魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第3章:再会、繋がる絆
第57話「手掛かりと異変」
前書き
司の存在抹消に関してですが、所謂世界改変に近い事をやっています。
実際に改変したというより、痕跡をできる限り消したって感じですけどね。
優輝達が言っている通り、認識阻害に近いので、ヒント同士を結びつける事ができなかったりします。(読み手からすればなんでわからないって感じですけど。)
=優輝side=
「....“聖奈”...か...。」
目の前の家を眺めながら、僕は表札に書かれた名前を呟く。
記憶にはない。だけど、久しぶりな感じがする苗字。
...おそらく、きっとおそらく、夢のあの人物の苗字だろう。
強くそう思えないのは、それすらも阻害されているからか...。
「...さすがに人の家を調べるのは...。」
「...いや、これほどの“違和感”、調べないと...。」
「すずかちゃんの時はやめておいたのに?」
そう。夢の内容にはすずかの家もあった。
だけど、さすがに人の家はやめておこうと思ったんだけど...。
「...バレなければ、問題ない。」
「あのね...。」
椿に呆れられる。...まぁ、当然だわな。
「...認識阻害を多重掛けして、そのうえで気配を消していく...これで完璧!」
「不法侵入という法においての欠点があるけど?」
それは...ほら、やむを得ないというか...。
「...じゃ、行ってくる!」
「あ、逃げた。」
「まぁ...見逃そうよかやちゃん。」
超短距離転移で家の中に入る。住人である夫婦がいるが...まぁ、無視しよう。
転移魔法は魔力反応を消すのが難しいが、ここまで短距離なら隠せる。
家の中に入れば、直感的に最も“違和感”の感じる場所へと向かう。
「(....二階か...。)」
直感に従い、二階に上がる。
同時に、違和感も大きくなる。
「(...何もおかしい所はない...?...いや、これは...!)」
二階の構造にしては、扉が少ない。
それこそ、“一部屋丸ごと分”の空きがあるほど、扉同士の間隔が広い...!
「『リヒト、サーチ!』」
〈『はい!....っ!?...反応...ありません...!?』〉
「な、...っ....!?」
思わず驚きの声を上げてしまいそうになった。
「(反応...なし...!?馬鹿な...!?)」
リヒトは優秀だ。それこそ、まだ子供の体の僕にはもったいないくらい。
それなのに、見つけられないだなんて...!?
「くっ...!」
防音結界を張り、扉が不自然な間隔を空けている真ん中辺りの壁を叩く。
部屋があれば、音が不自然に返ってくるはず...。
「っ...!(...なん、だ...これ...!?)」
返ってきた音が、上手く聞き取れなかった。
ただ単に聞き損ねただけと思いそうだが、明らかに不自然だった。
「(...絶対、何かがある...!)」
だけど、なぜかそれを認識できない。
「(...確実にここに部屋がある。だけど、僕はそれを知覚できない...か。)」
知覚できないのなら、手探りでドアを探しても見つからないだろう。
ならば...。
「(...一種の、賭け...か。)」
〈マスター!?なにを....!?〉
「リヒト、シャル!身体保護任せた!...転移!」
ただ、勘だけで、部屋に直接転移する!!
