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真田十勇士

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巻ノ五十三 九州のことその四

「拙者はそう生きていきたい」
「高橋殿と同じくですか」
「死すとも戦の目的は果たしたい」
「是非ですな」
「そうお考えですか」
「そう思った、しかし目的を果たす為には」
 まさにだ、その為にというのだ。
「拙者は生きたいな」
「例え死すともですか」
「最後の最後まで生きるべし」
「その死ぬべき時の為に」
「そうあるべきですな」
「そうも考えておる、そのことを思った」
 高橋の生き様、そして死に様を見てというのだ。
「そうな、しかしこれで九州はじゃ」
「はい、島津家のものにはならぬ」
「そのことが決まりましたか」
「例えこれから戦になろうとも」
「それでもですな」
「それが決まった、しかし血は流れる」
 幸村は遠い目になってこうも言った。
「それは避けられぬ」
「最早ですか」
「それはどうしてもですか」
「避けられぬ」
「そうなりますか」
「そうなる、しかしその戦で島津家は意地を見せてな」
 四兄弟、特に義久が言う通りにというのだ。
「残る」
「間違いなく」
「そうなりますか」
「例え血は流れようとも」
「そうなりますか」
「確かにな、これで西国は完全に収まる」 
 九州での戦が終わり、というのだ。
「そしてな」
「その次はですな」
「いよいよ東国ですな」
「関東、そして奥羽」
「そちらになりますな」
「関東、奥羽の多くの家は関白様に帰順を申し出ておられる」
 幸村は既にこのことを聞いていて知っている。
 だがそれと共にだ、このことも聞いていて知っているのだ。
「しかし関東の北条、奥羽の伊達の両家はな」
「どちらもですな」
「関白様への帰順を確かに言っていない」
「まだ」
「そうなのですな」
「そうじゃ、だからこの両家と関白様がじゃ」
 東国への仕置にだ、秀吉が動けばというのだ。
「戦をするやもな」
「そうですか」
「そうなりますか」
「九州の次は東国で」
「この両家が問題ですか」
「さて、どうなるか」
 幸村は鋭い目になって言った。
「わからぬな」
「東国のことは」
「殿の目をもってしても」
「どうなるかわからない」
「そうなのですか」
「東国も統一されることはわかる」
 秀吉、天下人である彼の手によってというのだ。
「そのことはな、しかしな」
「北条家と伊達家ですか」
「両家がどうなるか」
「そのことはですな」
「わからない」
「そう言われますか」
「そうじゃ、どちらも関白様に従えばよし」
 そちらを選べばというのだ、両家が。 
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