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真・恋姫無双〜中華に響く熱き歌

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幽州編
  第24話 趙雲とバサラ

 
前書き
お久しぶりです!
では、どうぞ! 

 

「・・・なんなのだ、あの男は・・・」
そう呟くのはナース服のような白衣を着ている女性、名を趙雲という。
趙雲は目の前の光景をすぐには信じられなかった。
趙雲の目の前には、バサラが馬を駆けさせ、五胡の者たちの弓矢を躱しながら歌っている。
(あのように騎乗し、琵琶を弾き、歌いながら弓矢を躱すなどという芸当、ましてやあれほどの馬を駆けさせてなどと、私でも出来ぬぞ・・・伯桂殿でも出来るかどうか・・・
だが、)
「あれほどの馬術を持ちながら、なぜ、五胡に対して歌うだけなのだ・・・?
そもそもなぜ、歌うのだ?」
バサラの馬術を賞賛しながらも、なぜ五胡に対して歌うのか、それがどうしても分からなかった。
それはなぜか、どうしても問いたい。
「・・・だが、今はあの男を助けねばならん。
それを先にやらねばな。」
そう言ってから、己の愛馬である白い馬に視線を向けて、
「頼むぞ、『白竜』。お主の力を信じるておるぞ。」
『ぶるう』
己の愛馬の返事を聞き、頼もしく思う趙雲。
そして、己の愛馬を五胡の軍勢に向け、駆けさせる。


ところ変わり、五胡の軍勢。
慌ただしいその中でも、特に目立つ者がいる。
その者は、伝令役のようである。

「た、隊長〜!!」
「なんだ、どうした!!」
この軍勢の隊長が伝令に反応する。
「み、南から新手です!白の衣と馬に赤い切先の二股の槍使い、趙雲です!」
「なに!?趙雲だあ!?あの赤馬野郎にでさえ手こずってるってのに、趙雲まで来てんのかよ?!」
「ど、どうします?、隊長〜」
「ええい!よく見りゃあ、あいてはたった1人じゃねえかあ!
赤馬野郎に弓矢撃ってるやつ以外は、趙雲のやつに矢の雨をお見舞いしてやれえ!」
『おう!』
兵達は返事を返し、バサラに矢を放つもの以外は趙雲に弓矢を構える。
それは、馬に乗りながら放とうとしている。
そして、趙雲に向けて何百もの矢が放たれる。
(趙雲の野郎がいくら強かろうが、何百の矢の雨には叶わねえはずだ!
軍がいるならまだしも、たった1人で来やがったのが運の尽きだ!)
五胡の軍勢の隊長はそう確信する。
事実並みの将であるならばそうであろう。
だが、この趙雲は、並みの将などではない。
「ほう、そうきたか。」
それは
「だが」
並どころか
「あまり私を」
一騎当千を誇る
「舐めるなよ!!」
猛将、趙雲である。
そう叫んだ後、趙雲は愛馬の白竜の足を加速させる。
赤兎ほどではないにしても、彼の馬もまた名馬である。
凄まじい速さで突っ切っていく。
そして趙雲自身も、矢を身を捻り躱し、自身や白竜に当たりそうな矢を槍ではたき落とす。
それらを行いながら、五胡の軍勢に近づいていく。
「た、隊長!趙雲の野郎がこちらに近づいてきます!」
「うるせえ!んなこたあ分かってんだよ!」
慌てふためく五胡の隊長。
「ええい!こうなりゃあ、本気でやるぞ!
野郎ども!『パルティアン』でやるぞ!
赤馬野郎にでさえ手え焼いてんのに、趙雲の野郎までいやがるなんざ、割りに合わねえ!」
『おう!』

ーパルティアンー
それは、馬に乗る北方遊牧民が使っていた戦闘方法である。
馬に騎乗しながら矢を放つもので、敵が足を止めれば矢で狙い撃ちにし、追撃に出れば退却しながら矢を放ち、退却すれば馬で追撃しながら矢を放つという戦闘方法である。
敵を一方的に虐殺、殲滅することができる。
これには馬、弓矢、馬術の扱いに長け、集団での使用を想定されることから相当な訓練が必要だが、北方遊牧民(この小説では五胡)は平時から馬と触れ合い、狩りにおいてこの戦闘方法を使用しており、いわば使い慣れているベテランの集まりである。
現代で言えば軍隊の特殊部隊又は戦闘機乗りであろうか。
それが数千、数万人もしくは機もいると想像してもらえれば分かるだろうか。
これにより北方遊牧民は、火器、重機などが登場するまで最強と呼べる存在であった。

