英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第83話
~湿地帯・奥~
「…………………」
カンパネルラ達が消えた後ロイド達全員は黙り込み
「チッ、仕留め損ねたか。」
セリカは舌打ちをしてそれぞれの手に持つ魔剣と神剣を鞘に収めた。
「くっ…………」
「”身喰らう蛇”……とんでもない連中だな。」
ヴェンツェルは唇を噛みしめ、スコットは重々しい様子を纏って呟き
「そうですか?確かに主と直接剣を交えた鎧の騎士の方は相当な強さをお持ちでしたけど……」
「結局はセリカに負けて逃げ帰っているし、あの程度の連中、わらわにとってはただの3流の小悪党じゃな!」
リタは首を傾げ、レシェンテは胸を張って呟き
「あの。規格外な存在の人達は黙っていてくれませんか。貴女達と同じ感覚で言われても困ります。」
レシェンテの言葉を聞いたティオはジト目で突っ込み
「た、確かに………」
「”神殺し”や”古神”に勝つ相手なんて、普通に考えて絶対ありえないもんね~……」
「セリカさん達に対抗できるとしたら、本物の”神”ぐらいですものね……」
ティオの言葉を聞いたリィン、シャマーラ、エリナは苦笑していた。
「……………………………」
一方リーシャは黙り込んだ後ロイド達に振り向いてある方向へと歩いて行き
「リーシャ……!?」
「リーシャさん……」
リーシャの行動を見たロイドは驚き、エリィは複雑そうな表情をしていた。
「……そろそろ稽古に戻らなくてはいけませんから。…………失礼します……………それと……ルファディエルさんには通商会議や”グノーシス”の解毒薬を最優先で頂いた件等、さまざまな事で親切にして頂いたのに、これ以上”契約”を守り続ける事は無理で申し訳ありませんと、私が謝っていた事を伝えておいてください……………」
リーシャはロイドに伝言をした後、素早い動きで去って行き
「……………………………」
「信じられない事ばかり起きてちょっと現実感がないわね……」
「……ああ…………」
「まるで夢の中にいるような気分です……」
リーシャが去るとロイドは黙り込み、エリィとランディは疲れた表情で呟き、ティオは複雑そうな表情になり
「た、確かにそうかも……」
「ヴァルドの事といい……悪夢の類いだとは思うけどね。」
ティオの言葉にノエルは頷き、ワジは真剣な表情で言った。
「だが――――紛れもなく現実だ。」
するとその時アリオスは静かな表情で言った。
「アリオスさん………」
「”結社”の連中は予想以上の手掛かりを残してくれた。この場所の意味、そして『じきに放たれる獣たち』………呆然としている暇は無さそうだ。」
「は、はい。」
(『獣たち』……まさか……)
アリオスの警告を聞いたロイドは頷き、ランディは目を細めた。するとその時ロイドのエニグマが鳴りはじめた。
「そ、そうか。導力波が届くんだよな。」
「ええ、ギリギリ大丈夫かと。」
そしてロイドは通信を開始した。
「―――はい!特務支援課、バニングスです。」
「……ダドリーだ。湖の南岸へ向かったと聞いたが今、そちらにいるのか?」
「あ、はい。その……色々あってアリオスさんたちも一緒ですが。」
「ならば丁度いい。ついでに連中にも伝えておけ。――――”ある人物”からの通報でマインツ方面に”赤い星座”の猟兵達が姿を現したそうだ。」
「な………!?」
「できればオルランドから話を聞きたい。すぐに戻ってこられるか?今、本部の会議室にいる。」
「わ、わかりました!」
そしてロイドは通信を終えた。
「ど、どうしたの?」
「随分慌ててましたけど……」
「ああ……」
ロイドはその場にいる全員にダドリーからの情報を手短に説明した。
「!!」
「それは……」
「”赤い星座”が……」
「クッ……クロスベルから追放され、各国の軍から追われる立場となった事で油断しすぎたか………!」
「……通商会議の時、始末しなかったのが凶と出たか……」
情報を聞いたランディは厳しい表情で息を呑み、ティオは真剣な表情になり、スコットは驚き、ヴェンツェルは唇を噛みしめ、セリカは静かに呟いた。
「―――ロイド。お前達は急いでリンを治療している2人と合流して街に戻れ。あの2人もそろそろ応急処置は終わっている頃だろう。俺達は、この場所を調べてから戻るとしよう。」
「あ……すみません。そうして頂けると助かります。」
「……すまねぇな。」
「こういう時はお互い様さ。」
「それに、リンもそうだがエオリアとてすぐには動かせないだろう。」
「”赤い星座”が姿を現したとすれば”黒月”も現れる可能性もあり、さらに”ラギール商会”も動きがあるはずだ……俺達もすぐに戻るがくれぐれも気をつけるがいい。」
