魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~
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StrikerS編
111話:『星々(れきし)』(後編)
前書き
大変、たいーーーーーへんッ!
お待たせいたしましたーーーーーッ! ほんとすいませんんんんんッ!!
大学やボランティアの関係で時間と意欲ができず、八千文字書くのにこんなにかかってしまいました!本当に申し訳ありませんッ!
そんなこんなで、前編中編と続いていたここも、ようやく終わりを迎えます!
果たして結末はいったい? どうなってしまうのか!?
へたくそな前ふりですが、どうか楽しんでいってください! 待たせた分はきっちり頑張ったつもりですので!
それでは、どうぞ!
大きく吹き飛ばされた男。だがすぐに体勢を立て直すと、口元を拭うような仕草をし、立ち上がる。
「〝共闘〟…お前は、俺と共に戦えると…一緒に進めると本気で思っているのか…!?」
「あぁ、俺はお前を信じてる。だからお前も、俺を信じて―――」
「黙れ! 信頼など、絶対的な力の前では無力だ!」
そう叫ぶと男は剣を取り出し、切っ先を向けてくる。
「信頼が力になると? 想いが力になると? 無意味だ、現実を見ろ!」
「それでも戦うしかないんだよ、無意味だと言われるその現実を変える為に!」
「それが綺麗事だと言っている! あの絶対的な力に、その綺麗事や理想論で立ち向う? 現実はそんな簡単ではない、絶望するだけだ!」
変えられなかった絶望、守り抜けない絶望。そんな負の重荷に押しつぶされるだけだ。〝あの人達〟程お前は強くない、理想を貫くだけの力はない!
「―――それでも!」
「ッ!」
打ち付け合う剣、甲高い音を立て衝突する。
その間で交錯する互いの視線。目の前に映る赤い複眼には、絶望の色はなかった。
「諦めるつもりはない! 綺麗事と笑われようと、戦うしかないんだ! ―――俺は絶対に、絶望なんかしないッ!」
轟く竜のような咆哮、それは絶望を照らす光の力。その現在を照らす光は、未来すら変え得るもの。
その力に手を伸ばせ、自らが求める希望の為に。
甘い匂いが漂い始めた。
星しかないようなこの宇宙で、なんでいきなりと思ったが、顔を向けるとその理由もはっきりわかった。
ドーナツだ。白い粉のかかったプレーンシュガーのドーナツ。それがたっぷり入った紙袋を抱え、こちらを見ていた。
そこから一個のドーナツを取り出し、無造作に頬張った。数回租借した後、ようやく口を開いた。
『食べる?』
「いえ…」
そう? と言うと、差し出したドーナツを引き戻した。というか、食えるのだろうか?
そんな疑問を胸の中で抱く。しかしそんなことはつゆ知らず、ドーナツ一個を食べ終えた彼。
『確かに過去は現在の元だよな。だけど、あまりそれに囚われ過ぎてもダメだ』
「……えぇ、そうですね」
だけど人間全員が、そんな風に思える訳ではない。過去の挫折、後悔、失望、恐怖―――そんな思いががんじがらめのように心に絡みついて、前へ進む一歩が出ない。そんな人がいる、どちらかと言えば多い方だろう。
『だからこそ、誰かとの出会いが人を支えてくれる』
最初は少なくても、戦いの中で出来た繋がり。似た部分なんて少なくていい、ただ互いの心を思い、支えてくれる。
何かを失っても、大切なことに気づかせてくれる。そんな人達との出会いがあったから、俺は戦えた。
『過去にばっか目を向けてちゃダメだ。今を生きて、積み重ねることで未来ができる』
失ったものが多くても少なくても、どれだけ大きくても小さくても。
たとえ失望しても、挫折しても、後悔しても、怖くても。きっと大切な人との出会いが、それらを明るく照らす希望になってくれる。
『そしてそれは、自分自身もそう』
相手との出会いが大切だと思えたなら、その人もたぶんそう思っている筈だ。
自分との出会いを大切に思ってくれる、だから自分を支えてくれる。自分も相手の希望であり、相手も自分の希望である。
「えぇ…俺も、そう思います」
支えてくれる者の大切さ、そこから与えられる力。戦い続けていたら、嫌という程実感させられる。
だから守りたいと思う。心のそこから大切だと思えるあいつらを、そしてあいつらが生きるこの世界を。
『その為の能力だろ?』
安心していい、俺達もお前を支える。お前の目指す未来を、共に進んでいこう。
そう、俺が――――
『俺達が、お前の希望だ』
だから進め、生きろ。望む未来を目指して。
その命を、見せつけろ!