「...っ、ぁ...!?」
転移は...成功したらしい。
だけど、周りが見えない...というより、知覚できない。
そのうえ、見えない何かに圧迫されるような感覚に陥る。
「(...周りが知覚できないのなら...!)『リヒト、周りの風景を映像及び写真で保存!』」
〈っ、わかりました!〉
僕自身、“違和感”の正体を探るために持ってきておいたカメラで写真を撮る。
そして、圧迫感に押し潰されそうになった所で、外に転移する。
「―――ぷはっ...はぁっ、はぁっ...!」
「優輝!?」
息を止めていたらしく、切れた息を何とか整える。
そこへ、椿と葵が駆け寄ってくる。
「...手に入れたかもしれない。...手がかりを。」
「....!...っ、それ以前に無茶しないの!その様子だと、また...!」
「ご、ごめん...。」
勝手に入った上に、何かしらの無茶をしたと椿に怒られる。
...あー、また心配かけさせてしまったな...。
「...待っててくれたんだな。」
「っ...べ、別に優輝が心配だった訳じゃ...!」
「優ちゃん!体は無事なの!?」
「なっ...!?」
顔を赤くして背ける椿を無視して、葵が僕の体の心配をしてくる。
「あ、葵っ!?ずるいわよ!?」
「...あー、大丈夫だ。異常は残ってない。」
椿が何か言っているが、とりあえず二人にそう言っておく。
「そ、そうなの...。...とりあえず、今日はもう家に帰るわよ。」
「わかった。...情報も整理したいからな。」
そうして、ようやく僕らは家に帰った。
「っ、ぐ....!?」
「ど、どうしたの!?」
「な、なにか頭痛が...!」
家に帰って一休みしていると、突然頭痛が起こる。
「(なんだ...これ...!?)」
「ちょっと、優輝!?しっかりしなさいよ!?」
「優ちゃん!」
普通とは違うような頭の痛み方に、その場に蹲ってしまう。
椿と葵の呼びかけも、どこか遠くに聞こえた。
「..リヒ..ト...!身体スキャン...を...!」
〈.......マス...タ..ー....。〉
「...リヒト....?」
リヒトに僕の体がどうなっているかスキャンしてもらおうと呼びかける。
しかし、ノイズだらけの返事しか返ってこず、そのまま沈黙してしまった。
「くっ......。」
僕も頭痛に耐え切れず、そのまま意識が薄れていった...。
―――....優輝様...。
「....っ、く...!」
ふと、飛び上がるように目を覚ます。
「...朝....?」
おかしい。僕の記憶では既に夕方だったはず...。
「優輝!ようやく目が覚めたのね...!」
「...椿...?」
「...あの後、ずっと眠ってたのよ?今は日曜日よ。」
....そうか、日を跨いだのか。
「....リヒト。」
〈...大丈夫です。既に回復しました。マスターこそ大丈夫ですか?〉
「ああ。頭痛も治まった。」
あの頭痛は何だったのか。明らかに普通じゃなかった。
「リヒトのあの不調の原因は?」
〈...わかりません。マスターが頭痛に陥られたのと同時に何もできなく..。〉
...リヒトも原因不明らしい。もしかしてこれは...。
「...無事ならいいわ。とりあえず、朝食は作っておいたから。」
「ああ。ありがとう、椿。」
「........。」
顔を赤くしながら逸らし、周りに花を出現させる椿。...嬉しいんだな。
...とりあえず、昨日できなかった情報整理のためにもまずは朝食だな。
「....二人はどこまで推測した?」
「いや、優ちゃんが目覚めるまで個人でしか推測してないよ。」
「一番情報を持ってるのは優輝だから。」
「そうか...。」
ある程度は自分で推測を立てているらしい。
「昨日、“違和感”を感じた場所は全て夢の中で見た人物が今までの出来事に介入した場所。...と言っても、僕の記憶限定だけどね。」
「私たちも“違和感”は感じれるようになった。」
椿たちが感じれるようになったのは八束神社から...つまり、僕と出会った時からだ。
僕らと会う前に起きた出来事の場所に行っても、何も感じなかった。
...と、いう事は...。
「...“違和感”の正体は僕らそれぞれの記憶から生じる矛盾。...まぁ、これは探索する前からある程度わかってた事だね。」
「問題なのは、最後よ。」
重要なのはここからだ。
