英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第92話
~IBC~
「………………………」
ガルムスとシグムントの一騎打ちを見守っていたロイドは口をパクパクさせ
「わ、私達……夢でも見ているの……?」
「あ、あんな本物の”化物”をたった一人で……」
「とんでもないです……」
エリィやノエル、ティオは信じられない表情で呟き
「まさか親父を除いて、叔父貴をたった一人で制圧するとんでもない”化物”が……ギュランドロスのオッサン達みたいな人間がまだ存在していたなんて……正直、今この目にしても信じられねえぜ……」
ランディは疲れた表情で溜息を吐き
「フッ、見たか。これぞ真の”戦鬼”!!」
ロイド達の様子を見たベルは不敵な笑みを浮かべ
「まあ、あの老人の出鱈目さにも驚いたけど……とりあえず状況は僕達にとってかなり有利な方向へと向いているんじゃない?」
ワジは疲れた表情で言った後口元に笑みを浮かべて呟き
「!!叔父貴っ!後から駆け付けた俺達が言うのもなんだが、観念してもらおうか!!」
ワジの言葉を聞いて状況を思い出したランディはシグムントを睨んで怒鳴った。
「クク、ランドルフか。………”ベルゼルガー(ブレードライフル)”はどうした?」
ランディの言葉を聞いたシグムントは口元に笑みを浮かべながら立ち上がってランディを見つめて尋ね
「せっかく直したのにアンタの娘との戦いで無理をさせすぎたみたいで、壊れちまってな。だが、あれが無くたってアンタは俺がここで終わらせる………”赤き死神”でも”闘神の息子”でもなく………特務支援課のメンバー、ランディ・オルランドとして!」
尋ねられたランディは静かな口調で答えた後、決意の表情で叫んでスタンハルバードを構えた!
「ランディ……」
「……ランディさん。」
ランディの決意を知ったロイドとティオは明るい表情をし
「フム。事情はよくわからんがその決意、決して揺るがすな。」
ガルムスは静かな表情でランディに視線を向け
「フフ、抗うことに決めたか。本来ならその言葉の重みに釣り合うだけの証を見せてもらうつもりだったが……今の俺のこの様ではそれも無理だからな。仕事の仕上げだけをさせてもらって、退かせてもらおう。」
シグムントは口元に笑みを浮かべてランディに視線を向けて言った。
「なに……?」
シグムントの言葉を聞いたランディは眉を顰め
「クク、時間だ―――」
不敵な笑みを浮かべたシグムントが呟いたその時、IBCビルに大爆発が起き、ビルは炎上し、ガラスは全て割れ、瓦礫が次々と落下して来た!
「きゃああっ……!?」
「っっ……!?」
それを見たエリィは悲鳴を上げ、ティオは目をつぶり
「な、なんてことを……!」
ロイドは厳しい表情でシグムントを睨み
「叔父貴ィィィィィッ!!」
「貴様っ!」
ランディとガルムスは怒りの表情で叫んだ!
「ククク………ハ――――ッハハハハハハハハッ!!」
そしてシグムントは大声で笑い
「滅ぶがよい!!」
それを見たガルムスはシグムントに強襲したが、ガルムスの攻撃が命中するよりも早くどこからともなく飛んできた赤い飛行艇の甲板にシグムントが飛び移ったため、ガルムスの攻撃は届かなかった!
「―――ヴァルド!?」
「あ、あの娘も……!」
飛行艇の甲板にいる魔人ヴァルドとシャーリィを見たワジとノエルは厳しい表情をし
「クッ、飛行艇まで……!?」
ロイドは唇を噛みしめた。そして飛行艇は去って行き
「おおおおおおおおおおおおおおッ!!」
ランディは空に向かって悔しそうな表情で叫んだ!
