FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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ニャア!!
前書き
今回のお話は完全な息抜き回です。皆さん、軽い気持ちで見ましょう!!
翌日・・・
「ミャア!!ネコネコがいっぱ~い!!」
「ちょっとぉ!!」
「く・・・苦しい・・・」
「助けてシリル~!!」
前日の水着DAYを無事に乗り切った俺たちは、今日は昨日の約束通り、明日ビーチを貸してもらえるという交換条件の元、人魚の踵のギルドに来ているのだが・・・
「シャルル、大丈夫?」
「昨日といい今日といい・・・」
「大変だな、お前ら」
昨日は仕事の関係でギルドにいなかったミリアーナさんに抱き付かれているのは、猫の姿になっているシャルル、ラウル、セシリーの三人。元々は人の姿で来ていたんだけど、今日はいないソフィアやカグラさんから変身魔法のことを聞いていた彼女が、三人の尻尾を掴んでエクシードの姿に戻すと、猫好きを披露するかのように力強く抱き締めているのである。
「そんな感想要らないから・・・」
「なんとかしてよ・・・」
「潰れる~・・・」
完全に傍観者と化している俺たちがそう言うと、三匹は息も絶え絶えにそう言う。だけど、ミリアーナさんなら何をしてもこいつらを離してくれることはないと思う。相当の猫好きだからね、この人は。
「その辺にしときなよ、ミリア」
「ミャア?」
頬を緩ませっぱなしの彼女に注意をしたのは、ギルドの中心人物であるカグラさん不在の本日、リーダーを任されているアラーニャさんだった。
「ごめんね、この子最近仕事で猫と戯れてなかったから」
「そうなんですか?」
ミリアーナさんの腕の中からセシリーたちを解放したドレッドヘアの女性がこちらを向いてそう言う。大魔闘演武が終わってから、どこのギルドも忙しいのは変わらないんだな。うちも大変だったしね、指名の依頼がたくさん来て。
「妖精の尻尾が解散してから、そっちに行ってた依頼も各ギルドに回ってくるようになったからね」
「「あ!!」」
彼女からそう言われ、初めて俺たちはその事に気が付いた。
マスターに言われるがままに解散したけど、よく考えたらうちに回ってきていた依頼がたくさんあったし、個人的に指名されていたものもあっただろう。なのに、何の前触れもなく解散したから、もしかしたら彼女たちのように困っている人がいるのかも。
「す・・・すみません!!」
「ううん。いいのいいの」
周りに迷惑をかけているのだと知った天竜は深々と頭を下げる。アラーニャさんは笑って許してくれるけど、怒ってる人もいそうだな。特にナツさん押しの人なんかは、居場所とかもわからないだろうからどうしようもないだろうし。
「まぁ唯一問題があるとすれば、エルザのことかなぁ」
「エルザさん・・・ですか?」
「なんでですか?」
ギルド解散で起きた一番の問題をエルザさんのことというアラーニャさん。でもなんでだろう?エルザさんは確かに重要な人物ではあったけど・・・
「せっかくカグラが毎日「姉さん」って言う練習してたのに」
「「!!」」
そういえば、カグラさんとエルザさんは同郷の中だって言ってたな。そのため、カグラさんはエルザさんのことを姉のように慕っており、大魔闘演武後の打ち上げでは彼女のことを姉さんと言ってたのが記憶にある。
「部屋の壁にエルザの写真貼っててそれに向かってね――――」
プライベートなんか一切ないと言わんばかりにカグラさんの練習風景を語っているアラーニャさん。もし彼女がこの場にいたら、この人の口をなんとかして封じようとしてひと悶着あったんだろうな。
「ねぇ、今日はどんな服を着ればいいの?」
いつまでも終わりそうにないアラーニャさんの暴露話に割って入ったのは、赤紫色の髪をしたビックテールの女の子。やっと本題に移れそうなので、俺とウェンディはホッとしていた。
「今日は好きな奴でいいよ。昨日は大変だっただろうし」