「僕があの家で見つけたのは、“知覚する事のできない部屋”。」
「知覚できない...って事は、認識阻害が?」
「多分ね。」
そして、家に帰ったら謎の頭痛で気絶。リヒトも謎の不調を起こす。
「...あ、そういえばシャルは昨日どうだったんだ?」
〈...リヒトと同じです。マイスターが頭痛を起こされたのと同時に...。〉
時間差とはいえ、あれはあの家から帰った後。もしかして...。
「...僕らに掛かってる認識阻害を無視するような場所に、無理矢理干渉したから...?」
「どういうこと?」
「あの知覚ができない部屋...あそこに僕は無理矢理転移で入ったんだ。だから、僕らに掛かってる認識阻害が原因で大きな矛盾を引き起こして、所謂オーバーヒート的な事が起きた...。」
多分、あの頭痛はそういう事だろう。
「....“聖奈”って家だったね。あそこ...。」
「ああ。だから、僕らの記憶から消えた人物は、あの家の住人...って、それはあの家に“違和感”を強く感じてた時点でわかる事か。」
そして、その人物は夢に出てきた人物と同一だろう。
「...あ、そういえばリヒト、昨日撮った映像とかは出せるか?」
思い出したようにリヒトに尋ねる。
それと一緒に、僕もカメラで撮った写真を印刷しに向かう。
〈はい。出せます。...昨日は知覚できなかったのに、これは...。〉
「何か写ってるのか?っと、出てきた。」
印刷した写真を取り、リビングに戻ってテーブルに広げる。
同時に、空中にリヒトが映像と写真を投影する。
「....この部屋は?」
「さっき言ってた部屋。」
写っているのはシンプルな部屋。女の子らしさがあるって程度でなんの変哲もない。
...一つあるとすれば、くっきり写っているのに一部知覚できない事か。
「ノイズが走るかのように見づらいな...。」
「認識阻害...ここまで影響するんだね。」
となると夢の人物は女性って事になるな。
...夢の記憶とかで十分それは考えられたはずなのに、なんで今更。
「...この現象...夢の記憶...天巫女......そういうことか。」
「何か納得いくことが?」
「ようやく結びついたって所かな。これも認識阻害の影響だったかもしれないけど。...まぁ、この現象で消えた人物は天巫女で、なぜかは知らないけどジュエルシードで皆の記憶から消えたって事。」
思考が纏まらないのも、拒絶反応のように頭痛が起こったのも。
全部、その人物が自分を思い出してほしくないと思ったから。
「天巫女...ユーノは一部説明してなかったけど、祈りの力は感情に左右されやすい。」
「...まぁ...祈るって事は雑念とかで影響が出るものね...。」
「...だからこそ、ユーノの言っていた負の感情のエネルギーを打ち消す事ができた。....同じような力だったから。」
同じような力だからこそ、対抗できた。
「ジュエルシードはその祈りの力を増幅させる。...つまり、それを扱う天巫女本人が負の感情で強く祈ってしまえば...。」
「っ.....!」
「....この現象は、そういう事だ。」
負の感情...拒絶などの意思で祈りの力を行使した。
大方、“自分なんていなければいい”とかそんな祈りだろう。
それが増幅され、僕らの記憶から消えた。
「...夢の中では、僕らは結構その人物に助けられていた。それなのに、どうしてこんな事にしたのか...。」
「...本人のみぞ知る...ね。」
もしかしたら、このままにしておくべき事なのかもしれない。
だけど、ここまで来て“はいそうですか”と引き下がる訳にもいかない。
「...どうにかしたいけど、手がかりはここまでなんだよな...。」
「どうするの...?」
「...時が来れば、また何か思い出すかもしれない。昨日みたいに。...だから、それまで色々準備って所かな。」
今僕らにできる事は、それぐらいしかないだろう。
ユーノ曰く神に匹敵する力が働いているんだ。早々認識阻害に干渉もできない。
「(...一応、試してみるか。)」
それでも、試してみる価値はあるだろう。
様々な視点から、幾重もの手段で干渉を試みれば或いは....。
―――...優輝様...どうか、マスターを頼みます....。
「じゃあ、また明日ー。」
学校が終わり、真っすぐ家へと帰る。
「(...夢の代わりに“声”か...。)」
昨日、今日と夢を見なかった代わりに、声が聞こえた。
