英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第79話
支援要請をある程度片付けたロイド達はセティ達と合流した後、ミシェルに事情を聞く為に遊撃士協会に向かった。
~遊撃士協会・クロスベル支部~
「あら、アナタたち……」
支部に入って来たロイド達を見たミシェルは目を丸くし
「はは……どうもミシェルさん。」
「その、話を聞いてちょっと気になりまして。」
ロイドは苦笑し、エリィは来た理由を言った。
「フウ、イヤね。催促した形になっちゃって。でもアリガト。わざわざ来てくれて嬉しいわ。」
「ってことは、まだエオリアさんたちと連絡が取れてねぇのかよ?」
「ええ、アリオス達やエオリア達を探す義務もないセリカ達にも頼んで手分けして当たってるけど……本当にもう。一体何をやってるのかしら。」
ランディに尋ねられたミシェルは頷いた後考え込み
「さすがに心配ですね……」
「ああ……手練れの遊撃士が消息不明だなんて、よっぽどの事があった証拠だぞ……」
ミシェルの言葉を聞いたノエルは心配そうな表情をし、ノエルの言葉にリィンは頷いた。
「というか私からしたら”神殺し”が自分にとっては無関係の人物達の為に動いている事が驚きなのだけど。」
「なんというか……伝承の人物とはとても思えないですよね……」
一方エルファティシアは冷静な表情で呟き、エルファティシアの言葉にエリナは頷き
「う~ん、アタシ達からしたら……白状じゃないし、ぶっきらぼうなアリオスと比べれば感情も出しているから、親しみやすいわよ、彼。……どっちかっていうとフェミリンスの方がアリオス達との壁を作っていたわね。」
二人の言葉を聞いたミシェルは考え込んだ後言った。
「フェミリンスさんがアリオスさん達との壁を……ですか?」
ミシェルの言葉を聞いたティオは目を丸くして尋ねた。
「ええ。あの人……って言ったらおかしいわね。あの女神、エステル達以外とはほとんど自分から話しかけたり接したりしなかったわよ。自分からアタシに接したのもせいぜい報告ぐらい…………それにアリオスと腕試しした時、アリオスを雑魚扱いしたせいで、アリオスを慕うリンやスコットが彼女に対してあまりいい感情を持っていなくてね……ヴェンツェルは彼女の事を心強い存在だと思っていたし、彼女の正体をエステル達から聞いて興味を持ったエオリアはそれなりの回数で接していたけど………正直、エステル達以外に対しては心を開いてなかったと思うわ。」
ティオに尋ねられたミシェルは疲れた表情で答えた後溜息を吐いた。
「……まあ、それは仕方ないかと。フェミリンスさんにとってエステルさん達は”特別”ですし。」
「それに”女神”である方なのですから、普通の人として接するのは色々難しいと思いますよ。」
「……まあ、それ以前に”神”が人と混じって仕事をしている事自体がありえないんだけどね~。」
「そうだよな……それも”殺戮の魔女”と恐れられたあの”姫神フェミリンス”が普通の人々の生活に交じって生きているなんて、今でも信じられないよな……」
ミシェルの答えを聞いたティオは納得した表情で呟き、セティは静かな表情で呟き、シャマーラとリィンは苦笑していた。
「”殺戮の魔女”?態度が固いとは思っていたけど、そんな血も涙もないような冷血女神には見えなかったわよ?普通に感情とかさらけ出していたし、たまにだけど笑う事もあったし、エステルちゃんやミントちゃんと一緒に子供達と遊んでいる姿とかも見た事あるわよ?」
リィンの言葉を聞いたミシェルは目を丸くして呟き
「………その性格にしたのも全てエステルさんですけどね。(そういえば、今のフェミリンスさんが何をしているかエステルさんから聞き、もはや別人と言ってもおかしくないほど性格が変貌したフェミリンスさんを見たエヴリーヌさんもそうですがリウイ陛下達、表情を引き攣らせたり、信じられない表情をしていましたしね。……まあ、イリーナ皇妃とウィルさん、後はリタさんやレシェンテさんは動じず、苦笑したり微笑ましそうにフェミリンスさんを見つめていましたけど…………しかもヴァイスさんなんか、ナンパしていましたし。後、何故かセリカさんは頭を抱えて、その様子をハイシェラは笑いながら見ていましたけど……)」
「つくづくエステルちゃんの出鱈目さを思い知らされるよな……」
「た、確かに………(なんせ空の女神の末裔というとんでもない家系の娘でもあるしなぁ。)」
「というか”姫神”が子供達と遊んでいる光景なんて、全然想像できないんだけど……」
