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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第78話

翌日、ロイドとノエル、ランディはサーベルバイパーの拠点であるライブハウスから出た後ワジ、エリィ、ティオ、リィンと合流した。



~雨・旧市街~



「……どうだった?」

「駄目だ……まったく知らないらしい。ここ数日、ヴァルドの姿は誰も見ていないみたいだ。」

ワジに尋ねられたロイドは溜息を吐いた後答え

「どうやら徹底的に舎弟どもを遠ざけたみてぇだからな……逆に行方を知らないか喰ってかかられちまったぜ。」

「ええ……必死そうでしたね。」

ランディの言葉にノエルは疲れた表情で頷いた。

「……そうか。」

二人の言葉を聞いたワジは複雑そうな表情で呟き

「こちらもテスタメンツの子達に改めて聞いてみたけど……誰も最近、ヴァルドさんの姿を見かけた人はいないみたいね。」

「はい……泥酔して潰れた姿を一時期よく見かけたそうですけど。」

「………よっぽど、圧倒的にワジに負けた事や好敵手であるワジが警察に入った事がショックだったんだろうな……」

エリィとティオはそれぞれ呟き、リィンはワジに視線を向けて言った。

「そうか……やっぱり背後関係は見えてこないな。」

「あの野郎、一体どこから”グノーシス”なんぞを……」

「………………………」

「……ワジ君、大丈夫?何だか顔色が良くないよ?」

ノエルは黙り込んでいるワジを心配そうな表情で見つめていった。

「フフ、雨で冷えたせいかな。とりあえず、アッバスたちに情報収集は頼んでおいた。ヴァルドのことは置いておいて僕らも一度支援課に戻ろう。」

「……そうだな。キーアが朝食を用意してくれているみたいだし。後は朝早くにセティ達にも頼んでおいた解毒薬の強力版もできているだろうしな。」

「ふふ、キーアちゃんには何だか最近、お世話になりっぱなしね。」

「それにセティちゃん達には武器とかの事も含めて、マジで助かってるよな……いや~、短期間しかいないのが非常に惜しいな。」

その後ロイド達は支援課に戻って朝食を取り始めた。



~特務支援課~



「―――ふう、ごちそうさま。」

「いや~、冷えた身体に雑炊ってのは嬉しいねぇ。」

「ふふっ、そうね。卵と鶏肉も入っていたし。」

「それに雑炊の中に野菜も入っていたから、栄養バランスも完璧ね。」

朝食を終えたロイドは呟き、ランディは嬉しそうな表情で言い、エリィとエルファティシアは微笑み

「ご馳走様、キーアちゃん。」

「とても美味しかったです。」

「ああ……俺もこんな上手い雑炊、初めてだ。」

ノエルとティオ、リィンはキーアに視線を向けて感想を言い

「つくづくキーアちゃんの鍋が食べれなかった事が悔しいよね……」

「……全くです。あのヴァルドという人のせいで、せっかくの美味しい料理が食べれないなんて。」

「……本格的な準備をしていたキーアには本当に悪いことをしましたね。」

シャマーラが呟いた言葉にエリナは頷き、セティはキーアに視線を向けた。

「えへへ、昨日のお鍋の材料を使っただけだけどー。ワジ、おなか一杯になったー?」

ロイド達の言葉を聞いたキーアは嬉しそうな表情をした後ワジに視線を向けた。

「……ああ。染み入る美味しさだったよ。ご馳走様、キーア。」

「えへへ、よかったー。キョクチョーとアルも喜んでいるかなー?」

ワジの感想を聞いたキーアは嬉しそうな表情をした後呟き

「フフ、きっと喜んでいるわよ。」

「ああ……朝早くからヴァルド関係の件で朝食も取らずに支援課を出たからな。」

「冷めないように魔法瓶に入れた雑炊をフランさんが受け取ったそうですから、きっとフランさんが届けてくれますよ。」

キーアの言葉にエリィとロイドは微笑み、ティオは静かな笑みを浮かべて言い

「うふっ♪それにヴァイスハイトにとって将来有望な女の子の手作り料理なんて、ご馳走に違いないでしょうしね♪」

「……いくらヴァイスさんといえど、キーアに手を出したら絶対に容赦しません。もしキーアに手を出したら”オメガエーテルバスター”です。」

「おうよ!局長の毒牙に俺達の大切な大切なキー坊をかからせるものか!」

からかいの表情で言ったエルファティシアの言葉を聞いたティオは真剣な表情で呟き、ティオの言葉にランディは頷いて言った。

「フ……さぞ人心地ついただろ。ヴァルド・ヴァレスの件だが……警備隊方面で捜索は続けられている。――――無論、いざ戦闘になった時”仕留める”事も厭わない為にかなりの重装備だそうだ…………まあ、基本”討伐”ではなく”捕縛”の為に動いているそうだから、お前達はそんなに思いつめるな。」