確信はないが、デバイスらしき声。自分の主の事を僕に頼んでいた。
「(...言われなくても、そうするつもりだ。)」
全てを拒絶して皆の記憶から消える。
何かしらの理由があるだろうけど、そんな末路は悲しすぎる。
「(昨日、結局認識阻害に干渉する事はできなかった...。やはり、何かしらのきっかけがないと干渉すらままならないのか...。)」
元々知覚する事もできていなかった認識阻害だ。干渉できる方が珍しい。
「(とりあえず、今日も帰って色々試すか。)」
家では既に椿と葵が色々試している。僕もやれることはやらなきゃな。
「...これも無理...か。」
組んでいた術式を破棄する。
今日も様々な術式を試したが、なんの成果もなかった。
「やっぱり、何か手掛かりを見つける方が...。」
「...だとしても、当てが何もないわよ?」
「それなんだよなぁ...。」
こうしている間にも、もしかしたら取り返しがつかなくなるかもしれないのに...。
「(ジュエルシードの力が行使されたのは、夢の内容から見てもプリエールで...だ。あれ以降の記憶は夢に出てきていないからな。...だとすれば、その世界に行けば何かわかるかもしれないが...。)」
個人でそこまで行く力はない。それ以前に、無断で次元渡航したらダメだし。
例えクロノ達に頼むとしても、僕らは嘱託魔導師。未だに個人的理由の範疇を出ない事情でプリエールまで行けるほどの権限はない。
「....手詰まりか...。」
見ればとっくに夕食時になっている。
さっさと準備するか。
『.....優...さ.....。』
「っ....!」
夕食を食べ終わり、まだしていなかった風呂の準備に向かおうとした瞬間、念話らしきものが頭に響く。
「椿!葵!」
「どうしたの!?」
「念話だ!念話が聞こえた...!」
心を落ち着け、まだ念話が来ていないか確かめる。
助けを求めているのなら、早くいかなければ...!
『....優輝様...。』
「っ、あたしにも聞こえた!」
「私もよ!」
どうやら今度は二人にも聞こえたらしい。
しかも、聞こえてきたのは僕の名前。
「(...僕に対する念話...?一体誰が...。)」
『...学校へ...来てください....マスターを助けるために....。』
「学校...?」
どうしてそこへ?
疑問は残るが、助けを求められているのなら行くべきだろう。
目で合図し合った僕らは、急いで準備を済ませ、学校へと駆け出した。
=アリシアside=
「あー...だいぶ遅くなっちゃったな...。」
部活での話が長引き、帰りがだいぶ遅くなってしまった。
辺りはもう暗いし、完全下校時刻ギリギリだよ~...。
「ママたち心配してるだろうなー。」
私自身わかるほど、ママは親馬鹿だ。一度死んじゃった私を生き返らせようとしたし。
...その時フェイトに虐待してたから生き返った時はついキレちゃったけど。
「うーん...魔法が使えたらな...。」
魔法を使って体を動かしてると、基礎体力も付くみたいだし。
魔法で家に帰るのはさすがにせこいけど、体力つけて早く帰るぐらいはしたい。
「...というか、夜ってどこでも物騒なんだよねー...。」
家が近いので、登下校に自転車とかは使ってない。
だから、余計に危険なんだけど...。
「...って、あれは...?」
帰り道の途中、見知った人影が通り過ぎる。
「学校に行くのに、転移魔法は使わないの!?」
「いや、普通に禁じられてるからな!?」
「...優輝と椿と葵?...どうしてこんな時間に?」
ちょうど電灯に照らされ、姿と聞こえた声でその人影が誰か判別できた。
しかし、どうして今の時間にここにいるのかがわからなかった。
「(...怪しい...。)」
優輝はいつも神夜と対立している。
神夜が言うには、緋雪や椿たちを洗脳しているらしい。
だから、今どこかへ向かっているのも、とても怪しく見えた。
「(っ...追いかけなきゃ、見失うね。家に帰る暇はないか。)」
そう判断した私は、急いで三人を追いかけた。
目的地はおそらく言っていた学校だろう。
=優輝side=
『....優輝様...どうか早く...。』
「『あぁもう、聞こえてるってば!』」
念話で返事しても、反応はない。どうやら一方通行のようだ。
急いで走る。ここまで何度も呼びかけるという事は、猶予はあまりないらしい。
