Three Roses
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第十一話 葬儀と即位その十
「何度も言うがな、それで王だが」
「銀の食器を使われていませんが」
「使われる様に勧められますか」
「そうされますか」
「する必要はない」
微笑みだ、太子は側近達の問いに答えた。
「確かに我々は王、そしてこの国の味方だが」
「それでもですね」
「王がいなくなればですね」
「その時はマイラ様が女王になられる」
「その望みが出るからですね」
「何もしない、何もな」
笑っての言葉だった。
「一切な」
「ですか、では」
「今は待たれるのですね」
「手を打ちつつ」
「然るべき時を」
「そうだ、何もしない」
また言った太子だった。
「王に対してはな、王は明らかにだ」
「病ですね」
「それに罹られていますね」
「王は気付かれていませんが」
「王の周りの方々も」
「帝国の医師なら気付いていたな」
太子は側近達の中にいる医師に顔を向けて問うた。
「そうだな」
「はい」
医師もはっきりと答えた。
「私も気付きました」
「そうだな、王はだ」
「病です」
それに罹っているとだ、医師は答えた。
「それは徐々に身体を蝕む病です」
「表には出ずにな」
「徐々にです」
「そして表に出た時にはだな」
「はっきりとですが」
その時はというのだ。
「もう命が尽きることがです」
「近い時だな」
「そうです、今は身体の中を徐々に蝕んでいる時です」
「そうした時だな」
「これはこの国の医学ではわからないものです」
医師は太子に鋭い目で答えた。
「どうしても」
「しかし帝国の医学は違う」
「異教徒の医学も取り入れてです」
「かなり進んでいるな」
「はい、ですから」
その医学を以てというのだ。
「私ならばわかります」
「王は不治の病に侵されている」
「左様です」
「では、だな」
「我々はそのことを頭に入れて」
「そしてだな」
「動いていくべきかと」
医師は太子に側近としても進言した。
「このまま」
「わかっている」
太子は今はにこりともせず答えた。
「ではな」
「はい、それでは」
「このまま動いていこう、妃ともだ」
太子はマイラ、彼の妻のことも話した。
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