英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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外伝~旧市街の復興支援~前篇
ワジ達はアッバスが出した支援要請を達成する為にアッバスがいる旧市街のジャンク屋―――ギヨーム工房に向かって、中に入ってアッバスに近づいた。
~旧市街・ギヨーム工房~
「フフ、やってるね。」
アッバスに近づいたワジは静かな笑みを浮かべて声をかけ
「ワジ……それに支援課の面々……それもこちらが指定した通りのメンバーで来てくれたか。」
声をかけられたアッバスはセティ達を見回して言い
「よお、依頼を見てくれたんだな?しかもこっちが指定したメンバー全員を連れてきてくれるとはな。一人でもいるだけでも充分ありがったんだが……」
ジャンク屋の主人であるギヨームはセティ達を見回して言い
「そんな……こういう時こそ私達の力が必要だと思いますし。」
「そうだね。今こそあたし達”工匠”の腕の見せ所だね♪」
セティとシャマーラはそれぞれ答え
「外の様子を見る限り復興はまだまだこれからという印象ですが……」
エリナは真剣な表情で尋ねた。
「ああ、その通りだ。テスタメンツが先導し、旧市街の住民総出で作業に当たっているが……いまだ襲撃の傷跡は大きく、進捗も芳しくない状況でな。」
「そういえば、旧市街は魔人化したヴァルドさんが襲撃したそうですけど……」
「旧市街の人達はその事を知っているの?」
アッバスの話を聞いたセティはある事を思い出し、シャマーラは真剣な表情で尋ねた。
「いや……バイパー以外に気付いてる者などほとんどいないだろう。なにせ、あのような異形の姿で現れたのだからな。」
「ショックが大きいでしょうし……公言しない方が無難でしょうね。」
「…………………」
アッバスの答えを聞いたエリナは目を伏せて呟き、ワジは黙り込んでいた。
「………ひとまず、その話は捨て置こう。今重要なのは、復興作業を如何に進めていくかだ。この旧市街においては行政の協力を期待できない上に業者などを雇う資金もない。できれば、特務支援課………”何でも創る”と言われる”工匠”の力を貸してもらえると助かるのだが。」
「はい、任せて下さい。できる限りお手伝いをさせて頂きます。
そしてアッバスの言葉にセティは微笑みながら頷き
「ふむ、それはありがたい。」
「へへっ、お前達ならそう言ってくれると思ってたぜ。」
セティの答えを聞いたアッバスは頷き、ギヨームは口元に笑みを浮かべた。
「それで、僕達は何を手伝えばいいんだい?」
「ああ、今は主に3つの場所で作業を行っていてな。一つは”ロータスハイツ”で行われている炊き出し。一つはメゾン・イメルダ跡で行われている廃材回収作業。最後はこの場所―――”ギヨーム工房”での建材の収集、加工作業だ。支援課には各場所に赴き、それぞれが必要としている手伝いを行ってもらいたい。」
「なるほど………どれも重要そうな作業ですね。」
アッバスの説明を聞いたエリナは真剣な表情で呟き
「ちなみにここでは何の作業をしているの?」
シャマーラはギヨームにある事を尋ねた。
「ああ、ここでは壊れた建物を直すための建材を見繕ってんだ。一応、工房で余った素材なんかも使えそうなんだが……さっき、重大な問題に気付いてな。」
「問題……ですか?」
ギヨームの言葉を聞いたセティは不思議そうな表情をした。
「ズバリ、建材を組む為のネジやら釘やらが足りねえんだ。このままじゃ、修繕すらままならねえ状況ってこった。」
「外に色々と散らばっていましたが……落ちてる廃品は再利用できないのですか?」
ギヨームの答えを聞き、ある事が気になったエリナは尋ねた。
「ふむ、一応カノンという子供に頼んではいるのだが……」
「ま、あれはどちらかというと資金調達のためにやってもらってることでな。それに強度の問題もあって、なるべく新品を使いてえんだ。」
「やれやれ、難儀なことだねえ。それじゃあ、どこかからネジや釘を仕入れてこいってことなのかな?」
二人の話を聞いたワジは溜息を吐いた後尋ねた。
「いや、それよりも断然いいものがある。武具の改造などに使っている”Uマテリアル”を使うんだ。あの素材があれば、その辺のものは作れちまうからな。」
