とある科学の裏側世界(リバースワールド)
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remember memory
ep.0001 remember memory 池野&箱部 後編
前書き
これが正真正銘の最後です。
ちなみに読んでくださっている方々は、既に気付いているかも知れませんが、これは別の投稿者の方とのコラボ(仮)みたいなものなんです。
箱部と出会ってから数ヶ月が経過していた。
しかし、2人の日々は明るいものではなかった。
池野の失踪は殉職ではなく、ターゲットを守るために逃げたのだということがアナコンダにばれてしまった。
そのためアナコンダは裏切り者を狩るために動き出したのだ。
ーある日の夜のこと
池野は寝ている箱部を見つけた。
箱部は何かを持って寝ていたので池野はそれを見た。
そこにはI.S.をイニシャルにした池野の名前が考えられていた。
「箱部さん.......。」
この頃の池野は、数ヶ月に渡って箱部に喋り方をしつけられて現在とほぼ変わらないくらいになっていた。
しかし、それ以上に肝心な名前はまだ決まっていなかったのだ。
スヤスヤと眠る箱部の顔を見ると池野は独り言のように寝ている箱部に話し掛ける。
「これが最後。僕にとっての本当に最後の殺しの仕事。すべては箱部さんを守るために僕が出した答え。」
池野の中で1つの決心がついた。
ーその日の深夜
アナコンダの基地ではいつものようにマスターが堂々と椅子に座って部下たちの成果を聞いていた。
そんな時だった。
何者かがマスターの背後に立ち、首を固定すると丁寧に手入れをされた小刀を取り出す。
「よぉイズ。ようやく帰ってきたのか。」
「はい。あなたを殺すために.....守りたいものを守るためにあなたの命を刈り取りに来ました。」
池野の答えにマスターは笑わず、また怖がりもせず、黙っていた。
池野は急に悲しくなってきた。
箱部鈴菜がいなければこの人が未だに自分の居場所だったのかも知れないからだ。
自分に生きる意味を与えてくれた最初の人。
自分はこれからそんな人を手に掛けるのだ。
するとマスターが重い口を開いた。
「俺はな、お前のような息子を待っていたんだ。」
残虐で非道なマスターの口からは父親の面影すら感じさせる言葉が飛び出した。
しかし、マスターはそれでも暗殺者だ。
油断させて殺すつもりかも知れない。
そのため、池野は溢れ出る感情を必死に抑えた。
「アナコンダは暗殺組織。俺に反抗すれば消されるから誰も俺には逆らわない。だから、お前の裏切りは俺からすれば立派な親孝行に近いもんだ。」
池野は思わず涙を流していた。
そして、マスターの首を小刀でかすめた。
その途端、マスターの前に座していたアナコンダの幹部達が池野に飛び掛ってきた。
池野は、そんな幹部達を見て本来の正常な思考に戻ると、ポケットからスイッチを取り出した。
カチッ
その途端、今まで聞こえなかった小さな音が急激に大きくなりだした。
ピピピピピピピピッ....キュゥゥゥゥゥゥウウウウウ!!!!!
「まさかイズ。貴様ッ!!!!!!」
ズドォォォォォォォオオオオン!!!!!!
おそらく天井に仕掛けられていたであろう爆弾が同時に爆発し、建物は一瞬にして地獄と化した。
池野はそんな中でアナコンダの部下や幹部を次々と片付けている。
向かってくるものには小刀で、逃げるものには銃や手裏剣のような飛び道具を利用した。
すると、ある人物を発見した。
「イズ.........テメェ!!!!!」
「やぁ、EVE(イブ)。」
イブは現アナコンダのマスターの実の息子だった。
イブの目的はマスターを殺して新たなアナコンダのマスターになることだった。
「君は生かしておくわけにはいかない......むしろ、君みたいなタイプが1番危険だ。」
池野は小刀をイブの顔に向ける。
イブは、憎悪と恐怖が混じりあってまともな状況把握ができていない。
「ま....待てイズ....俺はアナコンダを指揮するためにこんなところで死ねないんだよ!!!!」
「いや、消させてもらう。君は生かしておいて必ず僕の害になってしまうし、君じゃマスターのようにはなれないだろうしね。」
池野は、無情で小刀を振りかざした。
しかし、イブに残っていたほんのちょっぴりの冷静さが彼にその一撃を避けさせた。
小刀はイブの顔の左目と左頬に大きな傷をつけた。
イブは溢れる血を抑えると、地を這うようにして逃げようとする。
「逃げても無駄だよ。」
イブを追いかけようとしたその瞬間、脆くなった天井が炎とともに落下し、池野の行く手を塞いでしまった。
かすかにイブが逃げていくのが確認できた。
「く..........。」
池野が歯を食いしばって悔やんでいると、か細い声が聞こえた。
「イ......ズ....イズ...なのかい。」
池野は、何かを思い出したように声のする方へ近づき、軽く瓦礫をどかした。
すると、全身に無数の鉄が突き刺さり貫通しているオアを見つけた。
目を背けたくなるような痛々しい光景だった。
「分かっていたんだよ......命を奪う仕事をする人間は最期には誰かに命を奪われるってことは......案の定....それが君だったんだね......。」
オアはいつもよりもずっと早口で喋っていた。
死んでいく人の体はどんどん寒くなっていくため早口になっているのかも知れない。
「後悔はしていますか?」
「むしろ後悔以外はしていないかな........殺したくない場面なんていくらでもあったさ。」
少しの沈黙を挟んでオアは池野にお願いする。
「君が殺ってくれないかな......このままじっくり死の感覚を味わうより人思いに終わらせてくれたほうがずっと楽なんだ........た.....の...む........。」
オアは吐血した。
池野は銃を取り出してオアの頭を狙う。
「今まで、ありがとうございました。」
「あぁ、今度は来世で君に会いたいよ......。」
池野は引き金を引く。
乾いた音が辺りに響く。
「全部.......終わったよ....箱部さん..今から帰るから。」
燃え盛るアジトを背に池野は箱部の待つ自分の居場所に帰って行った。
それからアナコンダの襲撃は起こらなくなった。
ーある日のこと
箱部は池野に唐突な質問を投げかけてきた。
「あなたの苗字は何がいいですか?」
箱部はスケッチブックのような紙にびっしり書かれた苗字と名前を見た。
どうやら名前は彼女のなかで決まっているらしい。
「操作(そうさく)、自分の運命を操り作りだすという意味を込めました。」
「なら、苗字は"池野(いけの)"にしてくれないかな?」
箱部は?な状態だったが、池野の理由を聞くとすぐに納得してくれた。
『僕にとって、大切な2人から授かった名前.......。』
それから2人がstudentに入るのはさらに2、3年後のことだった。
ー現在
気が付くと池野も寝てしまっていることと、それを影縫が悪そうな目で見ていたことに気が付いた。
「さすが、できてるとこは違うよなー。」
「.........。」
「おっとこれは水挿しちまったか.....退散退散っと。」
影縫は去っていった。
それからしてすぐに箱部が目を覚ました。
「ん......操作....様......あいたっ!!」
池野は箱部にチョップをかます。
「ここでは"池野くん"でしょ。」
「あ、ごめんなさい...つい。」
池野は箱部の頭を優しく撫でてあげた。
『今でも忘れてないよ。君は僕が命を掛けて守りたいものなんだ。だから絶対に守り抜いて見せるからね。』
remember memory 池野&箱部編 END
後書き
更新が遅くなってしまってすいませんでした。
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