ティオは”教団”の事件後、支援課のビルにエステル達やリウイ達にウィル達、そしてセリカ達やヴァイス達を招待し、パーティーを開いた時にエステル達から”影の国”帰還後のフェミリンスの状況を聞き、性格が完全に変わったフェミリンスを見て唖然としたエヴリーヌや、表情を引き攣らせたリウイやエクリア、信じられない表情でフェミリンスを見つめるペテレーネ達――――メンフィル帝国の関係者達やユイドラの関係者達、微笑ましそうにフェミリンスを見つめるイリーナやウィル、苦笑しながらフェミリンスを見つめるリタとレシェンテ、そしてフェミリンスに声をかけていたヴァイスの姿や、いつか生まれてくるサティアが母親であるエステルに影響されて変わった性格にならないか心配し、頭を抱えて悩んでいたセリカ、そんなセリカを爆笑しながら見ていたハイシェラの姿を思い出しながら疲れた表情で言い、ティオの言葉を聞いたランディは溜息を吐き、ロイドは苦笑し、エルファティシアは信じられない表情で言った。
「……まあ、今はその話は置いておいて……エニグマが通じないって事は自治州外に出ているのかな?」
するとその時、ワジは話を戻して尋ねた。
「アタシもそう思ったんだけど、駅や空港を利用した記録がないみたいなのよねぇ。ベルガード・タングラム・ベルガードの両門にも通行記録はないみたいだし。」
「それは……さすがにおかしいですね。」
ミシェルの言葉にロイドが頷いたその時
「……もし、リンさん達が自治州内にいるのであれば……何とか居場所を特定できるかもしれません。」
ティオが意外な提案した。
「本当か……!?」
「なになに、どういう方法!?」
「確か、エニグマⅡには研究段階の機能が搭載されていたはずです。その一つが緊急時にアラート信号を発信する機能です。」
「ええっ?」
「そ、そうなの?」
ティオの話を聞いたノエルとエリィは戸惑い
「オーブメントにそんな機能まで搭載されているなんて……」
エリナは驚きの表情で呟いた。
「オーブメント内の予備導力で一定間隔ごとに特定周波数の導力波を発信する仕組みですが……あまりにも弱い導力波なため、実用には至っていないと聞きます。ただ、機能そのものはカットされずに残っているかと。」
「じゃあ、その微弱な導力波を何とかキャッチできれば……!」
「リンとエオリアの居場所も特定できるってわけね……!」
「試してみる価値はあるかと。この機能についてはロバーツ主任が詳しいのでIBCに行ってみましょう。たぶん力になってくれるはずです。」
「わかった、行ってみよう。」
ティオの言葉にロイドは頷いた。
「……すまないわね。本当に助かっちゃうわ。何かわかったらこちらにも連絡をちょうだい。場合によったらアリオスたちを呼び戻すから。」
「了解しました。」
「さて、それじゃあIBCに行ってみようか。」
その後ロイド達はIBCに向かった。
~IBC~
「さてと……ロバーツ主任はいるかな?」
「多分、財団のフロアでヒマそうにしてると思います。エニグマで連絡してみましょう。」
ロイドの言葉に答えたティオはエニグマで通信を開始した。
「……どうも、ティオです。いえ……別にそんなつもりは。……………しつこいです、主任。いい加減にしてください。」
(あ、相変わらずみたいだな……)
ティオの通信を聞いていたロイドは苦笑し
(ティオちゃんももう少し優しく接すればいいのに……)
エリィは溜息を吐き
(むしろあのオッサンなら冷たくされて喜んでんじゃねえか?)
(確かにそんな様子が見られるわね♪)
口元に笑みを浮かべて言ったランディの言葉にエルファティシアはからかいの表情で頷いた。
「……ええ、エニグマⅡの緊急アラート機能について……ええ……そうです……はい、下に来ているのでよろしくお願いします。」
「相談に乗ってくれるって?」
通信を終えたティオにロイドは尋ねた。
「ええ、すぐこちらに降りてくるそうです。何でもヨナも一緒だとか。」
「あら……」
「それって確か、爆破されたジオフロントの部屋を使っていた?」
「エプスタイン財団出身の天才ハッカー君だったかな?」
「ああ、小生意気だが微妙にヘタレな小僧だぜ。」
「それに天才ハッカーって自称しているだけでティオやレンに敗北しまくっているけどね♪」
ノエルとワジの疑問にランディとシャマーラは答え
「もう……例え事実だとしても、そんな風に言ってはダメですよ?」
シャマーラの言葉を聞いたセティは溜息を吐いた後注意し
(むしろセティ姉様の言い方の方が酷い気が……)
エリナは冷や汗をかいてセティを見つめていた。
「さすがに今は財団の事務所に厄介になってるらしいな?」
「ええ……イヤイヤみたいですけど。」
そしてロイドの疑問にティオは疲れた表情で答えた。その後少しするとヨナとティオの上司である男性―――ロバーツがエレベーターから姿を現してロイド達に近づき、ロイド達から事情を聞いた。
「―――なるほど。そんな事情だったのか。」
事情を聞いたロバーツは頷き
