| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第71話一攫千金ウエスタン

オレがGGOにコンバートして、最初に知り合った隣を歩く女性プレイヤー・シノンにまずは安い武器屋に連れていってもらえる事になった。まさかコンバートしたら性別反転事故で女になったのがこんな場面で役に立つとは思わなかったなーーー

「ところで、総督府には何しに行くの?」

「あの・・・《バレット・オブ・バレッツ》っていうイベントのエントリーに」

「BoBに?」

「はい。コンバートなんで、他のゲームから能力(ステータス)を引き継いでるんです」

そう。オレの目的はGGO最強のプレイヤーを決めるイベント、《バレット・オブ・バレッツ》に出場する事だ。もちろん菊岡に頼まれた『死銃(デス・ガン)と接触しろ』という仕事を果たすために。死銃(デス・ガン)に殺されたと思われる二人の共通点、それは二人ともGGOの中でも上位に食い込むレベルのプレイヤーだったという事。オレのステータスの高さなら、恐らく死銃(デス・ガン)のターゲットとなり接触を図れるだろうとの事だ。

「・・・聞いていい?何でこんな埃っぽくて、オイル臭いゲームに来ようと思ったの?」

「え?」

このゲームをプレイしようと思った理由かーーー死銃(デス・ガン)の事は言わない方が良いよな。だったら何かしら理由を作ってーーーこれならいけるか。

「今までファンタジー系のゲームばっかりやってたんですけど、たまにはサイバーっぽいのも遊んでみたいなって」

これはでっち上げではあるが、実際オレが遊んでいたゲームのほとんどがファンタジー系が多かった。バーチャルMMOに関しては全部ファンタジー系のゲームが占めている。それにーーー

「・・・銃撃戦とかも、前から興味あったし」

「そっか・・・それでいきなりBoBに出ようだなんて、根性あるね」

「へへへ・・・」

銃撃戦に興味があったのは本当の話だ。ずっと前線に出て、剣を振り回すのがオレの戦い方だった。でもALOの亜利沙やアスナさんのように、後衛から弓や魔法で援護する戦い方もある。オレはアスナさんのように魔法は使えないし、亜利沙のように矢を放てないから、この中・遠距離から銃弾を放つ事であの二人の気持ちが分かるかなと思っていた。

「じゃあ色々揃ってる大きいマーケットに行こう、すぐそこだから」

「あ、はい」




******




連れてこられたのは大きな武器屋《MARKET》。大きなマーケットって言われたけど、まさか本当にマーケットって名前だとは思わなかった。しかも中を歩いてみる限り、品揃えがすごく充実してる。
GGOの武器は大きく分けて光学銃と実弾銃の二種類ある。
光学銃は軽量で命中率も高いが、プレイヤー用装備の《防護フィールド》で威力が半減する。だからBoBみたいな対人戦をやるなら実弾銃を使用するのがセオリーだそうだ。
実弾銃は《防護フィールド》を貫く程に威力がデカイが、重量が重すぎて弾丸も風の影響を受けるし、弾切れもするから替えの弾丸も持つ必要があるから移動ペナルティがある。全部シノンが教えてくれた情報なんだけど。

「さてと・・・あなた、ステータスはどんなタイプ?」

「えっと・・・筋力優先、その次が素早さかな」

筋力重視敏捷(ストレングス・アジリティ)型か・・・じゃあメインアームはちょっと重めのアサルトライフルか、それとも大口径マシンガンをメインアームにして、サブにハンドガンを持つ中距離戦闘タイプが良いかな・・・」

オレのステータスタイプからオススメ出来る装備を考えてくれてるみたいだけどーーー正直言って全然分かんない。銃撃戦って銃をバンバン撃つだけじゃないの?

「あ、でもあなたコンバートしたばかりだよね?って事はお金が・・・」

「あ・・・」

そうだ、武器を買う以前に所持金が問題だ。ALOの装備や所持金はコンバートすると消えちゃうから翼たちに預けたけど、GGOじゃもしかしたらーーーそう思ってオレは右手でシステムウィンドウを開いた。そして問題の所持金はーーー

「1000クレジットです・・・」

「バリバリ初期金額だね・・・」

これはマズイーーーこの金額だと実弾銃で中古のリボルバーが買えるかどうかだし、BoB以前に銃が買えねぇーーー

「あのね、もし良かったら・・・私がすこし足そうか?」

「い、いや!そこまでしなくてもいいですって!!案内してもらった上にお金まで・・・そうだ!どこかドカンと手っ取り早く儲かれるような場所ってないですか!?」

流石に金銭まで助けられる訳にはいかない。そもそもこの子オレが男だって完全に忘れてるみたいだしーーーこうなったら一攫千金を狙って所持金を増やすしかない。そう思ってシノンにそんな事が出来る場所を聞いてみたら、『オススメは出来ないけど』と言われて教えてくれた場所に行く事になった。




******




まるで西部劇のような木造のセットと、そこに立っているNPCのガンマン。

「手前のゲートから入って、奥のNPCガンマンの銃弾をかわしながらどこまで近づけるかっていうゲートね。で、ガンマンに触れれば今までにプレイヤーが注ぎ込んだお金が全額バック」

なるほど。ようするに銃弾を避けて、ガンマンに触ればクリア。今までに散っていったプレイヤーたちの金が全額手に入れられるーーーん!?