「はい!」
真剣な目を見てか、彼も頷いて笑った。
そして彼が指にはめていた指輪が一瞬光ったかと思うと、彼自身が光に変わる。
光は赤い宝石へ。新たな〝炎〟を得て、空は一層輝く。
二つの星を中心に輝くそれは、未来を照らす〝希望〟の星々。頭上で光るその星へと手を伸ばそう。希望をその手に収める為に。
―――さぁ、Show Timeだ。
「はッ!」
「ッ!?」
鍔迫り合いをしていた剣を、円を描くように動かす。
急に変化した動きについていけなかった男は驚くが、そんな暇を与える間もなく剣が弾かれてしまう。
次の瞬間には剣が振るわれ、火花が散る。斜めに横、その攻撃のダメージに思わず後ずさる。
しかしそこへ、追い討ちをかけるような回し蹴りが飛んできた。二の腕部分でうまくさばきつつ、大きく後退した。
うまく着地し勢いのまま体を回す。そこへふわりと纏わりつく、内側が赤く外側が黒いローブ。今までとは違い複眼ではない、赤い宝石のようなマスク。
それはまさに、絶望する人々に希望を与え、絶望から守った―――そして大切な人を失いつつも、希望を失わず戦った男の姿……
―――魔法使い〝ウィザード〟
「諦めるなよ! てめぇで決めつけた御託並べるだけで、全部に絶望するなよ!」
世界は確かに理不尽だ。綺麗事や理想論がまかり通る程、現実は甘くはない。
だけど、だからって絶望してられないだろ。その現実とか世界とかに、俺達は現在生きているのだから。そんなのに折り合いつけて、前へ進んでいくしかないんだよ!
「御託だと!? 違う、事実だ! お前は実際守れなかったじゃないか、お前が大切だと思う者達の幸せを! それをお前は―――」
「過去に固執し続けても、前には進めない! 変えられるのは俺達が生きる現在、そしてこれから進む未来だ!」
「じゃあお前は過去の出来事を後悔しないと…そう言うのかッ!?」
そう言って繰り出される拳。だがそれは円を描くような手の動きで捌かれ、一度も当てられなかった。
しかし攻撃の手は緩まることはなく、次々に繰り出される。それをまたしても捌き、逆に反撃を数回返す。
そんな中、男は言った。そんなことはない、と。
「後悔していない、と言ったら嘘になる。あいつらの事は、今だって心残りだ」
こうすれば救えた、ああすれば守れた。そんな後悔はいつも付きまとう。
でも後悔するだけじゃダメなんだよ。だからと言って、割り切って捨て去る訳でもない。
そんな後悔も挫折も全部含めた、心の中に巣くった思いを抱えて進んでいく。
あいつらの分も生きて、進んで、戦って……現在を、そしてこれから未来を、守っていくんだ。
「お前だってもう気づいているんだろ?」
「……ッ!?」
「見ていたんだろ? 〝あの人達〟の戦いを―――俺の中で」
瞬間、勢いよく飛んでくる拳。片手で受け止めるが、その重みと拳の硬さに男の思いを感じ取る。
「ふざけるな…見たくて見たんじゃない、知りたくて知ったんじゃない!」
「………」
「あんな奇跡は簡単に起きはしない! お前が〝運命〟に抗ったところで、何も変わりはしないッ!」
再び拳のラッシュ。先程と同じように両手で捌こうとするが、全てを捌ききれず後退する。
あぁそうだ、〝あの人達〟みたいに戦えるかどうかなんてわからない。でもわからないからこそ、進まなければならない。進まなければ、何も見えてこない。
「〝運命〟なんてもので終わらせないでッ、抗えよ、戦えよッ! 自分の手で切り拓かなきゃ、人は前には進めないだろ!?」
「オオオォォォォォッ!」
握る拳、双方共にそれを振りかぶる。硬く、そして重く握られたそれらは、相手を砕く為のもの? それとも……?
『君はなんの為に…なんでそこまでして戦う?』
星が瞬く宇宙に、両肘を両膝の上に乗せ、空中に座っているような青年がいた。
戦う理由、それを青年は問うてきた。あぁそうだな…俺にとって一番のそれは。
「悲しませたくない奴らがいる、そいつらを守りたいから」
悲しみ、か…。答えを聞いた青年が小さく漏らした。
それをなくす為に、終わらせる為に戦う。だけどそれには、苦しみが伴うだろう。それでも戦うのか? 抗うのか?
