英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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外伝~アンゼリカの道~
~ルーレ・ログナー侯爵邸~
「お見事ですの、エイダ様♪怪我はしていませんの?」
ログナー侯爵から離れたエイダを見たリューンは嬉しそうな表情で話しかけ
「うむ、お前のサポートのお蔭で傷一つついておらぬ。」
「よかったですの♪…………もう”あの時”みたいにエイダ様を失うのは嫌なんですの。」
「すまぬな、リューン…………だが、今度はあの時のように不覚は取らぬぞ。」
嬉しそうな表情になった後悲しそうな表情をしたリューンの言葉を聞いたエイフェリアは目を伏せて呟いた後口元に笑みを浮かべ
「……その事を抜いても私が言いたい事はまだまだいっっっぱいあるですの!これを機会にこれからは食事をちゃんと取って、睡眠も十分に、そして毎日お風呂に入るですの!!」
リューンは真剣な表情でエイフェリアを睨んで叫び
「……善処しよう。」
エイフェリアは冷や汗をかきながらリューンから視線を逸らして呟いた。
「あ―――――ッ!その様子だと懲りずにまた研究ばかりするつもりですのね!?」
エイフェリアの様子を見たリューンは叫び
「あ、当り前であろう!今度は魔導技術に加えて導力技術なる異世界の未知なる技術があるのだぞ!?今すぐにでも研究がしたいぐらいだっ!!」
エイフェリアは焦った様子で答えた。
「全くもう…………そんな事ばかりしているから婚期を逃がしますの。」
エイフェリアの答えを聞いたリューンは呆れた表情で溜息を吐き
「うぐっ!?フ、フン!ヴァイスハイトがいるから大丈夫だ!」
リューンの言葉を聞いたエイフェリアは表情を引き攣らせた後気を取り直して答えた。するとその時
「エイフェリア元帥!報告があります!」
クロスベル帝国兵が部屋に入って来た。
「どうした?」
「ハッ!ある部屋に突入した時、ログナー侯爵の息女を名乗る娘がおり、その娘が投降してきたのですが…………どうしてもエイフェリア元帥に聞きたい事があると。」
「わらわに?―――いいだろう。ここに通せ。」
「ハッ!」
そして少しの時間が経つとクロスベル帝国兵に連れられたドレスを着た紫髪の娘―――――ログナー侯爵の娘であるアンゼリカ・ログナーが兵士達と共に部屋に入って来た。
「父上………………………」
部屋に入って来たアンゼリカはログナー侯爵の死体に気付いて驚いた後呆け
「…………フッ。鉱山員達を犠牲にしようとした挙句、エレボニアを混乱させたのだから、当然の報いか。」
すぐに気を取り直して嘲笑した。
「ほう?父親が死んだというのに悲しみもせぬのか?」
アンゼリカの様子を見たエイフェリアは目を丸くして尋ね
「元々父上とは互いの考え方の違いで仲が悪かったし、父上自身も自分の意向に従わない私を厄介者扱いしていたからね。それに私も貴族の”しがらみ”にはうんざりしていたからね。貴女達が”ログナー侯爵家”を滅ぼしてくれたおかげで、ようやく私も”ログナー侯爵家”の枷が取れたよ。」
「……………それでわらわに聞きたい事とは何だ。」
アンゼリカの説明を聞いて考え込んでいたエイフェリアは尋ねた。
「まず私の身はどうなるのかな?あ、先に言っておくけど私は貴女達に逆らうつもりなんてこれっぽちもないよ。私は武術を嗜んでいるけど、いくら何でもこの状況で戦っても犬死する事は理解しているし、父上の仇を取るつもりなんてさらさらないし。」