「”Uマテリアル”か~………あれ自体はなかなか手に入りにくい材料だよね?何個必要なの?」
ギヨームの話を聞いたシャマーラは考え込んだ後尋ねた。
「そうさな………10個もありゃ釣りが来るだろ。どうだ、調達を頼めるか?」
「………………………そうですね……勿論調達してきますが………今後の事を考えて”Uマテリアル自体”をいっそ”創って”みませんか?」
ギヨームに尋ねられたセティは考え込んだ後尋ね返し
「へえ?」
「………マジか?だったら是非とも創り方を教えてもらいてえんだが………あの素材は何にでも使えるし、そこそこ良い値で売れるから、資金にもなるしな。」
セティの言葉を聞いたワジは目を丸くし、ギヨームは目を丸くした後驚きの表情でセティ達を見つめて言った。
「ええ、そのぐらいでしたら。……ただ、材料がないのでそちらの方も”Uマテリアル”自体の調達と共に今から調達してきますね。」
「ちなみに”Uマテリアル”を創る材料は廃品やクロスベル市外の街道の市内に比較的近い場所で手に入ると思いますので、元値はかなり安く済むと思います。」
ギヨームの言葉にセティとエリナはそれぞれ答え
「ちょっと気になったけど、君達はそれでいいのかい?自分達が試行錯誤して開発した物の創り方を他人にあっさり教えちゃって。」
「えへへ……”工匠”が開発した物の創り方は基本、無償で他の”工匠”達にも開示されるから全然問題ないよ!」
ワジに尋ねられたシャマーラは笑顔で答え
「へえ……”工匠”ってのは太っ腹なんだね。」
シャマーラの答えを聞いたワジは感心し
「頼んだぞ、特務支援課の諸君。」
アッバスはセティ達を静かな表情で見つめて言った。
「それでは早速手伝いを始めましょう。まずは炊き出しと廃材回収の方にも話を聞きに行きましょう。」
「後は”Uマテリアル”を創る材料の調達ですね。」
「了解。古巣が大変な時だ、一肌脱がせてもらうよ。」
そしてセティとエリナの提案にワジは頷いた。
その後セティ達は行動を開始した。
「えっと、これは……ちがう。これも……違うなあ。うーん、こまったな。この調子じゃ終わらないよ。」
セティ達が子供に近づくと子供はメゾン・イメルダ跡で何かを探していた。
「ねえねえ、何をしているの?」
子供の様子を見たシャマーラは尋ね
「うん……アッバスさんに頼まれて、廃材の分別をしてるんだ。金属を含むものだったら、ジャンク品として、ミラに換金できるからね。」
「なるほど………しかしこんな子供の頃からしっかりしているなんて……旧市街の方達はみんな、こうなのですか?」
シャマーラの疑問に答えた子供の話を聞いたエリナは頷いた後ワジに尋ねた。
「ここじゃ、普通の事さ。旧市街の住民たちには、生きる為に全力を尽くすという信念があるからね。」
「生活が極限にまで追い詰められているからこそ、出せる強さ……ですね。……ねえキミ、なにか私達に手伝えることがあるかな?」
ワジの説明を聞いたセティは真剣な表情で言った後優しげな微笑みを浮かべて子供に尋ねた。
「手伝えること……そうだね。それじゃあ、旧市街の中で金属を含んだ廃材を探してきてもらえる?一通り片付けはしたけど、まだ見つかっていないものもあると思うんだ。」
「金属を含んだ廃材だね……オッケー、あたし達に任せて!」
子供の言葉にシャマーラは頷き
「効率的に探すなら金属探知機のような物が必要ですね。」
セティは考え込み
「もしかしたらギヨームの親方なら持っているかもしれないよ。」
「それじゃあまずはギヨームさんに聞いてみましょう。」
ワジの話を聞いたエリナは提案した。その後ギヨームに事情を話して金属探知機を受け取ったセティ達は探知機を使って多くの金属を含んだ廃材を見つけた後、子供に渡した。
「わあ……金属を含んだ廃材をこんなに見つけてくれたの?ふふ、すごいや。これだけあればホクホクだね。それじゃあこれはもらってもいいかな?」
セティ達が持ってきた廃材の量を見た子供は明るい表情をした後尋ね
「ええ、どうぞ受け取ってください。」
尋ねられたセティは頷いた後廃材を子供に渡した。
「ふふ、どうもありがとう。ミラに換金できたら、旧市街の復興に役立てさせてもらうからね。」
「ええ、お願いします。」
子供の言葉にエリナは頷き
「早く復興できるといいね。」
「ふふ、そうだね。」
