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狐火

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第二章

「日本の狐は人化かすだけやん」
「爺ちゃんが連れてる犬も苦手やし」
 犬は老人によく懐いてる感じだ、猫達と共に老人の傍から離れない。
「お稲荷さん持って来てるしこれお供えしてな」
「取材させてもらうねんで」
「日本の狐は確かにそんなに強ないわ」
 老人もこのことは認める。
「ほんまにな、けどそれは狐によるやろ」
「狐に?」
「狐それぞれによるっちゅうんかいな」
「今日は狐のお祭りの日や」
 それでというのだ。
「大阪中の狐がここに来るし大阪の狐の棟梁さんも来るんや」
「で、その棟梁さんがかいな」
「めっちゃ怖い狐っちゅうんかいな」
「九尾の狐でもう千年生きてる」
 そうした狐だというのだ。
「晴明さんのお母さんのお兄さんの子供や」
「ほな晴明さんの従兄弟か」
「そうした狐かいな」
「九尾の狐やから妖力も凄い、その狐が来る祭り邪魔したら大変なことになるで」
 二人に対してだ、老人は穏やかだが真剣な声で注意した。
「そやから今日は帰った方がええで」
「折角大阪まで来たのにかいな」
「何もせんと帰れって殺生やろ」
 二人は老人の忠告に眉を顰めさせて返した。
「狐やし怖いことないのに」
「九尾の狐いうても狐やろ」
「あの上皇様たぶらかした狐は中国から来た特別な奴で」
「大抵の九尾の狐は所詮狐やろ」
「稲荷さん持って来てるし怖ない」
「狐は狐や」
「そう言うけど九尾の狐はちゃうんや」
 鳥羽上皇に憑いていたあの九尾の狐とは違うがというのだ。
「妖力が桁外れや、怒らしたらあかんのや」
「お爺ちゃん心配し過ぎや」
「うち等かてわかってるわ」
 明らかにわかっていない返事だった。
「オカルト研究会の部活で狐のこともわかってるで」
「わかってるから怖ない怖ない」
「それより爺ちゃんはよ家に帰りや」
「お孫さん達心配してるで」
「そうじゃな、チロとシロ、タマもそうしたいみたいじゃし」
 老人は自分が連れている犬と猫達の顔を見てから二人に応えた、彼等は老人の顔を人懐っこそうな表情で見ている。
「帰るか、しかしあんた達本当に言うが」
「今日は帰れかいな」
「そう言うんかいな」
「その方が身の為やで」
「大丈夫大丈夫、護身の警棒も持ってるし」
「お札もお守りも持ってるで」
 やはり能天気に笑って言う二人だった。
「お爺ちゃんは心配無用や」
「それよりこの話広まったらどっかで観てや」
「狐火、実況するさかい」
「お爺ちゃんとの話も中継してるで」
 二人共携帯を動かし続けている。
「古くからこの神社を知ってる爺ちゃんと話してますって」
「画像は許可得てないから撮影してないけどな」
「止められたけどうち等は行く」
「これがオカルト研究会やってな」
「やれやれ、まあ死なんだろうからな」
 老人は何もわかっていないままの若さ故にという感じそのままの二人に呆れながらも言った。
「葛の葉稲荷神社の方に行けばいい」
「ああ、そこか」
「そこに狐火出るんやな」
「葛の葉って晴明さんのお母さんやし」
「まさにそこって感じやな」
「それはそやけど今日の夜はそこには神社の人も行かんのや」
 葛の葉稲荷神社にだ。 
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