ロイド達の様子を見たセルゲイは口元に笑みを浮かべた後、ロイド達を見回して言った。



「……ハハ、そうだね。それにもしヴァルドが討伐されたのなら、それが”グノーシス”に手を出したヴァルドの運命って事でいいんじゃない?」

「ワジ君……」

静かな笑みを浮かべて言ったワジの言葉を聞いたノエルは心配そうな表情でワジを見つめた。

「ですが、ヴァルドがどこかで”グノーシス”を入手したのは間違いありません。そちらのルートを何としても解明しないと……!」

その時ロイドは真剣な表情で言ったが

「それについても既に二課が動いている状況だ。一課も外国勢力の関与について調査に入ったと聞いている。それに二課、一課の手伝いの為にルファディエルや局長達も駆り出されているんだ。まあ、そう焦るなってことだ。」

「……はい。」

セルゲイの説明を聞いて頷いた。

「結局、昨日の脱線現場は一通り復旧できたんですか?」

「ああ、昨日の夕方までに片側を通行できるようにしてから夜通しで完全復旧したらしい。そこまで大事にならずにすんだな。」

「ふう……何よりでしたね。」

「大陸横断鉄道は大動脈……もし停まったままだったら今頃大混乱だったでしょうね。」

「そんな事になったらせっかく弱くした二大国の干渉力をまた強くされる事になる材料にされちまいそうだな。」

セルゲイの説明を聞いたノエル、エリィ、ランディは安堵の溜息を吐き

「ああ……まったくだ。……とりあえず支援要請をチェックしてみるか。そろそろ今日の分が届いているかもしれないし。」

ロイドは頷いた後提案した。

「ええ、そうしましょう。」

ロイドの提案にエリィが頷いたその時通信機が鳴りはじめた。

「つーしん、鳴ってるよ?」

「ああ、俺が出るよ。」

キーアの言葉に頷いたロイドは立ち上がって通信機に近づいて通信を始めた。



「はい、こちらクロスベル警察、特務支援課ですが……」

「………おはよ。ギルド受付のミシェルよ。」

「ああ、おはようございます。”結社”についての報告はご覧になっていただけましたか?」

「ええ……正直助かったわ。現在、レマン総本部に連絡して情報を分析している所だけど……ま、得体の知れない連中だからどこまで本当に動いているのかわからないかもしれないわね。」

「……そうですか。えっと、その事を伝えに?」

「あ、ううん、そうじゃないの。ちょっと聞きたいんだけどうちのリンとエオリア、見かけてないかしら……?」

「えっと、昨日病院で会ったばかりですけど……」

「そっか……そうよね。……まったくあの子達、一体何をしているのかしら。」

「えっと……連絡が付かないんですか?」

「ええ、昨日の夜からエニグマに繋がらなくって。ま、そう珍しい事じゃないからあまり心配はしてないんだけど。」

「そうですか……」

「まあ、気にしないで。アナタ達も忙しいんでしょうし。例の不良のリーダーだっけ?そちらの方もヤバいんでしょう?確か彼、”教団”関係者と認定されて、討伐許可まで出ているって聞いたけど。」

「……ええ、まあ。」

「もし2人を見かけたら、すぐに連絡するように言ってちょうだい。それじゃ、そちらも頑張ってね♪」

「はい、お疲れ様です………」

通信相手―――ミシェルとの通信を終えたロイドは考え込んでいた。



「ギルドからみたいだがどうしたんだ?」

「あ、はい……」

ロイドは遊撃士のリンとエオリアが昨夜から連絡が付かなくなっている事を伝えた。

「あの人達が……」

「どちらもかなりの手練れのお姉さんたちだったよね?」

「手練れの遊撃が2人も行方不明なんて……」

話を聞いたエリィやワジ、リィンは厳しい表情をし

「ああ、特にエオリアさんはセシルさんに次ぐ俺のタイプだな。」

「それはどうでもいいかと……」

「少しは時と場合を考えて下さい。」

真剣な表情で言ったランディの言葉にティオとエリナは呆れた。

「でも、ちょっと心配ですね。お二人ともスケジュール管理は相当しっかりしてそうですし。」

「そうだな……前に手合わせをした時も分刻みで動いてる感じだったし。」

「一体何があったんでしょうね?ただでさえ、クロスベルは現在不安定な状況なのに……」

「どれだけ手練れでも万が一ってのが考えられるしね~。」

ノエルの言葉にロイド、セティ、シャマーラはそれぞれ頷いて考え込んだ。

「ま、余裕があれば仕事がてらギルドに顔を出してやるといい。こういう時はお互い様だろ。」

「ええ、わかりました。」

「ロイドたち、もう出かけるのー?今日はお鍋、大丈夫そう?」

「ああ、今日は絶対に早めに戻るからさ。」

「ごめんね、キーアちゃん。せっかく用意してくれたのに昨日は食べれなくてって。」

「ううん、それだけみんな頑張ってるんだよねー?だったらキーアも頑張ってお手伝いしたいモン。」

申し訳なさそうな表情で言ったエリィの言葉を聞いたキーアは表情を輝かせて笑顔を見せた。

「キーア……」

「ハハ……なかなかの破壊力だね。」

キーアの笑顔を見たロイドやワジは笑顔になり

(……この性格は”創られた”んじゃなくて、天然のようね……)

エルファティシアは口元に笑みを浮かべてキーアを見つめていた。

「天気予報では、午後には雨も止むみたいですし……」

「バッチリ仕事を片付けてとっとと帰ってくるとすっか!」

「はい……!」

その後ロイド達は行動を開始した…………… 
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