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NARUTO~サイドストーリー~

作者:月下美人
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SIDE:A
  第八話



「忘れ物はない? ハンカチは持った? 自己紹介が肝心なんだからしっかり挨拶するのよ?」


「わかってるってばさー」


「母さんは少し遅れるけど、後で迎えに行くからね」


「うん。待ってるってばさ!」


「ハルトも! 大丈夫だとは思うけど、しっかりね。ちゃんと友達作るのよ? あなた、親しい友達が全然いないんだから」


「大丈夫だって。友達百人とは言わないけど、ちゃんと作るよ。んじゃあ、行ってきます!」


「行ってきまーす」


「行ってくるのじゃー」


「行ってらっしゃい」


 母さんに見送られ俺とクーちゃんは汐音と一緒に家を出た。


 今日がアカデミーの初登校にして初授業! アカデミーは前世で言うところの小学校のようなものだから、ぶっちゃけ今から小学生に混じって授業を受けに行きます。まあ俺も中身はともかく体は似たようなものだから無理はないか。


 本来なら関係者ではないクーちゃんは来てはいけないんだけど、俺の使い魔ということで特例として許可されている。まあ犬塚家の忍犬のようなポジション、かな。


 しかし、母さんに言われるまで意識したことなかったけど、よくよく考えれば俺って友達全然いないんだな。今のところは弟弟子のリー、汐音の友達であるシカマル、チョウジ、いの、キバと許嫁のヒナタくらいか。うわっ、少な!


 許嫁であるヒナタとはすでに顔合わせは済んでいる。彼女が六歳になった時の誕生日だな。そこでちょとしたハプニングが発生したのだが、それはまた次の機会にでも話そう。


「楽しみだねお兄ちゃん!」


「そうだな。なにかあったらすぐ兄ちゃんに言うんだぞ」


「大丈夫だってばさ! 向こうにはいのちゃんもヒナタちゃんもいるからね。今から楽しみー!」


 後ろを振り返り、従者のように一歩引いてついて来るクーちゃんを見上げた。


 ……俺もそこそこ背が伸びたけど、クーちゃんにはまだ追いつかないか。一五五センチとそこそこ伸びたんだけどなぁ。クーちゃんは一七五センチと俺より二十センチも上だし。


 まだまだカルシウムが足りないか。


「授業で男女別々になるときはクーちゃんは汐音のほうについて行って。クーちゃんが傍にいれば俺も安心だしな」


「……! う、うむ! 妾に万事任せるのじゃ!」


 嬉しそうに尻尾をふりふりさせるクーちゃん。あー、癒されるわ~。


 程なくしてアカデミーに到着した俺たちは汐音とクーちゃんを伴い教室へ向かった。


 扉を開けると教室内のいたるところから視線を向けられる。俺はそれらの視線を無視してぐるっと教室内を見回した。


(へー、大学みたいな感じなんだな)


 教壇を中心に扇状に横長の机が等間隔で置かれており、それが階段状に展開されている。


 パッと見ると前世でいうところの大学のような教室のつくりになっていた。


 俺の姿を見て早速席を立つ奴らを発見。俺も笑みを浮かべて彼らの元へ向かった。


「ようお前ら! ハルト、本当にお前も一緒なんだな!」


「わんっ」


「おう。特例だけどな」


「おはようキバくん!」


 最初に声を掛けてきたのは赤丸という名の子犬を頭に乗せたフードを被った少年――犬塚キバ。


 勝気な笑顔を浮かべたガキ大将のような少年だ。


「今年から俺たちもアカデミー生か、めんどくせぇ。ま、よろしくな」


「ああ、よろしく」


「シカマル、居眠りはしちゃだめなんだってばさ」

「あー、まあ気が向いたらな」

 気だるそうに答えながら片手を上げたのは奈良家の長男、奈良シカマル。


 影を操る独特の秘伝を使う一族の人間で、いつもやる気なさそうな態度をしているが、その実知能指数二百以上という切れ者だ。俺もたまにシカマルの家に行っては彼と将棋や囲碁を指すが一度も勝ったことがなかったりする。ちなみにシカマルの父は息子以上の腕前だ。親子揃って頭良すぎだよ。


