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英雄伝説~菫の軌跡~(閃篇)

作者:sorano
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第14話

”石切り場”に到着したリィン達はミリアムの機転によって行く手を阻む石の扉をアガートラムの一撃で破壊し、奥へと進むと怪しげな人物達が密会をしていた。



同日、14:00――――



~石切り場・最奥~



(あれか……!)

(いたいた……!)

怪しい人物達を見つけたリィンは気を引き締め、ミリアムは口元に笑みを浮かべた。

「おい、ここまでやればもう十分だろうが……!」

「とっとと残りの契約金も渡してくれよ!」

猟兵崩れは眼鏡の男に金の催促をしていた。

「フ……そうは行かない。契約内容は、帝国軍と共和国軍が戦闘を開始するまでだった筈だ。もし、膠着状態が続くようならもう一押ししてもらう必要がある。」

一方眼鏡の男は口元に笑みを浮かべて答えた。



「チッ……面倒だな。」

「だが、もう少し我慢すりゃ莫大なミラが……」

「しかし”G”と言ったか。どうしてアンタらはそんなに羽振りがいいんだ?」

「前金だけで500万ミラ……どんな大金持ちのスポンサーを味方につけやがったんだ?」

「我々の詮索をしないことも契約条件に入っていた筈だ。何だったらこの場で契約を打ち切っても構わないが……?」

猟兵崩れ達の疑問を聞いた眼鏡の男は猟兵崩れ達を睨んだ。

「ちょ、ちょっと待てって!」

「ミラさえ出してくれりゃあこっちは大人しく働くっての!」

「それに、アンタらのアシ無しでどうやって帰りゃあいいんだよ!?」

男の返事を聞いた猟兵崩れ達は慌て出し

「フフ、わかったのなら大人しく待機しておきたまえ。なに……じきに戦端は開かれ、この地の平穏も破られるだろう。そこまで行けば―――」

猟兵崩れ達の様子を見た男は満足げな笑みを浮かべた。



「―――させるかっ!」

その時ガイウスの声が聞こえ、声を聞いた男達が振り向くと武器を構えたリィン達が男達に駆け寄った。

「な……!?」

「なんだ、このガキどもは!?」

「トールズ士官学院、”Ⅶ組”の者だ!監視塔、共和国軍基地攻撃の疑いでアンタたちを拘束する!」

自分達の存在に驚いている猟兵崩れにリィンは宣言し

「どうやら、下郎どもを使って大それた事を狙っているらしいが……その薄汚い思惑、叩き潰してやろう。」

「しかも二流どころか三流の猟兵を使っているなんて、おバカねぇ。」

ユーシスは目を細めて眼鏡の男を睨み、レンは呆れた表情で眼鏡の男を見つめていた。



「な、なんだと!?」

「下郎に三流って……ブッ殺すぞ、ガキどもが!」

「お前達は……フン、そうか。ケルディックでの仕込みを邪魔してくれた学生どもだな?」

ユーシスとレンの挑発に乗った猟兵崩れが怒っている中、リィン達を見回した眼鏡の男は鼻を鳴らした後リィン達を睨んだ。

「……まさか…………」

「あ、あの野盗たちを影で雇っていたのは……!?」

男が呟いた言葉を聞き、心当たりを思い出したリィンとアリサは驚き

「フフ、領邦軍ではなくこの私だったというわけさ。我が名はギデオン―――それだけ覚えておいてもらおう。もっとも同志たちからは”G”とだけ呼ばれているがね。」

眼鏡の男――――ギデオンは不敵な笑みを浮かべた後自身の名を名乗った。



「”同志”ねぇ………」

「フン、何がしかの組織に所属しているようだが……」

「―――問答は無用だ。この地に仇なすならば全力をもって阻止させてもらう。」

「うんうん♪イチモウダジンってやつだね。」

ギデオンがどこかの組織に所属している事を悟ったレンとユーシスがそれぞれギデオン達を警戒しながら考え込んでいる中ガイウスは十字槍をギデオン達に向けて突き付け、ガイウスに続くようにミリアムは勝ち誇った笑みを浮かべて答えた。

「面白ぇ……」

「なんか変なガキまで混じってるみてぇだが……」

「……オイ。やっちまってもいいんだな?」

「ああ、学生相手に可哀想だが仕方あるまい。―――知られた以上、生かして帰るわけにはいかん。遠き異郷の地で若き命を散らせてもらおうか。」

「こいつら……」

「クスクス、手を抜く必要はなさそうね。」

自分達を殺すつもりでいるギデオン達をアリサは睨み、レンは余裕の笑みを浮かべて二振りの小太刀を鞘から抜き

「――――Ⅶ組A班、武装集団の制圧を開始する!」

リィンの号令を合図に戦闘を開始した。4人いる猟兵崩れに加えてギデオンの銃撃やアーツは厄介だったが、レンが繰り出す疾風のような速さの変幻自在の様々な武器での攻撃やアガートラムを操るミリアムによってギデオン達は圧倒された事に加え、リィン達の活躍もあり、リィン達は余裕でギデオン達を戦闘不能に追い込んだ。



