英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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外伝~それぞれの夜~中篇
~メルカバ伍号機・会議室~
「う~……誰かあたし達の噂でもしているのかしら?」
「もしかしたらロイドさん達かもしれないよ?」
「ハハ、確かにありえそうだね。」
「お母さんは有名人だものね。ちなみに私の場合はセリカ達かしらね?」
くしゃみをし終え、首を傾げたエステルの言葉にミントは微笑み、ヨシュアは苦笑し、サティアは微笑み
「だからその『お母さん』って呼び方は止めてって言ってるでしょう!?」
エステルは疲れた表情でサティアを見つめて指摘した。
(ね、ねえ………今の彼女、どう見ても………)
(マ、”マザコン”ですよね?ア、アハハ………)
(………使命感に溢れていたあの女神が変われば変わるものだな。)
(た、確かに元からエステルの事は好きだったようだけど………ここまで変わるなんて………サティアはずっと孤独でいたから、”家族”という”絆”や甘えさせてくれる人達がようやくできて、その反動が一気に来たのかしら………?)
(ク、クー……………)
(私が言うのも何ですがエステルが本当に人間なのか、疑ってしまいますよ………)
(グオ。)
その様子を見ていたニルとテトリは冷や汗をかいて苦笑し、サエラブは静かな口調で呟き、パズモは表情を引き攣らせ、クーは戸惑い、フェミリンスは疲れた表情で呟き、フェミリンスの言葉に答えるかのようにカファルーが頷いた。
「う、う~ん……例えそうでもクレハは絶対に噂されないと思うけど………」
「そうなの。第一ティオは”試練”ではクレハ様と会っていないの。」
一方ナユタは苦笑し、ノイは頷きながら言い
「フフ、正しく言えば私自身もその”影の国”でナユタ達が出会った仲間の人達とは出会っていないのだけどね。」
クレハは微笑んでいた。
「フフ……それにしてもまたこうして集まる事ができるとは思いもしませんでしたね。」
「ハハ、ドギが知ったら『何で俺も一緒に連れて行かないんだ!』って言われそうだな。」
微笑みながら言ったエレナの言葉にアドルは苦笑しながら答え
「フフ、そうかもしれませんね。それにしても……まさかエステルさん達が私達の子孫だって話を聞いた時は最初は驚きましたね………」
「ええ………ミントさんがお母様達を連れて私の時代に来て、私の目の前に現れた時は本当に驚きましたよ………………」
フィーナは微笑み、優しげな微笑みを浮かべて言ったエイドスは黙り込んだ。
「エイドス?」
「どうかしたのか?」
エイドスの様子に気付いたフィーナは首を傾げ、アドルは尋ねた。
「いえ………その………私がクロイス家の方達に”至宝”を授けたせいでお父様達だけでなく、ナユタお祖父様やクレハお祖母様にまで迷惑をかけてしまって、本当に申し訳ないなって思いまして………」
「うっ!?ぼ、僕が祖父………!?まだ10代なのに………い、いや、確かにエイドスさん達は僕達の子孫だって話だから間違ってはいないけど…………」
「はうっ!?わ、私が祖母………!?子供どころか結婚もまだなのに………た、確かに人間の歳に換算すると相当生きているけど……………」
辛そうな表情で言ったエイドスの言葉を聞いたナユタとクレハはショックを受け、暗い雰囲気を纏ってブツブツと呟き
「ク、クレハ様!?それにナユタも!二人ともしっかりしてなの~!!」
二人の様子を見たノイは慌てはじめた。
「フフ、気にしないで。私は立派に成長した貴女と会えて嬉しかったわよ。」
「ああ………僕もだ。父親らしい事をできなかった所か姿すらも見る事ができなかったからね…………まあ、結婚している事にはちょっと驚いたけど。」
一方フィーナは微笑み、アドルも微笑んだ後苦笑し
「フフ、あれのどこが”ちょっと”なんですか?エイドスさんが結婚している事を話した時、アドルさん、表情を青褪めさせていましたよね?」
「ハ、ハハ………」
からかいの表情で言ったエレナの言葉にアドルは冷や汗をかいて苦笑していた。
「あ、あの~、エイドスさん。」
「で、できれば私達の事を祖母や祖父扱いしないで欲しいのだけど………だって私達、子供がいるどころか、まだ結婚もしていないんだから。」
その時、それぞれ立ち直ったナユタは表情を引き攣らせながらエイドスを見つめ、クレハは大量の冷や汗をかいて苦笑した後、疲れた表情で言った。
「フフ、ごめんなさい。私ばっかりやられっぱなしは悔しかったですのから、そのはけ口としてナユタさん達がちょうどよかったので。」
二人の言葉を聞いたエイドスは微笑み
「い、意外と根に持つわね~。」
「何せ私は貴女の先祖ですし。」
「クスクス…………普通の女性なら”祖母”扱いされたら、誰でもショックを受けるわよ。」
エステルはジト目でエイドスを見つめ、見つめられたエイドスは静かな笑みを浮かべ、サティアは微笑み