 今日もまるでパイナップルのように髪をつむじ辺りで一つに縛っている。


「もぐもぐ……ポテチ食べる?」


「遠慮しとくよ。チョウジは相変わらずだな」


「まあね。食事は大事だよ」


「汐音は食べるー! あ、これ限定ポテチのカルビ味だ!」


「なんと! 妾ももらうぞ太っちょよ」


「いいよいいよ~」


 もりもりとポテチを食べているのは秋道チョウジ。


 自称ぽっちゃり、通称デブの食いしん坊だ。父も同じく大食いで恰幅のいい体格をしており、太っているのは一族共通で歩む道らしい。


 甘いものに目がない汐音とクーちゃんが嬉々としてポテチの袋に手を突っ込んだ。


「今日という日を楽しみにしていた。なぜなら俺はお前を目標にしているからだ、ハルト」


「シノか。俺も楽しみだよ。お互い頑張っていこうぜ」


「ああ」


 互いに拳を合わせる。俺たちの中で流行っているやり取りだ。
 物言いがクールなこの少年は油女シノ。蟲使いの一族でサングラスが特徴。寡黙かつ冷静沈着な性格で論理的な考え方をする個性的な少年だ。


 口数は多くないが静かな雰囲気が不思議と合い、一緒にいるとリラックスできるためよく行動をともにしたりする。


「ハールト! 会いたかったわー!」


「うぉっと……! おい、いの! いきなり抱きつくなって」


「あら、いいじゃないの。減るもんじゃないし。それにこーんな美少女に抱きつかれてハルトも満更じゃないでしょ?」


 黄色い声を上げながらいきなり背後から抱きついてきたのは山中いの。実家が花屋であり、本人も花の知識に精通しているくの一だ。


 本人が自分で行ったとおり美少女と呼べるほど整った顔つきをしており、体つきも女らしさが出始めてきている。


 膨らみかけの胸が背中に押し付けられるが、流石に友人をそんな目で見るような俺ではない。しかし、容認できない人もいるわけで。


「あの、いのちゃん……! その、は、ハルトくんから離れたほうがいいと思うな。ハルトくんも困ってるし……」


 おどおどしながらも彼女にしてはしっかりといのに声を掛けるのは白目の少女。彼女が婚約者である日向ヒナタ。


 名門日向家の長女であり白眼という血継限界を持つ一族特有の白い目が特徴の女の子。内気で非常に照れ屋、それでいて優しい性格をしており正直婚約関係を抜きにしても俺の心にドストライクな人です。


 彼女だけは俺の全てを掛けてでも守り通すと月に誓った。うちはマダラ? ばっちこーい!


「そうじゃっ、主に馴れ馴れしいぞ金髪! 早く離れるのじゃ~!」


 可愛らしくぷりぷり怒ったクーちゃんが力尽くでいのを引き離した。そして俺との間に立ちフシャーッ!と猫のように威嚇する。


「ちょっと狐さん、また貴女なの!? いい加減邪魔するのは止めてよね!」


「はんっ、ヒヨコ風情が何をほざきよる。お主のような女子は主に毒じゃ。主の一メートル以内に入るでない!」


「狐さんにそんなこと言われる筋合いはありませんー!」


 この二人は馬が合わないのか、出会う度にこの調子で言い争う。本気で嫌っているわけではないようだから、一種のじゃれ合いみたいなものなのかな。よくわからんけど。


 喧嘩する二人におろおろするヒナタ。俺は彼女たちをスルーしてヒナタに挨拶をすることにした。


「ヒナタも今日から一緒だな」


「あっ、は、ハルトくん。う、うん、そうだね」


「……まだ緊張してる?」


「う、うん。あの、ごめんね? その、私って臆病だから……」


 しゅんと落ち込むヒナタ。そこそこ顔を合わせているけど、未だに俺を相手にしても緊張するみたいだ。どうやら婚約関係を意識しちゃっているみたい。


 まあ彼女の正確からすれば仕方ないかな。やっぱり婚約ってことを意識しちゃうしな、俺も。


「ま、焦ることはないさ。徐々に慣れていこうぜ」


「はぅ……!」


 つい自然と頭に手が伸び、その濡羽色の髪を撫でる。艶やかな髪は絹のように触り心地がよく、一度撫でると止めるタイミングが見つからないほどだ。


「……」


「……うぅ」


 な、なんかおかしな空気が流れとる……!


