英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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外伝~ノエルからの預かり物~
~メルカバ玖号機・甲板~
「ノエル………」
ノエルを見たロイドは驚き
「アハハ………明日はついに決戦ですね………」
「……………やっぱり国防軍と戦う事に躊躇いがあるのか?」
苦笑しながら言ったノエルの言葉を聞いたロイドは複雑そうな表情で尋ねた。
「いえ、そこの所は既に覚悟していますし、”塔”での陽動戦の時も戦いましたから大丈夫です。………ただ、今までの事を考えて自分が情けないなと思って………」
「へ………?」
ノエルの言葉を聞いたロイドは呆けた。
「本当は、独立国や国防軍なんて間違っていると思っていたんです。でもあたしは………ミレイユ先輩やフランのように”六銃士派”に身を投じる気概もなく、ただ大きな流れに従うだけで………知っていますか?フラン、局長達が『クロスベル帝国』を建国したら警察を辞めて『クロスベル帝国』の情報処理の仕事に就くって言っているんですよ?」
「フランが既にそこまでの事を………」
ノエルの話を聞いたロイドは驚き
「ええ………局長と付き合うようになってから、あたしとは比べものにならないくらい成長していますよ……………そして自分がいかに、警備隊っていう狭い世界でしか生きてなかったかって思い知らされました。せっかく支援課に出向する機会を司令や副司令がくださったのに………」
「それは……誰だって同じさ。俺だって、キーアちゃんやみんなの事がなければ大きな流れに逆らえなかったと思う。元々、大それた事ができるような性格じゃないしね。」
複雑そうな表情で言ったノエルの言葉を聞いたロイドは頷いた後苦笑し
(フフ、”英雄”という存在の大半はそんな大それた事は最初は考えず、ただ一つの目的に向かって進んでいるのよ………)
ロイドの言葉を聞いたルファディエルは微笑み
「えっと……………とてもそうは思えないんですが。」
ノエルは苦笑した。
「いずれにしても、大切なのはきっかけがあるかどうかだと思う。そして君は、そのきっかけを掴んで俺達と共にいてくれている。それが正しい事なのかどうかは俺が決めるわけにはいかないけど………凄く助かっているし、―――なによりも嬉しいよ。」
「ロ、ロイドさん…………~~~っ~~……!」
微笑みながら言ったロイドの言葉を聞いたノエルは顔を赤らめてロイドに背を向け
(くかかかかっ!相変わらず女殺し文句を平然と言うその能力に尊敬を抱くぜっ!!)
(ハア………ガイでもここまで酷くはなかったのに………)
ギレゼルは陽気に笑い、ルファディエルは疲れた表情で溜息を吐いた。
(お、落ち着いて……ノエル・シーカー………!演習の時みたいに迅速かつ的確な状況判断と士気のコントロールを………!ううっ………エルミナ大尉の教えを受けられたミレイユ先輩達ならもっと上手くやっているのに………全部終わったらあたしもエルミナ大尉から色々と教えてもらった方がいいかも…………)
一方ノエルは心を落ち着かせようと必死になり
「そういえば、さっき何か俺に頼みがあるって言ってたけど………えっと、何なのかな?」
ある事を思い出したロイドは不思議そうな表情で尋ねた。
「あ、はい!それなんですけど――――………その……えっと………変な事を聞きますけどロイドさんって…………エリィさん以外にお付き合いしている人を増やしているのですか?」
(おおっ!?これはまさか……まさかの!?)
(ノ、ノエル……貴女まで………)
ノエルのロイドへの疑問を聞いたギレゼルは興奮し、ルファディエルは表情を引き攣らせ
「ええっ!?」
ロイドは驚きの表情で声を上げた、
「い、いえ!深い意味とかじゃなくて!その、そうだ、例えばティオちゃんとどうなのかなっ~て話してて!」
一方ノエルは慌てた様子で言い訳をし
「な、なるほど………ハ、ハハ、そういう話、女の子は好きそうだもんな。うーん、残念ながらエリィ以外の人とは付き合っていないよ。俺なんかを好きになってくれる人がエリィ以外に考えられないし……――――う”。」
ロイドは大量の冷や汗をかいて苦笑した後気を取り直したある事を思い出して表情を引き攣らせ
「??もしかしてもう2人目が出来たのですか!?」
ロイドの様子を見たノエルは驚きの表情で尋ね
「い、いや………その……ティオが『将来大人になったらお嫁さんにして』ってさっき頼んできたんだ……」
「ええっ!?」
苦笑しながら答えたロイドの言葉を聞いたノエルは声を上げ
「ま、まあそんな深い意味はなかったと思うぞ?……ほら、あれだ。娘が将来父親か兄のお嫁さんになるって言っているのと同じ意味だと思うぞ?」
(くかかかかっ!ついに現実逃避を始めたぞ!?)