それを趙雲1人に使おうと言うのだ。
だが、今回は殲滅する為に使うのではなく、退却する為に使おうとしている。

「野郎ども!パルティアンでこのまま退くぞ!!」
「隊長!趙雲を討ち取る好機ですよ!?
このまま討ち取りましょう!」
「んなこたあおれも分かってる!
だが、ここは退くぞ!」
「は、はい」
報告をした兵士は不承不承という様子ではあるが、納得したようである。
(そりゃあ、俺だって趙雲を討ち取りてえ。
だが、趙雲1人討ち取るのにこちらは100や200は殺られちまう。
それに、趙雲1人だけじゃなくまだ軍がいるって見た方がいいからな。
なんにしろ、趙雲を討ち取るまでに軍が来る方が高えと見た。
なら、趙雲の野郎を討ち取るのにこだわらねえで、パルティアンで逃げた方がいい。
って、考えたが、今は言う暇がねえからな。)
五胡の隊長は趙雲以外にも軍が居り、趙雲を相手にする間に軍まで相手にすることになると思い、退くことを選んだ。
だが、退くことを選んだのはもう一つ原因がある。
それは
「てめえら!争いなんかやめて、おれの歌を聴けええ!」
バサラの存在だ。
(あの野郎がいなきゃ、趙雲相手に集中できるから、殺すっていうことも考えたんだが、あの野郎にも少しは兵を分けなきゃならねえ。
ちくしょう!なんなんだよ、あの野郎は、訳が分からねえよ!)
そう思いながら、パルティアンで退却する五胡の軍勢。
それにバサラは
「おい、待てよ!まだおれの歌は終わってねえぞ!!」
そう言って、五胡の軍勢を止めようとしたが、そのまま退却していく。
「ちえっ・・・なんだってんだ」
そう呟くバサラ。
そのバサラを見た趙雲は
(あの男、五胡の軍が退いていくのを歌が終わっていないという理由で止めようとするとは・・・訳が分からぬ。あの男の目的は何だ?
自分の名を上げる為の行いか?
それとも、他に違う目的があるのか?)
そう思考にふけるのであった。
(・・・考えても埒が空かん。ここはあの男に問うてみるか。)
そう判断した趙雲は愛馬の白竜をバサラに近づけさせる。
「そこの御仁」
「ん?」
趙雲がバサラに声をかけ、それに返事をするバサラ。
「お主に聞きたいことがあるのだが、よろしいか?」
「おれに聞きたいこと、何だい?」
「お主が北平の城からから飛び出した者に間違いないか?」
「そうだったらなんだってんだ?」
「お主は何故北平の城から飛び出し、五胡の軍に向かい歌っていたのだ?
五胡の軍に矢を撃たれていたことから、間者では無さそうだが?」
「なんでって、決まってんだろ?おれの歌をあいつらに聴かせるためだよ。」
「歌を聴かせるためとは、それだけか?」
「ああ、そうだよ」
「何故だ、何故そんなことを?もしや死ぬかもしれんというのに」
そう聞く趙雲にバサラは後頭部を掻きながら、溜息をつき、
「ああ、分かんねえかなあ!おれの歌を聴かせたいから歌った。それだけだよ」
その言葉に趙雲は
「・・・本当にそうなのだな?」
と聞き返す。
「しつっこいなあ、そうだって言ってんだろ!」
答えるのが面倒くさそうなバサラ。
(・・・これでは訳が分からぬ。こやつが嘘をついているようには見えぬが、だからと言って本当のことだとしても、何故このようなことを?
死ぬかもしれぬのに、歌を聴かせるためだけに、そんな危険を犯すなど、考えられん。なら、何故歌う?・・・分からぬ)
考えこむ趙雲だが、そこへ南からようやく北平の軍が見えてきた。
数はおよそ1000ほどである。
それは自分が率いるはずだった先発隊だろうと考えた。
ならば、もうすぐで白佳殿が率いる本隊も到着するはずだ。
そう思う趙雲だが、
「話が終わりなら、もう行くぜ」
と、馬首を返し、立ち去ろうとするバサラ。
「ま、待ってくれ!」
と止める趙雲。
「なんだよ、まだあんのかよ」
「お主は、これからも五胡に対して、歌うつもりなのか?」
趙雲の質問にバサラは
「歌うに決まってんじゃねえか!」
そう答え、北平に帰っていった。
「・・・何だったのだ、あの男は・・・」




ところ変わり、五胡の軍勢。
北平から退却中の軍である。
この軍の副将らしき男が隊長に退却しながら話しかける。
「た、隊長」
「あん、なんだ?」
「あの赤馬野郎のことなんですが、どうお考えですか?」
「ああ、あの野郎か。あの方に報告する。」
「あ、あのお方にですか?!そりゃあいくらなんでも大袈裟じゃあ・・・」
「ああん!?てめえは、おれらの弓矢を馬を走らせながら躱して、挙句の果てには歌う余裕まであるやつのことを大袈裟って言うのかあ?!」
そう、怒鳴るように聞く隊長。
「す、すみません」
「ふん、分かりゃあいいんだよ」
謝る副将に鼻を鳴らし、前を向く隊長。
(そうだ・・・あの野郎がその気だったら、今頃おれはこの世にいねえ。)
「だからこそ、伝えなきゃならねえ。
我ら五胡を治める、『鮮卑族』の王にして、最強の『草原王 檀石槐』様になあ・・・」
そう呟く彼の声は風に流され、消えていくのであった・・・

 
 

 
後書き
ありがとうございました! 
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