真・恋姫無双〜中華に響く熱き歌
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幽州編
第23話 五胡と赤兎
前書き
お久しぶりです!
では、どうぞ!
「いくぜ五胡お!!おれの歌を聴けええええ!!!」
ここは北平の街から約10里(約4km)程の平野。
そこには五胡の軍勢がおよそ2000程いる。
その中へとバサラは赤兎に跨り近づいて行く。
それを見ていた五胡の軍勢は混乱していた。
それはたかが2000程度とは言え、一つの軍隊に向かって突っ込んでくることだ。
しかもこの漢帝国を脅かす彼ら五胡と呼ばれる存在に対して、だ。
普通の人間ならば、五胡でなく賊の集団でも避けようとするだろう。
だが、今彼らに向かってきている男は馬に跨り物凄い速さでこちらに来る。
それも、たった1人でなおかつ武器らしい武器も持たずに、だ。
「よっしゃあ!いくぜ、突撃ラブハートお!!」
そうこうしているうちに、バサラはギターを弾き始め、馬を走らせながら歌いだす。
「はあ?」
と間の抜けた声を出す五胡の者たち。
あまりのことに五胡の者たちはなにが起きたか分かっていないようだ。
しばし五胡の者たちはバサラの歌を聴いていたが、この軍の大将らしき男が気を取り直し、
「ええい!てめえら、なにぼけっとしてやがる!?さっさとあのいかれた野郎をぶち殺せえ!!」
と命令を出す。
それを聞いた五胡の者たちは、はっと正気に戻りバサラに対し、殺すべき者として意識を向ける。
彼らは己の乗る馬を駆けさせながら弓をつがえ、狙いを定める。
それを見たバサラは
「赤兎、頼んだぜ」
と赤兎に声をかける。
『ぶふう!」
赤兎は任せろ、と言わんばかりに返事を返す。
「なんなんだよ、あの野郎は・・・!」
呟くのは五胡の軍勢2000を率いているらしき男である。
その視線は前方のバサラと赤兎に向けられている。
その表情は驚愕に満ち溢れていた。
「あんな、馬をあんな速さで駆けさせながら歌ってんのに、なんで、矢が当たらねえんだよ!?」
そう、この男が驚愕していたのは、バサラが矢の雨の中、赤兎を駆けさせこちらに近づいていながら、矢が当たらないのだ。
五胡の軍勢は2000はいるとは言ってもその全てが矢を放つ訳ではない。
だがそれでも100や200はくだらない兵が矢を放っている。
だが、それでも当たらないのだ、ただの1本も、だ。
「くっそ〜!もっとだ!もっと矢を放てえ!」
その声でさらに矢の数が増す。
だがそれでも、
「へっ!そんなんじゃあおれらは止められねえぜ!」
矢は当たらない。
「くっそ〜!なに手間取ってやがんだ!」
そしてバサラの歌が響く。
「ちい!てめえら、もっと矢を撃たねえか!」
こう言いながらも五胡の軍勢の者たちは目の前の光景の異常さに動揺を隠せていない。
それは、五胡の大将らしき男もだ。
「ちっ・・・なんなんだよ、あの馬は!?」
だが、この場で異常なのはバサラだけではなく、赤兎もだ。
赤兎はこの矢の雨の中、バサラを背に乗せながら五胡の軍へと突っ込んでいる。
そして迫りくる矢を避けている。
五胡の軍勢は赤兎を近づけないように矢の数を増やすが、赤兎相手には意味が無い。
「くそお・・・!てめえら!相手は1人だ!囲んで仕留めろ!」
大将の命令で五胡の軍勢はバサラを囲むように動き、四方八方から矢の雨を降らせる。
それを見た赤兎はさらに速度を早める。
「なっ、まだ、速くなるのかよ?!」
そしてそのまま大将らしき男の方に近づいてくる。
五胡の軍勢は近づいてくる赤兎に対し持っていた刃渡りが50cm程度の短刀を構え、バサラに斬りかかる。
それを赤兎が移動して躱し、バサラ自身も自らの身体を逸らすなどして躱していく。
そして、大将の男に近づいていく。
「へっ、おれ自らぶった斬ってやるぜ!」
大将の男もバサラに突っこんでいき、斬りかかる。
だが、
「なっ?!」
そこで赤兎は前へ跳躍した。
その高さは大将の男の上を飛んでいることからも異常なことだと分かる。
まさか男の方もこのようなやり方で自身の刃を躱すとは思わなかった。
いや、思うはずがなかった。
それは男だけではなく、五胡の軍勢2000の兵全てが該当する。
彼らは馬と共に草原の世界で生きる遊牧民である。
幼き頃から馬に乗り、戦いにおいては共に戦う。
その為に馬という生き物のことは誰よりも知っている、そう自負していた。
だからこそ、だからこそこの赤兎という馬の異常性が分かる。
あそこまでの速さの馬など見たことが無い。
だが、それだけならただ速く奔ることの出来ることができる程度にしか思わなかっただろう。
あの高さの跳躍を見るまでは。
彼らが知る馬は走ることに長けてはいるが、跳躍にはあまり向かない。
その為に馬とは走る生き物、という認識が強い。
だからこそ、彼らは赤兎に対しあり得ない物を見るような目で見ている。
そして、それを乗りこなし、あまつさえ自分たちに歌うことまでしていたバサラを見て、
(こいつは、本当に人、なのか?)
そう思うのだった。
バサラと赤兎は跳躍した後はまた走り出し、五胡の軍勢の囲みを抜け出して軍勢から少し離れた後軍勢に向き直る。
そしてまた五胡の軍勢に向かって走り出し、
「いくぜ!PLANET DANCE!!」
また歌いだす。
それを見た五胡の軍勢はバサラに対し、
(なぜ、こいつは歌うのだ?これほどまでの馬術を持つのに、なぜ?)
そう思いながらバサラのことを呆然としながら見ているのであった。
後書き
ありがとうございました!
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