「…………話を聞く限り、わらわ達に対して敵対心を持っておらぬようだからすぐにでも自由の身にしてもよいが?ログナー侯爵家が滅んだ今、もはやお前には何の力もないしな。せめてもの慈悲として”ログナー侯爵家”の財産のおよそ10分の1を与えよう。”ログナー侯爵家”がどれ程溜め込んでいるかは知らぬが……少なくとも自分の新たな未来を見つけるまでの生活費ぐらいはあるであろう?」
「まあね…………もう一つ聞きたい事があるのだけど…………――――ルーレの市民達やザクセン鉄鉱山はどうするつもりなのかな?」
エイフェリアの答えを聞いたアンゼリカは口元に笑みを浮かべた後真剣な表情で尋ねた。
「ルーレに関しては予めメンフィルとクロスベルの共同で納める話が決められていてな……恐らくだがメンフィルとクロスベル……両国の”民”として扱う事になるだろう。勿論民として扱うからには民達を虐げるつもりは一切ない。それとザクセン鉄鉱山については今後はメンフィルと協力して鉄鉱山の発掘を行い、資源をメンフィルと分担する事になる。」
「……………………鉄鉱山に勤めているラインフォルトの鉱山員達はどうするつもりだい?」
「ザクセン鉄鉱山がメンフィルとクロスベルの所有物になった以上、一度ラインフォルト社の鉱山員達には鉱山から退去してもらう。―――勿論、メンフィルとクロスベルに雇われる形でもいいのなら鉱山員として再び雇う事も鉱山員達に提案する上、給与も今までの倍は出すつもりだ。」
「なるほど…………それを聞けて安心したよ…………どうやらエレボニアはこのまま滅んだ方が民達にとってはいいようだね……」
エイフェリアの説明を聞いたアンゼリカは安堵の表情になった後皮肉気な笑みを浮かべて言い
「……………エイフェリア元帥殿。クロスベル、メンフィルがルーレを含めたノルティア州の領地経営をする際、どうか私を二国の”部下”として雇って頂きたい。」
頭を深く下げて意外な事を言った。
「あら。」
「ム…………?理由を聞いてもいいか?」
アンゼリカの言葉を聞いたリューンは目を丸くし、エイフェリアは眉を顰めた後真剣な表情で尋ねた。
「これでも愛郷心は持っていてね。今まで私を慕ってくれていたルーレの市民達やザクセンの鉱山員達が今後の状況で不安がっている中、彼らやログナー家が納めていたノルティア州に済む民達の為に私も何かしてあげたいんだよ。」
「どうやら娘は内戦を起こした父親と違って、”貴族”としてまともな思考を持っているようですわね。」
「フム…………その話が本当ならば市民達にも安堵感が生まれ、領地経営もスムーズになるであろうから、一考の余地はあるな………―――――よかろう。その話についてはメンフィルと相談し、判断する。―――指示があるまではホテルに部屋を取って待機しておけ。宿泊費用程度ならばわらわ達の方で出そう。…………まあ、指示が来るとしても今回の戦争が終わってからになるであろうから、戦争が終わるまでは外に出てルーレ内の様子を見回る程度なら出歩いても構わん。」
頭を上げ、決意の表情で言ったアンゼリカの話を聞いたリューンは意外そうな表情をし、エイフェリアは考え込んだ後アンゼリカを見つめて言った。
「感謝致します。………それでは着替えと荷物の用意をする為に自室に戻らせてもらっても構わないですか?用意が済み次第すぐに屋敷を出ますので。」
「うむ。宿泊場所が決まったら、屋敷を守る兵達に知らせよ。」
「かしこまりました。――――それでは失礼いたします。」
そしてアンゼリカは部屋を出て行って自室で着替えた後荷物を纏めて屋敷を出て、空を見上げ
(落ち着いたら君達の所にも、必ず顔を出すよ。トワ、ジョルジュ……それにアリサ君達も。クロウは…………できればどこかで生きている事を女神に祈っているよ。)
かつて自分が過ごした士官学院の仲間達の顔を思い浮かべた後、その場から去って行った…………………
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