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元虐められっ子の学園生活

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各所観光

紅潮と言う言葉がある。
これは良く、顔が赤くなる事を例えて使われることは知っているだろうか?
身体的に血流が頭に上り、顔が赤くなってしまうのだが、そう言ったことが起こってしまうのは自分で止められるようなものではない。
そもそも人体におけるストッパーは、自身で外すことは出来ないとされている。
良く『人間は全体の30%の力しか使うことは出来ない』と言われているが、つまりそういうことなのだろう。
人体における残りの潜在能力を引き出したのなら、体は耐えきれずに負傷を来すとされ、普段は脳が働き、力を抑制しているのだ。
極希に『火事場の馬鹿力』と称される形で発揮されるが、やはりと言うか、自分の意思で行うことは出来ない。
これらは想像に過ぎないが、もし仮に普段の全力が30%で、何かを殴って陥没まで行けたとするのなら、単純計算でその3倍。貫通させることも容易くなるのだろうか。
もしもそうならば、あらゆる格闘技等でそれとなく活躍できるのだろうかと、胸を膨らませてしまう。





「…静かすぎる」

早朝4時。
何時もの癖で起きてしまう俺は、起床直後に手持ちぶさたとなり、ロビーにて新聞を読んでいた。

「最近の若い者達は、何故こうもスローペースなのか…」

「あら、鳴滝君?早いのね」

「あ、鶴見さ…先生」

女子エリアから歩いてきたのは瑠美ちゃんの母である鶴見先生だった。
この人、一児の母なのに若々しい。
シワなんてないし容姿も綺麗だ。瑠美ちゃんも大人になればこんな感じになるんだろうか。

