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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第97話

~遊撃士協会・クロスベル支部~



「ごめんください。」

「失礼します。」

ロイド達が支部に入るとミシェルとスコット、ヴェンツェルが話し合っていた。

「アナタ達………」

「やあ、ロイド達か……」

ロイド達を見たミシェルは驚き、スコットは暗い雰囲気を纏った様子でロイド達を見つめていた。

「やれやれ、揃いも揃ってシケたツラ並べてんな?」

「余計なお世話だ……と言いたいところだが。………まあ、否定はせん。」

自分達に近づいてきて言ったランディの言葉にヴェンツェルは寂しげな笑みを浮かべて答えた。

「よりにもよって何でアリオスさんが……はあ、寝耳に水すぎるよ。」

「……そんな気配は今まで一切なかったからな……強いて言うならばオルキスタワーに訪れることが最近多かったぐらいだ。」

「そうね……あくまで今後のギルドの対応を協議しに行ってたはずだけど。まさかこんな段取りを話し合っていたなんて……」

スコットとヴェンツェルの言葉にミシェルは頷いた後複雑そうな表情をしていた。

「………実はそのあたりをお聞きしたくて来たんです。アリオスさんはまだギルドに所属してるんですか?」

「……昨夜、いきなり辞表を出して遊撃士のエンブレムを返してきたわ。持っていた仕事は全部片付けて、今後の対応策を出してくれたのはいかにも彼らしいけど……」

「そうだったんですか……」

「確かにアリオスさんらしい几帳面さですね。」

ロイドの質問に答えたミシェルの話を聞いたエリィは複雑そうな表情をし、ティオは頷いた。



「……だが、このように唐突に辞めるのはさすがに問題だろう。しかも『クロスベル独立国』の『国防軍』の長官などと………」

ヴェンツェルは重々しい様子を纏って答えたが

「………だが………アリオスさんの気持ちも理解できないわけじゃない。」

「スコット……?」

スコットが呟いた言葉を聞いて不思議そうな表情でスコットを見つめた。

「俺もアリオスさんと同じクロスベル市の出身だが……確かに、演説にもあったような原因不明の不可解な事故は年に1,2回は起きていたんだ。本当の事はわからないけど……皆、エレボニアとカルバードがらみで起きた事だと薄々感じていた。」

「………それは……………」

「まあ、ここ最近はそうした事故は起きてないが……5年前、アリオスさんの奥さんとシズクちゃんが巻き込まれた事故が最後と言えるかもしれないな。」

「あ……………」

「ひょっとして……」

スコットが呟いた言葉を聞いたロイドはエリィと共に呆けた表情でスコットを見つめた、

「……5年前に表通りに起きた運搬車の爆発・炎上事故……当初は導力機関(オーバルエンジン)の暴走と可燃性の積荷が原因とされたけど……確かに不審な点は多すぎたわ。そして、その事故に巻き込まれて奥さんのサヤさんは亡くなり……シズクちゃんは光を失った。」

「そういう顛末だったのかよ……」

「……断片的な情報はある程度は聞いていましたが。」

ミシェルの説明を聞いたランディは目を細め、ティオは複雑そうな表情をし

「それでアリオスさんは警察を辞めてギルドに移って……」

エリィは疲れた表情で言った。

「アタシもアリオスとはその後からの付き合いだけど……彼、一言も言わなかったけどずっと引っかかってたんでしょうね。……そう考えると今回の大役を引き受けたのもようやく腑に落ちた気がするわ。」

「…………………」

ミシェルが呟いた言葉を聞いたロイドは考え込み

「あれ……そういえば気になっていたんですがセリカさん達は?」

「エオリアさんもいねえな………」

ある事に気付いたティオとランディはミシェルに尋ねた。



「………セリカさん達なら2日前に帰国したよ。」

「帰国……ですか?」

スコットが呟いた言葉を聞いたエリィは不思議そうな表情をし

「何でもレウィニアという国から帰還指示が来たらしい。」

「………エステルちゃんからセリカ達の事情は聞いていたから仕方ないと思っていたんだけど………まさかよりにもよってこの状況でぬけるなんて、こっちにとっては痛すぎたわよ………」

「………だが他国の客将なのにこちらの都合で今までアリオスさん並み……いや、それ以上といってもおかしくないぐらい働いてもらっていたから、俺達としては文句が言えない上、引き止められる立場ではないしな……」