「よし、ここを曲がれば...!」
角を曲がり、見えた校門を飛び越える。
もう完全下校時刻は過ぎてるから当然誰もいない。
「さて...見たところ誰もいないが...。」
校庭を見渡し、そう呟く。
一見して何もない。だが....。
「優ちゃん...これ...。」
「ああ。...“違和感”が満ちているな。」
魔力も、ノイズがかかっているように感じづらいけどある。
これは一体....。
「リヒト、サーチ....って、かけても無駄か?」
〈.....そのようですね...。ノイズでほとんどわかりません。〉
どうやら無駄のようだ。....さて、どうするか...。
『...こちらです...。』
「っ!....こっちか...!」
そこで聞こえた念話に導かれるように僕は歩き出す。
...その先は、ちょうど玄関前。
『そこの綻びから中へ...。』
「綻び...?リヒト!」
〈.......っ、見つけました!〉
リヒトで念入りに探し、ようやく“綻び”を見つける。
「これは...結界...か?」
「...入りましょう。」
「...ああ。」
そして、僕らは結界らしきものに繋がる“綻び”の穴を通る。
「.....学校..なのは変わりないか。」
「みたいね...。ただ...。」
「なにアレ...。」
穴の先は同じく校庭。ただ、ノイズが走るかのように、所々空間がバグっていた。
別に触れても問題はない。まるでデータが破損した映像のようだ。
「っ、優ちゃん!!」
「どうした...って、今のは...!?」
葵に呼ばれ、そちらに振り返ると、誰かとナニカが校舎の角を曲がっていった。
「追いかけるぞ!」
胸騒ぎがし、急いで追いかける。
僕も椿も葵も、すぐに技が使えるようにしておく。
「っ、見つけた...!」
「危ない!」
「させないわよ!」
角を曲がると、ちょうど誰か...少女をナニカが襲う所だった。
すぐさま椿が矢を放ち、妨害しようとするが...。
「くっ...。」
ナニカ...黒い瘴気の怪物の触手で薙ぎ払われてしまう。
「“呪黒剣”!!」
「“チェーンバインド”!!」
すかさず、葵が襲おうとしている触手を地面から生やした剣で断ち切る。
そして、僕がバインドで動きを止める。
同時に、僕と葵が駆け出し、襲われている少女を救い出そうとする。
「っ!?何!?」
「壁...魔力障壁!?」
しかし、そこで魔力による透明な壁により進行を阻まれる。
まるで、事の成り行きをそこで見ていろと言わんばかりに。
「(しまった!今のでチェーンバインドの術式が...!)」
それは空間自体を隔てているのか、バインドとの術式的な“繋がり”が断たれる。
そして、バインドが引きちぎられてしまう。
「二人とも退きなさい!」
「「っ!」」
―――“弓奥義・朱雀落”
そこから横に飛び退き、壁に矢が突き刺さり、炸裂する。
「...くそっ!」
「“刀奥義・一閃”!!」
しかし、余程頑丈だったのか、椿の矢でもそれは破れなかった。
すかさず葵が強力な一撃を叩き込むが、それでも破れない...が、罅は入った。
「穴を開けてやる!」
〈“Zerstörung”〉
さらに追撃として、罅の部分を起点に、緋雪の魔法を叩き込む。
“破壊の瞳”を通した訳でなく、模倣しただけだから威力は著しく落ちるが...。
〈開きました!〉
「っ...!!」
リヒトの言葉と共に、穿たれた穴から壁の内側に入る。
よし、これでバインドで動きを止めれば....!
―――...この時、僕らは壁を破るのに集中して気づけていなかった。
「ぁああああああああああ!!!?」
「っ―――!?」
―――...既に、手遅れな事に。
「待っ―――!!」
....言い表しようのない、砕ける音と潰れる音と共に、ナニカが溢れ出した。
―――....そこに、既に命はない。
後書き
春先って7時前にはだいぶ暗くなってたはず。そして部活は終わりの際に話がある事があり、それが無駄に長引けば完全下校時刻(7時)近くなるはず。だからアリシアはこんな時間に出歩いてます。
最後の障壁は何気に魔力が集中していたので、なかなか破れませんでした。
ちなみになのはのディバインバスターも一発なら余裕で耐えます。
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