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空気を読まない拳士達が幻想入り

作者:sibugaki
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第6話 ケンシロウ起つ、幻想郷を救うのは俺の拳だ!!

 異変・・・それは、度々幻想郷で起こる事件等の類を指す。
 規模は異変により様々となっており、小火騒ぎ程度の異変もあればそれこそ幻想郷の存亡に関わる程の大規模な異変も起こったりする。
 また、異変が起これば、その異変を止めようとする者が現れ異変を鎮圧する。
 その繰り返しが幻想郷を成り立たせていると言われているようだが真相は定かではない。
 ただ、分かる事と言えば、異変とは常に【起こす者】と【止める者】が存在すると言う事だ。

 そして、今回起こる異変にあの北斗の拳士達が敢然と挑む事になる。
 ・・・正直物凄く不安になってきたのは私だけではないだろう。




     ***




「ありがとうございました」

 店から出て行く客に対して丁寧に言葉を贈る。此処、香霖堂に訪れる客は余り多くはない。しかも、中には買い物をせず物色しただけで帰って行く客や金を払わずに物だけを盗って逃げようとする輩も時たまにだが出没する事がある。まぁ、その様な万引き行為をした輩は即座にケンシロウの手により取り押さえられるので左程問題ではない。
 そんな中でもちゃんと買い物目的で訪れる客も居たりするので対応はしっかり行う事が接客業の嗜みと言える。

「ご苦労様。そろそろ店を閉めるから看板を中に入れておいてくれないかい」
「分かった」

 店の主である霖之助の頼みを受け、ケンシロウは外にポツンと立て掛けてある看板らしき物を店内へと運び入れた。此処香霖堂は一応雑貨店の類ではあるのだが店主の霖之助の気分次第で営業時間が変わってしまう為時にはこんな日中にも店を閉めてしまう事もあったりする。
 まぁ、本人があまり金儲けに興味がないのと商品の中には彼のお気に入りもあったりするのでそれ程客商売に熱を入れてないのがその原因になったりするのだろうが。

「あら、今日の営業終わり? だったらちょっとケンを借りたいんだけど良いかしら?」
「別に良いけど、どうしたんだい?」

 営業時間ずっと暇をしていた霊夢からの突然の申し入れだった。

「この間臨時収入が入ったでしょ。だからそのお金で揃えられる家財道具を買い揃えておこうかなと思ってね」
「それだったら家で扱ってるのを持って行けば良いだろう。わざわざ人里まで行って買いに行くつもりかい?」
「そういつもいつも霖之助さんを宛には出来ないわよ。今回は人里で揃えるから心配しないでちょうだい」
「そう言う事なら分かったよ。まぁ、何か入用があったら遠慮なく言ってよ。揃えられる品物だったら揃えてあげられるしさ」
「有難う、霖之助さん」

 因みに霊夢の言っている臨時収入とは前々回にて南斗聖拳のシンが霊夢に渡した小銭の山の事である。あの後、その資金を元に神社の建築を里の大工に依頼したのだが、まだかなり余っているので他に買い揃えられそうな家財道具を揃えておこうとしていたのだ。
 
「それじゃケン。買い物に付き合ってちょうだい」
「分かった」

 二つ返事で承諾するケン。そんな訳で霊夢とケンの二人は早速人里に赴き家財道具一式を買い揃える事となった。一言で家財道具と言っても様々ある。
 調理器具に着物を入れるタンスだったりちゃぶ台だったり入浴セットect・・・
 とまぁ、こんな具合でいざ買おうとなると結構な散財になりそうだった。

「う~ん、勇んで出て来たは良いけど・・・普通に買ってたんじゃ足が出ちゃうわねぇ・・・かと言って私そんなに人里で顔を知られてる訳じゃないし、コネとかもないし・・・でもなぁ~~」

 折角手に入ったあぶく銭をこんな事に使って良い物かと唐突に悩みだす貧乏巫女。彼女の本心としては折角労せず手に入れたこの大金を使って有意義に過ごしたいと画策していたようだが、家財道具分の負債がどうしても彼女自身としては納得がいかないらしい。

「どうしたんだ霊夢? 買い物はしないのか」
「ちょっと待って! 今私人生最大の悩みに直面してるんだから」
「ふむぅ・・・俺には良く分からん悩みだ」

 霊夢の悩みはケンシロウにはいまいち分からない悩みだった。彼自身家財道具の利便性は知ってはいるがそれほどこだわっていると言う訳ではないし第一霊夢ほど金銭面でうるさくはない。寧ろ疎いほうだ。
 その証拠に募金箱に迷わず全額投資したり困ってる人に有り金全部渡してしまう事も度々あったりする。