 止めるタイミングが見つからない俺はポーカーフェイスを作りながらも背中に冷や汗を流し、その柔らかな髪を撫で続け。


 一方撫でられているヒナちゃんは羞恥心からか色白の頬を赤く染めてなすがままになっている。


 いつの間にかクラスの視線を一身に集めていた。男衆はそれぞれニヤニヤしていたり、歯軋りして俺を睨んでいたりと様々な反応を示し。女子たちは女子たちで黄色い歓声を上げたり好奇心を押さえきれない目を向けてきたりと思春期特有の反応を返してくれている。


 それまで口喧嘩をしていたクーちゃんといのも、いつの間にかこちらに言い寄ってきた。


「こりゃ主! いつまで女子の髪を撫でているつもりじゃ!」


「ヒーナーター! 抜け駆けは許さないわよ~!」


「い、いのちゃん……! わ、私は別に、そんなつもりじゃ……っ!」


 ぱっと離れる二人。俺も今になって恥ずかしさがこみ上げてきた。なにやってんだ俺……!


「お兄ちゃんたちってホント、仲良いよねー」


 呆れたような、それでいてどこか微笑ましいような目を向けてくる汐音。妹よ、お前さんいつからそんな目を向けれるようになったんだ……?


 くそぅ、お前に婚約者がいたら全力でからかってやる!


「ほらお前たち、席につけー!」


 扉を開けて担当の先生と思われる男性がやってきた。


 その声に皆、割り振れられた席について行く。名前順じゃないのか。


「んじゃあまた後でな」


「おう」


 俺もシカマルたちと別れ窓際前列の席に着く。窓際から二列目の真ん中か、まあ可もなく不可もなくって席だな。汐音やヒナタともバラバラになちゃったか。


 汐音は中央の列の中間、ヒナタは廊下側の席の最後尾にいた。ちなみにいのは両者の中間に位置する。


 教壇に立った先生がぐるっと生徒を見回した。


「皆、まずは入学おめでとう! 俺が今日から皆の担任になるうみのイルカだ。お前たちを立派な忍者にするために必要なものを教えていく。これから大変だと思うが頑張ってくれ!」


 おー、ラッキー! 担任はイルカ先生か!


 イルカ先生は木の葉の里においても上位に位置する人格者だと俺は思う。教師として生徒と紳士に向き合い、原作ではナルトの最初の理解者になった人物だ。


 確かもう二十代後半に差し掛かるんだったな。早くお嫁さんをもらって幸せな生活を過ごしてほしいものだ。


「今日の予定はみんなに自己紹介をしてもらった後に座学と体術の実技テストを行う。あとでスケジュール表を渡すから簡単に目を通しておけ。じゃあ、さっそく自己紹介をしてもらおうか。名前と年齢、好きなものなんかを上げるといいな。窓際の席のほうから順番にいくぞー」


「えっ? ぼ、ボクから? ええっと、ボクは秋道チョウジ、五歳。好きな物はお菓子で、ポテチが一番好き!」


「秋道一族の男はチョウジのように太っている人が多いからな。お前のお父さんであるチョウザさんもすごい食べるし」


 先生の言葉に笑って頷くチョウジ。朗らかな性格が滲み出てるねぇ。


 着席するチョウジに変わり、今度はシノが立つ。いつものように両手は上着のポケットに突っ込んだスタイルだ。この場でも手はポケットの中なのね。


「……油女シノ、六歳。好きなものは昆虫。趣味は昆虫を研究することだ。今の目標は立派な忍になるため強くなること。なぜなら、友の背中を守れる男になるのが俺の目標だからだ」


