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ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~

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第68話逃げられない運命の出会い

竜side

2025年10月5日、神鳴家

オレは今、自宅のキッチンに立って料理をしている。アスナさん等に言ったら、周りからはすごく意外そうな目を向けられた事もあるが、実を言うと母さんが留守にしている時にはいつもオレが飯を作っている。特に麺類が得意かな。この前なんて龍星がふざけて開発した麺を生成してガトリング砲みたいに噴射する機械、『ヌードル・ガトリング』を暴走させた時には自慢の包丁さばきで大皿に盛りつけた事があったな。確かあの時ーーー

『1.4mmパスタ(フェデリーニ)』

『サ○ジか!!!』

みたいな感じになってたっけな。ちなみに今オレが作っているのは麺類でも肉類でもなくーーー

「あーう。まんま」

「はいはい、もうちょっと待っててね~。もうすぐご飯出来まちゅよ~、星乃ちゃん」

「たいやい!」

生後三ヶ月の可愛い姪、星乃ちゃんの離乳食を作っている。義姉さんがオレの学校のクラスの担任になり、オレはよくこの子の面倒を見るのを手伝っている。未来も一緒にお世話を手伝う予定だったのだが、用事があって家にはいない。父さんと母さんも出掛けてるから、今日家にいるのはオレと星乃ちゃんだけ。こんな状況が最近多かったため、今では神鳴家で一番子育ての仕方が上手だと胸を張って言える。もうオムツの交換も義姉さんに褒められるくらい完璧だし。

「はいはい出来まちたよ~。星乃ちゃんの大好きな、ツナとおからのベジタブルホットケーキ~♪」

「あーい!」

ツナとおからのベジタブルホットケーキ、星乃ちゃんこれ好きなんだよなーーーまだ赤ん坊じゃしないような満面の笑みを浮かべるし。

「おいちい?」

「お・・・おいちい」

「喋った!」

今喋った!絶対喋った!今まで義姉さんはまだ喋れないって言ってたけど、今オレの目の前で喋った!もう一回喋ってくれる!?スマホで録音するから!

「・・・なあの?」

「ダメか・・・」

やっぱりそんなすぐに喋れる訳ないか。気長に待つっていうのもそれでいいーーー今日は諦めよう。さーて、晩飯の支度するかーーー

「あれ?」

醤油がないなーーー買いに行くか?でも家に未来や父さん母さんもいないから、星乃ちゃんを一人にしちまうし。どうしたもんかなーーー

「星乃ちゃん、叔父ちゃんと一緒にお買い物行く?」

「ほ~?・・・たい!」

こうすればいいじゃないか。これなら星乃ちゃんを一人にしないし、外でもとりあえず対処出来る。早速財布やらスペアのオムツやらを準備して行きますかーーー




******




単刀直入に言おう、周りの奥様方からの視線がちょっと痛々しい。多分高校生で子供作ったとかそう思われてるのかなーーー

「あの子赤ちゃんおんぶしてるわよ」

「ホントだ!随分若いパパね・・・」

「いや、親戚かお友達のお子さんを預かってるんじゃない?」

「どちらにしろ偉いわね~!相当大切にしてなきゃこんな町中を子供連れて歩かないわよ」

うん、大して悪く見られてないな。むしろ良く見られてるほうだな。でも何か恥ずかしいなコレーーーまあ醤油は買ったし、あとは帰るだけだからそれまで我慢するかーーー

「ほら!さっさと金出せよ朝田!!」

ーーー今そこの人気のない路地裏で聞き捨てならない声が聞こえたな。オレは星乃ちゃんが寝ているのを確認して、そーっと今の声が聞こえた場所に行ってみる。そこにはーーー茶髪の眼鏡をかけた女の子を囲んでカツアゲしようとしてる三人の女がいた。同じ学校の制服着てるし、同級生をよくカモにしてる不良女子高生ってところだな。全く、こんな夕飯時にカネ脅し取りやがってーーー

「出さねぇってんなら無理やり出させてやるよ。今日兄貴から「おい、そこの三人。嫌がってんだろ?解放してやれ」あん?」

いい加減見てらんないから、オレがこの眼鏡の子を助けに入る。

「何だよ?テメェには関係ねぇだろ!アタシらはコイツに用があんだよ!!」

「用?カツアゲがか?お前カネ稼ぐのがどんだけ大変だと思ってんだ。何回やってるか知らねぇけど、今日のところは勘弁してやれよ。赤ん坊泣いちゃうから」

「知らねぇよ!!部外者は引っ込んでろっての!!」

全くやめねぇなこのブタども。他人の財布を薄くして相手の生活蝕んで、自分だけ楽しようってんだ。星乃ちゃんがいるから、オレは交渉するしか取れる道がない。本当なら今すぐ泣かしてやろうと思ったけどーーーこればっかりは仕方がないな。

「お巡りさーーーん!!!」

「はっ!?せこいぞテメェ!」

お巡りさん呼んでコイツらをお縄につかせてもらう。それに反応して不良ブタ三人は、大急ぎでオレの横を通って逃げ出した。危ねぇなオイ、赤ん坊に怪我させたらどうすんだ。金は汗水垂らして働いて、苦労して手に入れる物なんだよ。これに懲りたら真面目に働いて稼げ、ブタどもーーー

「あの・・・」

「ん?」

今の不良にカツアゲされてた茶髪の眼鏡の子がオレに話しかけてきた。

「助けてくれて・・・ありがとうございます」

「いや、いいよお礼なんて!面倒事に首突っ込まなきゃ気がすまないだけだから。この子にあんな悪い成長を遂げた姿なんて見せたくなかったし・・・」

我ながら本当にタチが悪いぜ。赤ん坊連れてんのに不良のカツアゲ現場に突っ込んで、オマケにあんな野蛮な言動を聞かせちゃったしーーー

「妹さん?」

「姪だよ、オレの兄貴の娘。はい星乃ちゃん、お姉ちゃんにご挨拶して」

「ぱぷー♪」

「可愛い・・・」

妹にしては歳が離れすぎだと思うけどーーーまあ家族には違いないから。

「あ、そうだ。オレの名前は神鳴竜。キミは・・・朝田さん、だよね?さっきの奴らが言ってた」

「そっか、聞いてたんだ・・・私の名前は朝田詩乃。助けてくれてありがとう、神鳴君」

そう、これがオレと朝田詩乃の出会いだった。
この時は、思いもしなかった。これがーーー

【愚か者どもよ】

銃声が鳴り響き、硝煙の臭いが漂う世界でーーー

【この名を恐怖と共に刻め!!】

あの鋼鉄の空飛ぶ城で体験したーーー

【俺と、この銃の名は・・・】

忌まわしき過去が甦り、オレが犯した罪を思い出させたーーー

死銃(デス・ガン)だ!!!】

死銃(デス・ガン)事件》の序章ーーー否、前書きとなる出会いだった。 
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