「はい、戦って切り拓きます。その悲しみが終わる未来まで!」
『……あぁそうか、君も愛してるんだな』
そう言って立ち上がる青年。義務とか使命とかじゃない、君を動かしているのは純粋な想い。人を守ろうする、人を愛する想い。
『本当に強いのは、そう言った人の純粋な想いだ』
その想いが未来を切り拓くんだ。
進んでいけ、信じる仲間と共に。切り拓いた未来を、覆した〝運命〟を。
『できる筈だ、君に〝戦士の資格〟があるのなら』
「はいッ!」
力強く返事を返すと、彼は笑顔を浮かべて光へと変わった。
光はベルトの宝石へ。新たな〝炎〟が灯ると、夜空もまた新しい星々を光らせた。
四つの大きな星、奥には他と同じように輝く星の群れ。
それらはどうしようもない〝運命〟を覆し、新たな未来を勝ち取った者達の証だ。
新たに拳を作り、大きく振りかぶった。
その拳は目の前に横たわる壁を、納得のいかない現実を。真正面から砕く為のもの。
―――切り拓け〝運命〟を! その拳で、その想いで!
大きな音を立ててぶつかった、両者の拳。反動で両者はじけ、距離ができる。
苦痛に少し声を上げるが、すぐに手を動かす。両者は剣に手をかけ、共に振り上げる。
再び甲高い音が世界に響く。火花を散らし斬り結ぶ両者、しかし一方はまた新たな姿へと変化していた。
赤の複眼に、青いアンダースーツの上を覆う銀のプロテクター。頭部にはカブトムシのような角。
西洋騎士を思わせるその鎧には、彼の姿そのものを象徴するスペードのスートが描かれている。
それは人を愛し悪を憎む信念を貫き、仲間と衝突しながらも戦士として戦い、運命を覆した剣士の鎧……
―――ライダーシステム・ブレイドアーマー
幾度かぶつかり合った剣は、遂に両者の肩を捉え、胸部の鎧を切り裂く。
火花を散らし後退した両者は共に片膝を突き、荒くなった息を整えようとする。
「〝俺達〟は何度だって立ち上がる…こうなって欲しくない運命があれば、それに抗う為に何度でも立ち上がれるんだ!」
不屈の心を携える彼女も、絶望の底から立ち上がった彼女も、罪と称し背負い続けようとする彼女も。
例えどんな困難な状況でも、諦めることはしない。悲しい出来事を、理不尽な痛みを、どうしようもない運命を。認めたくないそれらを、あいつらは必死に変えようとして、いつだって立ち上がる。
「〝あの人達〟に限った話じゃないんだッ。切っ掛けさえあれば誰もがいつだって、立ち上がり戦おうとする!」
切っ掛け、それはほんの小さな勇気。
自らの内から湧き出たそれを、誰かから受け取ったそれを。人々は胸に秘めて立ち上がるんだ。
両足に力を込めて、踏ん張って立ち上がる。その足で前へと、未来へと進む為に。
「立てよ、その両足で! てめぇだって認めたくないんだろ、お前に課せられた運命を! だったら戦って、抗えよ!」
「黙れ…黙れッ!」
一方の男も、相手に負けない程の怒号を上げる。足に力を入れ、膝に手を添えながら立ち上がる。
「綺麗事を語るな、現実はそんなに甘くは―――」
「だがそれを成し遂げたなら、それは結局〝できたこと〟になるんだ! 綺麗事語れなくなったら、俺達に進化はないッ!」
男の言葉を途中で遮りながらも叫ぶが、それでも男は否定する。運命は覆せないと、未来は変わらないと。
再び踏み出し、剣を片手に走り迫る。だが男が迫るのとは反対に、気持ちは落ち着いていた。
大きく息を吸い、拳を構える。静かに佇む男の視線の先にあるものは…迫りくる敵?
いや違う、見えているのは先―――運命を覆して変える未来。その〝未来〟を実現する為の拳が、今目覚める…ッ!
まるでパズルのように、重なり合うことなく輝きを放つ星々。
それは歩み続けた人々の軌跡、消え失せることのない永遠の輝きだ。
『ハンバーグとか、好き?』
「…はぁ、まぁ」
どちらかと言えば好物になるのだが…何故急に? と、目の前に立つエプロン姿の青年に尋ねる。
だが青年はこちらの質問に答えるつもりはなかったのか、「やっぱりいいよね、おいしいし」と言う。
『他にも、カレーとかから揚げとか、どう?』
「いや、まぁ…好きですね」
というか、王道中の王道だ。嫌いだという方が少ないのでは?