(そんな事をしても無駄なのに………)
「あ、あはは……(絶対違うと思いますし………さすがは特務支援課の初期メンバーだね、ティオちゃん………あたしだとそこまで積極的になれないよ…………)」
ロイドの答えを聞いたギレゼルは笑い、ルファディエルは呆れ、ノエルは苦笑しながら頷き
「コホン………」
そして咳払いをして気を取り直し
「―――あの、でしたら。これをしばらく、預かっていただけませんか?」
そしてポケットから認識タグを出してロイドに見せた。
「これって………クロスベル警備隊の認識タグかい?」
「はい、国防軍に切り替わった時に要らなくなったものですけど……何となく捨てられなくってずっと持っていたものなんです。」
「そっか……でも、どうして俺に?」
ノエルの話を聞いて頷いたロイドは不思議そうな表情で尋ねた。
「……正直、今後のクロスベルはどうなるかわかりません。万が一あたしの身に何かあったら……いえ―――無事任務を遂行できるよう、験担ぎに持っていて欲しいんです。」
「ノエル………わかった。喜んで預からせてもらうよ。」
ノエルの説明を聞いたロイドは複雑そうな表情をした後ノエルから認識タグを受け取り
(あ~あ、受け取っちまったぜ♪)
(もう……深く考えもせずに何でそんなあっさりと受け取るのよ…………)
その様子を見ていたギレゼルは口元に笑みを浮かべ、ルファディエルは溜息を吐いた。
「ほっ………ありがとうございます!」
「はは、別に礼を言われるような事じゃないさ。それにノエルも俺達と一緒に行動するわけだし………くれぐれも、ピンチの時に自分一人が犠牲になろうだなんて思わないでくれよ?」
「ど、どうして……」
ロイドの言葉を聞いたノエルは驚き
「そのくらい、わかるさ。俺達を捕まえた事については全く気に病む必要はない。あくまで支援課の仲間として一緒に付いて来て欲しいんだ。」
「……ロイドさん………ぐすっ………はい、わかりました!」
ロイドの話を聞いたノエルは嬉しそうな表情で一筋の涙を流して頷き
(完全に落ちたな。さすがはロイドだっ!!)
(へ、下手したらこれから相談に乗る女性達全員に告白されるのではないかしら?)
ギレゼルは力強く頷いて親指をたて、ルファディエルは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせていた。
「はは………しかし自分のタグを誰かに預けるか……ハハ、何だか恋人同士の習慣みたいだな。」
「っ………!」
そして苦笑しながら言ったノエルの言葉を聞いた顔を赤らめてロイドに背を向け
「え―――」
ノエルの様子を見たロイドは呆けた。
「………~~~~っ~~~~……」
「ノエル………えっと、その……も、もしかしなくても、そういう意味だったりする?」
自分に背を向けて黙り込んでいるノエルを真剣な表情で見つめたロイドは大量の冷や汗をかいて苦笑しながら尋ねた。
「………………………」
ロイドの質問にノエルはゆっくりと頷き
「そ、そっか………………………」
頷いたノエルを見たロイドは考え込み
「その、返事になるかどうかわからないけど…………これを預かっててくれないか?」
疲れた表情で答えた後ある事を提案した。
「え………」
ロイドの言葉を聞いたノエルが驚いて振り向いたその時、ロイドは認識タグをノエルに見せた。
「それって………クロスベル警察の……?」
「一応、現職の警察官だから自分で身につけておくべき物だけど…………俺の答えが出るまでノエルに持っていて欲しいんだ。その後に改めて………返事を出すよ。」
「………あ……………はいっ―――よろこんで!良い御返事、期待していますね!」
ロイドの説明を聞いたノエルは嬉しそうな表情をした後ロイドから認識タグを受け取って敬礼し
「そ、それでは失礼します!」
顔を赤らめてその場から走って去って行った。
(ロイド………何であんな事をしたのよ……)
その時ルファディエルは念話でロイドに尋ね
(う”………い、いくらエリィがいるとは言っても何も考えずにノエルの気持ちを無下にする訳にはいかないし………と、とりあえず考える時間をもらおうと思って……)
ルファディエルの念話を聞いたロイドは表情を引き攣らせて答え
(……どうなっても私は知らないからね。)
(ちょっ、ルファ姉!?)
ルファディエルの答えを聞いたロイドは慌て
(くかかかかかかっ!この調子なら今夜で一気に増えそうだな!)
ギレゼルは腹を抱えて笑っていた。
「あ、ロイドさん。」
「お疲れさま!」
「……お待たせしました。」
その時セティ達がロイドに近づいてきた……………
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