ヴェンツェルやミシェル、スコットはそれぞれ説明をした。

「あの出鱈目連中達はそれでいいとして……エオリアさんがいないのはなんでだ??」

「………エオリアなら2日前に休職表を出したきり、行方不明なのよ………」

そしてランディの質問にミシェルは複雑そうな表情で答え

「休職……ですか?」

「なんでまたこんな時に………」

ミシェルの言葉を聞いたロイドは不思議そうな表情をし、ティオは目を丸くした。

「それはアタシの方からも聞いたけどエオリアったら適当な言い訳としか思えない理由だけアタシに説明して、アタシの制止の声を無視して自分から勝手に出て行ったのよね………」

「それに最近のエオリアにはおかしな点がいくつかある………恐らくそれが関係していると思うのだが………」

「おかしな点……ですか?」

ヴェンツェルの呟いた言葉を聞いたエリィは不思議そうな表情をした。

「ああ………実は襲撃の時に猟兵達に強姦されそうになっていたんだ、エオリア。」

「なっ!?」

「あの野郎共っ!!」

「そ、そんな………!」

スコットが呟いた言葉を聞いたロイドは厳しい表情をし、ランディは怒りの表情で声を上げ、エリィは信じられない表情をした。

「……幸いその時は駆け付けたセリカ達によって猟兵達は殲滅されて、何とか強姦されずにギリギリ助かったんだけどね………だけどその日以降、落ち込んでいてね………でも数日後には人が変わったかのように元……いえ、それ以上の明るさに戻ったのよ。」

「……だが明るさが戻った以降のエオリアにはいくつか不審な点が出てきたんだ。」

「一体それはなんなんでしょうか?」

スコットが呟いた言葉を聞いたティオは不思議そうな表情をした。

「………戦闘の際、”グノーシス”を服用したマフィア達のように身体能力が以前のエオリアとは考えられないくらいの動きをしていたんだ。」

「オ、オイオイ…………!まさか……!」

「エオリアさんが”グノーシス”を服用していたんですか!?」

「………エオリアさんの状況も”グノーシス”を服用した被害者たちに似ていますよね……?」

ヴェンツェルの説明を聞いたランディやロイドは信じられない表情をし、エリィは不安そうな表情で尋ねた。

「勿論アタシ達も真っ先にそれを疑って、エオリアの持ち物や身につけている服、借りている部屋を全て調べさせてもらったけど、”グノーシス”らしき薬品は一切出てこなかったわ。」

「それに”グノーシス”を服用した者達と違って、普段の様子も全然変わっていなかったしな……」

「………まさかとは思うがヴァルドのようにエオリアさんも”グノーシス”を使いこなしているんじゃねえのか?」

ミシェルとヴェンツェルの話を聞いたランディは目を細め

「……………まあ、確かにその可能性も考えられるけど………だとしてもエオリアの他の不審な点とはつながらないわ。」

ランディの言葉を聞いたミシェルは頷いた後溜息を吐いた。

「他の不審な点……とは?」

「………エオリアがいなくなってから調べてわかった事なんだけど………エオリアの調子が戻った時期あたりから、アカシア荘にエオリアが頻繁に出入りしている目撃情報があるのよ。」

「アカシア壮というと………」

「確か以前エステルさん達が部屋を借りていた建物で、その後はセリカさん達が同じ部屋ともう一つ部屋を借りているんでしたよね?」

エリィの質問に答えたミシェルの話を聞いたロイドは目を丸くし、ティオは不思議そうな表情をした。

「ええ………それだけじゃないわ。エオリアがセリカ達が借りている部屋に出入りしている姿も住人たちが目撃しているわ。………それも昼だけじゃなく、朝や夜とかにもね。」

「ええっ!?そ、それって……!」

「まさかあのセリカって剣士とエオリアさんが付き合っているのか!?」

「…………リタさんとレシェンテさんに会いに行っていた割には朝になって出てくる……というのもおかしな話ですね。」

ミシェルの説明を聞いたエリィは顔を赤らめて驚き、ランディは信じられない表情で叫び、ティオは考え込んでいた。

「―――あ。そういえばエオリアさん、この前会った時に恋人みたいな存在がいるって言ってなかったか……!?」

「た、確かにそう言ってたわよね………」

一方ある事に気付いて声を上げたロイドの言葉にエリィは頷き

「エオリアに………恋人?」

「何それ??アタシ達も初耳なんだけど。」

二人の会話を聞いたスコットは不思議そうな表情をし、ミシェルは目を丸くしてロイド達を見つめた。そしてロイド達は以前エオリアに会った時、エオリア自身が肉体関係の間柄にある男性がいる事を自分達に言ってた事を説明した。