「401500クレジット!?すごい金銭ですね・・・」

「だって無理だもん。だってあのガンマン、8mラインを越えるとインチキな早撃ちになるんだ。予測線が見えた時にはもう手遅れ」

インチキな早撃ちーーー確かに相当スピードを上げてないと避けられるかどうかだろうな。個人的には予測線って言葉が気になるけどーーー

「ほら、またプール枠を増やす人がいるよ」

シノンに言われてゲートの方を見てみるとーーー確かにサングラスをかけている迷彩服の男性プレイヤーがゲームに挑戦しようとしていた。それにこのゲームを見るためにギャラリーが集まってきている事を考えると、このゲームが難しいという事がよく分かる。ただ単に暇なだけなのかもしれないけど。
そして3カウントの音が鳴りーーーゲートが開いてゲームスタート。早速勢い良く走り出したと思ったらーーー

「うわっ、何あのダサイポーズ」

「まあ見てて」

いきなり立ち止まって左腕と左足を上げて御菓子なポーズをとっていた。シノンは見てろって言うけど、こんなポーズに何か意味があるのか?そう思っていたらーーー左脇腹と右肩、そして股下を銃弾が通りすぎた。

「・・・今のが予測線?」

「そう。防御的システムアシスト、《弾道予測線(バレット・ライン)》」

狙撃の初弾を除き、狙われたプレイヤーの視界には赤い線が表示される。それが防御的システムアシスト、《弾道予測線(バレット・ライン)》。つまり目に見える予測線が身体に当たらないようにすれば、銃弾も当たらない。だから銃弾が当たらないようにするのは不可能じゃないって事だな。
今NPCガンマンの銃弾を避けたプレイヤーはまた数歩走り出し、立ち止まりがに股で足を開き両手を横に伸ばし頭を下げ、頭上・右肩・股下に銃弾が通りすぎる。そしてそろそろ8mラインを通りすぎ、早撃ちになったガンマンの銃弾を三発を避けるがバランスを崩してしまった。そしてガンマンの放った三発の銃弾がーーー挑戦者(チャレンジャー)の胸を撃ち抜いた。これによりゲームオーバーとなり、オレが貰う予定の金額が402000クレジットに増額された。

「ね?左右に大きく動けるならともかく、ほとんど一直線に突っ込まなきゃならないんだから。どうしたってあの辺が限界なのよ・・・え?ちょっと、あなた・・・」

予測線が見えた時にはもう遅い、それが分かればあとはチャレンジあるのみ。オレはゲートの手前にあるタッチパネルをタッチして、ゲームを始める。

「おいおい、ビギナーが挑戦かよ」

「おっ!今度のカモは可愛いじゃん」

「ついでにちょっと見てくか」

見るなら勝手に見てろギャラリーのおっさん勢。ビギナーは認めるが可愛いは余計だ。別に女になるつもりは一切なかったんだからなーーーオレは心の中で悪態を吐きながら、3カウントのアラームを聞きーーーゲームスタート。
ゲートが開き次第突っ走る。ガンマンのリボルバー銃の銃口がオレに向き、オレの額・左胸・右膝に予測線が当たる。オレはそれを認識しーーー右へ軽くジャンプして避ける。そのまま立ち止まらずに左右にジグザグして走り続け、ガンマンの狙いが定まらないように進む。そして今度は額・左胸・右脇腹に予測線が当たったのを視認して、上半身を仰け反られながら進んで全て避ける。
そろそろ10mライン。身を屈めながら銃弾を避けて進み、最後にリボルバー銃に装填された6発の銃弾が発射されーーー滑り込んで全て避ける。

「これで弾切れだろ・・・っ!!」

弾切れだと思って油断してたら、リボルバーの銃口が光っていた。恐らく光学銃と同じ実体のない銃弾ーーービーム弾だ。その光る銃口から放たれた6発のビーム弾がオレにーーー当たる前に上に大きくジャンプしてガンマンの横に着地して、右脇腹をタッチ。

「オレの勝ちだ」

この瞬間から今までに注ぎ込まれた402000クレジットが全額オレの財布に入り、今まで誰もクリア出来なかったギャンブルゲームがクリアされた。オレはさっき入ってきたゲートを通り抜け、シノンと合流する。

「あなた・・・どういう反射神経してるの!?最後、目の前・・・2mくらいの所からのレーザーを避けた!あんな距離だともう弾道予測線と実射撃とのタイムラグなんて、ほとんどないはずなのに!」

「え、え~っと・・・」

どうしよう、ほとんど無意識にやってたーーーシノンからの質問には厳密には答えられないぞ。こんな状況だと、ザックリ言ってしまうのが一番なんだろうけどーーー仕方がない、こうとしか言えないな。

「だってこの弾除けゲームは・・・」

ザックリ言ってしまえばーーー

「弾道予測線を予測する、っていうゲームなんですよね?」

「・・・よ・・・予測線を予測!?」

何をそんなに驚いているのだろうかオレにはさっぱり分からないな。だってオレ、言ってしまえばイレギュラーの塊みたいな人間だもん。まあ一攫千金は達成出来たし、BoBのエントリーが終わる前に早く武器を買いに行きますか。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