「ば、馬鹿な……」

「百戦錬磨の俺達がこんなガキ共に……」

「クソ……特にあの菫色の髪のガキが厄介すぎる……」

戦闘不能に陥った猟兵崩れ達は自分達の敗北に信じられない表情をし

「傭兵部隊”バグヘアー”……あちこちの猟兵団からのドロップアウト組だったっけ?今回の仕事で、晴れて猟兵団として名乗りを上げるつもりだったのかな?」

「ああ、なるほど……要するに猟兵の”落ちこぼれ”が集まった集団ね。道理で猟兵の割には弱すぎる訳だわ。」

ミリアムは猟兵崩れ達を見つめて問いかけ、目の前の猟兵崩れの正体を知ったレンは納得した様子で猟兵崩れ達を見つめた。

「な、なんでそれを……!?」

「学生共はともかく何なんだ、このガキは!?」

「え、得体の知れない化物まで使いやがって……」

ミリアムが自分達の事を知っている事に猟兵崩れ達は信じられない表情をし

「む、化物なんてヒドいなぁ。ね、ガーちゃn?」

「―――――」

猟兵崩れ達に自分にとって大切な”相棒”が”化物”呼ばわりされた事が気に入らなく、頬を膨らませたミリアムはアガートラムに微笑んだ。



(本当にあの子……いったい何者なの……?)

(ああ、何となく背景は掴めてきた気がするが……)

ミリアムの正体が気になったアリサは疲れた表情をし、リィンは真剣な表情でミリアムを見つめた。

「クク―――なるほどな。どうやら”子供たち”の一人だったというわけか。銀色の傀儡使い……通称”白兎(ホワイトラビット)”だな?」

一方ミリアムの正体を悟ったギデオンは不敵な笑みを浮かべてミリアムを見つめた。

「へー。ボクのこと知ってるんだ?」

「ああ、貴様がここにいるのなら絶好の機会というものだ……―――この場にいる全員ごとあの世に行ってもらおうかッ!」

ミリアムの問いかけに憎々しげに答えたギデオンは懐から笛を取り出して吹き始めた。

「あの”笛”は一体……」

「何のつもりだ……!?」

ギデオンの行動にレンとユーシスは警戒した。



「―――上だ、気を付けろ!」

「え……」

「っ……!」

「わわっ、何あれ~!?」

その時何かに気付いたガイウスの警告にアリサは呆け、リィンは気を引き締め、ガイウス達と共に上を見つめて何かを見つけたミリアムは驚いた。すると巨大な穴がある天井から巨大な蜘蛛の魔獣が1体飛び降りてきた!

「なあっ……!」

「なんだあッ……!?」

巨大魔獣の登場に猟兵崩れが驚いたその時魔獣達は口から糸を吐いて近くにいる猟兵崩れを糸で拘束して近づき

「や、やめろ―――ぎゃあああああっ…………!」

なんと糸で拘束した猟兵崩れを喰い殺した!



「ひいっ!?」

「く、喰われた……!?」

仲間の末路を見た猟兵崩れ達は悲鳴を上げ

「クッ、まさか言い伝えの”悪しき精霊(ジン)”……!?」

「この石切り場のヌシということか……!」

ガイウスとリィンは魔獣達を警戒した。

「クク、どうやら太古から生き残っていた魔獣らしいな。目覚めたばかりで空腹らしいから全員エサになってやりたまえ。それでは―――よき死出の旅を。」

そしてギデオンはリィン達に背を向けて穴へ飛び込んでワイヤーで降り始め

「あ、逃げた。」

「ワ、ワイヤーロープ!?」

ギデオンの行動にミリアムは目を丸くし、アリサは驚き

「うふふ、逃がすにしても無事には逃がさないわよ?―――ヴァリアブルトリガー!!」

レンは小悪魔な笑みを浮かべて双銃をホルダーから抜いてワイヤーロープ目がけて狙撃をした。すると狙撃によってワイヤーロープは切れ

「な―――うああああああっ!?ぐあっ!?」

穴の底からギデオンの悲鳴と呻き声が聞こえてきた。



「た、助けて……!」

「死にたくない!……死にたくないよう!」

一方魔獣達に睨まれた猟兵崩れ達は悲鳴を上げ

「くっ……今は後回しだ!」

「ま、その人達は生きて捕まえないと不味いものね。」

ユーシスとレンは戦争回避の証拠となる猟兵崩れ達を殺させない為に魔獣の撃破を決意した。

「――――A班、戦闘準備!巨大蜘蛛の迎撃を開始する!」

「おおっ!」

そしてリィンの号令を合図にリィン達は戦闘を開始した!