「アハハ、綺麗だねぇ。金融都市クロスベルの象徴もああなっちゃ大きな松明だ。しかし”赤い星座”か……ウチの強化猟兵程度じゃ太刀打ちできなさそうだね。」
一方燃えているクロスベル市を建物の屋上で見つめていたカンパネルラは笑いながら見つめ
「………………………」
アリアンロードは何も語らず黙って見つめていた。
「ウフフ………さすがにこういうのは貴女の流儀に反するのかな?」
「……そうですね。ですが本来、戦とは非情なるもの。あの者達やデュバリィ達のようにそれぞれの流儀で戦場に臨んでいるだけでしょう。」
「フフ、なるほど。それにしても貴女がまた敗北した事もそうだけど、まさかブルブランに加えて”彼女”達が殺されるなんてねぇ……”六銃士”がここまでやるとは想定外だったよ。」
アリアンロードの言葉に静かな笑みを浮かべて頷いたカンパネルラは疲れた表情で呟き
「……………今回は相手の力量や”絆”を見誤った私達の敗北です。ただそれだけの事。」
「それでも”執行者”がリベールの”異変”の件のようにまた一人殺されたこともそうだけど、”鉄機隊”が全滅したのは痛すぎたよ。今後の”計画”に支障がでなきゃいいけど…………こりゃあ失った戦力の補強に”赤い星座”や”黒月”を入れる事を本格的に考えなきゃダメだな………」
静かな口調で呟いたアリアンロードの言葉を聞いたカンパネルラは疲れた表情で呟いた後溜息を吐いた。するとその時カンパネルラのエニグマが鳴りはじめ、鳴りはじめたエニグマに気付いたカンパネルラは通信を始めた。
「ああ、博士。いきなりどうしたのさ?―――え?一機目が完成しそうだって?ハイハイ、わかったよ。手伝いに戻ればいいんだね?………というわけで僕もしばらく失礼させてもらうよ。『約束の日』までの見届け、貴女にお任せしてもいいんだよね?」
通信を終えたカンパネルラははアリアンロードに尋ね
「ええ、構いません。この地を巡る運命……しかと見届けさせてもらいましょう。」
尋ねられたアリアンロードは静かに頷いた。
~特務支援課~
「い、一体外はどうなっているんだ……」
「……夫は……あの人は無事なのかしら……」
一方支援課のビルに避難した市民達は不安そうな表情をし
「あー、皆さん落ち着いて。今入った連絡によると大半の謎の武装集団がヴァイスハイト局長やギュランドロス司令達――――警察、警備隊の連合部隊によって殲滅され、残りの連中も撤退を開始したそうです。安全が確認されしだい、ちゃんと家に戻れますよ。」
市民達の様子を見たセルゲイが声をかけた。
「そ、そうなの!?」
「おお、女神よ………ご加護に感謝します……!」
「それにしてもこんな事をする連中を殲滅って……さすがは”六銃士”だな!」
「ああ!女神に代わって裁いてくれたのかもな!」
セルゲイの言葉を聞いた市民達は明るい表情をし
「かちょー………もう、だいじょうぶなの?」
キーアは不安そうな表情で尋ねた。
「ああ、ひとまずはな。ロイドたちのヤツ……無事でいるといいんだが。」
「―――うん、大丈夫。ロイド達なら平気だよ。」
「ん、ああ、そうだな………何だかんだ言って奴等も成長しているからな。ひょっとしたらかつてのセルゲイ班より―――」
キーアの言葉にセルゲイが答えかけたその時、セルゲイのエニグマが鳴りはじめ、セルゲイは通信を開始した。
「はい、こちら支援課―――……おお、ダドリーか。そっちの様子はどうだ?………なに?猟兵どもの飛行艇だと……」
セルゲイの様子を見たキーアはセルゲイから離れて2回に上がって窓で外を見つめながら神秘的な光を全身から放った。
「…………………そんな……………どうやってもミントや………エリュアがいる限り…………………………これ以上変える事はムリ…………………それどころか………ミント………エ………スやフィーナどころか………アまで呼んできて…………………キーアの”力”を……………なんで……の……ーアは……………キーアの………ジャマを………するの………?…それに……………”これ以上先”が見れなくなっている………………………一番、良い方法を見つけたと思ったのに……………たくさんの人達の運命が……………………………シズクの運命が……………………………みんな、キーアのせいで………………………」
光を放っていたキーアは表情を青褪めさせた後、泣きそうな表情で黙り込んだ。するとその時何かの音がなり、音に気付いたキーアはなんと懐に入れてあったエニグマを取りだして通信を始めた。
「………もしもし………?……………うん…………うん………―――だいじょうぶ。もう……ちゃんと決心できたから。」
通信をしているキーアは優しげな微笑みを浮かべて言い
(ゼッタイに叶える………みんなが幸せになるセカイにする事を……………!)
決意の表情で外を見つめていた。
~???~
「―――――!!」
キーアが哀しい決意を決めたその頃、”キーアと同じ碧色の髪”を腰までなびかせるイーリュンの女性用の司祭服を着た”女性”は目を見開いて立ち止まり
「……アちゃん?どうしたの?」
女性の様子に気付いた女性と共に歩いていたパールグレイの髪をなびかせる女性は尋ねた。
「ううん………何でもない………それより……ィママ………早く行こう………!パパや………ィオママ達が待っているよ……!……ア、………ディ達に会うの久しぶりだから、早く会いたい!」
尋ねられた女性は考え込んだ後、首を横に振った後笑顔を見せ
「フフ、そうね。………そうだ。―――――キーアちゃん、久しぶりに手を繋がない?」
「うん………!」
パールグレイの髪の女性の言葉に頷いた女性――――”キーア”は嬉しそうな表情で頷いて女性と手を繋いでどこかに向かって行った。
こうして……”赤い星座”を含めた武装集団のクロスベル市の襲撃はようやく終わりを告げた。なお、今回の襲撃により行政区での激しい迎撃戦に参加していたドノバンはレイモンドをかばって重傷を負って、意識不明の状態で病院に搬送され……他にも多くの傷ついた警官や市民達も病院に搬送された。なお、ヴァイス達やセリカ達の活躍のおかげで襲撃に参加した武装集団のおよそ9割は絶命し、撤退できたのは”赤い星座”の僅かな数の猟兵達だけで、襲撃した武装集団自体も甚大な被害を受けた…………………
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