しかし青年はそれでも、と続ける。
『それをおいしいって思えない人も、どこかにいる』
悲しいことに、それは事実。そしてそれは何も、その食べ物が嫌いだからというだけではない。
恐怖や絶望、悲愴。そんな負の感情の所為で、好きだったものすらそう思えないときもあるんだ。
「…そんなの、悲しすぎます」
『そう、だね……でもだからこそ、俺達は戦ってるんじゃないのかな?』
自分のいるべき居場所で、そんなことが起きないように。おいしいものをおいしいと言える幸せを、守れるように。
『そして、その悲しすぎる現実を…』
「壊す為に…」
一度頷く青年。「君ならきっと大丈夫」と笑顔を見せる。
守りたいと願う君は、君のままでいればいい。
『そんな自分がきっと、君の背中を押してくれるから』
「はいッ」と青年に返すと、彼は笑顔のまま光に変わった。
バックルへと、宝石へと溶ける光。〝炎〟が灯ると同時に、宇宙に星が輝いた。
大きな星の近くに、同じぐらい輝く星が二つ。三つの輝く星の周りには、小さく瞬く星がいくつもあった。
例えわからない〝未来〟でも、信じて進んだ人々の軌跡。それがあの星々が持つ歴史。
生きるという幸せ、歩き続ける未来。それは誰にも奪う権利のないもの。
だから守ろう。幸せも未来も、全部なくさないように。その為に、この拳を振るおう。
―――目覚めよ、その拳ッ!
「―――ハァアッ!」
「ッ…!?」
一瞬、腹部にとてつもなく固いものによる衝撃が襲う。
腹を抑えながら数歩後退する。攻撃を繰り出した筈なのに、逆にこちらがダメージを受けてしまった。
足を止め、すぐさま顔を上げる男。そこへ飛んでくる拳を、剣で捌きながら後退していく。
素早く、力強い拳。ギリギリのところで捌いていた男はそれに気圧され、男が見せた一瞬の隙を捉え、剣を打ち上げた。
頭部には金色に輝く二本角、赤い複眼に己の名を表すかのような顎門。
角と同じような金色のプロテクターに身を包んだその姿は、光り輝く闘士と呼ばれるようなものだ。
それは人類の先を示す可能性でありながら、人類に寄り添い、その居場所を―――〝未来〟を守った者の姿……
―――人類が進化した姿、〝ΑGITΩ〟
「ハァアアッ!」
「グァァッ!?」
剣を弾かれ、棒立ちになっていた男の胸部へ、強烈な上段蹴りが炸裂する!
大きく吹き飛ばされた男、数回転がったところで仰向けに止まり、苦痛に呻き声を上げた。
対して吹き飛ばした側も、片膝をつき息を荒げた。
それも当然だ、ここまで長い間戦い、互いに傷つけ合い続けていたのだから。
「……変えるしか、抗うしかないんだよッ。こうなって欲しくない現実が、未来が、運命があるなら…」
「………」
「戦って、もがいて…必死になって、変えてくしかないんだッ!」
目一杯叫ぶ、自分の想いが届くように。
息を整える両者、「グッ…!」と呻き声を出しながら前進に力を籠め、ほぼ同時に自らの両足で立ち上がる。
「…それが、お前の―――見つけた答えか…ッ」
「そうだ…俺は、戦い続ける!」
その言葉を聞いた男は、「そうか…」と短く返し、落ちていた自らの剣を拾った。
「ならばもう、言葉はいらない」
「………」
「決着をつけよう―――もう一人の〝俺〟」
〝お前〟が消えるか、〝俺〟が消えるか。
そう言うと男は、剣からカードを取り出した。それは自らの姿を表した紋様の描かれた、金色のカード。
「―――消えさせないさ、〝俺〟も〝お前〟もッ」
音を立て開く角、それと同時に両手を前へ突き出す。交差させた手を両側に開くと、地面に角の開いた紋様が現れ、炎のごとく揺れる。
それを見た男は、ためらいなくカードを発動する。目の前には音声と共に、金色のカード状のホログラムが現れる。
相対する者は右手を腰まで引き、そこへ居合いの構えのように左手を添える。地面に燃えていた紋様は、両足へと溶け力を与えてくれる。
「「…………」」
静かな間が広がる。だがその間にも、彼らの足には力が籠められる。それぞれの思いを乗せていき、その時を待つ。
そして、すぐにその瞬間が訪れた。
「「―――ハッ!」」
両者がため込んだ力を解放する。ほぼ同じ高さまで飛び上った二人。