「……………今の話と俺達が手に入れた情報を纏めると………」

「どう考えてもセリカ達がかなり怪しいわよね………」

「ああ………しかもセリカさん達とエオリアがギルドから姿を消した日も一致しているしな………」

ロイド達の話を聞いたヴェンツェルとミシェルは真剣な表情になり、二人の言葉にスコットは頷いた。

「…………………あの。エオリアさんの不審な点をまとめた所、一つだけエオリアさんが消えた理由がある事に気付きました。」

一方考え込んでいたティオはミシェル達を見つめて言い

「なに……!?」

「本当……!?」

ティオの言葉にヴェンツェルやミシェルは驚き

「一体どんな理由でエオリアさんが消えたと思っているんだ?」

「はい。それは………――――エオリアさんがセリカさんの”使徒”になったからだと思っています。」

ロイドに尋ねられたティオは真剣な表情で答えた。

「”使徒”………?そういえばレシェンテもそう名乗っていたが……」

「一体それとエオリアが何の関係があるのかしら?」

ティオの言葉を聞いたヴェンツェルは不思議そうな表情をし、ミシェルは尋ねた。そしてティオはロイド達やミシェル達に”使徒”の説明をした。

「そんな存在が異世界にはあるのか……………」

「確かにティオちゃんの説明を聞いた感じ、エオリアの不審な点と全て結びつくわね……」

説明を聞いたロイドは驚き、ミシェルは考え込み

「ええ。実際マリーニャさんというセリカさんの”使徒”の一人はとんでもない身体能力の持ち主ですし。………それに以前襲撃の数日後の市内でエオリアさんに会った時、エクリアさんやレシェンテさん―――セリカさんの”使徒”達全員が纏っている”気”と全く同じ”気”がエオリアさんから感じられたのです。あの時は気のせいだと思っていたのですが………」

ティオは頷いた後複雑そうな表情をし

「エオリアが”人”の身を捨て、不老不死の存在になった……か。とても信じられん話だな………」

「一体何を考えているんだ、エオリアは………」

ヴェンツェルとスコットは考え込み

「………つまりエオリアは帰国したセリカ達について行った可能性がかなり高いって訳ね。」

ミシェルは疲れた表情で溜息を吐いた後ティオに尋ねた。

「恐らくは。セリカさんと肉体関係の間柄にあるのも、その”使徒”にしてもらった事も関係しているかと。」

「あの野郎………!エクリアさん達を侍らしていながら、さらにエオリアさんも……だと!?いくら”神”とはいえ、ズルすぎだろっ!」

「…………………色々と問題があるとはいえ、エオリアの現状がわかっただけでも助かったわ………」

そしてティオの話を聞いたランディは悔しそうな表情をし、ミシェルは複雑そうな表情をした後疲れた表情で溜息を吐いた。

「………それで話をアリオスさんに戻りますが………失礼を承知で尋ねます。アリオスさんのスケジュールで不審な点はありませんでしたか?」

するとその時ロイドは話を戻してある事を尋ねた。


「え。」

「ロイド、どういうことだ?」

尋ねてきたロイドの質問を聞いたミシェルは呆け、スコットは不思議そうな表情で尋ねた。

「『国防軍』の司令長官……いきなり引き受けるにはあまりに重過ぎる役目だと思います。多分、ディーター市長………いや大統領との間で根回しがされていたんじゃないですか?それも”最近”ではなく、”しばらく前”から。」

(フフ、私も真っ先に疑っている事に気付くなんて………成長したわね。)

ミシェルに尋ねたロイドの質問を聞いたルファディエルは微笑み

「………………………」

ミシェルは複雑そうな表情で黙り込んだ。

「ミシェル……?」

「……まさか、本当なのか……?」

ミシェルの様子を見たスコットは不思議そうな表情をし、ヴェンツェルは信じられない表情で尋ねた。

「……確かに、行き先など、報告と食い違っていることはたまにあったわ。あれだけ仕事を抱えてたら当然だと思ってたけど……考えてみれば、アリオスが報告を間違うなんて不自然極まりないのよね。」

「それじゃあ、そうした時間にディーター市長とコンタクトを?」

真剣な表情で言ったミシェルの言葉を聞いたスコットは尋ね

「……その可能性は考えられるかもしれない。ロイド君、さすがね。恐いくらいの洞察力だわ。もう、”叡智”と並んでいるのじゃないかしら?」

尋ねられたミシェルは頷いた後真剣な表情でロイドを見つめた。



「いえ……失礼な事を言ってすみません。その、失礼ついでにお聞きしますが……そうしたアリオスさんの行き先やスケジュールの食い違い―――”半年以上前”で覚えはありませんか?」

「半年以上前って……」

「……まだディーターさんが市長にもなっていませんが?」

(………………)

