おぢばにおかえり
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第三十三話 明治の中でその三
「和服もね」
「あっ、大和撫子なんですね」
「というか天理教には付きものでしょ」
「あっ、毎月のですよね」
「そう、おつとめ着がそうじゃない」
私は阿波野君に天理教の教会や布教所での毎月のおつとめ、お寺やキリスト教の教会でもしている礼拝やそういったもののお話をしました。
「袴や着物でしょ」
「そうでしたね」
「よく着るからね」
「馴染みがあるんですね」
「そうなの」
こう阿波野君に言いました。
「教会で生まれ育ってきたから」
「だからなんですね」
「それで高校を卒業する時にようぼくにさせてもらえるから」
「信者さんの中の、ですね」
「そう、天理教の御用をさせてもらえるね」
色々とさせてもらえる資格みたいなものが貰えるのです、そのようぼくになりますと。
「それにならせてもらえるから」
「その時にですか」
「そう、着物着るのよ」
「じゃあ僕も高校を卒業する時は」
「着るわよ、私もだけれど」
「それはいいですね、先輩着物似合いそうだし」
こんなこともです、阿波野君は言ってきました。
「楽しみですよ」
「私着物似合うかしら」
「だって奇麗っていうか可愛いですから」
笑ってこんなことも言ってきました。
「似合いますよ」
「可愛いって」
「はい、先輩何でしたらAKBとか入りません?」
「冗談でしょ、そんなこと」
すぐにです、むっとした顔になって阿波野君に反論しました。
「私がアイドルとか」
「絶対いけますよ、センター」
「あのね、そんなこと言っても何も出ないわよ」
「いえいえ、先輩なら絶対にセンターいけますよ」
「まだそんなこと言うの」
「僕冗談言わないですから」
「その言葉は冗談でしょ」
「違いますよ」
全く何の悩みも躊躇も見られない返事でした。
「先輩物凄く可愛いですから」
「そんなこと言われたことないけれど」
私はいささかぶすっとした顔になって阿波野君に返しました。
「これまで」
「そうですか?」
「ええ、それはお世辞でしょ」
「そうじゃないですよ、本当に」
「本当に?」
「はい、とにかく先輩でしたら」
私にあっけらかんとした笑顔で言ってきます、
「センターいけますよ」
「そんなこと言われても」
「本当にそう思いますから。高校卒業したらオーディションどうですか?」
「興味ないわ、高校を卒業したらね」
その時はどうするのかはもう決めています、といいますか私は教会の長女なので進路は決まっています。
「大学に行くわ」
「天理大学ですか」
「ええ、その為に勉強もしてるし」
「真面目ですね」
「真面目っていうかね」
私は阿波野君に真剣な顔で言いました。
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