シャマーラの言葉にワジは口元に笑みを浮かべて頷き
「それじゃあ、そろそろ行きましょうか。」
セティはワジ達を促した後、次の手伝う場所に向かった。
~ロータスハイツ~
「やあ、アゼル。」
アパートの一室にセティ達と共に入ったワジは巨大な鍋を目の前に料理しているテスタメンツの青年の一人に近づいて声をかけた。
「あ、ワジ。もしかして、手伝いに来てくれたのかい?」
「まあ、そんな所かな。」
「ここでは、炊き出しの準備をしているのですね。」
「何かあたし達に手伝える事はない?」
「ああ、そうだな……えっと………実は炊き出しの材料がかなり不足していてね。できれば、買い出しをお願いしたいんだ。」
シャマーラの申し出を聞いた青年は答えた。
「わかりました。何をどれだけ買ってくればいいのですか?」
青年の言葉を聞いたエリナは頷いて尋ね
「ああ、今から言うから覚えてくれ…………………これで以上だ。」
尋ねられた青年は頷いた後買って来る食材を言い
「凄い量ですね………」
買って来る食材を全て手帳にメモをし終えたセティは驚き
「ああ、それだけみんなよく食べるからね。実は昨日は、十分に行き届かなくてちょとした騒ぎになったんだよ。だから今日は、そんなことがないようにしたくってさ。」
「なるほど……」
青年の説明を聞いたエリナは頷き
「ちなみに、一体何の料理なんだい?」
ワジは尋ねた。
「ああ、身も心も温まる―――『豚汁』ってヤツさ。完成したら当然みんなにも振舞わさせてもらうからね。」
「えへへ、楽しみだね♪」
「そうそう、それと買い出しの代金を渡しておかないとな。」
そして青年はセティに500ミラを渡した。
「えっと……………」
渡されたミラの金額を確認したセティは言いにくそうな表情をして青年を見つめ
「どう考えてもこれじゃあ全然足りないけど……」
シャマーラは冷や汗をかいて青年を見つめた。
「うーん、ごめん。何しろ予算がカツカツでさ。僕達を助けるつもりで何とかそれでお願いしたいんだ。」
見つめられた青年は申し訳なさそうな表情で答えて手を合わせてセティ達に頭を下げた。
「まあ、足りない分は私達が寄付しておきましょう。」
「ええ、状況が状況ですからね。」
「幸い、今までの”工匠”として稼ぎもあるからお金には余裕があるしね。こういう時に使わないとね。」
そしてエリナの提案にセティとシャマーラは頷いた。
「フフ、そうと決まれば善は急げだね。」
「ええ、早速買い出しに向かいましょう。」
「材料の中には魔獣が落とすのもあったからUマテリアルを創る材料探しと一緒にしよう。」
その後セティ達は街道で魔獣を倒したり、Uマテリアルを創るのに必要な材料を採取した。
~マインツ山道~
「よしっと!これで材料は揃ったね~。けどこれだとあまり数は創れないけどいいよね?」
採取した材料を確認したシャマーラはセティに尋ね
「ええ。創り方を教えるだけですから、これぐらいでいいかと。ワジさんも採取の手伝いをしてもらってすみません。」
尋ねられたセティは頷いた後ワジに視線を向けて言った。
「なに……古巣の為だし、これぐらいの事はさせてもらうさ。それにしても……本当に安全かつ簡単な場所で手に入ったね。ちょっと土を掘ったり、岩を削っただけで鉱石みたいなのが出てきたのは驚いたけど………本当にこれらだけで出来るのかい?」
視線を向けられたワジは口元に笑みを浮かべて答えた後不思議そうな表情で自分が採取した材料を見た後、セティ達を見回して尋ね
「ええ。私達”工匠”からしたらクロスベル市外は材料の宝庫ですよ。」
「特にマインツは七耀石を採取する事ばかりに目がとられて、本当なら加工できる鉱石に目がとられていない事が幸いしましたね。」
尋ねられたエリナとセティはそれぞれ答えた。
「なるほど……………確かに市内に近い上、魔獣も少ないこの辺りなら戦えない連中でも安全に採取できるね。さてと。ここでの用事は終わったし、後は買い出しだけだな。」
二人の話を聞いたワジは頷いた後提案し
「タントスさんから聞いた材料もできれば手に入れておきたいね。」
ワジの提案に続くようにシャマーラも続けた。その後市内で食材を購入したセティ達は旧市街に戻っていった……………
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