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IS―インフィニット・ストラトス 最強に魅せられた少女

作者:伊10
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第5話 私、織斑で遊びます。

一夏視点

「うおおおお!!」

目の前の黒と銀で彩られたISに、大上段に構えた《雪片弐型》を振り下ろす。そのキレは、自分でいうのもアレだが中々悪くなかったと思う。

だが、対戦相手―――神宮寺楓の駆る玉鋼は半身をずらすだけで紙一重で回避し、鋭いカウンターを斬り込んで来る。体勢を崩しながらも何とかかわし、追撃の突きをギリギリで捌いて距離をとる。

さっきからもう五回目だ。のらりくらりと回避する神宮寺さんを捉えきれずに、逆に手痛い反撃を貰う。一回目は諸に直撃を食らい、地面すれすれまで吹っ飛ばされた。

「くそ………正面からじゃ無理か!?」

思わず毒づく。相手はまだ刀しか使っていないのに………。





五分前

「そのIS、刀しか持ってないの?」

「……ああ、でも十分だ。ド素人で射撃戦闘が出来るなんて思ってない。」

「ふーん。」

俺の答えを神宮寺さんはちょっと意外そうな顔で聞いていた。

何だかよく分からない内に巻き込まれたクラス代表決定戦。その一試合目は、国家代表クラスのハイレベルな攻防の末、目の前の神宮寺さんが制した。

セシリアはビットが全て破壊され、また最後の一撃が武器システムに障害を起こしたとかで棄権した。つまり、この対戦で勝った方がクラス代表ということだ。

正直勝てるとは思えないが、やる以上、絶対勝つ気でやるのが勝負ってもんだ。ここで退いたら男が廃る。

そんな時、神宮寺さんが思いがけない事を言い出した。

「じゃ、私も刀だけで相手するね。」

「なっ………手加減かよ。余裕だな。」

「いや?個人的には近接だけの初心者を遠巻きにじわじわ削るのも全然アリよ。」

アリなのかよ。

「でも、それじゃあ楽しくないでしょ?私が。」

楽しくない。彼女はそう言った。

「悔しかったら、使わせてみなさい。」

それが今の俺の実力だと、言われた気がした。

そして、今





楓視点

うーん、予想外。もっとイノシシみたいに突っ込んで来ると思ったんだけどな。初回以来カウンターも当たらないし。

動きも悪くない。才能だけなら私じゃ敵わないかもしれない。流石は世界最強の弟か。でも…………

「くそっ!もう一度だ!!」

そう言った織斑は、なんと瞬時加速を使って一気に距離を詰めてきた!何と言うか………典型的な主人公タイプだね。

私は使えるようになるまで丸一日かかった。戦闘に組み込めるまでには更に二週間かかった。それをIS起動してたかだか数十分で、ぶっつけ本番で成功させるのだ。主人公補正としか言えない。

ま、予想の範囲内だけどね?

《血染紅葉》を腰に構える。鞘が有れば完璧だがまあ無くても構わないだろう。

織斑が突進してくる。接触まであと一秒、0,8…0,5…0,2…………ここっ!!

「おおおおお!!!」

気合いとともに振るわれた一閃、それは私の髪の毛を何本か巻き込んで、虚空を空振りした。直前でPICを解除したのだ。突然真下に沈み込むように動いた私を、織斑は捉えられなかったようだ。

私はPICの再起動と同時にスラスターで背後に回る。私が《血染紅葉》を振り抜くのと、彼が振り返り、雪片弐型を滑り込ませるのはほぼ同時だった。

ガキイィィン

甲高い音がして、二振りの刀が宙を舞った。





一夏視点

《雪片弐型》を吹っ飛ばされた。でも、相手も刀を手離している。取りに向かう事は出来ない、ならば………

「はっ!!」

拳で勝負だ!!

右の拳を振りかぶり、全力の一撃を繰り出す。殴り合いなら、リーチがある分俺の方が有利!

と、思った時にはもう、神宮寺さんの姿はなかった。

ゴッ

腹に鈍い衝撃、食らってから膝だと分かった。

次の瞬間には彼女は俺の上にいて、右足を振り上げていた。その足には薄青いエネルギーの膜がある。斥力バリアだろう。

そして、それが俺の脳天に容赦無く振り下ろされた。綺麗にきまった踵落としに、ISの搭乗者保護があっても気を失いかけた。次いで、地面に強かに打ち付けられる。

見ると、どういう訳か神宮寺さんも降りて来ている。くそっ!まだ終わってない!!

立ち上がろうとした俺の背中を、衝撃が襲う。同時に試合終了のブザー。

「え………?」

何で!?神宮寺さんは何も!?

その疑問は、背中を見れば氷解した。

性格には、背中に突き刺さる、《雪片弐型》と《血染紅葉》を見れば。

落ちて来たのが刺さったのだ。恐らく彼女は、最初からそのつもりで、落とす場所すら調整したのだろう。

完敗だった。俺の敗北を告げる無感動な機械音声を聞いてそう、実感した。 
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