今日は一体何を着させられるのか、アラーニャさんの後ろからレオンが睨み付けるように彼女の言葉を待っていると、そんなありがたいことを言ってくれるので俺とレオンはパッと笑顔になった。
「でも二人は女の子の服は着てね。後でカグラに怒られちゃうから」
「大丈夫です!!」
「変な服じゃなければ」
一応カグラさんからある程度の指示は出ていたらしい。でも昨日の最後に言っていたメイド服やら着物やらじゃなくてよかった。それだけが気掛かりだったから、ひと安心だな。
そんなことを思いながら貸してもらった服に着替えるため、更衣室の奥にある部屋へと入っていく。
「そういや、明日ビーチ借りて何する気なんだ?」
上着を脱ぎかけているところで、上半身裸になっているレオンが明日についての質問をしてくる。
「そういえば聞いてなかったね」
言われてみると、彼女たちがなぜあそこまで反応したのかわからない。夏だから海を楽しみたいだけなのか、はたまた何かがあるのか。それは俺の知るところではない。
「明日になってのお楽しみでいいんじゃない?」
「そりゃそうなんだが・・・」
俺の言葉に対し、何か言いたげな表情のレオン。なので俺は脱いだ服を籠の中にしまうと、彼の方へと向く。
「何?何かあるなら言ってよ」
「やっぱりさぁ・・・」
背を向けていた格好になっていたレオンがこちらに振り返る。しかし、彼は俺の顔を見るやすぐに固まってしまっていた。
「お前・・・頼むから何か着てからこっち向けよ。俺が殺されるだろ」
「誰に殺されるんだよ・・・」
頭を掻きながら何事もなかったかのように背を向け直した少年の言葉に首を傾げる。今俺は上半身裸だけど、男同士なんだから問題ないはずなんだが・・・
「お前はほとんど女でカウントされてるから、ちゃんと隠してよ」
「なんだと!?」
失礼な物言いに腹が立ったため、彼に向かってわざと足音を立てて歩み寄っていく。
「レオンは男って見てくれてんじゃなかったの!?」
「俺はそうだけど、周りの目も気にしないとな」
彼は初対面で唯一俺のことを男とわかってくれた人物だったのに、最近はその時の感じがほとんどない。これが流されやすい性格という奴なのか。
「こっち向け!!」
「うおっ!!やめろ!!着替えてんだろ!!」
こちらを見向きもしないまま本日の衣装に袖を通していく彼の腕を引っ張る。ただ、彼の方が断然力があるため、全くこちらを向けさせることはできないが。
「こっちを・・・うわっ!!」
「いっ!?」
だが、なんか悔しかったので意地でもこちらを向かせようと力を入れたところ、足元が靴下だったこともあり、滑って転倒する。レオンのことも巻き込んで。
「危ないからやめろって言ったじゃん」
「理由を変えるな!!」
着替えてるからやめろっては言ってたけど危ないからとは一言も言っていない。俺は騙されないぞ!!残念なことに。
ガチャッ
「どうしたの!?」
「なんかすごい大きな音が・・・」
転んだ時に扉の向こう側に聞こえるほどの音が響いていたようで、心配したウェンディとシェリアが扉を開き中に入ってくる。だが、彼女たちは俺たちの顔を見るなり唖然とし、立ち尽くしていた。
なんで彼女たちがそうなったのかわからずキョトンとしているレオンと俺。だが、すぐにその理由がわかった。
上半身裸で押し倒されている格好の俺と服半脱ぎ状態で上に乗っかっているレオン。彼女たちの頭の中では、たぶんありもしない妄想が流れているんじゃないだろうか?
「レオン!!」
「何やってるの!?」
「え?俺なの?」
怒りで顔を赤くして上に跨がる金髪の少年に向かって声を張り上げる。だが、彼は自分に非がないため、二人の反応に驚愕している。
「なんであたしじゃなくてシリルなの!?」
「シリルは失敗してても男の娘なんだよ!!」
「失敗って何!?」
想像もしていなかった展開に気が動転しているらしく、訳のわからないことを発している少女たち。特にウェンディの口からいい放たれた失敗っていうのが気になる。あれか?生まれてくる性別を間違えたとでも言いたいのか?
