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Three Roses

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第十話 またしての崩御その三

「だからだ」
「ここは。ですね」
「さらに軍事もですね」
「あの方に持って頂く」
「そうしますか」
「そうだ」
 その通りという返事だった、そして。
 さらにだった、大公はこうも言ったのだった。
「だからこそキャスリング卿もつけたのだ」
「あの方をですね」
「名将でありご自身の武勇もかなりのあの方に」
「近衛兵の将でもあられる」
「あの方をですね」
「そうしたのだ」 
 まさにというにだ。
「デューダー卿、グラッドソン大司教、そしてロドネイ公と共にな」
「武もですね」
「備えて頂く為にですね」
「あの方もつけられたのですね」
「彼は忠誠心も強い」
 王国、それのだ。
「必ずマリー王女の手足となってくれる」
「はい、高潔な方です」
「まさに武人の鑑です」
「あの方がおられればです」
「何の不安もありません」
 側近達も口々に言う。
「反乱の心配はありません」
「新教徒でもあられますし」
「そう思ってつけたのだ」
 大公にしてもというだ。
「外交のデューダー卿、信仰のグラッドソン大司教にな」
「内政のロドネイ公とですね」
「軍事のキャスリング卿も」
「これでいい筈だ」
 彼等四人をつければというのだ。
「最早な、だからな」
「マリー様はですね」
「万全に、ですね」
「王位を継がれる」
「そうなりますね」
「おそらくな、しかしだ」
 ここでだ、大公はこうも言った。
「用心すべきは。わかるな」
「ロートリンゲン家ですね」
 側近の一人がこの家の名前を出した、マイラの夫である太子の家であり大陸でも随一の権門、帝国の帝室だ。
「あの家ですね」
「わかるな」
「はい、あの家の気質を考えますと」
「必ずだ」
 それこそというのだ。
「仕掛けてくる」
「この国を我がものにせんと」
「婚姻を結んでいますし」
「マイラ様のお子を、ですね」
「この国の主にする」
「そうお考えですね」
「そうした家だ」
 まさにという言葉だった。
「あの家はな、だからだ」
「ロートリンゲン家には用心しますか」
「充分に」
「帝国は王国よりは謀略は使わない」
 このことも知っていてだ、大公は言った。
「ブルゴーニュ家はな」
「確かに。ブルゴーニュ家は伝統的に謀略好きです」
「蜘蛛の様に策謀を使います」
「我々に対しても国内を乱し周りの国々を抱き込みます」
「そうして攻めてきます」
「戦よりも策です」
「そうした国です」
 まさにというのだ、それが王国でありブルゴーニュ家だというのだ。ロートリンゲン家はまだこの家よりは策は使わない。 
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