「A(アンチ)ディフェクター発動……解析完了っと。火属性と幻属性が弱点よ!エニグマ並びにアークス駆動……」

武器を魔導杖に変更して魔獣の情報を解析したレンはリィン達に助言した後魔獣の弱点のアーツを放つ為に二つの戦術オーブメントを駆動させ始めた。

「四の型―――紅葉切り!!」

「竜巻よ、薙ぎ払えっ!!」

「喰らうがいい―――ルーンブレイド!!」

リィンとガイウス、ユーシスは三方向から攻撃して魔獣にダメージを与えたが

「―――――!!」

「くっ!?」

「グッ!?」

「チッ!?」

魔獣は巨体を突進させたり、数本ある足を器用に使って攻撃してリィン達に傷を負わせた。

「ガーちゃん、行っけ―――!」

「――――」

「!?」

その時ミリアムの指示によってアガートラムがクラフト―――バスターアームを魔獣の巨体に叩きつけて怯ませ

「行くわよ……!ファイアッ!!」

アリサはクラフト―――フランベルジュを魔獣の顔の部分に命中させた。すると紅蓮の矢が命中した魔獣の顔は燃え上がり始め、魔獣はその場で暴れて顔についた火を消そうとしていた。



「うふふ、業火に呑まれちゃいなさい♪クリムゾンレイ!サウザントノヴァ!!」

「――――!?」

その時オーブメントの駆動を終えたレンが高火力の火属性アーツを放ち、全身に弱点である火属性アーツをその身に受けた魔獣は悲鳴を上げながらその場で暴れた。

「せいっ!」

「ハアッ!」

「フッ!」

「ガーちゃん、ビーム!」

「――――」

「逃がさないわよ……メルトレイン!!」

「二の型―――洸波斬!!」

魔獣が全身に燃え広がっている炎を消すのに必死になっている間にリィンとガイウス、ユーシスは再び魔獣に近づいて武器を振るって通常攻撃を叩き込み、アガートラムはミリアムの指示によってクラフト―――ライアットビームを、アリサは炎の矢の雨を魔獣の頭上から降り注がせ、レンは仕込み刀で神速の抜刀による斬撃波を放って遠距離から追撃した。



「――――――!!」

炎を消し終えた魔獣は遠距離攻撃のアリサ達が厄介と判断して糸を吐いてアリサ達を拘束しようとしたが

「ガーちゃん、バリア!!」

「―――――」

ミリアムの指示によってアガートラムがアリサ達の前でクラフト―――アルティウムバリアを展開して糸を防ぎ

「―――――!」

「二の型―――疾風!!」

「セイッ、ハアッ!」

「フン、雑魚は引っ込んでいろ!」

魔獣が咆哮によって呼び寄せた配下である小型の蜘蛛の魔獣達はリィン、ガイウス、ユーシスが次々と攻撃して滅した。

「エニグマ並びにアークス駆動―――ダブルダークマター!!」

「これで止めよ!これが私の切り札よ!オーバルエネルギー充填……!ロゼッタアロー!!」

そしてレンがダブルアーツによってダメージを与えると共に2重の吸引と重力による拘束で魔獣の動きを封じ込めるとアリサは導力弓で弓の前に魔方陣を展開して炎のエネルギーを解き放って攻撃した。

「―――!?」

アリサが放ったSクラフト―――ロゼッタアローを受けた魔獣は怯んだ。

「ガーちゃん、行くよ――――ッ!!」

「――――――」

そして止めを刺す為にミリアムがアガートラムを自分の身の丈程あるハンマーへと変化してハンマーとなったアガートラムを両手で持って、魔獣に向かって行って跳躍し

「どぉぉぉりゃあああああっ!ギガント――――ブレイ――――クッ!!」

ハンマーと化したアガートラムを炎に包まれ、全身に酷い火傷を負っている魔獣に叩きつけた!

「――――――――!!??」

すると魔獣を中心とした広範囲に地面から凄まじい衝撃波が発生し、魔獣は全身を砕かれて消滅し、セピスを落とした!



「ぐっ、何とか終わったか……」

「ふー、さすがにちょっと手古摺っちゃったかな。」

「だが……これで終わりだろう。」

「ええ……あの眼鏡の男には逃げられちゃったけど……」

「ま、あの状況じゃ仕方ないわね。」

魔獣の撃破を確認して仲間達がそれぞれ安堵の表情で武器を収めている中、太刀を鞘に収めたリィンは猟兵崩れに近づいた。



「さてと……大人しく投降してもらえるか?」

「……ぐうっ…………」

「わ、わかった……身の安全の保証を要求する……」

自分達に勝ち目がない事を悟った猟兵崩れ達は抵抗する事を諦め

「フン、図々しいな。」

猟兵崩れの一人が呟いた命乞いにユーシスは呆れた。

「だが、何とか戦を回避するきっかけとなってくれれば……」

「とにかくARCUSでお祖父様に連絡するわ!そちらを経由してゼンダー門に繋げてもらう!」

「ええ、実行犯を捕まえたことをゼクスおじさんに知らせないといけないものね。」

(……んー、間に合うかな?)

リィン達がそれぞれ猟兵崩れの拘束やゼンダー門への連絡を慌てた様子で行っている所を横目で見つめていたミリアムは考え込んでいた―――――






 
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