「ちょっと待て。俺は絶対悪くない!!」
「ウソ!!」
「シリルに如何わしいことしようとしたんでしょ!?」
「誰がするか!!」
立ち上がり、後ずさりしていく氷の神に天空の竜と神が迫っていく。反撃に出れば簡単なのだろうけど、さすがに彼女たちを傷付けるわけにはいかないと手を出せないでいる少年は、気付けば壁際まで追い込まれていた。
「いやいや、話を聞いてよ」
「ダメ!!」
「問答無用!!」
「だから――――」
なおも無罪を主張するレオンだったが、ウェンディとシェリアは聞く耳をもたない。そして、そのやり取りはお店が開店するギリギリまで繰り広げられたのであった。
「ねぇ」
「ダメだよ」
いつでも接客に対応できるようにお盆を持って、隣に立っている藍髪の少女に声をかけるが話を聞いてもらえず突っ返されてしまう。
「まだ何も言ってないじゃん」
「何を言いたいのかわかってるから」
結局、普段着のような服ではなく、今日の衣装はちょっとヒラヒラした感じのロリータ系ファッションになってしまった。だが、昨日の水着に比べれば何倍もいいし、あまり女の子女の子してる感じの物にはしなかったので、そこまでダメージもない。
ウェンディもシェリアも、レオンと俺を巻き込むために同じような衣装を着てくれてるからちょっと目の保養になっているのも許容の理由だろう。だが、一つだけ妥協ができないものがある。そして、それを外したくて彼女に声をかけたのだが、拒否されてしまったのだった。
「てかこれどこから持ってきたの?」
「アラーニャさんが貸してくれたんだよ」
そう言ったウェンディは頭につけているそれをピコピコと動かさせ、お尻についているものをユラユラと動かす。これはその人の魔力で動かすことができるらしく、まるで本物のように見せることができるのだ。
「なんで猫耳なんだよ・・・」
思わずため息を漏らした。アラーニャさんの保有物である猫耳と尻尾を着け、俺、レオン、ウェンディ、シェリアが接客に回されているのだ。
「ほしいならあげるって言ってたよ」
「遠慮させて!!」
気に入ったのか、頭の物を小さく動かしている天竜を見て癒される。でも、見てる分には最高なんだけど、自分が付けてるとなると心が沈んでしまう・・・
「ご注文は以上でよろしいですニャー?」
俺とウェンディが話していると、近くで注文を取っていたレオンことリンちゃんが、顔を真っ赤にしながら猫のようなポーズを決め、そんなことを言っていた。
「あ!!これも追加で!!」
「っ・・・」
しかし、ちょっとチャラい印象を与える若いお兄さんが追加注文すると、リンの表情が強張った。彼は人魚の踵に来るお客さんに相当気に入られているらしく、このようなやり取りが何度も繰り広げられている。その理由は、彼が赤面しながら恥ずかしいことを言うのをみんな見たいから。
「以上でいいですニャ?」
泣きそうになりながら再度同じポーズを取るリン。ついでに言うと、彼がこのポーズを取らされているのには理由がある。それは、さっき俺を押し倒したのを見たシェリアが激怒して、猫コス、語尾の強制をさせているのだ。
無論何度も断ったのだが、天神が出入り口のところに本日猫コスDAYというポスターを勝手に張り付け、アラーニャさんもそれを認め、こうなってしまったのだ。
「ルリ!!あそこ呼んでるよ」
すると、ウェンディがお客さんが呼んでいることに気付き、俺にそう言う。
「今行きますニャー・・・」
しかし、よく考えるとシェリアはなんてことをしてくれたんだろう・・・猫コスDAYと定めたってことは、俺たちもそれをやらなければならないし、リンがあんなポーズまで決めたら、俺たちもやらなければおかしい雰囲気になってしまう。だから結局、全員が恥ずかしい思いをしながら接客をしなければならないのだ。
「ウェンディ、シェリア、これ持ってって」
「ニャー!!」
「わかったニャー!!」
「ノリノリね、あんたたち」
乗り気じゃない俺と恥ずかしさでいっぱいのレオンに対し、ウェンディとシェリアは猫になりきっている。目の前の猫耳少女も、あまりにもノリノリで引いているように見える。
「恥ずかしくないのかな?あの二人」
「女の子だもん・・・あれくらいやっても違和感ないよね・・・」
戻ってきた俺とレオンが彼女たちの姿を見てそう言う。できることなら、お客として彼女たちと触れ合いたかった・・・
「ミャア!!ルリもリンも元気出して!!」
「「はい・・・」」
「違う!!返事は?」
「「ニャア!!」」
暗い雰囲気を放っている俺とレオンにミリアーナさんがそう言う。いいよねぇ、この人は猫大好きだから。今日はもしかしたら彼女のための一日とお客さんたちは思ってるかもしれないな。
「ルリ~、これ運んで~(笑)」
「リンもサボってないで働いて働いて」
「「わかってるニャア!!」」
猫耳に尻尾をつけて猫のような語尾で話している俺たちが相当面白いらしく、料理をカウンターに置く本物の猫たちは笑いを堪えている。
その姿に殺意を感じつつ、料理を運んでいく俺とレオンは、その日一日泣きそうになりながら、なんとか乗り切ったのであった。
後書き
いかがだったでしょうか?
前回のお話とは異なり接客タイムは短めにしました。
次で人魚の踵との絡みは一先ず区切りですかね。そのあとのストーリーにも絡んでくるでしょうけど。
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