「いい目標じゃないか。俺もシノが立派な忍者になれることを期待しているよ」


「……」


 小さく頷いて着席するシノ。顔には出てないけど、少しそわそわした感じの空気からして照れているみたいだ。こうみえて可愛いところあるんだよなこいつって。


 次に立ち上がったのはキバだ。隣でお座りしていた忍犬の犬丸を頭に乗せて勝気な笑みを浮かべている。


「俺は犬塚キバだ! こっちは相棒の赤丸。趣味は赤丸との散歩で好きな食べ物はビーフジャーキーだ! これから赤丸ともども世話になるぜ!」


「キバの家系は代々忍犬とともに戦う一族だな。戦闘においても忍犬との連携を生かしたものが多く、我々忍者にとって忍犬は非常に心強い存在だ」


「さすがイルカ先生、わかってるじゃねぇか!」


 へへっ、と嬉しそうに男らしい笑顔を浮かべるキバ。そりゃ自分の相棒たちを褒められたら嬉しいよな。


 どんどん自己紹介は進み、やがて俺の番が回ってくる。席を立ち皆の方向を向くと、教室中の視線が集まっているのが分かる。中でも強い視線がいくつかあり、そちらのほうをチラッと見ると、案の定と言うか汐音、クーちゃん、いの、そしてヒナタがジッとこちらを見つめていた。


(こりゃ、精神的に年長の俺が下手なこと言うわけにはいかないな……)


 まあ、別にウケを狙うつもりもなにもないけど。


「すでに知っている人もいると思うけど、俺はうずまきハルト。四代目火影の息子をやってます。この中では俺が一番年上で皆より二、三歳上だな。ちょっと色々な事情があって特例として遅れて入学することになったんだ。まあ火影の息子だけど、あまり気にせず接してくれると嬉しい。偉いのは火影である父さんであって俺じゃないしな。趣味は修行に体を鍛えること。特技は……これといってないかな。好きな食べ物は卵料理だな。ああ、それと皆も既に知っての通り、俺の使い魔をやっている九尾も特別に通うことを許可されている。良かったら話し相手になってあげてくれ。これから卒業するまでの間よろしくな!」


 最後に笑顔で一言付け加えて、と。うむ、自己紹介としてはパーフェクトじゃなかろうか!


 俺と接点がなかった生徒たちは火影の息子と聞いて近寄りがたい印象を受けちゃうだろうから、俺は一般ピーポーよということをアピールできたし。


 チラッと見ると汐音が親指を立てて笑顔を向けていた。背後の壁際ではクーちゃんがうむうむと一人頷いており、いのとヒナタもなにやら頬を染めて熱い視線を送ってくるではないか。とりあえず汐音に親指を立て返し、ヒナタたちに小さく笑顔を送る。って、なぜいのまで嬉しそうに顔を赤くするんだよ!


 なんとなく俺に向けている感情を理解しているから扱いに困るんだよな彼女って。まあ、多分好きって好意でも憧れとかに近いものだと思うけど。


「確かに今ハルトが言ったとおり、彼は四代目火影様のご子息だがここでは一人の生徒だ。皆もあまり構えないで積極的に交流していけ。ここでは九尾はキバの赤丸のように忍犬のようなポジションで扱うと聞いている」


「うむ。相違ないのじゃ」


「と、いうことだ。皆も積極的に話しかけてあげるといい。よし、じゃあ次!」


 その後も自己紹介は続いていく。同世代の子たちとは皆顔見知りだが、今まであまり関わり合いを持たなかった人も中にはいるため、何気にこの自己紹介は有力な情報をもたらした。円滑なコミュニケーションには情報が不可欠だかたな。


 お、次はシカマルか。


 いかにも面倒くさそうな顔で立ち上がったシカマルは、この世のすべてに不満を感じるとでも言いたげな表情で自己紹介を始めた。


「奈良シカマル、歳六だ。趣味は将棋。めんどくせぇが……ま、よろしく頼むわ」


 いかにもシカマルらしい挨拶だな。流石のイルカ先生もちょっと反応に困ってるぞ。


 そして、その次の席。いよいよ自分の番が回ってきた汐音が元気よく立ち上がった。


「はいはいっ、次は汐音の番だってばさ! 汐音の名前はうずまき汐音っていうの! ハルトお兄ちゃんの妹で五歳だってばさ! 趣味はお菓子作りで特技はラーメンの一気飲み! 好きな食べ物は一楽のラーメン! そんでそんでっ、将来の夢は父さんのような立派な火影になって、里のみんなを笑顔にすることだってばさ!」


「へぇ……。汐音の夢って始めて聞いたけど、火影になることだったか」


 そういえば今まで俺も汐音も互いの夢について語り合ったことはなかったな。今始めて聞いた汐音の夢が、まさか火影になることだとは思ってもみなかった。原作のナルトとは違い迫害されていないから、火影以外の夢だとてっきり思ってたんだけど。でもまあ、里のみんなを笑顔にすることねぇ。