「アハハ………ゼムリア大陸の人々が今のエイドスさんを見たらきっと驚くだろうね………」
「きっとどころじゃなく、絶対驚く………というか卒倒する人達も出てくるよ………今まで抱いてきたイメージとはかけ離れすぎているもの………」
ミントは苦笑し、ヨシュアは疲れた表情で言った。
「フフ、別に私は”神”を名乗った事は一度もありません。周りの人達が”空の女神”と呼んでいるだけですし。勝手に”神”扱いされてとてつもなく持ち上げられたイメージを持たれていても迷惑ですし、そんな人達がショックを受けても私の責任ではないですよ。」
「ケビンさん達や七耀教会の人達にとっては耳が痛い話だろうね。」
「まさか崇めていた”神”自身が崇められている事を嫌がっているなんて、想像もできないでしょうしね。」
微笑みながら言ったエイドスの言葉を聞いた冷や汗をかいてヨシュアは表情を引き攣らせ、サティアは微笑んでいた。
「あ!そういえばナユタ君!”影の国”の件が終わっていつからクレハちゃんと付き合うようになったの!?」
「ミントもすっごく気になる!」
その時ある事を思い出したエステルは興味深そうな表情をしているミントと共にナユタを見つめ
「ええっ!?え、え~と………」
見つめられたナユタは驚いた後言葉を濁したが
「………1年後なの。」
「ちょっ、ノイ!?」
顔に青筋を立てたノイが呟いた言葉を聞いたナユタは驚いて声を上げてノイを見つめた。
「1年!?二人の気持ちは”影の国”の”試練”を終えたその時からわかっていたのに!?」
ノイの言葉を聞いたエステルは驚いた後信じられない表情でナユタを見つめ
「二人とも可哀想………」
「そうね。特に想いが募らなかった方が可哀想すぎね………1年も待たせるなんて。」
ミントは悲しそうな表情をして、静かな怒りを纏ったサティアと共にナユタを見つめ
「酷すぎますね。」
「ええ、付き合わなかった女性に対しても失礼ですし、クレハさんに対しても失礼ですね。」
「男性ってどうしてこう、女性を待たせるのでしょうね?私も夫とは運命的な出会いを果たした後、ずっと愛し合っていたのに、肝心の結婚の申し込みは遅かったですし………」
「返事をもらうまで、毎日やきもきさせられたし、ナユタに私の事を好きになってもらう為にどれだけ頑張ったか………」
エレナやフィーナは若干怒りの表情で、エイドスは呆れ、クレハは溜息を吐いた後ジト目でナユタを見つめた。
「ええええええええええええええっ!?な、なんで皆さん、そこで僕を責めるんですか!?」
一方エステル達――――女性陣全員に睨まれたり見られたナユタは驚いて声を上げ
「返事を伸ばし過ぎたんだから当然なの!」
「ノイ、君までっ!?ううっ………何で未来に来て早々こんな目に………」
胸を張って言ったノイの言葉を聞いてさらに驚いた後疲れた表情て溜息を吐き
(な、何だか他人事に思えないな………)
(ブライト家の女性は怒らせたら元々恐いけど………よりにもよってこのメンバーが揃うなんて、責められる男性にとっては悪夢のようなメンバーだな………………)
その様子を見ていたアドルとヨシュアは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせていた。
「フフ………それにしてもアネラスさんがこの事を知ったら、大喜びしそうだね~。」
「そういえばアネラスさん、ノイちゃんの事、すっごく可愛がっていたものね。」
その時微笑みながら言ったミントの言葉にエステルは苦笑した。
「ヒィ!?ガクガクブルブル………!お、お願いだからその名前は出さないでなの~!!」
するとノイは悲鳴を上げた後表情を青褪めさせて身体を震わせ始めて叫び
「ノ、ノイ!?どうしたの??」
「アハハ………ノイにとっては凄く苦手な人だったしね……ノイの事が大好きなのは良いんだけど………」
ノイの様子を見たクレハは戸惑い、ナユタは苦笑していた。
「あ………でもエオリアさんがアネラスさんと一緒で可愛いものが大好きだからノイちゃんを見たらきっと同じ反応をするんじゃないかしら?」
「た、確かにそうだね。」
「アネラスさんと一緒でミントを”可愛い”って言って抱きしめたりしてくれたものね。」
「そういえば………エオリア、アネラスと一緒でレシェンテやたまに屋敷に顔に出すリタ達を”可愛い”って言って、いつも幸せそうに抱きしめているわ。」
そしてある事を思い出して呟いたエステルの言葉を聞いたヨシュアとミントは苦笑しながら頷き、エステルに続くようにある事を思い出したサティアは呟き
「えええええええええええっ!?アネラスみたいなのがもう一人いるの!?か、勘弁してなの―――――――――ッ!!何で未来に来てまでそんな目にあわなくちゃならないの~~~!?」
エステル達の話を聞いたノイは声を上げた後悲鳴を上げ
「え、えっと………ナユタ?ノイはそのアネラスって人に一体どんな事をされたのかしら?」
ノイの様子を見たクレハは冷や汗をかいて戸惑いの表情でナユタに尋ね
