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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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外伝~旧市街の復興支援~後篇

~旧市街・ロータスハイツ~



「あ、食材を調達してくれたんだね?」

「ええ、どうぞ受け取ってください。」

旧市街に戻ったセティは青年に食材を渡した。

「うん、確かに言った通りだ。よく調達してきてくれたね。どうもありがとう。」

「姉様。あれも渡した方がいいのでは?」

「そうでしたね。これも受け取って下さい。」

さらにエリナに言われたセティは青年に”にがトマト”のペーストを渡した。

「これは……?」

「フフ、タントスさんから調達を頼まれてた品でね。何でもスペシャルな豚汁ができるって聞いたけど?」

「ああ、その話か。確かに本人も言ってたな。うん、じゃあこれはタントスさんに聞いてぜひ使ってみよう。」

「えっと………これで手伝いは大丈夫?」

「ああ、お疲れ様。おかげで助かったよ。作業が一区切りついたら炊き出しを開始するからさ。支援課のみんなもぜひ参加していってくれ。」

「ええ、そうさせてもらいます。」

「それじゃあ後はギヨームの親方にUマテリアルを渡すのと創り方を教えるだけですね。」

その後セティ達はギヨームに集めたUマテリアルを見せた。



~ギヨーム工房~



「おっ……どうやら集まったみてえだな。Uマテリアル計10個、こっちに譲ってくれんのか?」

「それじゃ、お渡ししますね。」

ギヨームに尋ねられたセティ10個のUマテリアルを渡した。

「へへっ、ありがてえ。遠慮なくいただくぜ。これで修繕の目処はついたも同然だ。」

「フフ、お役に立てて何よりです。それとUマテリアルを創る材料も持ってきたので、創り方をこの場で教えても構いませんか?」

ギヨームの言葉に微笑んだエリナは尋ね

「それは願ったりかなったりだが……今気付いたんだが……俺の工房の設備で大丈夫か?俺の所は嬢ちゃん達の所ほど設備は揃っていないが……」

「ちょっと待ってね……………うん、これなら大丈夫だよ!」

そしてギヨームに尋ねられたシャマーラは工房内の設備を確かめた後明るい表情で言い

「そうか。ならば早速教授してくれ。」

「え、ええ。」

「というか気になっていたんですが………まさかアッバスさんもいっしょに加工するおつもりなのですか?」

アッバスの言葉を聞いたセティは戸惑い、エリナは目を丸くして尋ねた。

「フフ、アッバスはこう見えて手先が器用だからね。料理や工作はもちろん、裁縫だってお手の物なのさ。」

「い、意外な一面ですね………」

「将来は良い主夫になれるね♪」

「それもそうですが……まだまだ謎が残っていそうですね。」

口元に笑みを浮かべて言ったワジの説明を聞いたセティは目を丸くし、シャマーラはからかいの表情で呟き、エリナは苦笑し

「フフ、言っておくけどアッバスは僕だけのものだからね♪ま、レンタルくらいなら考えてあげてもいいけど。」

ワジは笑顔で言った後静かな笑みを浮かべて言った。

「……いったい何の話をしている。今は時間がもったいない。すぐに作業に入りたいのだが。」

その様子を見ていたアッバスは静かな口調で言った後セティ達を見つめ

「わかりました。それでは始めますね。」

見つめられたセティは頷いた後シャマーラやエリナと共に”Uマテリアル”を実際にその場で教えながら創り、教えられたアッバスとギヨームもそれぞれセティ達が採取してきた材料で”Uマテリアル”を完成させた。

「完成……っと。おおっ……自分で創っておいて言うのも何だが、マジで本物の”Uマテリアル”だな、こりゃ……」

Uマテリアルを加工したギヨームは驚き

「……こちらも今終わった所だ。」

「す、凄いですね………ギヨームさんはまだわかるのですが、アッバスさんまでこんな短時間で創り方を覚えるなんて……」

さらにアッバスも加工し終え、それを傍で見ていたエリナは目を丸くし

「フフ、さすがはアッバスだね。」

ワジは口元に笑みを浮かべた。

「えへへ……でもこれならあたし達が”匠貴”になった時、父さん達に提案する”あの件”も成功しそうだね!」

「フフ、さすがにそれは言いすぎですよ。」

シャマーラは嬉しそうな表情をし、セティは苦笑していた。



「君達の父親というと……”匠王”か。彼に一体何を提案するつもりなのだい?」

二人の会話を聞いていたワジは不思議そうな表情で尋ね

「えっと…………まだ父様達には話していませんから、本当に実現できるのかどうかわからないですから、他の人達には黙っていてくださいね?」

「あたし達”工匠”がクロスベル……というかゼムリア大陸の人々に”工匠”としての技術を教えようと思っているんだ。」

「マジか!?」

「へえ…………?けど、そんな事したら、君達のアドバンテージがなくなるんじゃないのかい?」

シャマーラの話を聞いたギヨームは驚き、ワジは目を丸くした後不思議そうな表情で尋ねた。

「今のユイドラの”工匠”達は周辺に済む種族と共に互いを助け合って生きて行くという事を理念としていますので…………それにさっきも言いましたが、工匠が開発した商品のレシピ等については本来無償で開示されるものなのです。」

