。」

ロイドの疑問を聞いたアリオスは答え

「……なるほど。という事はロイド達があの時敗北した場合、絶妙なタイミングで助けるつもりだったのね。」

「……さすがに”キリングベア”といえど相手が”風の剣聖”となると敗北は濃厚だったでしょうね……ロイド君達に勝利したとしても、戦闘の疲労が残っているでしょうし…………」

「……まあ、敵を騙すにはまず味方からという戦略は昔からありますが……その味方が”真の敵”だとはその場で助けられた者達は誰も思わないでしょうね。」

アリオスの答えを聞いたルファディエルは厳しい表情になり、エオリアは複雑そうな表情で呟き、フェミリンスは真剣な表情で呟き

「なんつーか……ウルトラCすぎんだろ。」

「用意周到すぎます…………」

「気配の遮断も”達人”クラスか…………」

ランディは疲れた表情で溜息を吐き、ティオはジト目で呟き、ヴィクターは真剣な表情でアリオスを見つめ

「……確かにあの時、他にも何者かが潜んでいる気配を感じたが……まさかお前だったとはな。」

「その場にいたのに助けなかったなんて……ガイさんが知ったら怒ったでしょうね。」

ツァイトは厳しい表情で真剣な表情のセシルと共にアリオスを見つめた。

「そしてもう一つは……あのような特異な状況で”至宝”を目覚めさせることで潜在能力を見極めるという事だ。」

「キーアの潜在能力を見極める?」

「ど、どういう事ですか……?」

アリオスの説明を聞いたティオは目を丸くし、エリィは尋ねた。



「さて―――マリアベル嬢がそう言っていたというだけだ。恐らく、あの子を長き眠りから目覚めさせる条件の一つなのかもしれないが……いずれにせよ、女神の導きか、それとも単なる偶然か、彼女はお前達の前で目覚めた。マリアベル嬢にしたら完全に想定外だった筈だが……あの子がお前達に引き取られ、一緒に暮らす事になったのも含めて歓迎しているかのようだった。」

「……………………」

(……大方キーアに親しい者達を作らせて、その者達に危機が迫った時その身に秘めた”至宝”の力を覚醒させやすくする為でしょうね……)

アリオスの話を聞いたロイドは考え込み、ルファディエルは目を細めて考え込み

「……ダメだ。ワケがわからねぇ……」

「……ベル……いったい何のつもりで……?」

ランディは疲れた表情で溜息を吐き、エリィは複雑そうな表情で考え込んだ。

「……それじゃあ……兄貴が亡くなった日の事……その真実を教えて貰えますか?」

「…………っ…………」

「…………ぁ…………」

ロイドの質問を聞いたダドリーは表情を引き締め、ティオは辛そうな表情になり

「「…………………」」

セシルとルファディエルは真剣な表情でアリオスを見つめていた。

「…………………いいだろう―――」

アリオスは目を伏せて黙っていたがやがて目を見開いて語り出した。



……サヤを亡くして警察を離れてから2年……俺はイアン先生たちの計画に協力し、幾つもの工作を成し遂げていた…………いずれも後ろ暗い……陰謀めいた工作ばかりだ。だが、ギルド関係者を始め、それを誰かに感付かれることは遂になかった。



ガイ・バニングス……かつての俺の相棒を除いては。



ガイは……あいつは凄まじいほどの嗅覚と粘り強さで様々な陰謀と秘密に迫っていた。エレボニアとカルバードによる暗闇…………ハルトマン議長とルバーチェ、そしてD∴G教団残党の動き……その更に背後にある、クロイス家の計画にまで……



そして―――あの雨の日、ガイは俺を着工したばかりのオルキスタワーの建設現場に呼び出した……



無論、計画の詳細までは掴んでいなかったが……ガイの推測は驚くほど的確で計画の全体像をとらえていた。教団とマフィアを利用したクロイス氏の政界進出……外国勢力の仕業に見せかけてクロスベル市を襲撃させることで独立の気概を煽る事……



更にはクロイス家の”何か”で大陸全土を威圧・主導する事……信じ難い事にそんな事まで指摘しのけた。



そして――――……手を引けと言う俺の言葉をガイは受け入れず……俺達は雨の中、死闘を始めた。武術の腕は俺がやや上……だが、ガイには揺るぎない意志による力がみなぎっていた。