「大変だったみたいね?」

「ええ、まぁ。
修学旅行なんて初めてですし、何やって良いのか、正直迷ってます」

「何やるにしても、学校とは別って考えればいいわ。
そりゃ、多少の規制はあるだろうけど、旅行に来た…もしくは散歩に来たって感じで良いのよ」

「はぁ。そんなもんですか」

「そんなものよ」

ふむ。
今日のスケジュールとしては、午前は比企谷達と回り、午後から自由行動。
個人的に回りたいところなんて考えてもいない。それに―――

「はぁ…」

「溜め息は幸せを逃すわよ?」

葉山どもと回るなんてごめんだ…。








そうして朝の朝礼も終わり、各班ごとに回ることに。
俺は比企谷がいる班に組み込まれ、そのついでに色々と見て回るそうなのだが。

「九十九、おはよう」

「沙紀さん。おはよう」

班員に沙紀さんがいた。

「あの、さ。頼みがあるんだけど…」

唐突に下を向いて言う沙紀さん。

「どしたの?」

「えっと、これから色々回るんだけど…」

「ん?」

「…や、やっぱり何でもない」

そう言うと早足に離れていく沙紀さん。
どうしたのかわからないが、何でもないならそれで良いのだろう。
俺は気にしないことにした。


case1~お化け屋敷~

「何が【史上最強のお化け屋敷】だ…もっとマトモな名前は無いのか」

「ひっ…今何か聞こえた…!」

「私こう言うの苦手…」

俺、比企谷、由比ヶ浜、沙紀さん、戸塚は、一組となって施設内を歩いていた。
俺の前を比企谷、由比ヶ浜、戸塚が歩き、俺の横を―――

「…」ギリギリ

…沙紀さんが歩いている。俺の腕を掴んで。

「お化け屋敷なんて怖くないだろ。人間の方が怖い」

「でた、ひねくれー。でも、頼りになるかも!」

「―――むしろ人間が驚かす方が怖い」

「ダメだった!全然頼りにならない!」

何言ってんだか…。

「ほれ、嬢ちゃんも早く帰れよ」

「九十九…何に喋って…っ―――!?」

俺は俺で脚の裾を摘まむ女の子に話しかけていた。
それをみた沙紀さんは…走って出口に向かってしまった。

「えぇぇ…」

取り残された俺は、取り合えず比企谷の方を向き…

「いねぇ…」

誰もいなかった。

「はぁ…取り合えず成仏しな?」

『…』

女の子をあやして、俺も出口に向かうのだった。



case2~龍安寺『石庭』~

「おお、雪ノ下」

「あら奇遇ね」

「こっちに来てたんだな」

「ええ。あの石、虎の子渡の庭と言う別名があるそうよ」

虎の子渡…ねぇ。

「あの石、三つの謎があるそうだぞ」

「謎?」

「そ。
一つ、石庭は何をテーマに設計されたのか。
二つ、『五群十五石』と言われる五つの石組と十五の石は何を意味しているのか。
三つ、それらの石を配置するとき、どのような構図に基づいたのか」

「…理解できないわね」

「昔から多くの識者が推理を重ね、「虎の子渡しの庭」「七五三の庭」「心の字の庭」「扇の庭」「星座カシオペヤの庭」「五山の庭」「黄金比の庭」を初めとして、「五十五もの推理」が提唱されてきたそうだが、実際に確信に基づいた推理は制定されてないそうだ。
最近だと「禅の庭」「哲学の庭」「推理の庭」って感じで呼ばれているらしいな」

「そう。博識なのね。
でもそこまで詳しいと少し引くわ」

「因みに『虎の子渡し』について、虎が三子を生むと、一子は彪で他子を食うから、
水を渡る時にはまず彪の一子を渡らせ、次に別の子を渡らせて、また彪を渡し返し、さらに残りの一子を渡し、最後に再び彪を渡したという説話に基づいているそうだぞ。
つまり、あの石はそう言うと説話があるだけで、石が虎に見えると言う訳ではない」

「…そう」

何かさらに引かれているようですが、気のせいですかね?
っと、雪ノ下の更に奥に眼を向ければ、さも被害者を見るような目でこちらを見ている女子生徒が。
間違いなく俺を危惧しているな。

「あ、ゆきのん!」

「うっす」

呼ばれて振り替えれば由比ヶ浜と比企谷がいた。
その後ろにカスがいるけど。

「…場所を変えましょうか」

そう言って雪ノ下は立ち上がり、四人で人気のない場所へと移動した。



「依頼の調子はどうかしら?」

「うーん…結構難しいね、ね?」

「あんまやり過ぎて、海老名さんに嫌がられてもな」

確かに、依頼の成果としては余り進んでいないように思う。

「一応聞いた話ではそんなに変わらないそうだぞ」

「…それ、誰に聞いたんだよ」

「ん?そりゃお前…なぁ?」

「「…」」

雪ノ下を置いて二人が黙る。
お化け屋敷にいた『人達』に聞いたとは言えないだろう。俺を置いて逃げたし。

「おまけに…(葉山の行動が不自然だ」

「……」

明らかにアイツは海老名の気持ちを知っている。
それでいて丸く納めようとしているのが分かる。

「任せきりにしてごめんなさいね」

「全然気にしないで」

「代わりといってはなんだけど、一応私の方でも考えてみたの」

「何をだ?」

雪ノ下はポケットをあさる。
そして出てきたのは一枚のメモ用紙だった。

「女性に好まれる京都の観光名所。
彼らの参考になればと思って」

「わぁ。ゆきのん流石!」

「では、私は戻るわ」

「うん。また明日ー」

雪ノ下はそうして去っていった。
そうか。明日が皆で回る日か。少し楽しみだな。




その日の行程を終わらせ、俺はまた一人になってロビーにいた。
午後の自由行動はハッキリ言って暇だった。
比企谷に着いていこうとも思ったけど、比企谷にも予定があるだろうからやめておいた。

「さて…どうするか」

時刻は8時を少しだけ回ったところだ。
やることのない今となっては、時間を潰すことすら難しい。

「部屋は他のやつらで騒がしい。
かと言って風呂は論外…女子部屋?怯えられてそれどころじゃない。そもそも何しに行くんだ。
後は…ああ、あるじゃないか、やることが」

そう。学校へ帰ってからやるであろう作文が。
それを今から仕上げておこうと、俺はロビーから立ち去るのだった。



 
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