「まあ、さすがに異世界に来てまで無償で自分達の技術を教えるなんて、絶対に反対されるだろうから、講習料やその教えた人がお店を開いたりして、あたし達工匠の技術で創った物で儲け始めたら、お金を取る事になるだろうけど……」

「それに材料の採取区画など、各国と話し合う必要があるさまざまな取り決めが必要ですしね……」

尋ねられたエリナは微笑み、シャマーラとセティは苦笑した。

「なるほど…………とすると君達は将来、ユイドラの”工匠”達による会社のようなものでも立ち上げるのかな?」

「まあ、それには近くなる形になるかもしれませんね………」

説明を聞いたワジは頷いた後尋ね、尋ねられたエリナは静かな表情で答えた。

「にしてもさまざまな問題も抱えているから、凄く気の遠くなる話にならないか?」

「フフ………お忘れですか?私達姉妹全員は純粋な人間ではなく、異種族の血がそれぞれ入っていますから”闇夜の眷属”のように気の遠くなるような寿命があるんですよ?」

そしてギヨームに尋ねられたセティは微笑み

「フフ、なるほど。寿命が長い君達だからこそできる真似って訳だね。こりゃエプスタインもそうだけどZCFやラインフォルト、ヴェルヌも危ないかもねぇ?」

「下手したらこの嬢ちゃん達が立ち上げた会社に全て吸収される羽目になるかもしれないんじゃねえか?」

「アハハ、さすがにそれは言いすぎだよ~。」

セティの説明を聞いて静かな笑みを浮かべて言ったワジと考え込みながら言ったギヨームの言葉を聞いたシャマーラは苦笑した。

「勿論、旧市街の方達のような日々の生活が厳しい方達でも年齢を問わずに講習を受けられるような体制も考えていますので安心して下さい。」

「材料は今回の”Uマテリアル”のように基本、外で採取するから、材料代はかからない上、技術を覚えたらすぐに売れるから”工匠”になれば、生活はかなり楽になると思うよ♪」

そしてセティとシャマーラはそれぞれ微笑みながら説明を続け

「へへっ。若いのに立派な考えじゃねえか。俺は応援させてもらうし、もし実現したら俺も嬢ちゃん達の生徒として技術を習いに行くぜ。」

「わあ……!」

「フフ、一人目の生徒を確保できましたね。」

説明を聞いたギヨームは口元に笑みを浮かべて言い、ギヨームの言葉を聞いたシャマーラは嬉しそうな表情をし、エリナは微笑んだ。

「………自分も陰ながら応援している。………Uマテリアルの加工の仕方なども含めて改めて礼を言うぞ、ディオン3姉妹。」

「教えてもらった材料も旧市街の連中でも取りに行けるような場所にあるしな。お前達のおかげで旧市街の復興の進行は大きく進む事になるだろう……俺からも礼を言わせてくれ。」

「フフ、私達みたいな若輩者が皆さんのお役にたてたのなら幸いです。……………あ、そうでした。手伝いの方も一通り済んだのですが………」

アッバスとギヨームの言葉を聞いたセティは微笑んだ後ある事を思い出してアッバスに言った。

「そうか……ご苦労だったな。炊き出しまで時間がある。それまで時間を潰しておくといい。」

「でしたら、しばらく旧市街を回ってみましょうか。まだ細かい手伝いが必要な場所があるかもしれませんし。」

「そうしてもらえると助かる……ではまた後でな。」

その後セティ達は旧市街を回って細かな手伝いをし、作業が一通り終えると炊き出した豚汁の配給が始まった。



~旧市街・広場~



「……ご苦労だったな、特務支援課。おかげで、旧市街のみんなも少しだけ元気を取り戻したようだ。」

それぞれが休憩している中、アッバスはセティ達を見つめて言った。

「力になれたのなら幸いです。」

「まだ色々と問題が残っていそうですけど……」

アッバスの言葉にセティは頷き、エリナは考え込み

「サーベルバイパーの人達もしばらく落ち込んでいるだろうしね………」

シャマーラは複雑そうな表情で言った。

「そもそも、バイパーたちはほとんど入院しているしね。ま、そこはあのディーノ君がフォローしてくれるでしょ。」

「それが一番いいでしょうね……」

そしてワジの話にセティは真剣な表情で頷いた。

「ともあれ、これで依頼は終了だ。また何かあったら旧市街の連中に力を貸してくれ。」

「ええ、わかりました。またいつでも呼んで下さい。」



こうして依頼を終えたセティ達は他の支援要請の片づけを始めた………………… 
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