気になる人は

「今の言葉って」
「こんなのこうした時に言わないわよ」
「じゃあ」
「そう、正直あんたに彼女がいなくて告白もなかったって聞いてほっとして」
「それでなんだ」
「もうこんな思いもしたくないし」
　必死の顔で言う光だった、顔を真っ赤にさせて。
「それにね、何といっても」
「俺となんだ」
「そうよ、付き合いたいのよ」
　必死の顔のままで言う。
「何があってもね」
「そうなんだ、じゃあ」
「それで答えは！？」
　死にそうな顔でだ、今度の問いはこうしたものだった。
「それで」
「うん、驚いたけれど」
　何とか落ち着きを取り戻そうと心の中で努力しつつだ、駿は答えた。
「俺でいいんだ」
「あんたじゃないと駄目なの」
「うん、実は俺もね」
「えっ！？」
　ここで流れが変わった、何と。
　駿もだ、その顔を赤くさせてだ。光に戸惑いつつ言った。
「土方のこと好きだったから」
「嘘・・・・・・」
「嘘じゃないよ、俺だってね」
　当の駿もというのだ。
「こうした嘘言わないから」
「それじゃあ」
「好きだったんだよ」
「私のことを」
「そうなんだ、じゃあ」
「私の告白は」
「有り難う、それじゃあね」
　駿から両手を差し出してだ、光の両手を掴んで言った。
「これから宜しくね」
「う、うん」
「友達じゃなくてね」
「彼氏彼女で」
「宜しくね」
「嘘みたい・・・・・・」
　今度は崩れ落ちそうになって言う光だった。
「こうなるなんて」
「俺も驚いてるよ」
「そうよね、いきなりだから」
「けれどね」
　それでもというのだ。
「本当にこれからはね」
「交際相手として」
「宜しくね」
「ええ」
　光は泣きそうな、それでいて満面の笑顔で応えた、そして。
　二人で笑顔で屋上を後にした、駿は校舎の中ではこう言った。
「じゃあ俺部活に行くから」
「私も」
「帰りは一緒に帰ろうね」
「最初のデートね」
「そうしようね」
　二人で話してだ、そのうえでこの時は別れた。だが二人の絆は明らかに変わった。友人同士から交際相手のそれに、思わぬ勘違いから。


気になる人は　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１６・２・２１