ヘレロ族の服
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第一章
ヘレロ族の服
ナミビアに行くと聞いてだ、大学生の石本豊はそう言った同じ学科で友人付き合いのある山口英治にこう問い返した。
「何しに行くんだ」
「女の子を観に行くんだよ」
これが英治の返事だった、明るく日に焼けた大きな目を持っている顔で細面で目も細い豊に対して答えた。
「別に変な遊びじゃないからな」
「あそこら辺エイズ多いからな」
「だからそれは俺もわかってるからな」
「変な遊びじゃなくてな」
「ちょっと写真の撮影に行くんだよ」
女の子の、というのだ。
「あっちの女の子の民族衣装面白いらしくてな」
「そうか、じゃあ風土病には気をつけてな」
「行って来るな」
こうしたことを豊に言ってだ、英治はナミビアに行った。
ナミビアに行く前に空港でだ、彼は今回のツアーのガイドさんにこう聞かれた。
「ナミビアに行かれたことはないですね」
「はい、実は」
実際にとだ、英治も答えた。
「ないです、アフリカ自体が」
「ないですか」
「行くって決めるまで場所も」
ナミビアが何処にあるのかさえというのだ。
「知りませんでした」
「そうですね」
「南アフリカの北にあるんですね」
「ジンバブエやモザンビークも近いですよ」
「あの噂の」
経済やPKOの問題でだ。
「そうした国々もですね」
「はい、近くにあります」
「同じアフリカ大陸の南にあるんですね」
「ブラックアフリカの中でもです」
アフリカは北と南でホワイトアフリカ、ブラックアフリカと呼ばれている。エジプトやリビアがホワイトアフリカででサハラ砂漠から南がブラックアフリカだ。
「南にあります」
「そうした国ですね」
「イギリスの植民地でしたが」
「かつては」
「日本には馴染みの薄い国ですね」
「というかナミビアへの観光ツアーなんて」
それこそとだ、英治はガイドに話した。
「あるなんて」
「想像もしていなかったですか」
「はい、とても。ですが」
「あると聞いてですね」
「面白そうだったので」
それでというのだ。
「申し込んだんです」
「そうですよね、他の方もですよ」
英治以外のツアーの参加者もというのだ。
「ナミビアははじめてで」
「それにですね」
「はい、このツアーがあることをはじめて知った人が多いです」
「ハワイとかはよく聞きますが」
太平洋や欧州についてはだ、最近では東欧も多い。
「ですがアフリカ南部は」
「私が企画したんですよ」
ガイドは自分では四十代と言うが二十代にしか見えない若々しい顔を綻ばせて英治に話した。
「アフリカもと思いまして」
「それも南の方ですか」
「最初は南アフリカを言いました」
「あの噂の」
「ヨハネスブルグを」
世紀末と名高いこの街をというのだ。
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