「だぁぁ! もう止め止め! 悩んでたらお腹空いてきたわ! 丁度お昼時だし、近くの茶店に行って団子でも食べながら考えるわ」
「家財道具では悩むのに団子は即決なのだな」
「うっさい! 私は自分のお腹には正直なのよ」

 女はスイーツには弱い生き物なのだ。そんな訳で家財道具の買い物を一旦中断して近くの茶店に入る事となった。
 正午を過ぎて丁度おやつ時だったが為か店内は意外と人が多く入っており座る席を探すだけでも結構苦労しそうだ。

「やっぱこの時間は混んでるわねぇ。どっかで相席でも出来れば良いんだけど・・・・・・ん?」

 ふと、店内を見回していた霊夢は妙な物を見つけた。いや、正確には妙な物と言うよりは一応見慣れた者と言った方が正しいのだが。
 それは、店の最奥に位置するテーブルに座っている客の事だった。
 和服の客が大半を占めている中、その客だけが一人異様ないでたちをしていたので尚の事霊夢の目には目立って見えてしまったのだ。
 しかも、その目立った服装に見覚えがあった。
 緑を基調とした古風なチャイナ風の服装。動きやすさを強調したかの様なダボダボな作りの服。そして赤いロングの髪。

「あんた・・・もしかして美鈴?」
「んぁ?」

 霊夢が名を呼ぶ。その名を呼ばれた美鈴と言う女性はさっきまで机の上に項垂れており微動だにしなかったのだが、霊夢の言葉を聞き蘇生するかの如く起き上がり霊夢の顔を見る。すると、見るやいなやいきなり顔をくしゃくしゃにして思い切り泣きじゃくり始めたのだ。

「うわぁぁぁん! 霊夢ざああああああああん!」
「ちょっ! うるさっ! いきなり泣くな!」

 間近に居た為か美鈴の大音響に鼓膜が大ピンチだったが為か、回りの客たちも揃って耳を抑えだす。たまらず霊夢の必殺鉄拳が美鈴の脳天に直撃し、再度机に項垂れる形となった。

「はぁっ、一体何がどうなってるのよ。何であんたがこんなとこに居る訳?」
「知り合いなのか?」
「まぁね、と言ってもそれ程親しいって訳じゃなくてただたんに知ってるってだけの関係よ」

 事情を知らないケンシロウに霊夢は説明をした。
 彼女の名前は【紅 美鈴】と言い、人里からそれなりに離れた湖の近くに位置する館【紅魔館】の門番を務めている妖怪だ。
 一応門番である為か門の前に立っているのだが大概は居眠りをしていたりしているので毎回制裁を食らっているのが日常の人だったりする。

「それで、どうして紅魔館の門番をしている筈のあんたが此処にいるの? まさかサボリとか?」
「ぐずっ・・・ぢがいまずぅ・・・実は・・・実は私・・・」

 話ながらも目は潤みっぱなしで顔も歪みっぱなしの状態が続く。念の為にまた号泣した時ように霊夢も拳を握りしめて聞いていた。
 その隣にてケンシロウも話を聞いている。が、彼にとっては初めてのフレーズが多く余り会話についていけてないのが現状だったりするのだが。

「私・・・紅魔館の門番の仕事・・・クビになっちゃったんですよぉぉぉぉぉ!!!」
「ふ~~~ん、そうなんだ」

 渾身の力を込めて理由を叫ぶ美鈴。だが、それに対して霊夢の対応は偉くドライな対応だった。

「って、なんでそんなにあっさりなんですか! もうちょっと驚いてくれても良いじゃないですか!」
「あんたが真面目に門番やってるんだったら少しは驚いたかも知れないけどね。あんた大概門の前で居眠りしてたりして仕事サボってるじゃない。大方そのせいで咲夜辺りがブチ切れてあんたをクビにしたんでしょ? 自業自得よ」
「そんな酷い! 紅魔館の門番をクビになっちゃったら。私これからどうやって食べて行けば良いんですかぁぁぁ!」
「知らないわよ」

 最早霊夢の興味は美鈴から完全に逸れてしまっていた。既に美鈴の方になど目も暮れておらずメニューを開いて何を注文しようか考えている真っ最中でもあった。

「うぅぅ・・・今まで一生懸命門番をしてきたのに、突然クビになるなんて・・・酷い、あんまりですよぉ・・・こんなのあんまり過ぎますよぉぉ!」
「美鈴、あんまりうっさいと本格的に潰すけど、良いの?」
「あい、すいませんでした」

 霊夢の脅しにすっかり縮こまってしまった美鈴。相当霊夢が恐ろしいのだろう。

「大変な事になってしまったのだな」
「おぉっ! 貴方は私の事を憐れんでくれるんですか?」
「事情は良く分からんが困っている人を見て手を指し伸ばさない程俺は薄情ではない。俺で良ければ力になろう」
「有難う御座います! ありがとうございま・・・って、ところでこの人誰ですか?」

