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GATE 株式会社特地電工 ~彼の地にて 斯く戦えり~

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第一部
  事務所が無い?!その2

 
前書き
(付き添いの上司は、途中でとんずら(銘菓ひよこの紙袋を残して)) 

 
 さきほど新幹線で東京駅に着いた。上司も一緒だ。


 いや、一緒だった、と言い直すべきだろう。




 新幹線から降りて在来線に乗り換える改札の直前、上司は突然こう言った、

「大村くーん、突然で悪いけど、一人で行ってくれるかぁ?はい、この紙袋持って。中に先方の住所書いたメモ入ってるから。GATEの向こうの異世界だか何だか知らないけど、もう子供じゃ無いんだから一人で立派に行けるでしょ?!じゃぁ、そういうことで!」(シュタッ)

 先を歩いていた上司が振り向きざまにこれだけ言い、鮮やかな早業で私に紙袋を押しつけ、そしてそのまま外に繋がる丸の内の改札口へと小走りに駆け出した。


 一瞬唖然としたものの、すぐに気を取り直して当然私は追いすがり、

 「ちょっとぉ!一人でとか聞いてませんよ、初対面の人に飛び込みで逢うとか!先方にちゃんと紹介してくださいよ!」

 と言ってはみたのだが・・・それで立ち止まるような雰囲気では無かったね、あの上司。


 「後は任せたー!俺は行くとこがあるから~!」

 と言って人波に消えた。 あ、あ、あ・・・そうね、そういう子供みたいなことする人だったね、あの上司だけは。最初からアテになんかしてませんよ!こんちきしょー!正式に出向したらサヨナラバイバイだもんね・・・いや、私もこのままバックレて異世界見物だけして帰ってやろうかしら?




 天然だけど、ホントは悪い人じゃ無いはずなんだけどな・・・人のこと振り回すけど。ああ見えて、やっぱり普通の会社員(=パンピー)だから、「異世界」とか「ファンタジー」とかはキツイのかなぁ?行くとこあるとか言ってたけど、丸の内のどこへ何しに行くのやら・・・最初からこうするつもりだったかなぁ?・・・ったく、どうしてこういうこと平気でしちゃうかなぁ!




 去る者は追わず、こうしていても始まらんし、どこへもたどり着けやしない!


 と、いうことで、しぶしぶJR山の手ラインに乗り、有楽町駅を超えて新橋駅にやってきた。目的地は有楽町駅から行ってもさほど変わらないはずだが、雑誌や新聞などの報道によれば、GATEの最寄り駅はここ新橋。そして、目の前にあるのが有名な蒸気機関車。漂ってくるニオイは、昼間っから千円でベロベロに酔っ払った、ダメなサラリーマンに供された料理とかのかぐわしきニオイ。略してセンベロ中のダメリーマンのニオイ。私も、今すぐあっちに混ざりたい。



 しかし、今は一応は就業時間内。どうせ会社にバレやしないだろう、とは言え、給与分働かないというのは後味が悪いので、まじめにGATEを探して歩くことにした。


 「あー、なんだこの人の数、お祭りでもやってるのかねぇこっちはぁ?!そして、どんな悪いことしたら、昼間っから仕事もせずに町を自由にほっつけ歩けるのかしらねぇ?」

 思わずボヤきが口をついて出た。これが「お祭り」とかじゃ無いことは、いくら私が田舎者だとしても分かりきっている。

 だが、そうでも言っておかないと気が済まない、人・人・人。こんちきしょー!

 人をよけるのメンドクセぇ!




 なかなかそれらしき風景に出会えないので、ここでようやくスマホを取り出して、地図を見てみると・・・真反対の虎ノ門方面へ歩いてきてしまったことにいまさら気がついた。びっくりした。そして初めての土地にムカついた。あと、正直、少し恥ずくて赤くなった。田舎者の頬がたいてい赤いのは、こういう事情があるからなんだなぁと思う。出来れば優しく見守って、そっとしておいてほしい。私からのお願いだ。




 仕方がない、たまたま近くにあった東京メトロ銀座線に乗ることにしよう。地図的にはこのご町内のはずだ。虎ノ門から銀座までは2駅、そこで地上に出れば目の前が、目指すGATEのはずだ。上司と一緒じゃ無くて良かった。デリカシーとか無い人だから、たぶん平気で同僚皆に言いふらすもんな。「アイツ、都会に面食らって道に迷ったんだぜぇ」とかって。絶対嫌だ。



 そして経費的には、この地下鉄分の余計な出費も「交通費」で落としちゃえ。電車やバスについては少額なため、領収書は不要だからやりたい放題だ。






 しかし・・・なんだか、腹が減った。

 上司に渡された紙袋の中身「銘菓ひよこ」を、ここでバリバリ開けて食ってしまいたいほどだ。


 孤独のグルメの主人公ばりに遠くを見つめ、おなかのあたりをさすりながら立ち止まった。カメラがあれば、立ち尽くす私を画角の真ん中にして、ビル街をバックにして3段階の「引きの絵」だな。



 そう、空腹には抗えない。うぉぉん、まるで今の俺は、獲物を求めてサバンナをさまようライオンだ。

(筆者注意:突然ですが、この二次創作は原作を「GATE~・・・」としておりましたが、今回に限ってここから、「孤独のグルメ」も追加してお届けします。あしからずご了承ください。)




 あのドラマの主人公、五郎なら、ここで少し町を見渡して、ひなびた旨い定食屋を見つけてしまうところだ・・・だが、いま私の右側には「パスタdeココ」と書かれた看板がある。サービスランチもあるらしい。もういい、これにしとこうや、いやこれが良い。




 ちょっと狭いが、清潔で感じの良い店だ。窓際のカウンター席に通され、メニューも見ずにランチと注文。店員の対応もテキパキしていて感じが良い。



 何かのチェーン店か?

(筆者注意:筆者はCoCo壱番屋の株を2単位200株だけ保有しています。あしからずご了承ください。)




 ほどなく、日替わりのサービスランチが目の前に供された。なんと良いにおい!


 まずは、フォークでひと刺し、


  「ほふ、はふ、ほぐっ」


 旨い、美味い、うまい!これが名古屋が誇るゲテモノ料理「あんかけスパ」というものか!



 それに、サラダとフライをひとまとめにしたワンプレートと、さらにまた「白ご飯」!


 これが世に言う「必殺!名古屋飯」。やりすぎにも感じるが、嬉しいじゃないか!スパゲティの炭水化物に、白飯の炭水化物!この夢の重ね技、小麦と白米のありえないデュエットがオンザステージ!全私が泣いた!これだけてんこ盛りでなんと「サービスランチ」。お財布にも優しい!もし五郎だったら何種類も頼んで、昼飯だけで軽く3000円以上使っているところだ。


 やはり、サラリーマンは、繁華街近くの裏路地で、こうしてメタボを徹底無視した「男のメシ」をかっ食らうべきだ!ビバ、サラリーマン!万歳、給与所得!頑張れ、日本の社畜同胞よ!くじけるなワタシ!ありがとう、世界!

 (筆者注意:もうここらでやめるのでご安心ください。お見苦しい点がありましたらお詫びいたします。)





 そんなこんなで、すっかり腹ごしらえを済ませた私は、スーツの上着の前ボタンを外した。


 「武士は食っても高楊枝」とはこのことだ。(ドヤァ)  (筆者注意:スミマセン!)





 こうして私は、都会の道に迷って傷ついたMPを全回復し、意気揚々と地下鉄に乗り込んだのである。







 
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