「ハッ、どうせ導力切れで連絡が取れないってだけだろ?遊撃士なんて良い子ぶった連中、放っときゃいいじゃん。」
ヨナは鼻を鳴らして答えた。
「ヨナ、お前なぁ。」
「もう……そんな事言っちゃダメよ?」
「はあ、ヨナ君ときたら最近ずっとこうなんだよ。せっかく事務所の一角に最新型の専用端末ルームを用意してあげたっていうのにさ。」
「いくら処理能力が高くたってあんな制限つきのシステムで満足できるかっつーの!とっととセキュリティコードをボクに解放しろよな!?」
ロバーツが呟いた言葉を聞いたヨナはロバーツを睨んで言ったが
「あ、それはダメだよ、ヨナ君。そんな事したら君、またやりたい放題しちゃうだろ?かわりに『ポムっと!』でティオ君に勝てるよう、特訓用のプログラムを組んであげたからさ~。」
「よ、余計なお世話だっつーの!」
自分を見つめて言ったロバーツの言葉を聞いて突っ込んだ。
(何だかんだ言ってヨナの事、ちゃんと監督してるみたいだな。)
(まあ、イラッとする所はともかく有能な人ではありますから。)
その様子を見ていたロイドは苦笑し、ティオは静かな表情で答えた。
「―――まあ、それはともかく。エニグマⅡのアラート機能だがお役に立てないかもしれないねぇ。」
「そ、そうなんですか?」
「そういった機能があるのはあるんですよね?」
ロバーツの話を聞いたロイドは戸惑い、エリィは尋ねた。
「うん、ただ導力波が弱くてほとんど感知できなくてねぇ。10セルジュくらい近づかないと測定器でも感知できないんだよ。」
「10セルジュ……」
「そりゃまた微妙な距離だな……」
「クロスベル市内にいるのなら感知できそうだけど。」
ロバーツの話を聞いたノエルは考え込み、ランディは溜息を吐き、ワジは考え込んでいた。
「……わたしのセンサーと組み合わせるのはどうでしょう?マトリクス化されたシステムならエイオンで連動できそうですが。」
その時ティオは提案した。
「ああ、それならあるいは―――……いや、やっぱりダメだ。エイオンに連動させるには測定器の精度が不安定すぎる。導力圧の問題もあるし、周辺地形の反射も考えられるからかなり無理があると思うよ。」
「そうですか……」
しかしロバーツの説明を聞いたティオは溜息を吐き
「な、何がダメなのかイマイチわかりませんが……」
「どうやら技術的な問題があるみたいね……」
ロイドは疲れた表情をし、エリィは考え込み
「……君達では何とかできないのかい?」
リィンはセティ達に視線を向けたが
「すみません……さすがに最先端の導力機器関係については正直、お手上げです……」
「魔導杖の改造くらいならできるけどさすがにデータ関連はね~。」
「……それもできるようにするのが今後の課題ですね。」
視線を向けられたセティは申し訳なさそうな表情で答え、シャマーラは疲れた表情で呟き、エリナは静かな表情で呟いた。
「――――だったらさぁ。オルキスタワーの屋上で測定しちゃえばいいんじゃね?」
その時ヨナが意外な提案をした。
「え……」
「……ヨナ君?」
「えっと、どういうことだ?」
「アラート用の導力波は微弱すぎて測定器から近い場所にないと感知しきれない。かといって測定器とティオのセンサーと連動させても出力が足りないし精度不足なんだろ?でも、遮蔽物のないタワーの屋上なら感知精度も上げられるだろうし、高出力の導力が確保できるんじゃね?」
「あ、相変わらず意味不明だが……」
「どうなの、ティオちゃん?」
ヨナの説明を聞いたランディは呆け、ノエルはティオに視線を向け
「……驚きました。」
ティオは静かな表情で呟き
「いやはや、さすがヨナ君!システムエンジニアとしての才能は目を見張るものがあるねぇ!」
ロバーツは興奮した。
「フ、フフン。まあそれほどでもあるけどなー!」
「それじゃあ……」
「何とか目処が立ったみたいだね?」
「ええ、行けるかもしれません。」
「早速、オルキスタワーの管理部に屋上の使用許可がもらえないかかけあってみよう。ヨナ君、君も手伝ってくれるね?」
「なんでボクが―――って言いたいけどまあヒマだし手伝ってやるよ。その代わりアンタら、これで貸し一つだからな!?」
ロバーツの言葉に答えたヨナはロイド達に視線を向けて言い
「フフ、ちゃっかりしているわね。」
「はは、わかった。」
「無茶な頼みでもない限りきっとお返しさせてもらうわ。」
ヨナの言葉にエルファティシアとロイドは苦笑し、エリィは微笑んだ。
その後、オルキスタワーの管理部から屋上の使用許可をもらった主任たちは機材と共に一足先にタワーへと向かった。準備に少し時間がかかるらしく、ロイド達は他の用事を片付けてからオルキスタワーに向かう事にした……………
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