何十合と打ち合い、お互いの体力を奪い合いながら雨の中の死闘は続き……そして――――



そしてガイは……命を落とすこととなった。当然、あいつのトンファーを現場から持ち去ったのは俺だ。トンファーに無数に刻まれた刀傷から犯人を特定されたくなかったからだ。特にルファディエルあたりなら刀傷を見た瞬間、瞬く間に俺に辿り着いただろうからな……



「……………………」

「…………そんな事が…………」

アリオスの説明を聞いたロイドは考え込み、ティオは悲しそうな表情になり

「「…………………」」

ルファディエルとセシルは真剣な表情でアリオスを見つめていた。

「……これがあの雨の日、起こった事件のあらましだ。その後、マフィアの手下が現れ、ガイのバッジを持って行かれたのはさすがに想定外だったが……いずれにしても、これで大体の疑問には答えられただろう。」

アリオスは重々しい様子を纏って答えた。

「――――いえ。」

しかしその時、ロイドは真剣な表情でアリオスが答えた”真実”を否定した!



「………………」

ロイドの答えを聞いたアリオスは呆けてロイドを見つめた。

「当然知っているでしょうが、兄貴の死因は”銃撃”によるものです。その事についての説明が無かったみたいですが……?」

「そうですね……その事について、以前”僧院”で出会った時、私も指摘したはずですが……?」

「……警察にいた頃に拳銃の扱いは習得している。しつこく喰い下がってくる面倒な相手に業を煮やして使ったまでだが……?」

ロイドとセシルに尋ねられたアリオスは真剣な表情で答え

「嘘だな―――マクレイン。そのような死闘の中で別の得物を構える余裕などあるものか。ましてや相手の背中から止めを刺すなど不可能だ。」

「一瞬の隙が敗北につながる……そのような死闘で別の武器に持ち替えられる余裕はありえんな。」

ダドリーとヴィクターはそれぞれ真剣な表情で答え

「……この期に及んでまだ隠し立てするつもりなのですか……」

「アリオスさん…………いい加減諦めて、全てを話してください。もう貴方達は色々な意味で完全に敗北しているのですよ……?」

フェミリンスは厳しい表情で、エオリアは辛そうな表情でアリオスを見つめて言った。

「………………」

ダドリー達の話を聞いたアリオスは黙り込み

「まあ、道理ってヤツだな。」

「いったい”誰”がガイさんを撃ったのか……」

「……話してください。」

ランディは頷き、エリィは考え込み、ティオは真剣な表情でアリオスを見つめた。

「―――その事についてだけど、誰が真の犯人なのか推理できているわ。」

その時ルファディエルは静かな表情で答え

「ええっ!?」

「何だとっ!?」

「………………」

ルファディエルの答えを聞いたエリィとダドリーは驚き、アリオスは信じられない表情でルファディエルを見つめ

「……言っておくけど、ロイドも既に誰が真犯人か推理できているわよ?」

「オイオイオイ!?マジなのか!?」

「……一体誰なんですか、ロイドさん。」

ルファディエルの話を聞いたランディは驚いて声を上げ、ティオは真剣な表情でロイドを見つめて尋ねた。



「…………ああ、それは――――」

そしてロイドが答えかけようとしたその時!

「…………!」

なんとアリオスが刀を抜いてロイドに強襲した。しかし!

「……っ!」

「話の最中で奇襲をかけるとは……よほど知られたくない事のようだな?」

なんと同じように大剣を既に抜いていたヴィクターがロイドの前でアリオスの刀を受け止めていた!そして攻撃を受け止められたアリオスは後ろに跳躍して刀を構えてロイド達を睨んでいた。

「……見損ないました、アリオスさん。そこまでするなんて…………」

「かつては”剣聖”と称えられていた者が話の最中に奇襲をかけるとはな…………」

「どうやら完全に”墜ちた”ようですわね…………」

エオリアは蔑みの表情でアリオスを見つめ、ツァイトとフェミリンスは厳しい表情でアリオスを睨んでいた。



「……何を言われようとガイを死に追いやったのは俺以外の何者でもない。そして俺は……かつての相棒を犠牲にしてまで計画に協力する道を選んだ。そして今もなお……いたいけな少女の想いを利用して計画を完了させようとしている。全てはサヤのため……そしてシズクの未来のために。」