「う、う~ん………アネラスさん自体はノイの事が大好きなんだけど………接し方がちょっと特殊だったんだよなあ………」
尋ねられたナユタは冷や汗をかきながら苦笑し
「あれのどこが”ちょっと”なの!?」
ノイは疲れた表情で指摘した。
「クスクス………お母様達はこんな楽しい方々と一緒に過ごされたのですね………」
その様子を見ていたエイドスは微笑みながらフィーナ達に視線を向け
「ええ………あの時過ごした時間は私にとって一生の宝物よ………」
「勿論僕にとっても同じさ。あんなにも多くの仲間達と共に行動をしたのは初めてだしね。」
「そしてナユタさん達がフィーナさんの祖先で、エステルさん達が私達の子孫………フフ、不思議な”縁”ですね。」
フィーナは優しげな微笑みを浮かべ、アドルは静かな笑みを浮かべ、エレナは微笑みながらエステル達を見つめた。
「―――そうだ!せっかくこうして未来、過去とブライト家が揃ったのだから、”家族写真”を撮りましょうよ!」
その時エステルは明るい表情で提案し
「わあ♪いい考えだね、ママ♪」
「ええ………フフ、自分の時代に帰る時の良いお土産になるわ。」
提案を聞いたミントは嬉しそうな表情をし、サティアは微笑み
「”家族写真”か………僕にとっても絶対に会えない娘の写真ももらえるから良い考えだね。」
「私にとってもまたとない機会です。これからはお父様達と写った写真を持って、いつでもお父様達を見られるのですから………」
アドルとエイドスは静かな笑みを浮かべ
「フフ、なんだか”影の国”で撮った記念写真を思い出しますね。」
「ええ………2度と手に入らない写真ですね………」
エレナとフィーナは微笑み
「子孫と先祖が混じった家族写真なんて普通に考えて絶対に手に入らないよね……」
「フフ………でも私達は今こうして時を超えて子孫達と共に時間を過ごす事ができるものね。」
「今後絶対にない機会だからちょうどいいの!」
ナユタは苦笑し、クレハは微笑み、ノイは嬉しそうな表情で頷いて言い
「ハハ………とんでもなく豪華な家族写真になりそうだね……」
ヨシュアは苦笑しながら言った。
「決まりね!それじゃあケビンさん達に頼んでくるね!!」
そしてエステルはケビンに事情を話し、全員ブリッジに集まってケビンにカメラで写真を撮ってもらった。
~ブリッジ~
「ほい、現像も終わったで。人数分、ちゃんとあるで。」
「ありがとう、ケビンさん!」
その後ケビンはエステルにエステル達―――ブライト家の一族が揃った”家族写真”を人数分渡した。
「そ、それにしても滅茶苦茶豪華な家族写真やな~。こんな写真があるのを教会のお偉いさん達が知ったら、卒倒する事間違いなしやな………ハ、ハハ……………」
「空の女神と空の女神のご両親、そして祖先の方達と共に写った写真なんて、私達からしたらとんでもない歴史的価値がある写真なのですがね………」
エステルに写真を渡したケビンは冷や汗をかいて渇いた声で苦笑し、リースは疲れた表情で言った。
「……そうだ!どうせならケビンさん達もエイドスと一緒に写真を撮ってもらって記念写真として保管しておけば?」
「へっ!?」
「エ、エステルさん!?」
そしてエステルの提案を聞いたケビンとリースは驚き
「それにいっそこれを機会にそれぞれの”家族同士”の写真を撮ってもらうのもどうかな♪」
「フフ、素敵な提案ですね。」
「私も賛成。この時代のエステル達と一緒に写っている写真は是非欲しいわ。」
ミントの提案を聞いたエイドスとサティアは微笑み
「え、え~と………これはもう完全に決まりなパターンっぽいな、ハハ………」
「よく次々と、私達では決して思いつかないとんでもない事ばかり思いつきますね………………まあ、私達にとってもとてつもなく光栄な事だからいいですけど………」
ケビンは苦笑し、リースは疲れた表情で言った後微笑んだ。
「おっしゃ!どうせなら君らもエイドスと一緒に撮ってもらったらどうや?こんなチャンス、2度とないで?」
その時ケビンは頷いた後端末を操作している星杯騎士達に提案し
「ええええええええええええっ!?」
「こ、光栄ですが………そんな恐れ多い事をしても本当にいいんでしょうか……?」
提案を聞いた星杯騎士は驚いたり戸惑ったりしていた。
「フフ、私は別にいいですよ。」
星杯騎士達の様子をエイドスは微笑みながら見つめて頷き
「エイドスが良いと仰っているのですから、ここは流れに乗っておく事かと。」
リースは静かな笑みを浮かべて言った。
「じゃ、じゃあ………!」
「後ででいいので、是非お願いします!!」
そして二人の言葉を聞いた星杯騎士達は嬉しそうな表情でエイドスを見つめて言った。その後様々な写真を撮ったエステル達は明日に備えてそれぞれが泊まる部屋に向かい、休み始めた。
こうして………世にも珍しく、決して手に入れる事ができない先祖と子孫、そして神々が写った”家族写真”ができあがった……………
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