真田十勇士
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巻ノ五十三 九州のことその三
「まさに武士だとな」
「武士はかくあるべきですな」
「主の為に命を賭ける」
「そして卑怯未練を行わず戦う」
「そのうえで死ぬものですな」
「そうじゃ、そう思った」
まさにというのだ。
「わしもな」
「ですか、それではです」
「我等もそうします」
「その時が来れば」
「殿に対して」
「そう言ってくれるか、では拙者もな」
幸村も言うのだった、瞑目した顔になり。
「そうする」
「お命をですか」
「賭けられますか」
「そして武士として見事に戦う」
「例え死のうとも」
「そうしたいものだな」
これが幸村の考えだった。
「例えどれだけの敵が来ようとも戦わねばならぬ時は戦いな」
「最後の最後まで」
「そして死ぬ時も」
「その時もですな」
「武士として死にたい」
まさにその時もというのだ。
「是非な」
「ですな、それでは」
「我等もですな」
「殿と共に戦わせて頂きます」
「そうさせて頂きます」
「頼むな、しかし拙者が高橋殿の様に出来るか」
それは、と言うのだった。幸村は。
「無理やもな」
「いや、殿ならです」
「必ず出来ます」
「殿のお心と武芸ならば」
「必ず」
十勇士達はこう言うのだった、彼等の主に。
「天下の武士になられます」
「そのことは我等が約束致します」
「殿ならばです」
「高橋殿の様に」
「そう言ってくれるか、では御主達のその言葉を覚えておき」
そしてと言うのだった。
「必ずな」
「その時には」
「果たされますか」
「そうしようぞ、そしてその時に果たすべきことも果たす」
それも行うというのだ。
「必ずな」
「そちらもですか」
「ただ戦い死ぬだけでなく」
「それだけでなく」
「その時のこともですか」
「戦は果たすべきことも果たすものじゃ」
それもまた戦だというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「そうも言われますか」
「うむ、だからな」
また答えた幸村だった。
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