「はい……!」
「それでは失礼します……!」
その後ロイド達はセティとエルファティシアと合流した後、ボートでクロスベル市に戻り、ダドリーがいる警察本部の会議室に急いで向かった。
~警察本部~
「―――失礼します!」
ダドリーがエマやルファディエル達と話し合っているとロイド達が会議室の中に入ってきた。
「―――来たか。」
「ふう、ようやくの到着ですか。」
「すみません。少し立て込んでいまして。」
「状況について教えてくれるか?」
「伝えた通り、”赤い星座”がマインツ方面に姿を現し、また姿を消したそうだ。情報によるとおよそ90名近くのメンバーが現したそうだが……」
「その情報源は一体誰なのかしら?」
ダドリーの話を聞いたルファディエルは真剣な表情で尋ねた
「―――――”ラギール商会”の店主、チキ・インディスからの通報です。」
「なっ!?」
「チキさんが!?」
エマの答えを聞いたロイドとセティは驚いて声を上げ
「……どうやら彼女は”社員”を各地方に潜伏させ、監視させていたようでな……マインツ方面を監視していた”社員”が”赤い星座”の姿を見かけたそうだ。」
ダドリーは疲れた表情で答え
「虚偽の通報の可能性は考えられませんか?」
「……いえ。”証拠”として私に”こんなもの”まで提供してくれました。」
アルに尋ねられたダドリーは真剣な表情で答えた後懐から写真――――マインツ山道らしき場所に何人もの”赤い星座”の猟兵達が写っている写真を出して見せた。
「!!」
「これは……!」
写真を見たランディとエリィは厳しい表情をした。
「それにしてもどうしてチキさんはわざわざ警察に教えたのでしょう……?」
「恐らく我々警察や警備隊を”赤い星座”にぶつけて、双方の戦力を減らすつもりで教えたのだろう。―――オルランド、率直に聞く。連中の狙いは”ラギール商会”か?それとも駅や空港へのテロか?」
「……もしくは俺達”六銃士”への復讐かもしれないぞ?」
「まあ、そういう意味で言えばあの時一緒に戦った私や”地の魔神”もターゲットにされているでしょうね。」
そして考え込んでいるセティの疑問に答えたダドリーはランディを見つめて尋ね、ヴァイスとエルファティシアは真剣な表情で言った。
「さすがにわからねぇが……”ラギール商会”が狙いなら姿を消したりしねぇはずだ。駅や空港も……連中なら苦もなく占拠できんだろ。かと言って暗殺は連中の分野じゃないし、局長達を狙っているならマインツ方面に現れるのも変な話だ。もっととんでもない事をしでかす可能性は高そうだ。」
「と、いうことは……」
「まさかオルキスタワーを占拠するつもりとか……?」
「……確かにあそこを占拠すれば、クロスベルに対してさまざまな復讐ができますね……」
ランディの意見を聞いたティオとエリィは厳しい表情をし、エリナは考え込んでいた。
「そいつはありそうだが……だが、連中の好みからはやはり離れているかもしれねぇ。」
「へえ、好みっていうと?」
「……猟兵が本領を発揮できるとしたら野戦かゲリラ戦……つまり正規軍を翻弄できるような入り組んだ地形の戦闘が好みだろう。それこそ市街地全般や……起伏の多い山岳地帯とかな。」
「あ……」
「た、確かに……車両の動きも制限されますし。」
「……道が狭ければ、大人数の兵士達は思うように動けないしな。」
ランディの話を聞いたロイドは声を上げ、ノエルとリィンは真剣な表情で言った。
「くっ、だとすれば――――」
一方ダドリーが唇を噛みしめたその時、ダドリーのエニグマが鳴りはじめた。
「捜査一課、ダドリーだ。―――ああ課長、どうもお疲れ様です…………………―――――なんですって!?」
(な、なんだ……?)
(このタイミングで……)
(今の状況を考えると……)
(どう考えても赤い星座の仕業だよね~?)
「………………………」
通信をしていて声を上げたダドリーの様子を見たロイドは真剣な表情をし、エリィは不安そうな表情をし、セティは考え込み、シャマーラは呟き、ランディは目を細めて黙り込んでいた。
「ダ、ダドリーさん。一体何が……」
ダドリーの様子を見たエマは戸惑った様子で尋ね
「………警備隊からの連絡だ。正体不明の武装集団がマインツ山道方面に出現――――パトロール中のタングラム門の部隊が撃破されてしまったらしい。」
尋ねられたダドリーは重々しい様子を纏って厳しい表情で信じられない事を報告し
「!!!」
ダドリーの報告を聞いたその場にいた全員は目を見開いた……………!
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