 正しく今更な申し入れだった。

「俺はケンシロウ。今は香霖堂で厄介になっている。北斗神拳第64第伝承者だ」
「あぁっ、前に新聞で読んだ亜人って貴方の事だったんですね。それにしても北斗神拳を使える人がまだ居た何て驚きですね。今時誰も使ってないと思ってましたけど」
「北斗神拳を知っているのか?」
「そりゃ知ってますよ。だって私中国出身ですもん」

 自慢げに自身の出身を言い放つ美鈴。さっきまでの泣き顔が嘘みたいに満面の笑みとなっている。

「でも珍しいですよねぇ。たしか北斗神拳って言ったら時の皇帝に禁じ手と定められてた筈なのに。てっきりもう使う人もいなくなって滅びちゃったとばかり思ってましたよ」
「一子相伝の暗殺拳故に人前には余りでないのは当然の事なのだろう。だが、世間が何と言おうと北斗神拳は今もこうして俺の拳に宿っている。これは紛れもない事実だ」
「何か共感持てますね。私も拳法の類を使いますから同じ境遇って感じがしてうれしいです」

 拳法家同士話が合うと言うのだろうか。ケンシロウと話し合っている美鈴のとても楽しそうな顔と言ったら。

「で、本当にこの後どうするつもりなのよ?」
「はっ! そうでした!!」

 すっかり忘れていたようだ。

「霊夢さん! さっきケンシロウさんと話してて気づいたんですけど、私がクビになったのにはきっと理由があると思うんです!」
「でしょうね。理由がなければクビにならないんでしょうし」
「はい、これはきっと【異変】に間違いありません! 絶対に異変のせいです!」
「・・・・・・はぁ?」

 いきなり何を言い出すんだこいつは? と言う感じで霊夢は美鈴を見た。

「そうですよ! 絶対そうに違いない。でなかったらこんな真面目な門番をお嬢様達がクビにする筈がないんですから!」
「あのねぇ、あんた自分の今までの業務態度を見てそれで良く真面目って言葉が出て来るわね。普通出てこないわよそんな言葉」
「こうなったら異変解決あるのみです! 此処は私たち3人一致団結して異変解決に乗り出しましょう!」
「3人・・・私も入ってるの?」
 
 唐突に異変解決のメンバーに入れられてしまった霊夢とケンシロウ。一人ノリノリな美鈴。そんな光景が茶店の一角で目の当たりにされていた。

「冗談じゃないわ。そんなの異変でもなんでもないわよ。ただのあんたの職務怠慢のせいでしょ? そんなのを一々異変と結びつけないでよ」
「其処を何とかぁぁぁ。一緒に異変解決しましょうよぉぉぉ」
「やだ、めんどい」
「即答! 博麗の巫女が異変解決をボイコットとかそんなのあって良いんですか!?」
「だぁかぁらぁ、こんなの異変でもなんでもないってさっきから言ってるでしょ? 何度も言わせないでよ」

 両者とも中々引き下がらない。方や異変だと言い張る美鈴。そうかと思えばこれは異変ではないと言う霊夢。そんな二人の会話を黙って見守るケンシロウ。
 全く話が進まない現状であった。

「それじゃ霊夢さん! 其処まで言うんだったら皆で見に行きませんか!?」
「どう言う意味よ?」
「これから私たち3人で紅魔館に行くんです! そうすれば異変かどうかすぐに分かるじゃないですか?」
「成程ね。確かに此処で言い争ってても仕方ないし暇つぶしにもなるでしょうけど・・・もし異変じゃなかったら?」
「その時は霊夢さんの頼みを何でも聞きます」
「その話乗った!」

 誘惑に弱い巫女であった。

「話はついたのか?」
「えぇ、これから私たち3人で紅魔館に行くわ」
「紅魔館? 何だそれは」
「行けば分かるわよ」

 そうそうに話を切り上げ、茶店を後にする霊夢、美鈴、ケンシロウの三人。
 3人が目指すはかつての美鈴の就職場所でもあった紅魔館。
 果たして、本当にこれは異変なのだろうか。それともただの美鈴の勘違いなのだろうか。
 幻想郷に戦乱の嵐が吹き荒れようとしていた。




     第6話 終 
 

 
後書き
次回予告

幻想郷を救う為紅魔館へと向かうケンシロウ達。だが、その行く手を紅魔館最強の戦士が遮る。

次回、空気を読まない拳士達が幻想入り

第7話「激戦開幕!!幻想郷に安息の地はないのか!?」

お前はもう、死んでいる――― 
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