Three Roses
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第十一話 葬儀と即位その九
「それは」
「はい、帝国も同じです」
「皇帝の身辺は十重二十重に護りを固めています」
「むしろこの国以上にです」
「周りは固めています」
「その通りだ、しかもだ」
太子は祖国から取り寄せたワインをここで飲んだ、赤いそれの味を楽しんでから彼の側近達にこう話した。
「解毒剤も毒がわかる器も用意してある」
「何かあった時の為にです」
「全て用意しています」
「銀の器も」
それが毒があるかどうかわかる器だ、銀の食器はその上や中にある料理が毒ならば曇ってしまうのだ。
「この国は銀の容器ではないですが」
「質実剛健を尊ぶが故に」
「それが仇になっていますね」
「そうなっていますね」
「そうだな」
まさにというのだ。
「それがな」
「はい、全くで」
「太子も銀の器を使われていますが」
「この国では違います」
「それ故にこのことにも気付いていませんね」
「贅沢はしてもいいのだ」
こうも言った太子だった。
「それがかえって己の身も守るしな」
「そこから文化も生じますし」
「禁欲一辺倒よりも遥かにですね」
「あっていいですね」
「そうしたものですね」
「そうだ、神の御教えは贅沢を戒めているが」
しかしというのだ。
「それでもだ」
「贅沢が出来るならですね」
「それがいいですね」
「太子の様な贅沢も」
「それも」
「そうだ、少なくとも私は民を虐げるつもりはない」
このことは誓って言う太子だった。
「それは皇帝の為すことではない」
「皇帝であろうともですね」
「君主のすることではないですね」
「到底」
「まさにですね」
「そうだ、君主はだ」
青い血が流れる者はというのだ。
「国の第一の僕、ならばな」
「民に平穏と冨貴をもたらすべきで」
「虐げてはなりませんね」
「搾取もまた」
「それも」
「そうだ、贅沢をしてもだ」
それを楽しもうともというのだ。
「誰も苦しめることはしない」
「浪費はしない、ですね」
「無駄なそれは」
「散財も」
「それもですね」
「それはしないに限る」
何があってもというのだ。
「青い血の持ち主としてな」
「その通りですね、ではです」
「太子はこれからもその様にされますね」
「贅沢をされますがそれに溺れず」
「贅沢を楽しまれますね」
「民を苦しませずに」
「そのつもりだ、ロートリンゲン家は戦を好まないが」
このこともこの家の伝統だ、だからこそ婚姻政策に力を入れてきていてそれによって力を得てきたのである。
「戦になれば最初に民が傷付くな」
「はい、確かに」
「その通りです」
「溺れることはしない」
贅沢、それにというのだ。
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