「良い夢じゃねぇか」


 俺の夢はそれまで漠然としたものしかなかったけど、火影になった妹を支えるっていうのも悪くないかな。思わぬところで将来の目標が定まってしまった俺だった。


 それから自己紹介は終盤に近づき、今度は内気な女の子の番となる。


「えっと……ひ、日向ヒナタ、です。歳は六歳。趣味は押し花で、特技は、特にない……です。好きな食べ物は、ぜんざいと、シナモンロール。その、至らぬ点もあると思いますが……よろしくお願いしますっ」


 大きく頭を下げるヒナタ。特に思うところはないがシーンと静まり返った教室は彼女にとって不安材料だろう。


 恥ずかしがりで照れ屋な彼女にしてみれば結構勇気を振り絞ったと思うし、ここは一丁手助けするか!


「おう、よろしくな!」


 場違いなほど明るい声を上げる。


 皆の注目が俺に向けられ、ヒナタも頭を上げて俺を見た。


 そんな彼女に親指を上げてみせる。


「……っ! は、ハルトくん……」


 頬を染めて嬉しそうな反応を示すヒナタ。もうその反応だけであと十年は戦えるわ、本当にありがとうございます。


 やっぱりうちの婚約者さんは可愛いなぁ。デレデレと鼻の下を伸ばしていると、底冷えするかのような冷たい視線が突き刺さった。


 見なくてもわかる。壁に寄りかかっているクーちゃんだ。絶対目尻を吊り上げて俺を睨んでいるよ!


 なんだかんだ、あの子って嫉妬深いところがあるんだよな。独占欲っていうのかこの場合? まあそれだけ心を許してくれている証拠だし、嫉妬の一つや二つ、男の甲斐性だと思って受け止めますとも。


 そしてラストを飾るのは口元を両手で隠したゲンドウスタイルのイケメンくん。


 クラスの女子の半分以上の視線を一新に集めるクール男子だ。


「うちはサスケだ。趣味は修行と散歩。将来の目標は兄さんのような強い忍になることだ」


 これまたクールな自己紹介。しかしとっつき難いというほどではない。


(あー、サスケで思い出した。そういえばもうすぐ、うちは事件が起こるんだよな)


 彼の兄であるうちはイタチが一族を弟を残して滅ぼし、里抜けをするという事件だ。肉親であり敬愛していた兄に両親と一族を殺されたサスケは人生のすべてを復習に捧げる修羅の道を歩むターニングポイント。ぶっちゃけ原作では重要なイベントだ。


 二つ上のイタチさんには俺も何度か修行のお世話になってもらったし、正直あの人が里を裏切るなんて考えられないんだよなぁ。


 仮に、イタチさんが裏切り、うちはを滅ぼす方向で動いたとする。じゃあ、俺が止めるのか? あのイタチさんを?


 いくら父さんやクーちゃんから上忍以上の実力だとお墨付きを頂いている俺でも、あのイタチさんに勝てるかどうか……。最近になって父さんとの模擬戦では勝ち越している俺だけど、所詮は模擬戦だ。向こうは実戦経験豊富の天才エリート。


 そう、イタチさんは七歳でアカデミーを首席で卒業し翌年には写輪眼を開眼。10歳で中忍に昇格してその後まもなく暗部入りを果たすという異例の出世を遂げた天才だ。俺もよく両親や俺を知る人には天才だと言われているが、俺のは所詮借り物の能力。いわば似非才能。そんな俺とは違い向こうまさに本物の天才。


 正直止めるのは難しいとは思うが、それでも――


「……やっぱ、見て見ぬふりは出来ないよなぁ」


 ――ま、なんとかなるか。クーちゃんの時もなんとかなったんだし。なんとかなるべ!


 難しく考えすぎた俺の脳は思考を放棄した。頭の作りはそんなに良くないから難しいこと考えられないんだよ!


 教壇の前に立った先生が声を張り上げた。


「よぅし! 全員の自己紹介が終わったな。では次のこれから演習場に移動して実技テストを行う。忍道具を持って演習場に集合だ!」


 これから演習か。さてはて、皆の実力はいかほどだろうかね。

 
 

 
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