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第三章
「私なのよ」
「そうだったんだ、それで」
「ええ、実はね」
駿の言葉を先取りして言った。
「言いたいことがあってね」
「俺をここに呼んだんだよね」
「ちょっと聞きたいけれど」
言う前にというのだ、光は俯き気味に言葉を出した。
「斎藤今彼女いるの?」
「彼女?」
「そう、いるの?」
「いないよ」
駿はあっさりと答えた。
「そうした相手は」
「いないの?」
「うん、いないよ」
駿はまた答えた。
「今言ったけれど」
「告白されたんじゃ」
「えっ、誰に?」
「吹奏楽部の後輩の娘に」
「そんなことないよ」
駿は何それという顔で光に返した、顔に答えが出ていた。
「というか何でそんな話が出来たのか」
「本当にないのね」
「同じ楽器で色々教えてる女の子は三人いるけれど」
しかしというのだ。
「三人共彼氏いるから」
「じゃあ本当に」
「告白自体されたことないよ」
そうした話そのものいがというのだ。
「何でそんな話が出たのか」
「ただの噂話なのね」
「そもそもそうした話が出たこと自体が」
また言った駿だった。
「俺驚いてるよ」
「そうなのね」
「そう、普通にね」
「よかった」
ここまで確認してだ、光は。
ほっとした顔になってだ、そのうえで。
駿にだ、こう言ったのだった。
「じゃあいいわね」
「いいって?」
「今回はよかったけれど」
駿が告白されていなくてだ、偽らざる本音だ。
「実際にそんな話があったら困るから」
「困るって何が?」
「もう言わないと」
決意していたがだ、ここであらためて覚悟を決めて言うことにした。
駿の目をじっと見てだ、息を飲んでから告げた。
「私が告白していい?」
「えっ!?」
「だから今言った通りよ」
まさにというのだ。
「私とね」
「交際してくれって」
「そう、実は前から好きだったのよ」
「それ本当!?」
駿は光の告白に仰天して問い返した。
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