ロイドの質問を聞いたエリィとティオは不思議そうな表情をし、ルファディエルは目を細めて考え込んでいた。

「う、うーん……そこまで前だとさすがに覚えてないんだけど………あ、でもあれがあったか。」

一方ミシェルは唸りながら考え込んだ後ある事に気付いて声を上げた。

「あれ……?」

「創立記念祭の最終日よ。彼、仕事でレミフェリアに出張する事になってたんだけど……それを急遽、キャンセルしたのを報告し損なってたのよ。」

「え……………」

(…………レミフェリア……………そういえば”競売会(オークション)”の目玉になるはずだった人形もレミフェリア方面…………なるほど………まさかキーアとアリオスが繋がっているとはさすがに予想できなかったわ……………そしてワジから聞いた”至宝”の件を合わせると……………どうやらガイ殺害の容疑者候補としてアリオスがかなり怪くなってきたわね……………ただそうなるとガイの死亡原因を考えるとアリオスの可能性は低いのよね………アリオスとガイの腕は互角。となるとアリオスとガイが戦っている間に、クロイス家の者達もしくは彼らの協力者が銃でガイの心臓を撃った可能性が高いわね……………ただそうなると、問題はその協力者なのよね……………)

ミシェルの話を聞いたロイドは呆け、ルファディエルは真剣な表情で考え込んでいた。

「後で気付いて聞いてみたら忙しくて報告し損なってたって言ってたけど……なに、何か気になるの?」

「あの時は殺人的な忙しさだったし……」

「報告に齟齬があったとしても無理もないと思うが……?」

ミシェル達はそれぞれロイドに尋ね

「…………………」

尋ねられたロイドは黙り込み

「……記念祭の最終日……」

「最終日といえば”あれ”がありましたけど………」

「それがどうつながるってんだ?」

エリィ達はそれぞれロイドに視線を向けた。

「……わからない。でも何か繋がりそうな気がする。今まで俺達が、忙しさのあまり、見過ごしていた点と点が………」

全員に見つめられたロイドが考え込んでいたその時、ロイドのエニグマが鳴りだした。

「すみません、失礼します。はい、こちらクロスベル警察、特務支援課で―――」

「んー?『クロスベル国防軍・特務支援課』の間違いじゃないのか?」

「………あなたは……………」

(あら………驚いたわね。”まだ生きていた”なんて。さすがはかかし(スケアクロウ)と言ったところかしらね。)

通信相手の声を聞いたロイドは厳しい表情をし、ルファディエルは目を丸くした後真剣な表情になった。

「フフフ………サテワタシハダレデショウ?セイカイサレタカタニハモレナクゴウカケイヒンヲ――――」

「……下らないクイズは結構です。一体どのツラさげて……クロスベルにやって来たんですか?」

「やれやれ、嫌われたモンだなァ。俺達を嵌めたお前達クロスベルだって人の事は言えないだろうに。派手な事になってるみたいだがちょっと会って話せないか?ま、損はさせないと思うぜぇ。」

「…………………わかりました。どこに行けばいいんですか?」

「”クリムゾン商会”………いや元”ルバーチェ商会”と言った方がいいか。あそこの会長室にするか。」

「地下のあそこですか……わかりました。」

「そんじゃ、待ってるぜ~。」

「もしかして……行方不明のツァオ氏とか?」

通信を終えたロイドにエリィは真剣な表情で尋ね

「そういえば通商会議の件以降、一切姿を現していませんでしたね。」

「それに襲撃の時に黒月も参加していたしな……」

ある事に気付いたティオは呟き、ランディは目を細めた。



「―――いや、違う。帝国軍のレクター大尉だ。」

「ええっ!?」

そしてロイドの説明を聞いたエリィは驚いた。

「あの人……またクロスベルに来ていたんですか。」

「……確かにどのツラ下げてって感じだな。」

「で、でも”革新派”はかなり追い詰められているという話だし……一体どうして……」

ティオはジト目で、ランディは目を細め、エリィは戸惑った表情で言った。

「どうやら旧ルバーチェ商会で話があるみたいだ。”赤い星座”との繋がりを考えるととても油断はできないけど……行くだけ行ってみよう。」

「だな……」

「虎穴に入らずんば、ですね。」

「………準備だけは万全にした方がよさそうね。」

ロイドの提案に仲間達は頷き

「アナタたちも大変そうね。」

「どうやら面倒な相手とやりあうみたいだな?」

「情報局のアランドールか……恐ろしく厄介な若造らしいが。」

「俺達で良ければいつでも力を貸すぜ。」

「ああ……湿地帯でエオリア達を助けてくれた借りもあるしな。」

ミシェル達はそれぞれ声をかけた。

「ありがとうございます。」

「手に負えなさそうだったら是非、力を貸してください。」

その後ロイド達は準備を整えて旧”ルバーチェ商会”の会長室に向かい、部屋の中に入った………………… 
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