「…………アリオスさん…………」

アリオスの答えを聞いたロイドは真剣な表情でアリオスを見つめ

「シズクちゃんがこんな事をして喜ぶとでも……?」

「……私達があの娘を見つけた時……泣きながら私達に謝っていましたよ……」

エリィとセシルは複雑そうな表情で言った。

「無論、喜ぶわけがない。だが――――クロスベルという地の呪いはあの子から母と光を奪った。そしてクロスベルが大陸のこの位置にある以上、呪いは決して消えることはない。――――人の世の理を超越した”奇蹟”でも起きない限りは。」

「……!?」

アリオスの答えを聞いたロイドは目を見開いた。そしてアリオスは全身に膨大な闘気を纏うと共に自分の左右に分け身を現させた!

「分け身の戦技(クラフト)…………!」

「チッ!一人でも厄介だってのに、それが3人もいるのかよ!?」

アリオスの分け身達を見たエオリアは真剣な表情で呟き、ランディは厳しい表情で呟いた。

「―――無用な心配ですわ。女神たるこの私がいるのですから。」

「僭越ながら分け身の相手の一人は私も相手する。そなた達で全ての決着をつけるがいい……」

するとその時フェミリンスとヴィクターがそれぞれ武器を構えてアリオスの分け身達と対峙した!



「3年前ガイは……俺の事を一言も責めず、死闘の果てに命を落とした。そして”至宝”となった彼女(キーア)はシズクの目を治してくれた。もはや――――後戻りできる道理はない。例え相手が”神”であろうと……この道は阻ませない。……承服できなければ力をもって止めてみるがいい。兄の遺したそのトンファーで……見事、兄の仇を討って大切なものを取り戻すための道を切り拓いてみせるがいい……!」

そしてアリオスはロイド達に刀を向けて叫んだ!

「……わかりました。だが―――兄貴の仇を取るつもりは毛頭ありません。」

アリオスの叫びに対しロイドは静かな表情で答えた後トンファー――――『オメガブレイカー』を構えると共に膨大な闘気を纏った!

「ガイ・バニングスの意志を継いで立ち上げられたささやかな部署として……シズクちゃんを始め、大勢の人々の想いを託された”特務支援課”として……貴方という”壁”を乗り越え、キーアを取り戻して……本当の意味で事件を解決してみせる!そして…………これ以上悪事に染めて欲しくないという兄貴の想いも込めて……クロスベル警察捜査官として…………――――貴方を逮捕する!アリオス・マクレイン!!」

「…………!」

ロイドの決意を聞いたアリオスは目を見開き

「ハハ……さすがは俺らのリーダー!」

「……見事な決意だ。」

「……それでこそ、この私と守護の契約を結んだ”英雄”…………」

「成長したわね、ロイド…………」

「フフ……こんなにも早くエステル達が見せてくれた人々が持つ”真の強さ”を再び見る事になるとは思いもしませんでしたわ……」

ランディやヴィクターはそれぞれ口元に笑みを浮かべて感心し、ルファディエルとセシル、フェミリンスは微笑み

「自分の身と引き換えにアリオスさんを護ろうとしたシズクちゃんのためにも……」

「……絶対に退けません……!」

エリィとティオはそれぞれ決意の表情でアリオスを見つめ

「人の子達は”絆”によって”真の強さ”を発揮する……それはいつの時代も変わらんな。」

「フッ……仕方のないヤツらだ。」

「全力で手伝うわ!」

ツァイトとダドリーは静かな笑みを浮かべ、エオリアは決意の表情で叫んだ後それぞれ武器を構えた!

「フフ――――いいだろう。」

ロイド達の決意の表情を見たアリオスは静かな笑みを浮かべ

「八葉一刀流、二の型奥義皆伝、アリオス・マクレイン……一身上の都合により、義に背き、道を外れ、勝手を貫かせてもらう!来るがいい――――特務支援課!」

決意の表情でロイド達を見つめて叫び

「おおっ!!」

ロイド達全員力強く答えた後戦闘を開始した!



今ここに!かつては”クロスベルの真の英雄”と称えられた”風の剣聖”アリオス・マクレインとの決戦が始まった…………! 
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