一方は溶け込んだ光を右足に籠め、もう一方は道を示してくれるホログラムに向けて右足を突き出す。
跳躍は前へと進む推進力へ。二人の足は力を纏い、相対する敵を打ち破る為に。
「「オオオォォォォォ!!」」
二つの雄叫びと共に、突き出された蹴りが衝突する。
金と白の光が波紋する。衝撃は波のように広がり、灰色の世界を走る。水面のような床は大きく波打ち、灰色の空気はビリビリと揺れる。
「オオオォォォォ!」
「グッ…アアアァァァァ!」
どちらかが押されても、押し返す。互いに譲れぬ想いがあるから。
ただ一つの言葉も交わされることはない。二人の想いの乗せた雄叫びが、その蹴りが。互いの想いを語っているのだから。
そして互いの想いが臨界点へと達した時……
「「オオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッ!!」」
―――灰色の世界が、光に包まれた…
『―――来たか』
そこにいた青年はそれだけ言い、こちらを向いた。
周りは無数の星々、初めは暗いだけの空っぽ―――ゼロから始まったこの世界にも、ふと見上げればそれぞれの星々が輝いていた。
『見つけたか? お前は答えを』
「…はい。俺なりに」
でもそれで終わりではない。青年はそう尋ねてきた。
『答えを見つけた、それでもお前の旅は終わらない筈だ』
人は誰でも、自分のいるべき世界を探している。そこはきっと偽りのない、陽のあたる世界だ。
それをお前は見つけたか? その世界に辿り着いたか?
「どう、でしょうか…自分の事はどうだかわかりませんけど……少なくとも、あいつらの事は大切に思ってます」
あいつらを、そしてあいつらの生きる世界を、必ず守る。そんな決意を固めたつもりだ。
『ふ~ん…ま、俺にはないこと話だが』
「そんなことないでしょう? あなただって見つけたんじゃないんですか? 自分のいるべき―――いや、自分がいたい世界を」
『……まぁ、な…』
こちらの質問に、まんざらでもない様子で返す青年。口ではなんだかんだ言っているが、この人はきっと……
「―――守りたいんです、あいつらを。そしてあいつらが笑っていられる世界を。その為に俺は、戦い続けます」
戦う理由、その根本は今でも変わらない。この両手に世界は広すぎるかもしれないけど、それでも守りたいと願う。
『―――そう、戦いを恐れるな。その気持ちを忘れなければ、きっとお前も戦っていける。あいつらのように』
そう言って見上げる青年。それにつられて再び、空間に光る星を見上げた。
無数の星の中でより強い輝きを放つ13の星。それらが一瞬光ったと思うと、流れ星のように降ってきた。
そして青年の背後に揃うと、互いに星座のように光の線を結び始める。
出来上がった紋章、それはとても見慣れたもの。そう、それは〝破壊〟の……
―――13の星が紡いだ〝伝説〟の紋章だ。
『……この先に、〝お前達〟を待つやつらがいる』
いってやれ、と。青年は少し投げやりに言う。
「はいッ―――ありがとうございます!」
最後にお礼を言い、紋章に向かって駆け出した。青年の脇を通り―――その一瞬、彼が笑っているように見えた。
だが気にせず、そのまま直進する。もう迷いはない。見つけた答えを胸に、ただひたむきに前へ進もう。自分のいるべき世界まで。
そして13の星で出来た紋章を潜り抜けた瞬間、
―――視界は光に包まれ、白色だけになった。
後書き
てな感じになりました。いかがだったでしょうか?
色々盛り込まれた三編だったと思います。長い期間を掛けて書いたので、どこかおかしな部分があるかもしれません。しばらくしたら振り返って、部分的に修正するかもしれません。
次回は現実に戻り、間にやっていた物の続きを。
果たしてスカリエッティの野望は潰えるのか、はたまた彼の欲望が世界を蝕むのか。
次回は夏休み中になると思うので、早く投稿できると思います! ……夏バテにならなければ(笑)
それではまた次回、お会いしましょう! 小説内のご指摘、ご感想などお待ちしております!
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